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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
148/206

黒い天使短編「ハワイ大乱闘」13END

黒い天使短編「ハワイ大乱闘」13END


もう一つの事件。

凶悪な篭城事件を対応するユージ。

だがユージはとっておきの作戦があった。


もうしてハワイでの大騒動も終わる!


***



 ハワイ島 キング・ショップス・モール


 なんと、モールを包囲していたハワイ州警察が、姿を消したのだ。

 そして、残ったのは一台の輸送用トラックと、一人の捜査官……ユージだけだった。

 立て篭もるデニー=ファウロンは、多少戸惑っていた。


 こんなに物分かりのいい警察当局は聞いたことがない。


 ファウロンは。ユージの勧告に従い女性の人質三人を解放した。そこで改めて交渉が始まり、1億ドル(偽札)と逃走用の車。その引き換えに人質を全て解放する……という要求に対し、ユージの返答は、「人質は全員店内に残す形で開放だ。その代わり俺以外の警察は全てここから撤去させる。10分だけ、お前たちのフィーバー・タイムだ。警察はその間動かん。それが飲めないなら仕方ない。いつまでも篭城していろ。俺はここから去って、偽札を燃やしてバーベキューを楽しむ」だった。普通の警察の交渉人のルールなどなんとも思っていない。だが偽札を焼くことは別に法律違反ではないし、ファウロンたちにとってあの1億ドルが燃えては全ての計画が水の泡だ。結局ユージの要求に従うしかなかった。 しかし、これがFBIか? マフィアみたいなやり口だ。


 ファウロンたちは暗視スコープを使って入念に周囲を確認した。スナイパーも伏兵もどこにも隠れていない。信じられないが、本当にあのFBI捜査官一人だ。


 ファウロンたちは自動小銃を構えて、外に出た。


 外では、ユージが面白くなさそうに突っ立っている。さすがに手には銃は握っているが。


「よく出てきた。人質に危害は加えていないな?」

「ああ、勿論だ。それより金はあるんだろうな?」

「ついさっきヘリで運んできた。ホラ」


 ユージはトラックの運転席の中から梱包された偽札の塊の一つをファウロンの足元に投げた。


 それを受け取り確認するファウロン。間違いなく目的の偽札だ。


「じゃあアンタもそこを退け」


「俺が退く、なんて話あったか? 俺は警察を退かせると言ったんだ。俺が退くなんて言っていないぞ?」


「おい。お前がいくら凄腕でも、自動小銃持った5人相手に勝てると思っているのか? こっちはもうお前の頭をポイントしているんだぞ? 逆らえば一秒で撃ち殺せる」


「まぁ、そうだな」


 そういうとユージは暢気に懐から煙草を取り出し、咥えて火をつけた。


「今、俺はきっちり全員に狙われてしまった。俺が銃を抜いた瞬間お前たちが俺を蜂の巣にする。俺はお前たちに銃すら向けず暢気に煙草を吸っている」

「何なんだお前。何がしたいんだ」


「言っただろう。ここは俺の<街>じゃない。他人の縄張りで、射殺すれば面倒な書類書きでバカンスがパーだ。だから殺さない」

「ありがとう」


「で……叩きのめして、逮捕することにした」


「は?」


「全員逮捕する」


 そういうとユージは煙草を投げ捨てた。


 それが地面に落ちた瞬間だ。


 突然光るナニかが出現すると、身構えていた5人に激突した。

 一瞬だ。全て同時だ。


 5つの大きな鞭が、瞬きする間もなく現れ、そこにいた強盗犯全員の胸に命中し、全員を弾き飛ばした。


 何が起こったのか、誰もわからない。


 だがユージは分かっている。


 ユージも動いた。そして全員気絶しているのを確認すると、自動小銃と拳銃を奪い、拘束していった。



 終わった。



「終わった。助かった」


 その時だった。

 ユージの横の、何もない空間が波のように揺らいだかと思うと、一人の女が姿を現した。


 ロザミアだった。手には<ラファ>が握られている。



「私が地球の事件に関与するのは反則だと思うのだけど?」

「だから警官は退去させた。誰も見てない」


 そう、ロザミアが<ラファ>を使ったのだ。しかも<非認識化>ではなく正真正銘姿を消す<視覚遮断遮蔽装置>を使って、だ。<ラファ>も<オルパル>もJOLJUから受け取った。サクラと違いロザミアは<ラファ>の扱いに長けていて加減も知っている。地球にはない超科学力と、地球人ではない人間の力を借りたということだ。実はこういうことはしてはいけない、という事になっているし、むろんユージもその事は知っている。



 だが、その点ユージは気にもしていない。


 元々JOLJUの相棒だった男だし、こういうルール違反は慣れっこだ。



「適当に報告書を書くからいい。JOLJUも今回はいいって言ったしな」


 総責任者で監督者のJOLJUが許可したのだ。だから問題ない。だがJOLJUがそういう点、厳格ではないことをユージたちはよく知っている。JOLJUも深い考えがあったわけではなく、バカンスを楽しみたいからズルを許しただけだ。


「JOLJUは……根本的にルールを守る気がないんじゃない?」

「面倒なルールなんかあいつの頭にあるか。それに、今回お前は俺に貸しがあるんだ」


「貴方に? あったかしら?」


「お前の旅行費用、俺が負担しているんだ。俺の金で。ここで俺がこいつら殺して、始末書の山を書くことになったらバカンスどころじゃないぞ?」


「まぁ、いいわ。でも、これで貸し借りなし」


 そういうとロザミアは踵を返してモールの外に向かった。このモールの外にヘリコプターとJOLJUが待機して、終わればマウイ島に帰ることになっている。


 ユージはロザミアが去ったのを確認すると、携帯電話を取り、州警察を呼んだ。


 すぐに州警察は駆けつけ、ユージがどういう魔術を使って……事実魔術のようなものだが……全員無傷で気絶させたのか奇妙に思ったが、ユージは「後は知らん。報告書は滞在中に書いて当局に提出する」と言って、さっさと去ってしまったので、この謎が判明することはなかった。





***





 こうして事件は終わった。


 サクラたちは新しいホテルに移り、そのままバカンスに戻った。


 さすがにFBI捜査官であるユージと拓はすぐには解放されず、翌日も州警察で後始末をしていたが、拓は解放されて合流した。ユージは臨時責任者に任命されたから、後始末が山積だ。


 拓が帰ってきたので、いくつか事件の顛末を知ることが出来た。



「問題はレオン・リーにあったんだ」

「俳優の?」とサクラ。

「どうやらあの偽ドルは、中国当局が極秘に製造していたものらしい」

「じゃあ製造していたのは中国人の組織?」

「紙を調達したのは政府のルートだろうな。で、レオン・リーが、いわばマネー・ロンダリング役ってわけさ。映画俳優なら世界中にいくし、現金もそこいら中で使う。大金を持っていても怪しまれない。貯まったところでレオン・リーがこの別荘に来て手続きする。その噂をデニー=ファウロンの一味が知ったんだろうな。強奪しようと考えた。随分長くやっていたんだろう、地元の悪徳警官たちもデニー=ファウロンの企みを知って、横取りしようと考えた。それで皆してやってきたわけ」


 皆が動き出したので、知っている連中が全員慌てて奪いに来て、大乱戦になったようだ。



「なんで争奪戦が始まったんや?」と飛鳥。

「ユージがあの別荘を借りたかららしい」

「FBIだから?」

「ユージは医者として借りた。おかしいと思って調べたら、ユージは日本人医師仲間の柴田さんにあの別荘を紹介してもらったんだって。で、ハワイ警察に聞いたら、ハワイを拠点にしているヤスムラ=シバタっていう有名な日系ヤクザがいるそうな」



 それを聞いてサクラと飛鳥は顔を見合わせた。


 つまり、ハワイの悪党ともはユージがヤクザの手下で、ついにヤクザが偽ドルに目をつけたと思って躍起になって強奪する事を決めた、ということだ。



「柴田なんて日本でゴロゴロいるじゃん!」



「外人たちの勘違いにも困ったモンやな」


「ヤクザより性質の悪い化け物だと知らずに」


「お前らだけどな。実際に大暴れしたのは」


「今回の件で、CIAは本格的にレオン・リーをマークすることになりましたし、FBIとシークレットサービスも特別班を組織するみたいですから」


 セシルもCIAから多少情報は聞いてきた。もっともセシルの担当ではないから、それ以上は知らない。


 結局、大事件になってしまった。しかもCIAが絡むとなれば極秘となる。道理で「偽ドル1億ドル発見される!」というニュースが流れないはずだ。


「ということで、今回の件はめでたくCIA案件になりましたから、口外禁止ですよ?」

「ええー!? 今回はいいAS探偵団の活躍記事になると思ったのに!? またネタにできへんのか!?」

「できません」

「ガーン!!」


 飛鳥は嘆き、その場に突っ伏した。今回ばかりは面白いネタになると思ったに。だからノリノリで1億ドルの偽札とも記念撮影したのだ。


 この点サクラは冷淡だ。こういうオチは予想できた。



「ま、いいじゃん。面白い事件だったし。しかし……なんでどこにいっても事件が起きるやら」


「ウチのセリフじゃ! 何でお前とどこかに行くと毎回事件やねん」


「あたしじゃないぞ。あたしは世界中しょっちゅう出歩いているけど、そう頻繁に事件なんか起きないし」


「そんなことないJO? サクラはしょっちゅうしょうもない事件起こすし、なんか事件が起きればすぐに首突っ込むし」


「黙れ」


「ま、もう事件は起きないだろ。後はのんびりバカンス再開だ」


 そういうサクラはどてーっとベッドに寝転んだ。まだ旅行の予定は二日ある。ホテルはホノルル市街で観光地は近い。楽しめるだろう。



 その後FBIやシークレットサービス、CIA、ハワイ警察は偽ドル摘発やら組織の壊滅やら中国当局やらは大混乱で大わらわとなるのだが、それはサクラたちと関係がない。




 それはまた、別の物語である。


黒い天使短編「ハワイ大乱闘」13ENDでした。



ということでこの短編も終了です。

今回はほぼフルメンバー登場! メインはサクラと飛鳥とJOLJUですが、皆それぞれそれなりに出番がありました。

いつもとちょっと違うのはロザミアことロザミィの活躍!

「AL」より先行しての活躍です。いいのか……?

まぁ「AL」のほうでロザミアも登場したので「いいや」で出てきたロザミアです。今後ちょくちょく出てきます。「AL」ではラスボス?なのに仲間になっている点は「AL」のほうを楽しみにー


日系人や観光客が多いハワイだから起きたハワイの事件でした。


次回は……クロベ家探検編!


完全身内ネタです。

ユージ(やサクラの)自宅公開! NYにあって、みんなが勝手に寝泊りする、いわばみんなの拠点化しているユージの自宅! その全貌が明らかに!


これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。

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