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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
120/206

黒い天使短編「クリスマス狂騒曲」3

黒い天使短編「クリスマス狂騒曲」3



いつもの面子、ということでセシルとマリーを誘うサクラ。

しかし二人は多忙だ。

だが、そんなこと、サクラは知ったことではない!

サクラのワガママ大爆発!



***



 飛鳥は確定した。


 ということで残るのはセシルとマリーだ。

 二人とも今は欧州時間帯だから8時間ほど前になる。今夜の9時すぎだから欧州や南アフリカは昼過ぎだ。


 さくさくっとメールを送った。

 返事がすぐに返ってきたのはマリーだ。



『うぐぅ~! ボクは多分行けないのデス。一年で一番忙しい日なのデス!』



「あ……そっか。マリーは忙しいに決まってた」

「そうなん? マリーっていつもノリノリでホームパーティー来るのに。学校も休みやろ?」

「何の日か忘れてた。クリスマスって何の日だ? キリスト聖誕祭じゃん。シスターで教会の主人のマリーは多忙なのは当たり前だった」


 元々キリスト教のイベントである。教会ではミサの他、施しの炊き出しや地域の交流会などイベントが夜まで続く。

 マリーがそれをほったらかしにして自分の娯楽のためパーティーに行くなんてできるはずがない。



 それでもマリーは



『ちょっと考えてみるのデス。でもプレゼントはちゃんとボクも用意します!』


 とメールを返してきた。マリーはパーティーが好きだ。教会でもやるし、仕事を忘れて美味しい料理がたっぷり食べられるクロベ家パーティーの常連だ。まだあそぴたい年頃、仕事はあるが気持ちとしては行きたいのだろう。


 そして一時間後……セシルからメールが返ってきた。



『馬鹿デスカ? 馬鹿なんですか!?』



「何でセシルはぶち切れてるんや?」

「ユージに会えるのに。CIAもクリスマス休暇はあるんじゃなかったかっけ?」


 なんか納得できないので電話で呼び出すことにした。が、セシルは出ない。

 腹が立ったので、サクラは番号を操作して、もう一度かけなおす。


「何したんや? お前」

「あたしからじゃなくて、CIAの緊急回線からの非常用呼び出し番号だ。これなら出る」


 そりゃあセシルの本職はCIAの秘密工作員なのだから、CIAからの命令は無視できない。


 しかしこのタイミングだ。誰がCIAの緊急呼び出しだと思うだろう。


 案の定、セシルは電話には出たが、初っ端から怒りまくっていた。



『何でサクラはCIAの非常用回線を知っているんですか!? グレード5以上の特別回線ですよ!? この会話も全部国防総省で掌握されているんですよ!? 私用で使う馬鹿がいますか!!』


「秘密! あ、大丈夫。JOLJUが今誤魔化す工作してるから」


 悪びれもせず平然としているサクラ。サクラとJOLJUにかかってはスパイの世界もただの遊び場だ。


 電話の向こうでセシルが激しく怒っている気配は感じるが、そんなこと気にしたりはしない。


「パーティー来る? NYで25日の夜やるんだけど?」


『馬鹿ですか!? 今のシーズンが分かっています!? 私の仕事、何か忘れていません!?』


「CIAの任務が入ってないのはこっちで確認したけど?」


 抜かりない。しっかりCIAのセシルの上司のスケジュールをハッキングして調べたから。動機はすごく下らないのに国家機密を平気で侵す極悪娘である。



『私はヴァイオリニストです! クラシックの!!』


「コンサートがあるの?」


『あるなんてもんじゃありまぜん!! 馬鹿ですか!?』



 欧州はクラシック音楽の聖地だ。クリスマス・コンサートやクリスマス・オーケストラ、有力者の演奏会など大小の会場色んな場所で行われる。


 セシルはクラシック音楽界でも天才と呼ばれる天才美少女音楽家で大人気だ。


 クリスマスから新年にかけて、オーケストラやコンサートの予定がみっちり入っている。今だってその練習中で、緊急にということで抜けてきたのだ。サクラからの電話だということはすぐに分かったが、これを無視すればサクラたち本人が押し寄せてきかねない。そうなればどんな大騒動が起こるか分かったものではない。



「あー……音楽家だったね。一応」


『一応じゃなくて! むしろこっちが本職なんです!』


「25日はどこでやんの?」


『ロンドンですよ! 24日はパリ!!』


「じゃあ来れるんじゃない? ロンドンの公演、そんなに遅くならないでしょ? 25日は」


 英国もクリスマスを祝う国だ。だが英国は家族で祝う風習があり、25日の夜は皆家庭で過ごす。そのためイベントなど夜は計画されていない。電車やバスもこの日は激減する。


『夜8時までありますけど!?』


「NYと時差6時間! ならNYだと3時。参加できるゾ、セシル。転送機なら一時間で来れるじゃん」


『……そうかも……しれませんが……翌日どうするんですか!? 26日の午後1時にはコンサートがあります! 24時間経過してないから転送機は使えませんよ?』


「帰りはNY発の深夜便の飛行機に乗れば? 丁度昼前にはロンドンに戻れるけど?」


『今から飛行機の手配なんて出来ますか!』


「じゃあ手配しといてあげる。支払いはヨロ! あんたのクレジットカードで勝手に支払っておくから」


 なんでセシルのクレジットカード番号まで知っているんだ、サクラは。こいつのほうが余程スパイではないか。



『待ってください! 私はいつ寝ればいいんですか!?』


「飛行機で寝たら? 若いんだしスパイが徹夜くらい文句いうな。ユージや拓なんか二徹夜くらい平気だゾ? じゃあユージにはセシルもいくって伝えておくから~! さーらばー♪ プレゼント用意も忘れるな~」


『ちょ! サクラ』



 ぷちっ……問答無用で電話を切るサクラ。



 それを飛鳥は白々とこのやり取りを見ていた。

 なんと強引で自分勝手な奴だろう。



「そんなに無理に誘わなくてもええやん?」

「いいのだ。参加者は多いほうが楽しいし、金持ち参加者は多いほうがいいプレゼントが貰える。セシルはプレゼントのためのカモ!」

「最低やな、お前」 



 ……だから貧乏なマリーはあっさり手を引いて、セシルは強引に呼んだのか……。



 セシルの性格だ。こうすれば来るだろう。セシルはなんだかんだいって約束は律儀に守る性格だ。忙しい合間を縫ってプレゼントは用意するだろう。何よりなんだかんだいってセシルもユージとエダには会いたいはずだ。


 もっともサクラの強引さは友情というよりただ強欲なだけだ。



「さて! 後は何をもらうか、ゆっくり考えるだけだ!」


 そういうとサクラは楽しそうに微笑みながら、ノートPCを閉じたのであった。






黒い天使短編「クリスマス狂騒曲」3でした。



サクラ、ワガママ!w


こいつ、本当傍若無人ですね。

そして本職のスパイ顔負けのスパイ・スキル!

しかもJOLJUのズルではなくて、サクラ自身のスキルです。いつか痛い目にあうかもしれない……ですが、多分JOLJUが尻拭いするので、本人が反省することはなさそうな……。


ということで、クリスマスパーティー勧誘編は終わり。

次回はついにクリスマス当日です。

まずは、ちょっと異質なクロゲ家のクリスマス模様編です。

そしてその後が今回のメイン、クリスマス・プレゼント編です。


今回はドタバタ日常話!


これからも「黒い天使短編・日常系」をよろしくお願いします。

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