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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第四章 村人Aになったった
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第76話 推定勇者(仮)になったった



 神竜の角と融合し大人化したアイシャ、魔法で傷口も癒えたブレタらと共に、大猿を仕留めた巨大な狛犬・ブランカ(シロ)を従え、街道へ向かおうとしたところ。



「動くなっ! 弓と魔法が、お前たちを狙っているぞ!!」



 いつの間にか、俺たちに武器や魔法を向け包囲していたエルフの狩人たち。



「邪悪な転生者を、眷属の準魔王もろとも討ち取れっ!」



 おまいら、俺たちを捜索サーチ救助レスキューに来たんじゃなかったのかよっ!?




――――――――――――――――――――




「貴様ら、無体な真似は許さん!」

「やめなさい、あなたたち! ジョシュもベレッタも里の住民じゃないの!」



 捜索隊に加わっていた鬼ジジイとシフが叫んでいるが。



「異分子の元勇者と普人族ヒュームは黙っていろ!」



 リーダー格の一声で、黙殺された。



「これは、我等高貴なるエルフの尊厳を守る闘い。半端者の半エルフで薄気味悪い転生者が、準魔王を操り里の実権を握ろうと企んでいる。その怪物を手懐けているのが何よりの証拠、断じて見過ごしにはできん!」



 殺気の白い光芒には細いものや薄いものもあったが、今の演説で迷いが吹っ切れたのか、全体の太さや明るさが揃い、クッキリしてきた。

 皆さん、る気になってしまったようだ。


 このピンチを乗り切るには。



<青野さん、精霊合体して彼らに非致死性拘束魔法スタン・バインドを!>

<無理じゃ、大量の契約精霊がひしめいておるせいで、野良精霊を集められんっ!>



 マジっすか。


 無詠唱でも、超加速でない通常の発動では、魔力の流れに敏感なエルフたちに察知され、スタンを抵抗レジストされてしまうだろう。


 彼らの殺意を押しとどめる方法は無いのか?

 矢だけなら魔法障壁でしのげそうだが、上空にひしめく火炎鳥ファイアバードやら嵐精ジンが放つ範囲魔法から逃れるすべはない。


 高まる緊張の中、ソレは突然の出来事だった。



「こんなこと、執行部グリューネワルトが許さないわ! みんな、一部の急進派に加担する気なの?」

「ぁ、かーさま!」

「アイシャ!? よせっ」



 止める間もなく、シフの声を聞きつけたアイシャがパッと駈け出したのだ。



「――!」



 急な動作に刺激されたのか、数人の射手が思わず矢を放ってしまった!


(間に、合わないっ――)


 肌も髪も白い半裸の美女が、まさか救出に来た目的の幼女だとは、誰も思わなかっただろう。

 遅れて駆け出した俺が魔法障壁を張るよりも早く。


ヒュン、ブスリ、ブスリ


 無慈悲な鏃が、アイシャの体に突き立った。




――――――――――――――――――――




「アイシャぁぁぁぁぁっ!?」

「……ぃっ」



 ぃっ?



「いったぁぁぁぁいっ、いたいよぉぉぉ」



ぽとり、ぽとり


 アイシャの体を貫いたかと思った矢は、突き刺さることなく地面に落ちた。



「アイシャ、無事か、怪我は??」



 駆け寄って確かめても、服に穴が開いただけで、傷口どころか出血の跡さえない。

 痛覚はあるようだが、おそろしく防御力の高い体らしい。



「ひどいよぉぉ、なんでみんなアイシャをいじめるのぉぉぉ?」



 幼女の口調で泣き叫ぶ白い美女。

 中身がアイシャだと知ってる俺が見ても、鬼気迫るものがある。



「アイシャ? アイシャなの??」



 我に返り、慌ててこちらに駆け寄ろうとするシフだが。



「いたいの、もう、ぃやぁぁぁぁぁぁっ!!」



ヴォォォォォォンッ


 全身を明々と輝かせたアイシャの姿。

 その膨大な魔力の波動に、誰もが息を呑み、硬直した。




――――――――――――――――――――




(この波動は、……アレじゃないか、ヤバイだろ!?)


 かつて、アルタミラの角で作った『神竜剣ムラクモ』。


 バハムート相手の戦闘で俺が勇者流剣術の斬撃を初めて放った時の、大量に魔力を注ぎ込んだムラクモの震動が、今のアイシャの状態にめっさ似てるんですけど!


 暴走すれば生命の危険を感じさせる、強大なエネルギー。



「アイシャ、落ち着くんだ、シフも迎えに来て」

「もう嫌ぁぁぁぁぁぁぁっ!」



 痛みで、猿たちに手足を捥がれたトラウマが呼び起されたのか。


 俺の目にしか見えない光の柱――殺気、とすら呼べない膨大な『気』の塊――が、空間をなぞっていくのを見てゾッとする。


 癇癪を起したアイシャが右手を振るうのだ。

 膨大なエネルギーの放出と共に!


 予測していた俺は、ブレタとブランカの居る側へ、慌てて回避。



「まずいぞぃ、この魔力はっ――!?」



 青野さんも気づいたみたいだが。



ドゴォォォォォォォンッ



 アイシャの右手から放たれたビームのようなもので、爆風と共に地面に大穴が開いた。

 飛び散る岩石の破片、噴き上げられた大量の土砂、噴き出す高温の水蒸気。



「バゥッ!<アニキ、オイラの影へ!>」


 俺とブレタを庇って立ち塞がったブランカの前に、魔力障壁を張り、必死に防ぐ。


 シフのことは心配だが、青野さんに任せるしかない。


 そのまま、エネルギーの巨大な柱が空間を薙いで行くに従い、山の彼方まで焼け焦げた割れ目ができ、上空の精霊たちが魔力を散らされ瞬時に蒸発する。



「ぜ、全員退避!」「か、勝てるわけないっ」「本物の魔王だ、逃げろぉぉ」



 降り注いだ土砂を振り払って、這う這うの体で逃げ出すエルフたち。


 包囲されていた時に数えた殺気の数と比べて、人数は減ってないようだ。

 振るわれたエネルギーの先には、幸いにも人が居なかったらしい。


 エルフたちはどうでもいいが、アイシャが手を汚すことにならなくて良かった。


 だが。



「踏み止まれ、エルフの勇者たちよ! アレを見よ! この戦い、必ずや地神竜ヨルムンガンドが我等に力を貸して下さる!!」



 リーダー格が指さす方向には。



『キシャァァァァァァッ<盟約の手続きによらず我が眠りを妨げるとは、一体何事だっ?>』



 地竜門の上空、月明かりをバックに、ロゴス山脈の主――とぐろを巻いた巨大な蛇が、怒りを顕わに滞空していた。




――――――――――――――――――――




 夜空を覆うような巨体が、俺たちの頭上で停止する。


 今にも押し潰されそうな圧迫感だ。



「グオォォォォォンッ!<先の一撃、只事ではあるまい。申し開きを聞こう。>」



 魔王候補の巨猿アスラ・バブーンが暴れても気に留めなかった地神竜ヨルムンガンドが、アイシャの一撃で目を覚ましたのだ。

 おそらく、地中深くまで衝撃が伝わったのだろう。

 一体、どれほどの威力なのか。



「アイシャ、落ち着くんだ――」



 爆風による土煙が収まった後には、ぐったりと横たわる白い美女。

 今の一撃で魔力を使い切ったのか?



「しっかりしろ!」

「にーさま、ちから抜けちゃった、立てないよぅ」



 怪我はないようだが、動けないらしい。

 もしかして、神竜の角で作った体は、魔力が動力源も兼ねてるのかも?

 土砂塗れの体を掘り起し、身体強化して抱きかかえる。



「ジョシュ、アイシャ!」

「無事か、小僧!」



 駆け寄って来るシフと鬼ジジイ。



「2人とも、無事でしたか!」

「かーさま……」

「この娘が、アイシャなのね。信じられないけど、面影があるわ。……ありがとう、ジョシュ、アイシャの命を救ってくれて。」

「ここへ来るまでに、経緯いきさつは話しておいたのじゃ。里で待っておるアルベルトも、きっと分かってくれるじゃろうて。」

「……はい。」



 批難されるのを覚悟していたが、なんとか受け入れて貰えそうだ。

 母娘を再会させられて、本当に良かった。


 だが、ホッとしたのもつかの間、エルフのリーダー格が、地神竜に訴え始めた。



地神竜ヨルムンガンドよ、此度の騒動、全てそこな転生者の仕業! 魔王と準魔王を従え、我等を支配せんと企んでおります。どうか、我等にご助力を!!」



 被害妄想なんだけど、アイシャの力を見た後では笑えないな。



「グルルルル……<お主らは……>」



 神竜の意識がこちらに向けられた途端。

 凄まじい重圧に、足元が頼り無くなり、胃がせり上がってくるような錯覚を覚える。


 次の瞬間、パァァッ、と巨大な蛇の体が光に包まれたかと思うと、幼い少年・レギダスの姿になって、俺たちの前に降り立った地神竜。

 しかし、圧倒的なプレッシャーが減じた訳ではない。


 どうする気だ? 対応を間違えたら、神竜と戦わなきゃならんのか……



「久しいな、アオノ。それにジョシュ。しかし、我の角を使って作ったのが、シャベルの次は生きた娘か。はっはっは、お主らには本当に驚かされるぞ。」



 めっちゃフレンドリーだった!




――――――――――――――――――――




「地神竜よ、何をしておられるのです! そいつが元凶ですぞ!」



 向こうでギャーギャー騒いでいるリーダー格には目もくれず。



「アオノよ、壮健のようで何より。しかし、どうしたというのだ? 我が盟友の座を譲るなど……。」

「儂も寄る年波じゃ。そろそろ後進に道を譲る時期よ。レギダス、そんな顔をするでない、今すぐくたばる訳ではないわ。」



 老人?たちのしんみりとした会話を邪魔しないように、こっちはこっちでやることやっておこう。



「ブレタ、ブランカ(シロ)に乗って逃げる準備を。」

「分かった。」

「シフ、アイシャに何か着る物ありませんか?」

「私の上着を羽織って。」

「ブランカ、俺の尻の臭いを嗅ぐのは後にしろ。みんなが乗れるように『伏せ』!」

「クゥ~ン<えぇ~、もっとクンカクンカさせてくだせ~>」



 そして、体を動かせないアイシャ。



「今から、俺の魔力を送ってやる、そうすれば、きっと動けるように……」



 どうやってたっけ?


 カゲミツが人化する前は、角を握って送り込んでたな。

 俺にムラクモをくれたお蔭で角の無いアルタミラには、人化した状態で……



「ダメダメ、ダメ絶対っ、幼女にあんな事やそんな事!」

「にーさま、どうしたの?」

「ななななんでもないよっ!」



 そうだ、竜形のアルタミラには、口に手を突っ込んで送ってたよ、たしか。



「今から指先に魔力を集めるから、それを吸ってくれ。」

「うん。」



 気功でMPを全回復した後、魔力をコントロールして、アイシャの口に含ませた指先に集める。

 指をチュパチュパされるのも、そこはかとなくエロい気がするが、あんな事やそんな事よりは良いだろう。



「――先ほどの一撃は、この娘か。なるほど、生きた伝説級武器レジェンダリーウェポンか、不憫な……。」



 いつの間にか、青野氏との会話を切り上げて、俺とアイシャを覗き込んでいた地神竜ヨルムンガンド



「我が角と融合した娘よ、汝は我が眷属に同じ。いつでも我を頼るがいい。」

「レギダスさん……。ほらアイシャ、御礼を言うんだよ。この人の角のお蔭でアイシャは助かったんだ。」

「ぁ、ありがとう。」



 恥ずかしいのか、俺の影に顔を隠してしまうアイシャ。

 まぁ、お受験もないこの世界で、平民の幼女にそんな大層な礼儀作法を期待されても困る。


 改めてシフから丁重な感謝の言葉を受けた後、俺をチラリと一瞥したレギダスは。



「この者、『ハーフエルフのジョシュ』を、勇者アオノの後継者、我が盟友と認めるっ!

 以後、ジョシュに剣を向けるは、我に刃向かうに等しいと知れ。

 証はこの娘、我が『誓いの角』と同化したアイシャ!

 この2人に便宜を図り、くれぐれも粗相の無いように頼む。」



 大音声で宣言した。




――――――――――――――――――――




「な、馬鹿な、我等純血のエルフを差し置いて、そのような半端者を盟友などと……」

「勘違いするな。我は『エルフという種族』と盟約を結んだのではない。

 人魔大戦で共に戦ったエルフの1人1人と盟約を結んだのだ。

 勇者アオノはその1人、今なお生き残る掛け替えのない我が戦友とも

 そのアオノが選んだ後継者に、そなたらが文句を言う権限などない。」

「そ、そんな……」

「もし、ジョシュが共に来いと言うなら、我はそなたらとロゴス山脈を捨てて、共に旅立つ覚悟だ。」



 がっくりと膝を付くリーダー格。

 泥まみれのエルフの集団を、どよ~んと沈んだ空気が包む。


 こうして、エルフ原種主義者たちによる、どさくさ紛れのハーフエルフ排斥運動は幕を下ろしたのだった。




――――――――――――――――――――




 その後は、特に何も起きなかった。


 見送るレギダスと別れ、俺と青野さん、アイシャとシフ母娘、ブレタの5人で、巨大狛犬ブランカに乗ってさっさと帰還。


 本来なら、捜索隊に御礼するなり労いの言葉を掛けるなりするところだが、俺たちを狙った相手にそんなの不要だし。

 全員がエルフ原種主義者だった訳ではないようだが、ブランカを見て恐怖に駆られたために、リーダー格の口上に乗せられてしまったようだ。

 青野さんから長老会議の方へ報告が行くので、全員にいずれ何らかの処分がされるだろう。


 問題は。



「ブランカのことですけど、どうしたらいいでしょう? 魔獣用の隷属紋も、進化したら消えちゃったみたいで。」



 野放しにしておく訳には行かないが、かと言って《魔王の卵》なんて魔物、里の中で飼えるのか?



「お主が接触したという《ザ・シード》の言葉を信じるなら、真の魔王とせぬために、お主が傍に居て躾けねばなるまい。儂が長老議会に掛け合って特例を認めて貰えるようにしよう。」

「それじゃぁ?」

「学園の敷地内で飼えるように便宜を図る。それと、お主を晴れて正式な学園生として受け入れよう。」

「ありがとうございます! 良かったな、ブランカ、一緒に住めるぞ?」

「バウっ!<あぁ、これからもアニキのことペロペロしていいんすねっ!>」



 ……犬の言葉を翻訳する『バ○リンガル』って商品、流行らなくなった理由が分かる気がする。



「正式な魔法の授業に加えて、武術の鍛錬もこれまで以上に仕込んでやるぞぃ!」

「はい! 頑張ります!」

「……一緒に頑張りましょう、ジョシュ。」



 ブレタもデレたようだし。



「にーさま、アイシャも一緒だよ!」

「ジョシュは寄宿舎に入るけど、同じ敷地内だからいつでも会えるわね。(娘をこんなカラダにした責任、取ってくれるのよね?)」

「は、はははいぃぃ。」



 家族と仲間と恩師とペット。


 もうしばらくの間、この里の暮らしを堪能するのも悪くない。





               第4章・完

拙作にここまでお付き合い戴き、誠にありがとうございます。


次章は、作中で数年後からスタートの予定。

まだ大まかなプロットしかないので、再開は1か月くらい後になるかもしれません。


今後とも、拙作をよろしくお願い申し上げます。

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