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青春の短編歌  作者: 蓮葉
3/5

恋心

俺は今野湊という。

ただいま、女子の会話を立ち聞きしています。

これだけ聞いたらおかしな奴みたいだな。

いや、実際は好きでそんな事してるわけじゃなくて、これは、否応なく始まった女子の・・

なんて、そんな事言ってても仕方ない。

少し気になったんだ。


三人グループの女子が俺の席の近くで話し始めた。

「最近彼氏とどう?」

彼氏がいるのか。

「うん、まぁ、ね」

恥ずかしげな声で、女子が喋る。

こんな近くに男子がいるというのに、気にされない俺って・・。

「恋ねー、いいなぁ。私もしたい」

聞いてた女子の一人がそう言う。

「最近できないんだよねー」

また別の女子も言う。

「あ、わかる。なんか、恋する心を忘れちゃった感じ?」

私たち、年とったみたい?

そう言って笑いあう。


俺は我慢できず後ろを向いて、三人に話しかける。


「そもそも恋ってどんな感じよ?」


三人は一瞬驚いたが、えー聞き耳立ててたのぉ?と言ってくすくす笑う。

三人は、顔を見合わせて考えて

「もっと近くにいたいとか、あの人のことをもっと知りたいと思う感じかな」

恥ずかしがっていた、彼氏がいるという川口が言う。

「ていうか、恋してるってわかんない?好きだっていうさぁ、なんか」

それがわかんないから聞いているのだ。

「ていうか、こん兄は恋したことあんの?」

こん兄とは、俺のこと。

もうすでにほとんどの人が、俺をそう呼ぶ。

「んー、よくわかんない」

そう言うと。

ま、こん兄だから仕方ないか、と三人は頷く。


納得のツボがわからない。


そもそも、俺には歳の離れた妹と弟がいて、面倒をよく見ている。だから、どんな人にも面倒を焼きたくなってしまい、(祖母いわく)しまいには兄と呼ばれるまでに。

どこかの組長か、俺は。


なんとなく、人を放って置けないのだ。

もうすでに、ただのお節介かもしれないが、もうこれは俺には課せられた宿命である。

だからか、異性からは兄に見られ、(心外であるが)恋愛対象という枠から外れていたような気がする。


俺は知らずのうちに、そんな周りの環境と同調していたのかもしれない。


いくつか考えていたら、女子の会話はもう訳のわからない話に飛躍していて、俺は戦前離脱して、前を向いた。



恋なんて知らずにしてるものだよ。どんな感じかなんて、感じてみないとわからない。


声が聞こえた。

横を見ると声の主は片瀬だった。手には本が握られている。

彼女は、しっかりと俺に目を合わせてきた。それはあまりにまっすぐで、悲しげに俺の心に響いた。


・・そんなもん?


そんなもん


彼女は少し笑って、経験だよ、と囁いた。初めてみる、 なんとも言えないくらいの、明るい笑顔がそこには咲いていた。


じゃあ、俺も頑張んないとなあ


無理しないでね

大丈夫だよ、きっと


うん。


授業を知らせる鐘が鳴った。




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