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貧乏貴族令嬢ですが男装して入学します  作者: 仲田野 寿
学園編
3/31

ハイ、月日が流れるのは早いもので。

入学してから三年が立ちました。うん、わたしは十歳になりました!


え?見つかってないかって?

うん!全く、なんにも、心配なかったようです!


周りの子も、わたしと同じくらい小さい子とかもいたんです。武官志望の子たちは大きな子が比較的多いんだけど、文官志望のわたしたち平民クラスは、小柄な子が多いみたいなのです。ほんとに、安心しました!


勉強のほうも、まずは基本をやるようで、教会で詰め込んできたことの復習のような感じで授業をうけることができました。だからまだまだ余裕なの。


お風呂も、身体にひどいあざがあるから。とみんなと一緒に入らないようにしてたし、--寮には大風呂がひとつあって、あとは王族や公爵侯爵伯爵クラスの個室にしかないんだって--ジルが見張りに必ず居てくれたから、安心して入れました。


あとは、お昼の学食なんだけど、平民の子達は成績がいい限りは免除だからなんでも食べれるんだって。うらやましい。で、わたしは必ず安いものを食べて、あの時、父上が持たせてくれたお金を使うようにしてたんだけど、--父上、これは本当に助かっております!お昼ごはんも寮で出るのかと思っていたわたしが甘かったようです--見かねたジルが自分の食事を多めに取ってきて分けてくれるようになってたました。

いつのまにか周りからは親鳥と雛みたいだなーお前らは。なんてよく言われてました。

わたしは貴族よりも平民のみんなとの方が仲良しさんなんです。うん、いいんだけどさー。


そのうちガスパール様まで、

「デザートが残ったから持ってきた。食べてくれないか?」とか、

「間違えて多めに買ってしまったから持ってきた。食べてくれないか?」

なんて言いながら、デザートや果物などをよく持ってきてくれるようになりました。親鳥が二羽になった!

しかし、わたしはそんなに細いように見えるのでしょうか? なぜみんなしてわたしを太らせようとするのでしょうか? そしてなぜピンポイントで好物を持って来てくれるんでしょう?

もしかして、うらやましそうにデザート食べてる子たちを見ていたのばれたのでしょうか……? それとも、そんなに貧乏にみえるのでしょうか……?

それはそれでなんて恥ずかしい……。



さて、あれから一年が立ちました。わたしは十一歳になっております。

本当に月日が経つのは早いものですねぇ。


この頃少々困りごとがあるのです。

……あの、実はわたし、初潮が来てしまいまして……。えっと、あまりにびっくりしてジルに泣きついてしまったのですが、ジルの方が驚いているようでした。

というか、珍しくおろおろしつつ赤い顔をしてわたしを見れない様子でした。


困りました。

考えてみると、何も買っておりません。そして、男子校ですので、売店にもそのようなものは置いておりません。

ええ、わたしは保健の授業できちんと聞いておりますので、他の女性より詳しいです。なぜなら、避妊の仕方や、どこに入れるのかコホン……など、きちんと授業するのですから!

貴族の教養として覚えておかないといけないらしいのです。幼い頃から復習としてこの授業をやっておかないと、女性を泣かせるダメな貴族になるぞ。と先生は言っておりました。なんて素晴らしい!!

そして、お金のある貴族などは、わざわざ練習用に経験のある女性を雇って授業するらしいです。お金持ちは違いますね、ほんとに。

わたしは自分に一番ためになる授業だと思って、大真面目に聞いております。しかしジルはその授業になると挙動不審になるのです。成績優秀なくせに仕方がない人ですよね?


ああ、つい、現実逃避してしまいました……どうしましょう……。


いや、やはり買いに行くしかないではないでしょうか? 幸い授業は終わっておりますし、どうしても必要なものがあるときは、申請して街に買いにいけると聞きました。

そうです。動くしかないのです。少しくらいのお腹の痛みは我慢するしかないのです。


ということで、街に行ってきます。

荷物にこっそり女の子に見えるように、帽子とスカートをつめていきます。どこかで着替えでもしましょう。


じゃあ、ジル行ってきます。と言うとジルは慌てだしました。

「俺も行く。」

やっぱり一緒に行ってくれるようです。ジルはいつも優しいのです。


さて、乗り合い馬車に乗って街に向かいます。

くぅ、この揺れはどうにかならないのでしょうか……? お腹に響くのですが……。いや、もうすぐです。頑張ろうわたし。


馬車を降りて、木の影で着替えることにします。ジルに見張りをお願いします。

「えっ!!?」

なんてジルにはありえないような驚く声を出すので、わたしも驚いてしまいました。

「女の子にならないと、生理用品なんて買いにいけないでしょう? 少し着替えするだけだから、誰か来ないか見てて。」

「……分かった。」

ジルは口数少なくそういうと、わたしを影において見張りに行ってくれました。


着替え終わってジルの側に行くと。

ジルはなぜか口元を手で覆い顔を隠しながら、「じゃあ、行こう。」と歩き出しました。

いつもわたしにあわせてくれる歩幅が、今日は少し急ぎ気味です。何か用事でもあるのでしょうか?


わたしも頑張って歩き、すぐにお店に着くことが出来ました。

わたしは生理用品を買い戻ろうとしましたが、ジルが手を掴んできました。そして、

「シリル、待って。これも買ったほうがいい。」

と、布?ひも?を渡してくれました。


「これは?」と聞くと、また口元を手で覆い隠しながら、ジルは、

「……っ、むっ……胸に巻くサラシ……。」

と教えてくれました。


あら。そうですね、すっかり忘れていました。もっと大きくなってからでもいいかと思っていたのですが、買って行きましょう。

「そうだね。ありがとうジル。まだいらないかと思っていたけど、買ってたほうがいいのか。うん。」

ジルは赤い顔をしたままそっぽを向いています。かなり気を使わせてしまったようです。


買い物を終え、念のため痛み止めの薬も買い、下着に装着してから帰ります。ああ、よかった。

安心したのもあってか、さきほど飲んだ薬の所為もあるのか、少し痛みも和らいできたようです。


また乗合馬車にのって、学園へと戻ります。

ああ、ちゃんとさっきの場所でまたジルにお願いして見張りをしてもらい着替えましたよ!

誰にも見つかってはおりません。わたしは完璧なのですよ?


そういえば、授業で段々と苦手なことができてきました。

それは、兵法と地理です。他はまだまだ余裕なのですが、この二つがどうしても上手くいきません。どうしましょう……?

地理は……正確に言うと、地理はいいのですが、地図がだめなのです。こう、地図をくるっと自分が行く方向にすると何とか分かるのですが、そんなことをしている間に敵が攻めてくるぞ? と言われるのです。これはどう覚えるのでしょうか……?


なんて地図が苦手になってくると、地理の時間も憂鬱になってきます。すると先生がこう言いました。

「男性と違い女性は地図を読み取るのが苦手と聞くが……うーん? シリルはそこも母親似なのかもしれないな? まあ、慣れるしかないから、頑張ってやっていこうな。」

一瞬ギクッとしましたが、わたしは光明が見えました。なので、

「はい、先生。ありがとうございます! 今度教えてください。」

と答えておきました。


そうなんだ!女性全般が地図苦手だったのか。はぁ…。わたしだけじゃなくてよかった……。



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