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貧乏貴族令嬢ですが男装して入学します  作者: 仲田野 寿
学園編
29/31

エルネスト視点2

----エルネスト視点


ジルベールがいないうちに、シリルの気持ちを少しでも揺らしたい。

私は卑劣だろうが、なりふり構わずシリルにアピールする。


夕食時、……シリルの食事係はアレクサンドルのようだ。ガスパールも何も言わないし、これは決定なのだろうな。なぜアレクサンドルなんだ?

アレクサンドルは、特にシリルに興味があるわけではないように見えるが、食事に関してだけはとてもうるさい。

不思議だ。



シリルから手紙をジルベールに渡して欲しいとお願いされた。

一瞬、渡さず無くしてしまおうかとも考えたが、ここは私を信頼してもらえるようにしよう。


その手紙は、シリルからジルベールへの手紙ではなかったようだ。

侯爵様や父上、アレクサンドルの父の居る部署や、情報部。そして王までもが動き出したのだ。


内容までは教えてもらわなかったが、ジルベールを攫った者からの手紙だったようだ。


ジルベールにきちんと渡しておいて良かったと心から思った。うむ。


その仕事が大変だからなのか、父がセルジュを情報部に入れたようだ。

あいつはものすごくうれしそうだった。

平民が王宮で仕官できるようになるには、よほどの実力者か、運も必要だ。

セルジュはシリルに協力することによって、運をもぎ取ったのだろう。


ジルベールだけではなく、こいつにとってもシリルは裏切られない女神のようなものなのだろうな。


セルジュがあからさまに口説いている。

「俺もジルベールに負けないように頑張るから、シリル。もう少し待っててくれないか。」


こいつはシリルが女性だとわかっていることを、シリルは知っている。だからこんなにも口説けるんだ!

イライラする……。

まあ、シリルはきょとんとしているから、分かってはいないだろう。


俺はセルジュの手を振り払いつつ、こっそりシリルの身体を引き寄せる。シリルに対して、少しずつスキンシップを増やしているから、この頃は私に触られても慣れてきたようだ。

そして少しだけアピールする。

「私は次男だから、シリルの領地にも入れる。」


驚いたように私を見るシリルだが、分かってはいないだろうなー。


いっそ、俺が女性だと分かってることを言ってしまおうか? =なぜ分かった? =身体が柔らかかった。香りが違う。

……なんて言えるか!? どんなセクハラだよ。


やはり無理だ。


なんとかシリルとの時間を増やしたい。

そう考えていたが、チャンスが回ってきた。しかもセルジュがそのチャンスを手放したのだ。これはどういうことだ? とは思ったが、逃すわけにはいかない。


セルジュが、王子と私の部屋の風呂をシリルに貸してくれないか? と言ってきたのだ。

つい、なんでだ? と聞いてしまったが、

「拷問と同じだ。」

と言うだけだった。


まあ、許可は出した。そして、シリルには私たちが大浴場にいってる間に入っていいと言っておいた。

部屋まで送るから、一人で帰らないように、ここで待っていてね。と約束させた。


部屋に帰ってきた私たちは目を見開いて見てしまった。王子も固まっていた。


風呂上りのほのかに赤らんだ顔、慌てて上がったのか、少し濡れた首筋に濡れた髪から落ちる雫。白く薄い服が拭ききれなかった水に濡れ、シリルの肌が透けている。艶らしさと、危うさを感じさせ妙な気を起こさせる。

私は思わず 黙ったまま、まじまじとその姿を見つめた。そそられる。


何か言わないとと、自分でも驚くくらいの掠れた声で話しかける。

「ぜ、全然髪が拭けていないではないか。それでは風邪を引いてしまう。そのタオルを貸して、向こうを向いてくれるかい? 拭いてあげる。」


怯えたようにタオルをぎゅっと握り締めていたけれど、

「シリル?」

と促すと、恐る恐る渡してきた。そして慌てたように後ろを向いて、腕を組むような格好になっている。


タオルを持ってシリルの後ろに行き、髪を拭こうとして一瞬固まった。

風呂上りのシリルは、サラシを巻いていないのだ。腕を組んで隠しているようだが、それでは隠せないほどの膨らみだ。

私はそれを見て無意識に生つばを飲んだ。


頭を振って欲情を振り落とす。

なにもなかったように、シリルの髪を拭く。シャンプーの香りが私の鼻腔をくすぐる。

どうしても触れたくなって……たまにわざと指先で首筋を撫でる。


すると、感じるのか、シリルはびくっとして息を吐き、一瞬背筋を反らせた。

組んでいた腕が外れて、柔らかそうな胸が揺れるのが見えた。


いつのまにか屹立している自分のそれを、背中に擦りつけたくて仕方がない。


幼いと思っていた彼女が放つ、女の色香。


荒い息になっていくのを止められない。


と、殿下が、私からタオルを取り上げ、シリルに渡した。

シリルの手を引きながら、部屋から出て行く殿下に、


「エルネスト。シリルはもう大丈夫だ。今日は私が送っていく。お前は、頭を冷やしておけ。」

ばっさりと言われた。

シリルに欲情していたことが、どう考えてもバレていた。


たしかに今はきつい。襲いそうだ。

セルジュが言っていたことが分かった気がする。

「拷問か。」

私はつい、呟いてしまった。

本当だな……。好きな女性が側にいて、尚且つあの色気。しかもそれに欲情しながら我慢を強いられるというのは、たしかに拷問だ。


反省しながら処理をした。

想像くらいは許して欲しい。



領地経営の授業で、フィルマンがシリルの領地に行くことになっていた。

フィルマンの土適性が羨ましくて仕方がない。


フィルマンが行くときは私もついていこう。



全校集会で今年、というか来年度だな。今年の四月から女子のこの士官養成学校への入学が認められたということが発表された。


私は知っていたが、これはシリルのおかげなのだ。



シリルが十五になった。

来年度は卒業だ。


そして、ジルベールが帰ってくる。

前よりは、シリルと仲良くなったけれど、まだ、ジルベールには遠く及ばない。


彼女が女性だと発表したら、本気で口説く。



ジルベールが帰ってきた。

彼女がジルベールに飛びついた。


彼女がこんなに歓迎するとは思いもしなかった。周囲のみんなも驚いている。


と、ジルベールが回りも省みずに、彼女に口付けしようとしている。

アホかーー!!


私はつい殴ってしまった。

セルジュも殴っていた。


シリルが驚いてヒールしているが、シリル、そんな獣に、優しいことはしなくていいんだよ!

殿下も絶対零度くらいの声でジルベールを弾劾している。


シリルは何をされたのか考えたらしく、きょとんとした顔をしていたと思ったが、みるみるうちに赤くなった。と思ったら、逃げていった。


なんだあの顔は!!

可愛すぎるだろう!!?


悶えていると、アレクサンドルが余計なことを言っている。

制服は渡さないといけないだろうけど、今はやばいと思うんだがな。ジルベールの理性など獣と一緒だぞ?


ジルベールは慌てて追いかけていった。

私たちも追いかける。



……出てこない。

殿下も段々イライラし始めている。


殿下はドンドンと扉を叩き、

「ジルベールそろそろ理事長に話しに行くぞ。早く来い。」と部屋の中に居るジルベールに話しかけた。


ジルベールは慌てて出てきたと思ったら、荒い息を吐いている。しかも思いっきり分かりやすいくらいそこが昂ぶっている。

殿下は頭を抱えた。


「ジルベールお前……。なにかやったな!?」


私はジルベールに詰め寄りなじりまくった。

彼女に何をしたんだ!?

口付けでもしたのか!?

あの柔らなそうな胸を触ったのか!?


ジルベールが反応した。

「エルネスト、どういうことだ? 俺のシリルのを見たのか? お前の言い方では、見たような感じだが、どういうことだ!?」


逆に詰め寄られた。


「まだ、お前のものと決まったわけではない。」


にらみ合っていると、殿下がジルベールを引きずって理事長室に連れて行った。


シリルが部屋から出てきた。

私は目を見開いて驚いた。シリルが女子の制服を着ている。


ガスパールが

「えええええっ!!?」

と、ものすごく驚いている。まさかこいつは、今まで気がつかなかったんじゃないだろうな?


もじもじとしているシリルに和みながら、とても似合っている。可愛い。と伝える。

うれしそうにはにかんだシリルに、私は鼻血がでるかと思った。

可愛すぎるだろう。

なんとなく、ジルベールが暴走してしまった理由がわかった。


そしてシリルは、性別を偽って騙していたことを謝っていた、そんなことは当然知っているが、ほんの少し罪悪感を味わわせてから仲直りをした。


そして、お手紙を、叔母さんに渡して欲しいとお願いされた。

まだ使いの者がいるから、すぐ届けた。


……その日のうちに、侯爵家から侍女がやってきた。

彼女の周りのガードがものすごく固くなった。


風呂上りの私のささやかな欲望も出せなくなってしまった。

くっそ!

ジルベールの所為だな!!



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