黒い天使短編「ハワイ大乱闘」11
黒い天使短編「ハワイ大乱闘」11
サクラ、<ラファ>発動!
ついに発動した超兵器! あっという間に強盗を倒す!
そう、これこそロザミアとサクラだけがもつことを許された超兵器の威力だった。
だが……?
***
「隠れろ!」
サクラが叫ぶ。
飛鳥はソファーの後ろに飛び込み、JOLJUはその場に伏せた。
特製ソースが目や口に入り暴れる三人の暴漢に向け、サクラは手にした特殊武器<ラファ>を三回振った。次の瞬間、高速の光の鞭が三人に直撃して外まで吹っ飛んだ。そして暴漢たちは体を痙攣させたかと思うと、バタリと意識を失った。
「殺したんか?」
「ううん。<非殺傷衝撃モード>にした。超強力な鞭&スタンガンのセットよ」
サクラたちは吹っ飛んでいった三人を見た。15mは吹っ飛ばされて、ピクリとも動かない。
「死んだんやない?」
「死んでない! ……多分」
「サクラ、強く振りすぎだJO」
「<ラファ>、加減が難しいのだ。思いっきりやる分には問題ないんだけどねー」
「その<ラファ>って……結局なんや?」
飛鳥はサクラの手元にある<ラファ>を見つめる。
こうして見ていると、グリップに50cmくらいの謎の金属っぽい光沢をもつロープがついているようにしか見えない。
サクラは物陰で三回振り回しただけで強盗たちを弾き飛ばしたが、家具や床には何の形跡もない。
「そういえば飛鳥は知らなかったのか。あー……ま、普段は持ち歩かないしね」
「おう、初めてみるど!」
「だって普段はJOLJUが封印指定にして隠してるもん」
「地球にはないオーパーツ武器だJO。サクラに自由に持たすと絶対悪戯に使うJO」
「なんでロザミアさんは持ってるんや?」
「そもそもロザミィの武器だもん」
つまりJOLJUがいた惑星パラの最新の白兵用兵器……それが<ラファ>なのだ。
基本の分類上でいえば鞭であり、剣でもある。
ただしその射程は300mまであり、ロープのように使う事もできれば、硬質化させれば剣にもなる。DNA登録兵器で登録者しか使用できない超テクノロジーの武器だ。
「日本語でいうと……そうね、『視覚認識型イメージ攻撃武器』かな? イメージが攻撃にも防御にもなる。そして破壊力もイメージ通り! 壊そうと思えば鉄骨コンクリートのビルも破壊できる! だから気絶程度に抑える加減が難しいのだ」
「さっぱり分からん」
その時だ。残り2人の悪党の人影が見えた。
「じゃあ、面白いモノを見せてやる! 多分連中はすぐに銃撃してくるゾ! それを全て防いであげる!」
「ふむ?」
「敵の攻撃は爆破して空けた穴! そこ全体を目で見て、防御を頭の中でイメージ! で、強度は弾丸を弾くくらいでイメージ! そして振る!」
サクラは<ラファ>を一度振った。
その瞬間、鞭が一瞬にして数10mなる。
連中も、その瞬間発砲を始めた。
と、鞭は一瞬にして幅が60cmほどの太さになり、高速で回転を始めると、飛び込んでくる弾丸を全て弾き返す。回転は凄まじく早く、まるで巨大な蛇が高速でのた打ち回っているようだ。しかしサクラは最初に一振りしただけで、後は自動で動いている。
「おお! なんや、すごいな! どうやって操作しとるんや?」
「ん? イメージしただけ。<ラファ>は頭の中でイメージした通り動くの。今、あたしは蛇みたいにして回転しながら防御! って、イメージしたから、その通り動いてるわけ。あたしが考えるのを辞めたら元に戻る」
銃撃が止んだ。
ということでサクラは思考を止めた。
すると一瞬にして元のサイズの50cmのロープ状に戻った。
「それ……どこが鞭やねん? ただの便利道具やん」
「だから地球のモノじゃないんだって」
返事をしながらサクラはもう一度振るう。
するとまた鞭状の塊が二つ飛び、庭で呆然とする暴漢二人を薙ぎ倒し、また元のサイズに戻った。
「ま、実際的を見て、敵を倒すところをイメージしないと駄目な武器なんだけどね。で、加減が難しいのよ。ロザミィみたいに中々巧くはいかない。なので、あたしは大雑把に<非殺傷モード>ってだけで設定してる」
「ウチも使いたい! ウチにもくれ、JOLJU!」
「残念だJO。<ラファ>はもう全宇宙で三つしかなくて、全部登録者がいるから空きがないJO。第一地球人には持たせちゃいけない約束だJO」
「なんでサクラは持っとるねん!」
「ゲームで負けて巻き上げられたJO」
「ウチともゲームで勝負や!」
「だからもう空きはないんだJO。それにサクラだから順応できたんで、普通の地球人は多分使えんJO。コレ、かなり高度な空間認識能力と計算力がいるから」
「ということで、地球で使えるのはあたしとロザミィだけ」
「そして基本サクラは使用禁止だJO」
そういうとJOLJUはぱっとサクラの手から<ラファ>を取り上げてしまった。
もう悪党は全員倒したからいらない、という事だ。こればかりはそういう約束だからサクラも文句は言わない。
まぁ、悪党も倒したからもういらないし。
「じゃあオイラ、ユージに通報しとくJO」
「ふむ。じゃあ、あたしらは倒した悪党をふん縛っておくか。もしかしたら強盗撃退でお小遣いが貰えるかも知れない」
「そやな。死体はお前が縛れや?」
「じゃあお前は生きている悪党のほうな。後ろ手にして縛れよ」
そういうとサクラはダクトテープを飛鳥に投げて渡した。米国映画ご用達、何にでも使える頑丈テープだ。
「銃には触るなよ? 殺し合いの証拠だから、指紋がついてると後が面倒よ」
「わかっとるー」
サクラと飛鳥は別れて作業に入った。こういう事にはなれた二人だ。
そしてJOLJUはユージに電話をかける。
「よーれいほーだJO~。そっちはどうだJO」
『それより1億ドルとサクラたちと悪党は?』
「みんな無事だJO。オイラたちも誰も殺してないからモーマンタイだJO」
『拓がそっちに向かった。着いたか?』
「まだだけど……ん? なんか警察は来たみたいだJO?」
JOLJUは今リビングだ。<ラファ>の設定変更をしながら電話をかけている。
丁度開いた門のところに、制服警官の姿が見えた。
それを聞いたユージは首を傾げた。
『本当にハワイ警察か?』
「だと思うJO?」
『……おかしいな。サイレンは鳴ってないな。光ってもない?』
「んー……うん。パトカーは見えないJO?」
『おかしい。実はハワイ警察にはそこの騒動は伝えてない』
「JO??」
『携帯電話の妨害電波が出ているんだろ? サクラとお前の携帯以外は通じん。それに用心を考えて、その周囲の別荘は今誰も使っていないし、自然が多くて人の少ない別荘を選んだんだ。だから通報はしていないはずだ。銃撃戦を聞いて駆けつけたのなら本部に通報するはずだ。だが、今確認したがハワイ警察に通報の記録はない』
「ということは?」
『気をつけろ。そいつら、怪しいぞ』
「おーまいがーだJO」
JOLJUは視線を<ラファ>に落とした。登録変更はちょっと早かったかもしれない。
そして、悪い予感は当たってしまった。
黒い天使短編「ハワイ大乱闘」11でした。
ということですごく便利な道具の<ラファ>でした。
基本はサクラも持っていないんですが、実はハードな長編の時、たまに使ったりします。なので今後出てくる可能性はあるので、今回登場させました。
しかし、やってきた警官もまさか!?
ということでさらに急展開です!
さすが1億ドルは強い!
ということで続きます!
これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。




