黒い天使短編「ハワイ大乱闘」12
黒い天使短編「ハワイ大乱闘」12
警官がやってきた!
が
こいつらも強盗だった!
飛鳥が捕まり、サクラも窮地に!
だが、サクラはこんな連中に屈するはずがない!
***
集まった警官は5人だった。
「おー! 助かった助かった! こっちやでー、お廻りさん! まーはろー♪」
警察官を見て飛鳥が暢気に手を振る。
サクラも確認した。確かにハワイ警察の制服だ。
「あいつ、日本語で言ったって通じないだろうに」
これで一段落だ。
飛鳥が警官のほうにいったが、あいにく飛鳥は英語が喋れないから、サクラが通訳するしかない。
が……駆け寄ろうとして、立ち止まった。
警官たちが手にしている銃がスライド・シルバーの1911カスタムだったからだ。だけではなく、ガンベルトのホルスターには州警察制式の拳銃が入っていた。二丁持っていたのだ。
その瞬間、サクラも警官たちの正体を悟った。
制服警官は、1911系のカスタムの所持は許可されていない。しかし米国の市場には溢れるほど転がっている。
この連中も強盗だ!
偽警官か本物の警官かは知らないが、1億ドルもあるのならば道を踏み外すには十分だ。
「くそー! 今回は次から次に!」
サクラは周りを見渡す。だがどの銃も弾は切れている。
「飛鳥!! 逃げろ!!」
そう叫んだときは、もう遅かった。
飛鳥は一人の屈強な警官に捕まり、銃を頭に突きつけられていた。
サクラはすぐに四次元ポーチから愛用のFBIスペシャルを抜いた。
「何捕まってンだ! お前!!」と日本語で怒鳴る。
「しゃーないやん! お巡りさん来たら安心するわい!」と飛鳥。
「ガキの遊びは終わりだ。ほら、お嬢ちゃん、そんな危険なモノは捨てなさい。そしたら危害は加えないから。ね?」
警官たちはサクラが銃を抜いたので、慌てて銃を抜き、サクラに銃口を向けた。しかしさすがに相手が10歳の女の子だと分かり、本気では構えない。
「すごいな、お嬢ちゃんたち。二人で強盗を撃退したんかい? 『ホームアローン』も真っ青だな。さぁ、後は警察のオジサンたちに任せなさい。ほら、危険なものは置きなさい」
「よく分からへんケド、ウチ、今人質やど? ここは大人しく銃を捨てろ、銃を!」
警官たちは英語。サクラと飛鳥は日本語だ。
だが、こういう時の台詞は定番だ。言葉は分からなくても大体分かる。
「飛鳥よ。こいつら、本物の警官ぽいけど悪党だぞ?」
「いや、だから捨てろや! お前の腕でなんとかなるか!? その銃、弾入ってたか!? 3発やなかったか!? こいつら5人やぞ!?」
「だからって銃は捨てられるか! いいか? 警察が悪事働くときは容赦なんかしない! こいつら絶対あたしたちを殺す! ていうかお前、バリアーどうした!?」
「ポケットじゃ!」
JOLJU特製携帯バリアーは万能だが、スイッチを押さないと起動しない。スイッチを押す前に捕まってはどうにもならない。
しかし連中も、サクラたちが強盗を10人倒した……かも……ということで警戒している。もしかしたらここの借主がユージだということくらいは調べているかもしれない。サクラは怖くないが、FBIのユージを敵には回したくないだろう。
「いい加減喋るのは止めろ、ガキ共!! 日本語で喋るな!!」
「……じゃあ、英語で言う! あたしは銃を捨てない! こう見えても射撃は得意なんだ! それにこっちの仲間が室内でアンタらを狙っているんだからな!」
「らんらんるーだJO!!」
JOLJUが声だけ加勢する。
しかし、あまりに間抜けな声に警官たちは失笑し、サクラと飛鳥は脱力する。これでは家の中にいるのが子供だと教えてしまったようなものだ。相手は子供ばかり……これで連中は容赦なく襲ってくる。
飛鳥を人質にした警官は、笑いながら向かってきた。
サクラはすかさず一発、警官の足元に発砲した。
「近づいたら、容赦なく頭をぶっ飛ばすぞ? アンタら、女の子を撃つ度胸あるか!? 第一級殺人で終身刑よ!?」
「よく分からんが何凄んどんじゃ!! お前!! ウチが人質やど!? 撃たれたらどうする!!」
「クロベ・ファミリー教訓!! 『妥協をするな! 人質になる奴が悪い! エダ除く』」
「なんでエダさんは別やねん!」
「エダを人質にするような奴はプロ中のプロ! プロは例外! 第一エダはチンピラ程度の奴には捕まらないもん!」
「ウチは民間人や! そしてクロベ・ファミリーとちゃう!!」
「テロには屈しない!」
「強盗や! テロやない!」
「同じだ! あたしが悪人に屈するタイプか!」
「人殺し!!」
「煩いっ!!」
ガーガーと不毛な罵り合いを続けるサクラと飛鳥。
むろん日本語だから警官たちは何をいいあっているのかさっぱり分からない。が、とりあえず呆れている。
「ああ、煩い!! お前らいい加減にしろ!! 日本語で喋るな! 本当にぶっ殺すぞ!」
「…………」
「…………」
二人は黙った。
「最後の警告だ。ガキ!! 銃を捨てて手を上げろ! 大人しくすれば危害は加えない! だが銃を捨てないなら、痛い目に遭うぞ?」
「最後の警告だ、銃捨てろって」と、わざわざ通訳するサクラ。
「まーかーおーだJO!」
すると、別荘の中から手を上げたJOLJUが現れた。
全員、突然現れたチンチクン生命体に、キョトンとなる。
「分かった。銃を捨てるから、その馬鹿離せ。ギブアップ!」
そういうとサクラは銃を投げ捨て、手を上げた。
そして、思い切りの仏頂面でその場に座り込んだ。
しかし、サクラは言う。
「あいにく、あたしたちのほうが早かったわね。家の中にある1億ドルに、爆弾をセットした! あたしたちを殺したら、それで終わり。燃えてなくなるからね」
「…………」
「ガソリン撒いて時限発火装置をセッティングした。解除できるのはあたしだけ。さぁ、どうする?」
そういうとサクラはニヤリと、不敵に笑った。
只で屈するサクラたちではない。
当然、偽警官たちは困惑した。
黒い天使短編「ハワイ大乱闘」12でした。
転んでも只では起きないサクラ!
頭脳戦ならサクラに敵う者なし!
ちなみにサクラがいう「クロベ家教訓エダ除く」は、基本ユージだけが言っていることでサクラは関係ないんですが、言ってみました。ユージなら5cm隙間があれば容赦なく撃ちますし、銃を捨てたほうが酷い事になる事が多いので、人質なんかとっても無視する教訓です。ただしエダが人質の場合は万が一エダがケガしたら困るのでやりませんが。
さて、この状況でサクラは逆転できるのか!?
相手はサクラとJOLJU!
ということで次回です。
これからも「黒い手氏短編・日常編」をよろしくお願いします。




