#5
#5 静の悩み
「はぁ・・・・」
お昼休み、静の前の席を借りて二人で食べる昼食。
間に何度も聞かされるため息。
「静、今日ため息多くないか?」
「そう?・・・・まぁ、ちょっとね」
苦笑する静。
「解決は出来なくても、聞くことぐらいなら出来るが?」
「愚痴だし、恋話だけどいいの?」
「静が楽になるなら」
「あんた、昔からいい子ね」
寂しげに笑う静。
「ありがとう、で、話すのかな?」
「どうじに、せっかちね」
「じゃあ、五時間目の後にね」
私は席を立つ。
「冗談よ、とりあえず、昨日のお礼」
スカートから出てる太ももに冷たい缶ジュースが当たる。
「っ・・・冷たい!」
静の手からジュースを奪う。
「んで、話ってのが・・・」
「言うのかい・・・」
私は呆れながら席に座る。
「篤生なんだけどね」
「何かあったのかな?」
呼び方が下の名前なのは無視する。
「なんかねー、女性の相手が上手すぎるのよねぇ」
「・・・確かにそんな感じだな」
「なんかさー、今までの奴だといって欲しくない事うっかり言っちゃうんだけど、あいつ上手い事避けてるんだよねぇ
何ていうか、慣れてる?」
苺牛乳のパックのストローを吸いながら首をかしげる静。
「ふむ・・・経験豊富なのかもしれないな」
「いや、あいつはあまり経験無いよ、ただ、相手を大事にするだけだ」
突然、私と静かの間から声。
「ゲホゲホッ・・・・もう少し、自然に現れてくれないかな」
むせながら振り向くと、橘がいた。
「うん、だから自然に会話に・・・・」
「いや、今のは突然だと思うわよ?」
静も口元をハンカチでぬぐいながら言う。
「ふむ・・・難しいな」
会話に入るのが難しいとは、新しいな。
「話を戻すと、横山は経験が無い分、嫌われないように最善を尽くしてる。
つまり、相手に不快感を与えないように努力をしてるのさ」
橘が言い終えて、ポッケから5cm×8cmほどの箱を出す・・・・まさか
「煙草?」
「吸うの?」
「違うッ!」
橘は少し考えた後、
「あー、これな。お一ついかが?」
「だから、吸わないって・・・」
彼が開けた箱からは甘い匂い。
「あんた、「HI‐CROWN」」知らないの?」
静の声。
「・・・・・チョコか・・・」
私はうな垂れる。
「因みに、ミルクだ」
箱から一つだし、包装紙を剥し口に入れる橘。
「サンキュ」
静も一つ貰う。
「因みに、涼の好みはビターよ?」
「言わなくていい」
「じゃ、いらないか。無念」
橘がポッケから手を出す。手の中には「HI‐CROWN」のビター。
「用意がいいな」
はっきり言って、私はビターのチョコは大好物だ。
だから、この右手が箱に伸びるのは止めようが無い。
「まぁね、いろいろと努力中」
「・・・?」
「年齢と、年数が同じ数だと、そろそろ焦るのさ」
「あらあら、クールなイメージ台無しじゃん?」
よく分からない橘の台詞と、ニヤリと笑う静。
「いいんだよ、丁度好みだから」
「あらあら、頑張りな。おねぇさんからのプレゼントだ」
胸ポケットから映画のチケットを出す静。
「サンキュ」
受け取って自席に戻る橘。
「・・・・で、説明はあるのかい?」
私の発言に
「乙女は自分のことだけ考えなさいな」
頭をわしゃわしゃとかき乱される。
「む、ずるいな」
私が髪を戻すのとチャイムはきっと同時だった。
だから静に叩かれるまで橘を見てたんだと思う。