月夜の晩の不思議な出会い 我妻
月夜の晩の不思議な出会い
我妻
船に揺られやっと着いた島。
それは僕があまり体が強くないからお父さんが決めた引越し先がある島だ。
「翔太、体調は平気か?
もう業者さんが来てるみたいだからちょっと急ぐぞ。」
「大丈夫、行こう。」
「それよりも先に村長さんに挨拶しなくちゃいけないんだった…
少し役場に寄っていくぞ。」
「はーい。」
ここの島はIターンの人達をたくさん受け入れているってお父さんが前に言っていた。
僕みたいに体が弱い人や都会での生活に疲れた人達が毎年たくさん来るみたい。
少し歩いた所に役場はあった。
ここに着くまでに1台も車を見ていないから都会とは違うことがよくわかる。
「こんにちは!今日からこの村に住まわせていただく安藤と言います。」
「あぁ、いらっしゃい。
そちらは息子さん?」
「はい、息子の翔太です。」
「こんにちは…」
「こんにちは。
なんにもないところでつまらないかもしれないけど君くらいの子はいるから心配しなくて平気だよ。」
「はい…」
「あ、そうだ…
一つこの村に伝わる言い伝えを教えてあげよう。
この村には満月の夜にこの役場の裏の雑木林に鬼が出るんだよ。
でもその鬼は優しいって話だ。」
「そうなんですか?」
そんな話、信じるわけがないだろ。
俺はもう5年生なんだから妖怪だとか鬼だとかそんな話が嘘だってことはもう気づいてる。
いくらなんでも子供を舐めすぎだ。
「それでは荷解きがあるのでこの辺で失礼します。」
「じゃあねぼく、いつでも遊びに来ていいからね。」
「さようなら。」
その日の荷解きは何故か集まって来た村の人たちに手伝ってもらってすぐに終わることができた。
その後手伝いに来てくれた人の1人が歓迎してくれると言い家に向かうことになった。
そこの家にはぼくと同じくらいの年の男の子がいて、ぼくとは違って元気そうな子だった。
でもいい人そうですぐに打ち解けられた
だが疲れた父親は先に帰ってしまった。
「遅くまで失礼しました。」
「泊まっていってもいいのよ。」
「そうだよ、泊まっていけよ。」
「いえ、父を一人にしておくわけにはいかないので…
ありがとうございました。」
「あらそう?いい子ね、いつでも来てね。」
「はい、失礼しました。」
東京ではなかなか学校に行けなくて友達はあんまりいなかったけどこっちに来たら体調も良くなってきたし、いい人がいっぱいいるから多分馴染めるんだろうな…
「今夜は満月か…」
「おい、そこの童!」
「ん、なんですか?」
そこに居たのは同い年くらいの和服を着た女の子だった。
時代錯誤の格好をしているその女の子に違和感を覚えていると、
「近う寄れ」
随分と変わった喋り方をしているな…
「おい童、妾が何者かわかるか?」
「ただの女の子じゃないんですか?」
「妾を女子と見るか…
妾は鬼じゃ。
だが安心せい取って食ったりはせぬ。
ただ、人というものに興味があってな…
月が満ちた晩にこうして人の世に出てくるのじゃよ。」
「童の名前はなんじゃ?」
正直、なんなんだコイツはって気持ちしかない。
名乗ってとっとと帰ろう…
「ぼくの名前は翔太です。」
「ほう、翔太か、
妾の名は刹那じゃ。」
「すみません、帰ります。」
「まぁまぁそう焦るな。
まだ時間は沢山あるからの。
翔太の父君はもう寝ておるようじゃ。
それよりも翔太は貧弱な体故、ここに来たのであろう?」
「なんでそんなことまで知ってるんですか?」
「鬼を舐めるでない人間の子よ。
でも大丈夫じゃすぐに良くなる。
それに友も出来るであろう。」
なんの根拠もなさそうな話だけども何故か安心感があった。
「それよりも妾は退屈しておったのじゃ。
なにかあそびでもせぬか?」
その夜は月明かりで明るくなっている雑木林で、刹那と共に遊んだ。
刹那は沢山のことを知っていて一緒にいる間はとても楽しかった。
次の満月の日、また次の…と満月の日になると必ず役場の裏の雑木林で刹那と遊んでいた
刹那はぼくが行くと必ず、
「また来たか、待っておったぞ」
と言って出迎えてくれた。
だがある日行ってみると刹那がいつもとは違う雰囲気で座っていた。
どうしたのかと伺っていると、
「翔太に話さなくてはならないことがある
今お主が見ているこれは…」
「…きろ!翔太起きろ、もう島に着いたぞ!」
今までのは夢だったのか…?
「ほら、まずは村長さんのところに挨拶しに行かなくちゃいけないんだ
一緒に行こう」
村長さんに挨拶か…面倒くさいな。
「ごめんくださーい。」
「おやおや、お客さんかい?」
「今日からこの村に住まわせていただく安藤です。
よろしくおねがいします。」
「よろしくねぇ。
おや、可愛い男の子だねぇ。
面白いことを教えてあげよう。
この村には満月の日になると役場の裏の雑木林に鬼が出るんだよ。」
夢じゃなかったのか…?
「それでは荷解きがあるのでこの辺で失礼します。」
「じゃあねぼく、いつでも遊びに来ていいからね。」
「さようなら。」
その日の荷解きは何故か集まって来た村の人たちに手伝ってもらってすぐに終わることができた。
その後来てくれた人の家に行った。
そこの家にはぼくと同じくらいの年の男の子がいて、ぼくとは違って元気そうな子だった。
でもいい人そうですぐに打ち解けられ、疲れた父親は先に帰ってしまった。
「遅くまで失礼しました。」
「泊まっていってもいいのよ。」
「そうだよ、泊まっていけよ。」
「いえ、父を一人にしておくわけにはいかないので…
ありがとうございました。」
「あらそう?いい子ね、いつでも来てね。」
「はい、失礼しました。」
「ここまで夢とおなじか…」
んじゃそろそろあの雑木林で…
雑木林のところに来たがそこには誰もいなかった。
「いないか…
やっぱり夢だったのか…」
「おい、そこの童近う寄れ。」
ぼくは大急ぎで走っていった。