#4
#4 悪戯
「悪いけど、コレ頼んだ!明日ジュースおごるから!」
私に日直日誌を渡し、鞄を持って教室を出て行く。
「・・・私にも、予定はあるのを知ってるかな?静」
教室に日誌を持ったまま残された私は席に座りながら呟く。
「丙さんも大変だね。2リットルの注文すれば?ジュース」
突然後ろから声、振り返ろうとすると、
「振り返るのは自由だけど、着替えてるから」
即座に前を向く私。
「・・・更衣室を使うべきだろう?」
仕方なく、日誌を書く。
「運動系の部員さんで、一杯一杯。突然の雨は卑怯だね」
後ろで、衣擦れの音。本当に着替えてるようだ。
「だからって、普通女子のいる部屋で着替えるかな・・」
教室には私と橘だけ。他は帰ったようだ。
「丙さん、あまり気にしないと思ったから・・・・着替え終了」
「失礼な!」
振り向く私、
「ひゃ!」
視界一杯の狐の面。
「丙さん悲鳴可愛いね」
「君は悪戯が好きだね」
声が硬くなる、怒気が含まれるからだろう。
「好きな人相手だと、ね」
「ぇ?・・・」
「なんてね?」
彼は後ろを向いて鞄の中に手を入れる。
私は日誌を睨む、頬に熱を感じる。
「ここで、赤面してたりすると、可愛いよ?」
「下らない、さっさと帰ることを勧めるよ」
声が硬い。
「いいけど、3行目からぐちゃぐちゃだから書き直しなよ?」
彼は鞄を肩にかけて教室から出て行く。
「・・・・・・・まったく、人の気持ちも知らないで。着替えとか・・・ありえないだろ」
机に突っ伏す。
「あはは、乙女だにゃー」
背後から声。
「へ?」
「教室にいないだけで、廊下にはいたりして」
顔を上げると、橘が出てったのとは逆の扉に横山が立ってる。
「立ち聞きとは・・・悪趣味だな」
私の視線に殺気が上乗せされる。
「怖いにゃー、橘使用済みのタオルやるから簡便にゃー」
「いらないよ、私は婦女子ではない」
「乙女だニャー」
「遺書の書き方を知ってるかい?」
「教室での殺害の定番はナイフでサックリだにゃー」
「元のネタが分からないよ」
ため息をつき、日誌を書き直す。
「さてはて、横山さんは消えるにゃー」
「もういいや、帰ろう」
今日はもう、疲れた。