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「黒い天使」短編集  作者: JOLちゃん
「黒い天使・日常短編シリーズ」
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黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」10

黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」10



セシルを騙すサクラと飛鳥。

しかし相手はプロ! そう簡単に倒されはしない。

セシル本気に!

本気になったセシルがサクラと飛鳥に襲い掛かった!

 

***




 セシルが勘付いたという前提で……さて、サクラはどうするか……。



 作戦は色々ある。しかし正面から挑んでは一つも勝機はない。


 なんだかんだいってセシルはユージには遙かに及ばないが、拓に匹敵する戦闘力はある。セシルであれば不慣れな454カスールでも50mでも当ててくる。


 一応飛鳥にテレパシーで呼びかけてみた。しかし通じない。それどころか3DスコアボードのところにJOLJUからの警告が浮かび上がった。『テレパシー禁止』と。



「仕方ない。よし…………飛鳥を囮にしよう」


 簡単に相棒を売り渡すサクラ。むろん、そんな企みを飛鳥もセシルも知らない。


「うむ! 馴れてきたで、チャカ! これでウチもヒーローの仲間入りやな!」

 15m先にあるチタンターゲットを見事に当てた飛鳥は満足そうに頷く。

 これでスコア8つ目である。そしてようやく中心部に足を踏み入れた。


「サクラが先に来とると思ったンやが……おらへんな?」

 もう5分は過ぎた。多分セシルも来ていると思うが見当たらない。さすがにそこはプロの戦闘員だ。


 こういう場合、普通は警戒するものだが、そこは飛鳥である。

 飛鳥は危険などどこふく風……鼻歌を歌いながら銃を片手にどしどし進む。弾など当たるか、という自信なのか天性ノー天気なのか。ま、後者のほうなのだが。



「よし! 今のうちに稼ぐで!!」


 飛鳥は気にせず目ぼしいターゲットを見つけると、銃口を向けた。一つ撃って、タタタッと走り次のターゲットに近づく。10m近くまで近寄ってまた銃を構えた。


 その時だ。

 轟音が鳴り響き、飛鳥のすぐ横の木が弾けた。



「ぬわっ!!?」

 思わずその場に伏せる飛鳥。すぐに前方を睨む。



「誰や!? ……ってセシルっちやな!! あいつどこから撃ったんや!?」


 射撃は素人かもしれないがそこそこ修羅場を潜っている飛鳥。この程度では動揺しない。


 飛鳥は目がいい。40mほど先の木の影にセシルの姿を見つけた。もうセシルは次弾を撃つため構えなおしている。



「どりゃああっっ!!!」


 飛鳥は握っている銃をとにかく連射! 4発撃つと、あとは脱兎の如く駆け出した。



『相手が20m以上で持っているのが拳銃なら走れ! 拳銃はそうそう当たらない』


 という対応策は普段から聞かされている。サクラも言うし、ユージも言っている。

 反撃手段を持たない場合、銃をもった人間に対してもっとも有効な対応策は逃げることなのだ。これは拳銃を常に持つ米国の警官でもいえる事で、突然ダッシュされたら5m先でも狙って当てられる警官は3割もいないと言われている。これが20mを超えると一気に当たらなくなる。銃は動くものを撃つのは難しいのだ。


 飛鳥はあっという間にセシルの視界から消えた。相変わらず逃げ足だけは一級だ。



「ホント、逃げ足だけは満点」


 セシルは半分本音の混じった吐息を漏らした。『逃げる際、持っている銃を乱射して逃げろ!』というのはセシルが以前何かの事件の時与えたアドバイスである。的確に敵の方向と真逆に逃げるという点も満点である。


 しかしこれは戦闘とはいってもゲームだ。逃げ回っていては勝てない。



「よし。一先ずこれで様子見です」


 今の一発はあえて外して撃った。当てる気なら30mくらいまで接近して胴体の真ん中を狙えば外さない。あえて外して飛鳥の反応を見たのだ。



 こうして飛鳥とセシルは中央エリアに入り込むことになった。




 ……いくら場慣れしているとはいえ飛鳥は素人。プロであるセシルが本気になれば敵ではない……。



 と……いうのが当然のセシルの判断だったが、そうは簡単なものではなかった。



 どこをどう逃げたか知らないが、もう見当たらない。飛鳥はプロではないから完全に気配を消す事はできないが、それでもセシルが戸惑うほど森に溶け込む事がうまい。そして全然見つからない。伊達にサクラと共に世界中駆け巡っていない。思えばその道のプロも真っ青になるように大事件をいくつも潜り抜けてきた飛鳥だ。危険察知能力……というか逃げ足は独学だが相当なレベルといって差し支えない。


 これが鬼ごっこなら厄介な相手だが、これは撃ちあいだ。逃げ回っていてはポイントにならない。

そこでセシルは作戦を変えた。


 セシルにとって厄介なのは飛鳥ではない。サクラのほうが脅威だ。サクラのほうが小さく遙かにすばしっこく、15mくらいなら攻撃してくるし当てる腕がある。サクラもプロから見れば素人だが、実戦経験のある素人で攻撃するに十分な能力はある。これはゲームで勝つことを目指す以上当然一度はセシルの撃退を計算に入れているはずだ。でなければサクラたちの勝機は少ない。



 で……気付けば飛鳥もサクラも見失った。


 敵にすると本当に厄介な二人だ。


 だが、敵が優秀であればあるほど、そこには作戦が存在する。


 多分飛鳥は囮だ。目立つし飛鳥の腕ではセシルは討ち取れない。だがサクラなら完璧に気配は消せるし、セシルが動いていなければ20mくらいなら狙撃も出来る。何より厄介なのは、サクラの場合殺気を放つことなく人を撃てる点だ。


 セシルが慎重に進むと、突然銃撃がセシルを襲った。



「どりゃああ!」


 飛鳥が前方11時から撃ってきた。距離は40m……当たるはずがない。こんな距離、隠れるまでもない。


「安全圏からの攻撃。当てる気はない、というか当たるかどうか判断できてないだけか。それよりいつのまにあんな距離まで移動するなんて、なんてすばしっこい奴」



 感心していいやら悪いやら。



 だがこの攻撃でサクラたちの作戦が読めた。


「思い知らせてあげます!!」


 セシルは駆け出した。全速力だ。


 森の中で足場がいいとはいえないが、そこはプロ。ジグザグに駆けながら飛鳥に接近する。が、飛鳥も心得ていて「さーらばー」と走り出す。


 二人の本気の追いかけっこが始まった。戦闘のプロのセシルと度胸と根性一人前の飛鳥の追いかけっこはセシルの予想に反してすぐに決着がつかなかった。本当に逃げ足だけは速い飛鳥である。


 だがそれもプロと素人の実力さは存在する。1分も走ればただの高校生である飛鳥はバテるが、プロのセシルはバテない。


 ついに20mまで接近された飛鳥は、ついに木の影に飛び込み銃を向けた。

 それがセシルの本当の狙いだった。

 飛鳥は銃など気にせず、セシルはバックステップで後ろに飛び、そして真後ろに振り返ると銃口を上げた。

 15mほど後ろの大きな木の上に潜むプレデター……もといサクラがいた!


 そう、飛鳥の逃走はサクラ狙撃への囮だ。サクラが潜むポイントまで誘っていたのだ。そしてその作戦はまるっと全てセシルに見抜かれていた。



「あ!」

「まずは一点!」


 問答無用! 躊躇することなくサクラ目掛け引き金を引いた。


 銃弾は見事にサクラの顔に命中した。「ぷぎゅ!」と情けない悲鳴をあげサクラは落っこちた。実弾であれば今頃サクラの頭部は吹っ飛んで無くなっていただろうが、ペイント弾だ。顔だけでなく胸までベッタリペイント塗れになった。


 そしてセシルは問答無用とばかりに倒れたサクラに向け「本当に当たりました? もう一発当てますよ~」と銃を放つ。まさに死体に鞭打つ弄りやり放題。これはセシルの作戦だ。



 案の定……。



「隙ありぃーっ!!」

 飛鳥が乱射しながらセシルに襲い掛かった。


 が、飛鳥の乱射など5mでも当たらない。


 セシルはニッコリと優しく愛らしい笑みを浮かべると、容赦なく飛鳥の腹めがけ454カスールの強力弾をぶち込んだ。




「ぐへっ!」



 ボクサーのヘビー級のパンチを食らったかのように吹っ飛ぶ飛鳥。実弾ならえらい事だがペイント弾だ。だがすごく痛かった。そして胴はベッタリとペイント弾のペンキで濡れた。



 二人共、ノック・アウトだ。



「ま……私を出し抜こうなんて10年早いですね」



 フフン♪ とセシルは高らかに鼻で笑うと、454カスールの弾を交換しながら悠然と森の中を歩いていった。




黒い天使短編「そうだ射撃場にいこう」10でした。



ということで、サクラと飛鳥、撃沈です。

まぁ……銃で喧嘩を売るにはあまりに腕の差があったということですね。

実銃なら……実銃使ってますけど……本当なら二人とも即死です。


が、これはサバイバルゲーム!

そもそも相手を倒すゲームではなくプレートを撃っていくゲームです。

そして次回、やられたサクラと飛鳥の逆襲が始まる!!


ということで次回もサバイバルゲームです。


もうちょっと、サクラたちのドタバタ劇をお楽しみください。


これからも「黒い天使短編・日常編」をよろしくお願いします。

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