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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
122/206

黒い天使短編「クリスマス狂騒曲」5

黒い天使短編「クリスマス狂騒曲」5



色々客が訪れるクリスマス・パーティー!

エダ、すごいモテモテ!


そして始まる仲間内のホームパーティー!

皆のプレゼント公開前半戦!


***



 そして夕方になった。



 客は本当に引っ切り無しだった。エダの友人も多かったが、時々スーツ姿のダンディーな大人の男たちも姿を見せた。彼らは長居をせず、挨拶し、エダと世間話しながら酒を一杯飲み、料理を摘んで感激し、大抵手土産に酒や菓子を置いて帰っていく。


「あれ、マフィアの連中じゃん」


 サクラが飛鳥に教えた。何人かはサクラも知った顔があった。チンピラではなく幹部以上の顔役たちだ。



「ユージさんの客やないん?」

「エダに会いに来てンだな、コレが」


 <クロベ・ファミリーの王女>、<裏社会のアイドル>は伊達ではない。この連中もユージは苦手だが、エダには優しく彼女の笑顔と料理と会話を楽しみにやってくる。

 彼らをもてなす事でユージの身辺が静かになるからエダも喜んで応対していた。

 立場柄ユージと縁は持ちたいが、本人は裏社会の人間にはドライなので代わりにエダと仲良くなる、という事だ。


 こうして、いつの間にか酒や料理や菓子が勝手に増えてあふれ出しそうなになった午後4時過ぎたあたりから、警察の制服を着た人間が顔を出し始めた。この警官たちも皆ユージの知り合いでエダのファンだ。


 皆ユージがいなくても関係なくやってきて、伝言だけ残して帰っていく。いや、むしろユージがいないのを知っていてやってきている。



 つまり目当ては全員、エダなのだ。



「ほとんど……エダさんの一人キャバクラみたいやな。もしくはアイドル握手会というか食事会」

「ひどい表現だけど強ち間違ってない」


 リアル・アイドルも顔負けの忙しさだ。

 来客全員と楽しそうに会話し笑顔で応対するエダの体力と記憶力と博愛主義にはサクラもただ脱帽である。

 サクラも、あの愛想のよさ……いや、愛情の大きさだけは心の底からすごいと思う。エダは誰一人偽りの愛想を浮かべたりしない。だから客たちもそんなエダとの会話と笑顔で満たされていく。




 そして午後5時になった時、ようやくサクラと飛鳥の見知った人間が顔を出した。



「来たのデス! ヨロシクなのデス♪」

「すみません。お邪魔します」


 現れたのはマリーとセシルだった。この二人は転送機でついさっきNYに到着したばかりだ。


「おう! よう来たな!」

「やっほー! ほぼ時間通りね」


 サクラと飛鳥が二人を出迎える。

 マリーとセシルは「ちょっと疲れたから客間で休んでからパーティー参加します」と、苦笑いしながらエダに来訪の挨拶をした後、二階の客間のほうに行った。


 仕方がない。二人とも一仕事し終えたところだ。時差の関係で時間を遡って25日のクリスマス延長戦なのだ。ホームパーティーの開始は7時だからそれまで仮眠を取る。



 6時にユージと拓が帰ってきた。

 そして7時までの間にコールやライアンといったFBIの上司が顔を出し、最後に7時前にロザミアがやってきた。


 これからは職場関係や友人関係の来訪はない。文字通りクロベ・ファミリーのホームパーティーの始まりである。



 パーティーが賑やかに始まった。



 エダがパーティーの始まりを宣言し、セシルとマリーが賛美歌を歌う。


 それからは料理を食べ酒を飲み会話に花を咲かせる。

 この日は特別ということでエダやセシル、マリーは少しだけワインやシャンペンを飲んだ。クリスマスだし欧米ではそのくらいなら未成年でも許される。勿論ユージや拓、ロザミアたちは普通に強い酒を飲んでいる。お酒を飲んでいないのはサクラと飛鳥だけだ。サクラは子供すぎるし日本人の飛鳥はクリスマスにワインを飲む習慣はない。それでも料理もケーキも美味しく十分楽しい。



 こうして一時間ほど食事と歌で盛り上がったところで、クリスマスのメインイベント?であるプレゼント交換会となった。



 誰が最初か……くじ引きになった。



 そして飛鳥が最初。セシル、マリー、ロザミア、エダ、拓。そしてJOLJU、ユージ、サクラとなった。

 こういうイベントだと何故かくじ運の悪いサクラ。



 さて、プレゼント交換が始まった。




 皆それぞれリビングに集まり、プレゼントを持って用意する。




「んじゃあ、ウチのはコレや~」


 そういうと、飛鳥は人数分のプレゼントをテーブルの上に並べた。


「どれが誰用なのデスカ?」とマリー。

「好きなの選べ! 当たりが出るかはずれが出るかは運次第や!」


 飛鳥は誰のとか考えず、良さそうなものを見繕って人数分用意していたのだ。


「オイラのバームクーヘンは?」

「お前のコレや。あ、サクラのはコレ」


 と、二人だけは個別だった。


 飛鳥が用意したのはマグカップや置物など男女関係なく使えるもので、すごくいい物はなかったが、はずれもなかった。意外に飛鳥のセンスは悪くなかった。



「ナニコレ」



 サクラだけがプレゼントを開けて、白々となる。


 そこに入っていたのは、可愛いクマの置時計だった。可愛く吠えるクマのおなか部分に目覚まし式時計が入っていた。


「目覚し時計や! お前時々寝坊するやん」

「寝坊してンじゃなくて時差! 日本時間でいつも活動してるんじゃないもん。それに時計ならセシルのやつのほうが大人っぽくていいじゃん」


 セシルが引き当てたプレゼントも卓上置時計だが、こちらは和風モダンデザインでオシャレだ。なんでサクラ時計はこんなに無駄にファンシーなのだ!?


「お前、好きやん。クマ」

「好き……だけど。好きなんだけど……クマかい」


 サクラは動物ではクマが好きだ。そういわれると文句は言えない。ちょっとクマの顔がファンシーだが、時計として使えるのならばこれはこれでいいか。


 しかしこれでは終わらなかった。



「シュタイフ社製ブラウンベアのぬいぐるみです! なんと65cmサイズですよ」


 セシルのプレゼントはドイツの有名ブランドの大きなクマのぬいぐるみ。


「ボクからはクマさんのパペットです! 近所に住むおばあさんが作ってくれた特製なのデス! 可愛いのデス!」


 マリーのプレゼントは手製ぬいぐるみパペットのクマだ。


「私のものはちょっと特製よ。ブルーダイヤで作ったクマ。これは地球では手に入らないと思うわ」


 なんとロザミアもクマの置物。なんとブルーダイヤモンドを削って作ったものだ。

 これにはその場にいたJOLJU以外の全員が驚いた。置物は手のひら大の大きさがある。こんな大きなダイヤモンドは誰も見た事がないし、それを可愛いクマの置物に加工するなど思いも寄らない。一体何億になるのやら。



「あら? ダイヤモンドっていっても人造よ。ただの炭素の結晶。価値はそんなにないわ」

「ロザミアさんが作ったんですか?」

「ええ。他の皆にもダイヤで小物を作ったわ」

「人造でも……ダイヤモンドだよ? すごい価値だよ?」と、エダも吃驚だ。


 しかしそれは地球での話。

 異星人のパラ人であるロザミアにとってダイヤモンドの価値は水晶とそんなに変わらない。



「あー、パラではダイヤモンドは価値ってそんなに高くないJO。文化の違いだJO」

「そうなのJOLJU?」

「だJO。惑星パラには天然ダイヤモンドは地球より採れないんだけどレーザー兵器とかビーム兵器に人造ダイヤモンドを使う事があって、工業ダイヤモンドの加工技術も遥かに上だJO。だから宝石としてはそんなに価値がないんだJO」



 JOLJU曰く……惑星パラではエメラルドやルビー、琥珀のほうが価値は高かったらしい。まぁ惑星も文明も消滅した今関係ないが。



「とはいえ……これだけのダイヤ……地球だとすごい価値だよ?」

「いや……これだけ加工していたら宝石としての価値は高くない……かもしれないが」


 サクラのクマだけでなく、エダにはイルカ、飛鳥にはトラ、ユージにはワシ、拓には犬、セシルにはライオン、マリーにはゾウだ。皆が喜ぶプレゼントというより彼女が趣味で作ったものを配ったようだ。

 ちなみにJOLJUだけはバケツサイズのプリン……こいつだけは食べ物だ。

 皆JOLJUには食い物さえあればいいことをよーく知っている。



 しかしすごいとはいえ……またクマかよ!



 サクラ、クマ三連続だ。



 さすがにエダのプレゼントは違った。



 エダのプレゼントはサクラによく似合う赤い女の子らしいウールのコートで、一流ブランドの高級品だ。



「サクラもオシャレしたいでしょ? これでサクラもドレスコードのある美味しいレストランにも一緒に行けるよ♪」

「おお、馬子にも衣装やな!」

「何いってんの。サクラちゃんは元々絶世超美少女だい。着飾れば超絶可愛いのだ。うん、ありがとエダ! あとはユージが高級レストランに連れて行ってくれたら無駄にならないね」


 と、サクラは無邪気に喜ぶ。エダにだけは素直に女の子らしさをみせる奴なのだ。


 そして拓の番になった。


 拓は、飛鳥、セシル、マリー、ロザミアには普通のちょっといい雑貨だったが、クロベ家面々にはクロベ家らしいものを用意していた。ちなみにJOLJUにはベルギーチョコ一缶。本当に食い物ばかりだ。



 エダにはキンバーK6Sスナブノーズ・357リボルバー。ユージにはステンレスのコルト・ゴールドカップナショナルマッチ。そしてサクラにはナイツ製グロックカービン用コンバーションキットだ。



「ありがとう、拓さん! キンバーのリボルバーだなんて高くなかった?」

「クロベ家には小さいスナブ・ノーズリボルバーってないだろ? エダちゃんはコンシールド・キャリーに向いた銃がいいかと思ったんだ」


 ユージは大口径主義だし持っているのがバレても困らないFBI捜査官だ。なので、隠す前提のコンパクト・サイズの銃は少ない。拳銃はユージにとっては戦闘用ツールだがエダにとっては護身用品だ。いつも銃を持っているわけではないし、夏場なんかはホルスターだと目立つし、身にはつけられないドレスを着るパーティーなんかもある。そしてNYは全米でも特に拳銃所持に厳しい街だ。だから隠し持つ護身用の銃は小さいほうがいい。


 ということで拓が用意したのは小型リボルバーだ。

 尚、エダは未成年なので登録名義はユージの名義である。


 ユージのナショナルマッチはほとんど発砲歴のない美品で、こんな上等品は滅多に市場に出ない。


 そしてサクラのグロックカービン。



「面白い! すごい! コレ、カービン銃になるんだ」


 ようやくプレゼントを嬉々として弄くるサクラ。


 折りたためばバッグにも入るサイズだが、組み立てればSMGサイズになる。使用するグロックはG17が標準仕様だが、G18を組み込めばコンパクトSMGになる。コンパクトな光学サイトとサイレンサーもついている。



「ああ、こういうのCIAも使っていますよ。100mくらいなら狙撃にも使えます」


 操作方法はセシルがよく知っていた。分解すればスーツの下にも隠せる代物だ。


 セシルから操作方法を聞き、楽しそうに弄るサクラ。


「グロックはないけどな。ユージから貰え」


 グロックG17ならクロベ家に何丁も転がっている。グロックはスリムで使いやすく、部品も本体も安く弾数も入る。使い捨てにするにはぴったりだ。


 サクラは早速ソファーの裏に隠してある未登録のグロックG17を勝手に引っ張り出し、組み込んでいる。



「よし! 明日試射しにいこう! やったー!!」

「悪さに使うなよ」

「というか……拓よ。お前随分金使ったンじゃないのか? 全部1000ドル以上するじゃないか」


 キンバーは高価で人気があり品薄。ゴールドカップナショナルマッチは中期型のビンテージ。そしてグロックのカービンキット。どれも安いものではない。


 だがちゃんとカラクリがあった。


「NYPDの廃棄品の溶鉱炉行きを横流ししてもらったんだ。袖の下の飯代くらいだよ」

「警察押収品じゃん。犯罪者のやつじゃん」


 そういうことだ。

 拓は買ったわけではない。


 警察が押収した銃器は原則溶鉱炉で熔かされる。が、裏に手を回せば手に入れることも出来る。

 これは警察関係者だけの秘密の裏技だ。同じ方法でたまにユージもレアな銃が出たら横流ししてもらっている。勿論犯罪記録上のデーターは抹消しているし、名義は捜査官のユージ名義だから警察も目を瞑ってくれている。NYPDやATFにコネがあるユージや拓にしか出来ない方法だ。



 それにこれなら安く済む。廃棄品なのだから。



 そしてJOLJUの番となった。

 

 ここで大事件が起きた。



黒い天使短編「クリスマス狂騒曲」5



エダ、モテモテでしたw

もうエダは店を始めるか芸能界にいくべきですね。


そして全員集合のホームパーティーです。

今回は前半戦!

それぞれ、それらしいプレゼントを持ってきています。


ちなみにサクラは本編でいっていたとおり、クマ大好き。

とはいえ「可愛い」と楽しむというより、「迫力だー」と大自然のクマを見て楽しむタイプです。夏場は暇があればJOLJUとアラスカで馴染み?のグリズリーに会いにいくくらいです。


まぁ……他に目立つ好みがないサクラですからね。

意外に難しい奴です。


そして次回はこの話のクライマックス?、暴走JOLJUのプレゼント編です。

JOLJUらしい予想外にして衝撃な品の数々!!


ということでまだまだ続きます。


これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。

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