ガスパール アレクサンドル セルジュ視点
----ガスパール視点
魔術の授業では必ずと言っていいくらい、王子がシリルに絡むようになった。
ニヤニヤしながら、ドヤ顔でシリルの髪に触れ、頬に触れ、唇に触れ、首筋に触れる。
ついイラっとしてしまう。
俺は男色家ではない!
その顔が面白いらしく、王子はまたシリルに絡む。悪循環すぎる。
そう遊んでもいられなくなった。
模擬大会が近づいてきたのだ。
今回は、OBも見に来てくれるということで、俺は気合が入っている。
一心不乱に稽古をする。
アレクサンドルとはいつも決着がつかない。今回は負けるわけにはいかない。
ん? 今日は何かあったらしいな。
王子が夕食をご馳走してくれるようだ。あと一番風呂も。光栄なことだ!
って、シリルも一緒に入るのか。
いや、俺は男色家ではない。うん、見ない見ない見ない。
……しっかりタオルを巻いている。うん、やはりどう見ても男だった。俺はおかしいのかもしれない。……今度家に帰省したときには女性を用意してもらおう……。
夕食時に話していると、模擬大会があれよあれよという間に学園祭に変わっていた。王子とセルジュ殿すごいな……。
アレクサンドルでさえ、セルジュ殿のような考え方はしなかった。やはり平民の生活を知っているということは強みなのかもしれない。
学園祭当日。
俺は順調に勝ち進んだ。
ジルベールは一回戦で負けていた。まだ剣を持ち始めて短いからな。きついだろう。
そして三人に勝ち進んだのは、いつものやつらだった。俺とアレクサンドル、子爵の次男だ。
あああ、くそ!
優勝はアレクサンドルだ。
魔法も使っていた。隙がなかった……。
俺も魔法を剣と一緒に使えるようにしたほうがよかったか!?
ちなみに、二位は俺だ。三位が子爵な。
もっと考えてやらないとだめなんだな。
学園祭が終わった頃からジルベールが学園に来ない。休園しているようだ。
何かあったのだろうか?
シリルも寂しそうに見える。
シリルに行こうとすると、いつも王子やエルネスト様が側にいてそれとなくガードされるようになった。中々近寄れない。
一体何があったんだ?
----アレクサンドル視点
魔術の授業では、思った通り、王子はシリルに絡みだした。
ガスパールとジルベールがいい反応するからなんだろうが、しつこいな。
不敬罪になると悪いから言わないが。……庇うくらいはしてやらねばな。
この頃は父から違うことも頼まれるようになった。
平民枠で入ってきたみんなを、どのような部署に置くのが適切なのか、調査してくれと言うのだ。
模擬大会があるというのに、父にも困ったものだ。
聞き取りと調査、稽古の所為で、みんなと行動時間が合わなくなった。
シリルにはきちんと食事をしろ。と言い聞かせてから、私は調査をする。
希望を聞き取りしつつ、能力を見なければならないな……。
けっこうな仕事だと思うんだが! まあ、十名くらいはなんとかなるか。
ニコルやキッドは商会に行きたいようだ。
しかし応対はしっかりできるし、商会にやるのはもったいない。貴族と商会を繋ぐような部署があればぴったりかもしれない。
他はほとんどが文官だった。
文官の仕事は私には分からないから、ここからは父に任せよう。
セルジュ殿は王宮での文官とは違う魔法を使える仕官のようだな。
そのようなものは宮廷魔術師以外にあるのだろうか? これは父に考えてもらおう。
そのうち学園祭当日になった。
結論から言うと、私は優勝した。
魔法と剣を交えて使えるように稽古したのだ。
ガスパールは悔しがっていたが、お前も魔法が使えるのだからできるはずなんだがな。
学園祭が終わった頃からジルベールが学園に来ない。休園しているようだ。
何かあったのだろうか?
シリルも寂しそうで食事もあまり多く食べなくなった。
世話をしてやりたいが、いつも王子やエルネスト様が側にいるから、中々近寄れない。どうしたというんだ?
一体何があったんだ?
----セルジュ視点
武官の稽古に回復の魔法を使えないかというオファーが来た。
ガスパールだったか? こいつはいつもシリルの側をうろうろしてるやつだな。
気に食わないが、言ってることは使える。
武官の方にもコネを作るチャンスだ。
俺は提案に乗ることにした。
ガスパールがシリルにも稽古しないか? などと声をかけているが、こいつはアホか? この細腕で剣など持てるわけがないだろう? というか、怪我するかもしれないし絶対にだめだ!
翌日から稽古に向かうことになった。
周囲がでかいやつらばかりでシリルが怯えている。お前らもっと離れろ。
稽古中は暇だ。
早く誰か怪我しないかな。
誰か叫んでる。怪我第一号は誰だー。
って、
あぶねえ!!
身体が自然にシリルを庇っていた。怪我はなさそうだ。ああ、焦った……。
……じゃねぇ……俺は何をやっているんだ。怪我第一号は俺かよ! だっせぇ。しかし武官のくせに剣を手放すとか何やってんだ!?
と、シリルが俺を心配している。
声に出てたらしい。恥ずかしいなこれ……。
ジルベールが焦ってこっちに来ている。おせーよ。
庇ってもらってありがとうじゃねーよ! 動こうと思ったわけでなく自然に庇ってたんだよ!
あー、もうなんなんだ……。
まあ、いい。せっかくだから回復の練習だ。俺は怪我を治してもらった。
それからは、魔法の限界を覚えるためにヒールできる回数を覚えておけと教え、今日は解散だ。
魔術の授業の講師になった。
シリルとジルに裏技のことは教えないように釘をさした。あれは治せるとは言え、痛みはあるからな。あまりやりたくはない。
それはいいんだが、教えるのが王族にとか、コネどころじゃない。これはチャンスだ!
なんとか取り入って王宮に士官できるようにしないとな。
などとぼんやり自己紹介を聞いていると、王子がシリルに絡んでいた。
この王子面倒な感じだな。ジルベールも硬い顔してやがる。
少し牽制しとこう。
と、シリル授業聞いてなかったか。ああ、悪かったな。ここらはもう覚えているからなー。
うん、回復はさすがに上手くなった。
頭を撫でて褒めると、うれしそうに笑った。
本格的に魔術の授業が始まるが、王子がうざい。
なぜこんなにシリルに絡むんだ。しかもドヤ顔で。
……俺も庇いはするが、いちいちイラつく。しかし顔には出さないようにしないとな。
ある日の合同訓練で、シリルが倒れた。
ヒールの使いすぎだ。
慌てて近寄るが、公爵次男がシリルを抱き上げていた。……女慣れしていたら気がつくはずだが、どうなる?
この表情は……気付いたな。
これはやばいかもしれない。退園か?
……ジルベールの視線が怖すぎる。俺ですら鳥肌が立った。
王子から夕食の誘いだ。もちろん行く。
風呂だと!?
シリルはどうなる? まさか、それを確かめるためじゃないだろうな?
くそ、俺の魔法を使わないといけないか。
……あまり出したくはなかった。適性が闇のせいで、宮廷魔術師には不適格だと言われたんだからな。
なぜ闇はだめなんだ? 前例がないだけで不適格とかそんなのありか!?
っと、今はそれどころじゃない。
シリルに行かないと。
部屋に行ったはいいが、これが同じ部屋だと? シリルのいい香りがする。これは、やばい。
ジルベールが部屋に入れるのを抵抗するのも分かる。
ジルベールはここで毎日一緒に寝るとか、どんな拷問なんだ……。
ああ、それどころじゃなかった。
俺はシリルが女性だと分かっていることを告げ、幻影魔法を掛けることにした。
よし、これで大丈夫だろう。ジルベールがごちゃごちゃ言ってるが、どう見ても男だろ?
無事風呂もごまかせた。……なんとなく王子と公爵次男の視線が嫌な感じだったが、まあ大丈夫なはずだ。
風呂から魔術組みで食事するようになった。俺のコネ計画は一歩前進した。
その中の話で、模擬大会が学園祭になった。
王子が声を掛けるだけで、大々的になったなー。
まあ俺的には、顔を広げるチャンスがたくさんできるのだから、万々歳だな!
俺は学園祭には特殊な立ち位置にいるため、講師として出席することになった。
できるだけ顔を広げることを目標にする。俺は精力的に動いた。
闇魔法や幻影魔法にも興味を示してくれる貴族もいた。なぜ幻影魔法のことを知っているのかはなぞだが、強力なコネを手に入れた。この貴族は公爵だ。エルネストの父か。
学園祭が終わった頃からジルベールが学園に来ない。休園しているようだ。
何かあったのだろうか?
シリルも心なしか寂しそうだ。
いつも王子や公爵次男が側にいるから、中々近寄れない。……ガスパールやアレクサンドルさえ近寄れないようだ。
一体何があったんだ?




