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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第五章 ニセ勇者になったった
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第77話 普通の旅人になったった



 早いモノで、エルフの里に来てから14年、学園に入学してから8年の歳月が過ぎた。


 今日、俺たちは里を旅立つ。



「アイシャ、体に気を付けるんだよ。ジョシュ、娘を頼む。」

「アイシャ、既成事実を造るのよ。ジョシュ、孫の顔を早く見せてね。」

「うん、父さま、母さま。アイシャ頑張るよ!」

「HAHAHA、アルもシフも、今まで家族同様にしてくれて、本当にありがとうございました。

 アイシャのことは任せて下さい。あと、孫とかナニ言ってるか意味わかりません。」



 笑顔でバンバン叩かれる肩、そしてギリギリと握りしめられる掌が痛い。

 ……2人とも、身体強化してないよな?


 向こうでは、ブレタが鍛冶屋の親方と奥さんに別れを告げていた。

 餞別に色々持たされて、大荷物を背負っている。

 親子とも一見淡々としているが、別れを惜しんでいる雰囲気が伝わってきた。


 俺とアイシャも、良い笑顔のアル・シフ夫妻に手を振りながら、青野氏始め里の偉い人達に頭を下げて、里の南門から一歩踏み出す。


 かつて養母のロジーナを見送った場所で、今度は俺たちが見送られるのだ。



「アイシャ、ブレタ、あとオマケの5人、準備できたか?」

「うん!」「……済んだ」「「「「「 うっす、しゃっす、しゃっす 」」」」」



 俺14歳(見た目18くらい)、アイシャ13歳(見た目20代)、ブレタ29歳(見た目20くらい)、お供のチンピラ5人衆23歳(見た目15くらい)。

 一番幼いアイシャが一番大人に見えるという、変な集団である。



「よし。行くぞ、ブランカ!」



 少し大所帯だが、体長10mのブランカの背中には幌付きの鞍が付けられており、10人くらいは余裕で乗れる。

 となりのト○ロの猫○スみたいになってるのだ。



「ハッハッハッ、アォォォォン! < 承知しやしたアニキ、ささ、オイラを踏んで跨って股間の匂いを擦り付けてくだせぇ! > 」

「オマエ台無しだから喋るなよぉぉぉぉっ」



 こうして、俺たちは颯爽と旅立った……ということに記憶を改ざんしたい。




――――――――――――――――――――




 前日の夜。


 アル・シフ夫妻の家に、お世話になった方々をご招待し、これまでお世話になった御礼と別れの挨拶をして、後は宴会を開いた。


 学園長のブルーこと青野さん始め、里の長老と執行部から数人、教師のクローディアや庭師バーバラなど初期からの知人たち、学園で知り合った少年少女たち(チンピラ5人衆含む)、ブレタの両親・鍛冶屋のゲーリングさんご夫妻、お忍びでダークエルフの長ソウラさんに警護のリーネさん、更には人型となった地神竜ヨルムンガンドレギダスまで参加してくれて、改めて色んな人にお世話になったものだと感慨深い。


 正直、思ったよりも里に長居してしまったが、言語・歴史・社会情勢などの学問に各種魔法を修得し、肉体の成長を待ち、狩りスキルを始めとする生存術を叩き込まれるのに、チート勇者ではない凡人としては必要不可欠な期間だった。


 そして何より、青野氏から武術とスキル『精霊合体』・『光の壁』、ソウラさんからスキル『闇のとばり』を伝授され、さらに、光と闇の耐魔障壁スキルを統合して、聖属性の耐魔障壁、命名・『聖域サンクチュアリ』を編み出すまでに時間が掛かったのだ。



「ジョシュ、よく頑張ったのぅ。練度はまだまだじゃが、儂から教えてやることはもう何も無い。

 後は、経験を積み、自ら研鑽し、掴んだモノを練り上げて行くのじゃ。」

「はい、師匠!」



 ハイエルフであり、元日本人の転生者である青野氏。

 彼からは、言葉に尽くせぬほどの恩を受けた。

 第一印象から、心の中で「鬼ジジイ」などという仇名を付けていたのは内緒だ。



「もう少し若ければ、付いていってやるのじゃがのぉ。」

「アオノの言うとおりだ。本当に付いて行かなくて良いのか?」

「師匠は体を大事にして下さい。レギダスには師匠と里を護って貰わないと。

お二人とも、気持ちだけ有難く戴いておきますよ。」



 元勇者の青野氏と神竜のレギダスが、心配性の過保護なお爺ちゃんみたいになっている。


 昔、鬼ジジイ呼ばわりしていた頃の青野氏は、「最低あと200年は生きる」なんて言ってうそぶいてたものだが。

 武術の腕こそ落ちていないが、以前より体力が落ちたようだ。

 ここ最近の稽古では、練り上げた発剄の威力こそ昔のままでも、身体強化無しでは息が上がるようになっていた。

 それに、かつては巖のように聳える屈強な体を見上げていたのに、俺の成長によって、いつの間にか彼の身長を抜いてしまったのも寂しい。


 一方、レギダスの方は相変わらず少年の姿で変化は無い。

 神竜である彼が同行してくれれば、これ以上心強いものは無いが、彼を連れて行くと、里と外界の通路が絶たれてしまう。

 俺の一存で、里の守り神である彼を連れだすのは不味かろう。


 それに、アイシャが地神竜の角と融合して生き永らえた件で、旅の目的である『魔神の魂の器』候補が「高位アンデッド(吸血聖女)の肉体」から神竜の『誓いの角』へと変わったので、戦力増強は最重要課題ではない。

 ブレス対策の耐魔障壁スキル修得に成功した今、神竜相手の安全保障はある程度出来たと思う。

 これから先は、神竜と信頼関係を結ぶための交渉術を学ぶ方が重要だ。


 闇神竜アルタミラ、光神竜イクシオル、地神竜レギダス。


 一口に神竜と言っても、知り合った彼らを見る限り、性格も性別もバラバラで、個体差が大きかった。

 当面の目標は、他大陸に居る火・水の神竜から『誓いの角』を譲り受けることだが、交渉は難しいかもしれないな。



「何か困ったことがあれば、アイシャを通じて念を送るがいい。」

「ええ、他の神竜と出会って交渉に困ったら、御知恵を拝借するかもしれません。」

「我が姉妹たちは気性が荒いゆえ、くれぐれも気を付けるのだぞ。」

「はい、ありがとうございます」

「うむ、達者でな。アオノも壮健であれよ。」

「おぅ、ジョシュの子供の名付け親になるまでは死ねんわぃ。」



 軽く手を挙げて去って行くレギダスを、青野氏と2人で玄関まで見送った。


 里の守護神である地神竜が退場すると、一気に空気が緩み、俺とアイシャと青野氏以外の人々から、一斉にフゥッ、と安堵の溜息が漏れる。


 ロゴス山脈の主相手に皆が緊張するのも当然だが、特に長老と執行部の人々の疲労が激しいようだ。

 彼らにも挨拶しておこうか。



「この度は、私ごときの送別会に御大のご列席を賜り、恐悦至極に存じます。」



 片膝を着いて、両手を胸に当てるエルフ式の挨拶をする。

 青野氏に引合されて面識のある長老だが、礼節にうるさいタイプなので、あまりくだけた対応はNGだ。



「ぉ、おぉ、そなたの進む道に、大精霊の加護のあらんことを。

 ときに、地神竜さまとの約定では、里に居る間、そなたの便宜を図れ、とのことであった。

 我等は約定を果たした、ということで良いのだな?」

「はい、十分に良くして戴きました。ご厚情に感謝を。」



 エルフ原種主義者による俺への排斥工作が災いし、主流派である保守穏健派のエルフたちまで、俺の機嫌を損ねてレギダスに見放されるのではないか、と戦々恐々としていた。

 そのストレスも今夜で最後、となれば、彼らにとって俺の出立は喜ばしい出来事だろう。



「帝国との国境にある(旧ルメール領)関所では、この書面を提示して下さい。

 あなたの身分は、里から正式に派遣した巡視官となっております。

 各地の外交官・駐在情報武官グリューネワルトにも通達を回してありますので、初めて立ち寄る街では彼らを頼って下さい。」

「ご配慮、ありがとうございます。」



 里から出たこと無いという若手の執行部員グリューネワルトは、なんとなく官僚的だが、手回しが良いのは純粋に有難い。



「して、そなたの旅の目的地はどちらじゃな?」

「まずは、火神竜フレイムドレイクが住むという、西のレグルス大陸を目指します。

 その次は、水神竜リヴァイアサンを探すつもりです。」

「レグルス大陸でしたら、旧ルメール領のポートフォリアから、船でアルハンタールという港街へ向かうと良いでしょう。リヴァイアサンについては、大洋のどこにいるのか見当が着きません。各港街や漁村で聞き込みして、目撃情報を集めるしかありませんね。」

「分かりました。御忠告感謝いたします。」



 縄張りがあるらしい火神竜はともかく、水神竜に会うのは思ったより時間が掛かるかもしれないな。


 最終的にはこの大陸に戻り、神竜の角で錬成した『魔神の魂の器』をアイギスの街のどこかに用意しておかなければならないのだが。

 未来に魔神アイザルトが転生してくる時点が、俺にとっての特異点――タイムリミットになるので、あまりのんびりしていられない。


 ティタンダエルの話では、『最低でも2本、出来れば3本以上』という話だったが、魔神アイザルトの亜空間収納に光神竜の角がある。

 『竜の誓いの角』を一本でも手に入れたらアイギスを目指す、という方針にしよう。




――――――――――――――――――――




 ブランカに乗った俺たちは、地竜門――ロゴス隧道には向かわず、最短距離でロゴス山脈の森林地帯を突っ切るコースを選んだ。


 通常であれば、人喰猿マーダーバブーンの縄張りだの下位飛竜レッサーロプロスの生息地だの樹怪トレントの森だのに抵触する命がけのコースだが、体長10mの《魔王の卵》であるブランカの背中(2階建て家屋の屋上くらいの高さ)に居れば安全だ。

(正確には分からないが)時速100kmを超える速さで疾走するブランカに、追い付けるモンスターは居ない。

 問題は、乗り心地の方だが……



「……アニキぃ、ヤバイっすわ」

「ぅぷ」「……」「もう、らめぇ」


「お前ら吐くなよ!?」

「ガルルルル < オイラの鞍を汚したヤツはコロス > 」



 俺たちの座席はブランカの背中に太いロープや皮帯で装着した鞍なので、この時代の馬車で悪路を行くような衝撃こそないものの、上下動が激しい。

 普段から乗り慣れている俺、アイシャ、ブレタは平気なんだが、数mの高低差に揺さぶられ続けているお蔭で、オマケのチンピラ達が青い顔でぐったりしている。

 口元を抑えている奴は、限界が近いらしい。

 出発して3日、連日のように吐いているが、今日も乗り物酔いになったな。

 座席でゲロとか吐かれた日には、幌の中に臭いが充満して染みついて取れず、旅の間中悩まされること間違い無しなので、休憩を入れることに。



「仕方ない。ブランカ、一旦停まってくれ!」

「バウッ < わかりやしたアニキっ > 」



 この辺りはそろそろ帝国・旧ルメール領にも近い。

 このまま関所に乗り付ければ、詰所の兵士を刺激して間違いなく大混乱だから、手前でブランカの背中から降りて、帝国内で合流する予定だ。

 どうせ降りないといけないなら、そろそろ出入国関係の書類や、「エルフの里から徒歩で来ました」アピールのそれらしい旅支度を準備しようか。



「――ッ? グルルルル < アニキ、気を付けて > 」



 ピクリ、と耳を震わせたブランカの忠告に、俺たちエルフも注意を前方へ向ける。

 ……この魔力の流れと量、術式の構成は、範囲攻撃魔法?



「この先で、誰かが戦ってる!?」




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