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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
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黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」12

黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」12


ゲームそっちのけ、仲間割れするサクラと飛鳥。

この不毛な喧嘩に呆れるセシル。



思いもかけない来訪者が現れ、三人は大ピンチに!


***



 サクラと飛鳥は僅か10mという近距離で対峙している。二人共弾をリロード中だ。弾だけはセーフ・エリアで充填できたから、ポケットに溢れそうなほど持っている。


 ちなみにサクラも飛鳥も手や足、肩や腰には相手のペイントが付いている。この至近距離の撃ちあいだ。直撃こそないが弾は掠ったり跳弾で受けたりはしている。本当はそれもアウトでカウントされるのだが「即死までは無効だ!!」とサクラは一方的にルール変更を宣言、今に至る。互いにせめて一発くらいはヒットさせる! と、その事だけが目標だ。



 そしてサクラと飛鳥の低次元な争いを、30mほど離れたところでセシルが呆れながら眺めている。


 そんな時だ。



「…………」


 最初に妙な気配に気付いたのはセシルだった。


 殺気……とまでいえないが、他の人間の気配のようなものを感じたのだ。


「??」


 人はいない。しかし、気配はサクラと飛鳥が対峙している場所のさらに奥から感じる。そこは丁度ゲームエリアの境界で、森は境界から奥は深く人は立ち入れない。ユージたちではない。射撃場の方向とは逆方向だ。


 気になったセシルがゆっくり歩み寄る。すると、今度はハッキリと茂みが動くのが見えた。間違いない。



「サクラ! 飛鳥!!」

「なんじゃ!! 今アンタの相手はしてらんないんだけど!?」とサクラ。

「ウチもや! そこのクソガキの脳天に一発叩き込むまで!」と飛鳥。そうこういう間に二人は三発ずつ撃ち合う。もちろん外れている。


「あの……この森にはクロベ・ファミリー以外の人はいませんよね?」

「あ?? 何を当たり前な! ここ、神崎さんの私有地よ!! 視界の範囲はぜーんぶ!」


 この周辺はクロベ・ファミリーの後見人である神崎氏が射撃場用に購入した土地で、安全を買うため周囲直径5キロという広さがある。ちゃんと私有地だから入るな、とフェンスは張っているし、それだけでなく、この射撃場から一番近い人家は18キロ先でまず人も寄らない場所だ。その事はセシルも言われるまでもなく知っている。


 という事は……まず人ではないと思う。

 であれば……茂みの中にいるのは……?


 念のためセシルは銃を構え、近づく。


「あの……サクラに飛鳥。盛り上がっているところ悪いんですが、茂みの中に何かいますよ?」

「何かって何よ?」


 さすがにサクラはセシルの話に耳を傾けるだけの冷静さは残していた。

 確かに気配を感じるし物音もする。こういう能力は誰よりもサクラは高い。


「あー……なんかいるね。シカかな?」


 そういうとサクラは茂みの中に三発撃ち込む。ペイント弾だしシカやノブタならこれで逃げただろう。ここは自然豊かだからそういう動物はいる。


 だが何か逃げた様子はなく、逆に低く咳払いのような鳴声が聞こえる。そして予想より大きい物音が。飛鳥も気付く。



「なんや? 逃げろ~」


 飛鳥も二発茂みに撃ち込む。なんかドタバタと動く足音が聞こえる。

 そこにセシルも駆けつけた。


「何の鳴声ですか? これ」

「熊じゃないな。ブラックベアだったら危険だけど」

「ガラガラヘビじゃないですよね?」

「ここはニューヨーク州。ガラガラヘビはいない。ついでにワニもいないし、ヘラジカやグリズリーもいない」


 米国は世界一の狩猟大国であり、国土にはたくさんの動物がいる。むろん危険動物もいるが、危険動物は大体暑いか寒いかの地方に偏り、丁度いい気候で東海岸にあるニューヨーク州の危険動物といえば精々小型の羆であるブラックベアくらいのものだ。たまにアラスカに行って「巨大グリズリーを探せ! 目指せ世界一の熊!」という馬鹿げた遊びをJOLJUとしているサクラはブラックベアなんぞ怖くもなんともない。むしろどちらかといえば臆病なブラックベアのほうが人の気配をかんじると逃げるくらいだ。


「気にするな。こっちには銃がある」

 とサクラがのんびり弾を交換しながら言った時……それは茂みから姿を現した。



 グルグルグル……と唸りながら顔を出したのは、黒いイノシシだった。


 とはいえ顔はサクラと飛鳥の撃ったペイントで赤と青に染まっていてなんともファンシーだ。



「なんだ、イノシシやん」

「イノシシは馬鹿に出来ないですよ? 牙で大怪我しますよ。気性だって大人しくないんですから」

「そだね。一応、退かすか」


 そういうとサクラはイノシシの前に立ち、「どこかに行け」と命じた。言葉だけではない、テレパシーで直接命令を伝えるサクラだけが持つ超能力<竦み>、別名『サクラ幻魔拳(飛鳥命名)』である。人間だけでなく動物にも威力を発揮する能力だ。



 が…………。



「あれ?」

「どしたんや? さっさと追っ払え、サクラ」

「こいつ……効かない。ついでになんか偉く怒ってるンだけど?」


 たら~っと汗がサクラの顔を濡らす。『サクラ幻魔拳』は全ての生物に効果があるわけではない。強い意志力や強い感情の前には効果が薄い。そして『サクラ幻魔拳』を使えば相手の意志の強さや感情の度合いも分かる。断言する。このイノシシさんはえらく怒っている。だけでなくどうも意志が不安定だ。



 そして茂みから姿を現したイノシシは、熊のようにデカかった!



「でか! なんやこいつ!!」

「新種……か?」


 その時だ。

 ちっこい子イノシシがヨロヨロと三匹転がるように出てきたのを見て三人の呼吸が止まった。

 三匹ともベッタリとペイントが付いている。ご丁寧に赤青黄色の三色だ。いくらペイントだといっても痛いし、ペイントが目に入れば苦しい。何より攻撃された事実は変わらない。



「……コレ、多分やけど……もしかしてこの森ってこのイノシシのテリトリーなんやない? ウチらはそこを荒らした余所者にならへん?」

「こういう時は勘が鋭いな、アンタ」

「とりあえず逃げましょう」

「逃げよう」

「逃げるか」


 逃げる事になった。



黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」12でした。



なんだかんだ喧嘩?をしても仲はいいサクラと飛鳥ですね。

考えなしに乱射すれば5mでも当たらないのが銃です。


そしてここでビックリ、イノシシ登場!

しかもデカい!

しかも怒っている!

サクラの能力は怒りまくっている動物には効かない!


ということでびっくり展開となりました。

銃がある! が、弾は全てペイント弾! どうする!?


ということで次回です。

これからも「黒い天使短編・日常系」をよろしくお願いします。

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