表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
102/206

黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」11

黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」11



サクラと飛鳥、撃沈。

再びセシルに襲い掛かるが、やはりセシルのほうが一枚上手。

挙句……サクラと飛鳥は喧嘩をはじめてしまった……。


***




 見事射殺……ではなく撃墜されたサクラと飛鳥。サクラは顔面黄色一色、飛鳥はオナカが黄色一色だ。そして仲良く撃たれた人間が入るペナルティー・エリアの森中央のセーフ・エリアで立ちんぼ中だ。


「あンにゃろぉ~……顔面撃つなんて何考えてンだセシルめ! 痛いだろーが!」


 防弾フェイスガードのおかげでそこまで痛くはなかったが吹っ飛ばされてあわや地面に落ちかけたサクラの不満は一杯だ。


「腹を撃ちぬきおって……一瞬ケホっとなったわい!」


 おなかの真ん中を撃ち抜かれた飛鳥も不満一杯だ。おなかは他の箇所より安全なのだが撃たれれば痛い。そこは44マグナムより40%ほどパワーの強い454カスール弾だ。


 二人が撃たれ動けない今、セシルは我が物顔で次々にターゲットを自分の色である黄色に染めていく。スコアはもう18だ。腹立つことに遠くから得意気なセシルの鼻歌まで聞こえてくる始末だ。

サクラと飛鳥の怒りと復讐心は言うまでもなく高まっていく。しかし二人掛りでも普通に戦ったのでは到底勝ち目はない。むろんこのゲームは銃の腕だけが全てではない。


「仕方がない。露骨な連帯だけど、このままじゃあセシルの圧勝。面白くないから奥の手使ってやる!」

「一度くらいあの澄ました顔面をペイント塗れしたる! フフフフッ」


 サクラにはまだ勝算があった。勝算というより反撃の手である。





****





 一方セシルはもう余裕しゃくしゃくである。鼻歌で「美しき青きドナウ(英語版)」を歌っているくらいだ。


 一通りエリアを見回り、大体のプレートの場所は確認した。サクラと飛鳥がエリアに解き放たれたとしても動きの予想はつく。このゲーム、一度有利に立てばほぼセシルの勝ちなのだ。ポイントを稼ぎ、後は見晴らしのいい場所で襲撃を警戒すればいい。何せセシルの銃は454カスール。サクラと飛鳥の357マグナムより遙かに威力があり、射程も長い。多少の茂みは貫通するし、セシルの腕ならこの銃でも30mくらいまで大丈夫だ。一方銃に慣れているサクラの警戒範囲は10m以内といったところで、不慣れな飛鳥は物の数ではない。


 とはいえ、あのサクラと飛鳥が諦めるはずがない。


 丁度15分が経過した……その時だ。

 飛鳥の姿を見つけた。

 距離は60mほど、飛鳥のほうもセシルを見つけたようで隠れもせず「どりゃああああーー!!」と叫びながら真っ直ぐ迫ってくる。


「芸がないですね~。まあ、突進突撃は作戦としては強ち間違いではないですけど、相手が悪いですね」


 セシルはゆっくりと454カスールを構えた。全力疾走する飛鳥の銃撃なんか怖くもなんともない。


 飛鳥が30mを切ったとき……飛鳥の両手があがった。


 なんと、飛鳥は両手には二丁SMG、HK MP5Kが握られていた。

 そう、このゲーム・エリアに隠されていた特別ボーナス武器だ。

 飛鳥は叫びながら引き金を引く。瞬く間に無数の弾丸がセシルの周囲目掛けバラ撒かれていく。これにはセシルも堪らず木の影に隠れた。SMGは弾をバラまく武器だ。これなら飛鳥の腕でもまぐれ当たりはある。


 ユージや拓ほど突き抜けた人間は別だが、セシルクラスのプロでも拳銃……しかも乱射できないシングル・アクションのリボルバーで、SMGとやり合うのは分が悪い。しかしセシルは冷静だ。



「好きに撃たせて、弾が切れたら討ち取ってあげますよ」


 問題は飛鳥ではない。サクラだ。二人がまた組んでいるに決まっている。


 普通に考えると飛鳥は囮だ。激しく襲い掛かりセシルの意識を飛鳥に向けさせ、その隙にサクラがこっそり近づき虚を突く。それが基本作戦のはずだ。


 しかし、飛鳥の反対側にサクラの姿はない。左右も上も確認したがサクラの姿は見つからない。元々サクラたちがこういう行動に出るだろうと読んで見晴らしのいい場所で陣取っていたのだ。


 いないはずがない。

 飛鳥一人だけで特攻してくるはずがない。無鉄砲な奴だがそこまで馬鹿ではない。


 射撃がド下手な飛鳥だが、SMGを持っているとなれば話は別だ。SMGは弾をバラ撒き制圧する武器だ。点ではなく面で迫ってくるから容易には出られない……というのは素人考えだ。


 走りながら両手持ちの二丁のSMGの弾がしっかり狙えているはずがない。HK MP5Kは撃ちやすく扱いやすいSMGだが、重さは2.5キロ。普段銃を撃たない素人の飛鳥にとっては重いし反動も大きい。思ったとおり、比較的セシル周辺に着弾していたのは最初だけで、後はてんでバラバラだ。とはいえ近接されてはセシルが不利になる。


 全弾撃ち終わるまで放置しようかと思ったが、飛鳥の突入のほうが速そうだ。



「今度は顔に撃ちますね~」


 冷静にハンマーを起こし、セシルは木の影から飛び出た。飛鳥との距離はもう15mくらいだ。

 その時だ。飛鳥は突然前方にスライディング! 伏せた。



「!?」


 飛鳥が消え……その背後からサクラが現われた。手にはイサカM37が握られている。

 走っているのではない。地面と水平になり飛んでいる。だから完全に飛鳥の背中で隠れ見えなかった。


「弾けろっ!!」


 サクラは容赦なく引き金を引いた。


 ショットガンから放たれた散弾が、セシルが隠れていた木を一撃で真っ赤なペイントが染める。ショットガンの威力は圧倒的だ。そしてサクラの強襲は完全に計算外だ。


 だがこれが拙かった。

 追い詰められたからこそ覚醒する<本気モード>! 


 セシルはこれまでのような余裕は捨て、這うように移動する。それは午前中目にした戦闘のプロそのものだ。いくらサクラが修羅場慣れしているとはいえ本気になった戦闘のプロには敵わない。


 セシルは転がるように移動すると、瞬く間にサクラの横5mまで接近した。逆にサクラは突進していたのでセシルの動きを追いきれない。


 サクラが思わず足を止めた瞬間、セシルは容赦なくサクラの顔面目掛けて銃弾を放った。哀れサクラは今度はこみかめを撃ちぬかれ黄色のペイント塗れになり倒れた。


 驚いたのは飛鳥だ。


 なんかよくわからん動きで瞬く間にサクラは討ち取られた。


 ここで動きを止めてウロウロとしてしまったのが飛鳥のミスだ。この隙にもセシルは動いている。これまたあっという間に接近し、ニッコリとなんとも愛らしい笑みを浮かべ、至近距離で飛鳥のおなかを撃ちぬいた。



「ぐはっ!」


 倒れる飛鳥。またまたおなかは黄色一色に染まった。

 セシルは鼻歌を歌いなから銃口から立ち上る硝煙を、フッと吹き消す。


「いい作戦です。もうちょっと上手にやれば、掠らせることくらいはできたかもしれませんね~」


 サクラが持っていたのがイサカM37ではなくHK MP5Kだったらセシルも危なかったかもしれない。サクラはSMGのほうが使い慣れているし撃ち方も知っている。サクラがフルオートで強襲すれば当たったかもしれなかった。もっともサクラは好みとしてちっこくて使えないくせにSMGよりショットガンが好きだし、飛鳥はショットガンを扱えないから、これは机上の空論だ。


 こうしてサクラと飛鳥はまた撃たれてセーフ・エリアに。


 こうなればもはや二人はセシルに対する復讐しか考えていない。


 三人バトルロイヤルというルールなんて無視。復活と同時に二人がかりでセシルに襲い掛かるが、真っ向からぶつかってセシルに敵うはずがない。あっという間に返り討ちに遭い5分と経たず撃退される二人。こうなれば怒りはセシルだけでなく無力な相方に向く。



「お前がもう少し銃が使えたらこうはならないのよ!!」

「何いうてんねんクソガキ!! お前かて一発も当てれてへんやんけ!! 普段自分は戦闘できるみたいな顔でえらそうにしとるくせになんやこの始末は!!」

「なんだとコノヤロー!!」

「やるかクソガキ!!」



 と……今度はセシルを無視して二人で不毛な撃ち合いを始めてしまった。

 二人共大した腕ではないから当たらず、激しい銃声と幼稚な罵詈雑言の応酬が延々と続く。



「これで私の勝ちですね」


 セシルは一笑すると二人を無視し森の中を歩いた。もうプレートは37個ゲットした。残り時間は8分……セシルの勝利は揺るぎないだろう。




 が……。


 今回、まだちょっとした事件が残っていた。

 



黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」11でした。



見事におこちゃまなサクラと飛鳥でした。

普通の相手ならサクラの作戦で倒せたかもしれないがいかんせい相手が悪すぎた。


まぁセシルは完全プロですし。

そもそもサクラと飛鳥程度ではどうにもならないというのが現実。


そして仲間割れで喧嘩するあたり、分かりやすい二人です。

サクラのクール・キャラ設定はどこにいったのやら(笑


で、実はこの後もうひとつ事件がまっています。

それが次回です。これが今回の短編のシリーズのオチですかね?


ということでもうちょっとだけあります。

これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ