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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使」シリーズ
14/206

「黒い天使短編・飛鳥の事件簿インド編 10」

「黒い天使短編・飛鳥の事件簿インド編 10」!


なんと、地震の影響で子象が被害に!!


予想外の展開!


どうするサクラ&飛鳥たち!!



 そこは大きな崖崩れの跡にできた穴の前に来た。


「…………」


 飛鳥とセシルは複雑な顔で顔を見合わせる。


「嗚呼……可哀相なゾウさんなのデス。神よ、憐れな子象サンの魂をお救いください」

 とマリーは十字を切り祈りを捧げる。


 穴の中には、体長1m50cmくらいだろうか……子供のゾウが半分ガレキに埋もれていた。おそらく地震によって落石を受け穴に落ちてしまったのだろう。


 ゾウは家族愛の強い動物である。墓場まで持つ野生動物はゾウだけだ。


「そっかそっか。辛かったなぁ<ドベルクの悪魔>! 哀しいなぁ~……よしよし、人間サマがちゃんと弔ってやるからなー」

 そういうと飛鳥は背負っていたシャベルで土をかけようととしたとき、突然<ドベルクの悪魔>は吠え、長い鼻でドベシッ!と飛鳥を叩いた。


「何するんやー!! このボケゾウめっ!」


「そりゃあちょっと気が早いな飛鳥よ」

とサクラはじっと子象を見ながら呟く。そして全員の顔を見て言った。

「まだ生きてるぞ、この子象」


「え?」


 飛鳥、セシル、マリーの三人がもう一度穴の下のゾウをよく見ると……鼻が弱々しく揺れ、耳がパタパタと動いた。衰弱しているがどうやらまだ生きているようだ。そう、<ドベルクの悪魔>が本当に伝えたかった用件は喉の渇きではなく、この子象のことだ。


成程、足場は半分崩れているし瓦礫もあって巨大な大人の象ではあの子供の象のところまでたどり着くことはできない。しかし人間ならば入れそうだ。


「成程! そういう事なら助け出すで! 皆の衆!!」


 さっき叩かれた事など忘れ、皆に号令をかける飛鳥。「仕方がないか」とサクラたちも顔を見合わせた後、皆で仲良く穴に下りて行った。


 瓦礫をどけるのはパワー手袋を持っている飛鳥とサクラの仕事。セシルとマリーは弱った子象に水を与えたり草を取って来て与えたりする介護をしていた。少女四人の力など本来微々たるものなのだが、サクラと飛鳥はパワー手袋があるし、なんだかんだいって連携もよく要領もいいので、数分で子象を埋めていた瓦礫は取り去った。そして水を飲んだ事で子象も少し元気を取り戻し、しきりに鳴いている。それに呼応して、<ドベルクの悪魔>も励ましているのかしきりに鳴いている。


 こうして子象はゆっくりと立ち上がった。後はパワー手袋を持つサクラと飛鳥が押すなり引っ張り上げるなりすれば完了だ。


 が……立ち上がった子象の様子がどこかおかしい。左後ろ足が地面につかず痛そうにかばっている。


「ぬ? どうしたんやガキ象。足が痺れたとかいうオチか?」


「阿呆。ちょっと待ってよ、今触ってみるから」

とサクラが子象の左後ろ足の中に手を突っ込んだ。直接触っているのではなく、サクラの超能力<透過術>で触診だ。こうすることで対象に刺激を与えることなく内部の状況を知ることができる。


 見たところ外傷はない。触った限り筋肉も異常はない。



 だが、足の骨が一部折れていた。



「骨折してるな」

「それじゃあ立てないんじゃないですか?」

「粉砕……まではしてない。ちょっと割れたカンジかな? 重い石が当たって折れたんだな」そういうと、サクラは溜息をつく。「残念だけど、どうにもならないわね」


「なんでや? 添え木か何かしたらええんとちゃうん?」

と飛鳥。それも一理はあるのだが、大自然であり野性の象だ。その後も適切な処置ができない以上、足の折れた野生の象が生きていけるはずがない。折れた足では山林を動き回れないし象自身の体重だって支えきれない。結局弱って死んでしまう。第一足が折れた状態ではこの穴から脱出することができない。


 その説明を聞くと、さすがのノーテンキ暴走少女・飛鳥も現実の冷たさを理解した。飛鳥は超ポジティブ楽天家だが、ある程度の聡明さと理解力はある。セシルのほうはもっとドライだ。


「サクラ。このままでは可哀相ですし、安楽死させるなら手を貸す、と<ドベルクの悪魔>に伝えますか?」と言うセシル。セシルの背には大型ショットガンがある。サクラはそれを一瞥したきり反論しないのは、セシルと同意見だからだ。こういう話になるとサクラもセシルもクールでドライだ。


 飛鳥も「うーん……村人呼んでなんとかなるか……」と頭を抱え考えている。これが平時なら村人もなんとか動いたかもしれないが、今は災害被災の後で子象までどうにかできる余裕はない。象は保護動物だからインド政府の然るべき組織に連絡する手もあるが、問題はそれがいつ来るかだ。そもそもこの村は未だに政府の救援がやってこないような山奥の辺境の村なのである。今でも十分弱っているのだ。保つとは思えない。結局死なすのなら、今楽にしても変わらない。


「さすがのユージも獣医じゃないからな~。野生動物にとって骨折は命取り。治療は無理ね」


「待ってください!! サクラ、足の骨折さえなんとかなれば、この子供ゾウさんは生きていけマスカ?」

「まぁ足の怪我がなきゃこの穴からは脱出できるだろうね。衰弱はあるけど野生動物だし、JOLJUの馬鹿が川の水戻せば水周りは治るし、<ドベルクの悪魔>の子供なら虎とか出てきても追っ払うだろうし」


「治すデス!!」


 マリーは大声で宣言する。


「安楽死とか見捨てるとか、そんな事は神様もボクも許さないのデス!! 治すデスっ!! ボクが治してみせるデスっ!!」


「……まぢで……? いや~……マリー、気持ちは分かるけど、人の何倍も大きいゾウよ? いくらマリーの回復能力があるっていったって――」


「治すデス!!!」


 サクラ、飛鳥、セシルの三人は顔を見合わせた。


 もう、誰が何を言ってもマリーは聞きそうになかった。


 という事で、マリーが治す事になった。








「黒い天使短編・飛鳥の事件簿インド編 10」でした。


ということで、今度は子象治療大作戦になるわけです!

これまであまりぱっとしなかったマリーに脚光が集まる!!


果たして彼女はゾウを治癒できるのか!?


果たして飛鳥は役に立つことがあるのか!?


ということで次回をお楽しみに、デス。


これからも「黒い天使・短編集『飛鳥の事件簿』」を宜しくお願いします。

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