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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第四章 村人Aになったった
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第74話 魔王(仮)の飼主になったった



 巨猿アスラ・バブーンの物理・魔法、複数同時攻撃を予測し、避けられない、と諦めかけた時。



<この程度の相手に、諦めてなんとする?>

<青野さん!>



 『精霊合体』スキルで超加速した分身体になって現れ、俺たちを救った鬼ジジイことブルー校長・青野さん。


 俺にも精霊合体スキルを掛けてくれた上で、魔道具のシャベルの正体が、地神竜から受け取った『竜の誓いの角』であることを教えてくれた。



<封印の解放――盟約の書換えは、お主の注ぎ込んだ魔力で贖われた。伝説の武器を創り出し、準魔王を討つのじゃ!>



 だが、俺が求めたのは伝説の武器ではなく。


 もう助からない、と宣告されたハーフエルフの幼女、アイシャを生き永らえさせることだった。

 魔力を注ぎ込んだ神竜の角と融合し、面影を残しつつも、人化verアルタミラ並みのナイスバディな成人女性の体――人造生命体へと生まれ変わったアイシャ。



<……まさか、そんな使い方があるとはのぅ。じゃが、伝説級武器も無しに、準魔王をどうやって倒すつもりじゃ?>

<そいつは、俺に考えがあります。>




――――――――――――――――――――




 前世、魔神のアイザルトは魔王候補に会っている。


 全長10mの白い狛犬……駄犬シロ。

 駄犬が『降参するッス、魔王やめるッス』と言って俺に押し付けてきた『赤い半透明な球』が、魔物を『魔王の卵』へと変貌させていた元凶だ。


 超加速状態の分身体で魔力を操ることが出来るのは、アイシャと融合させた神竜の角で実証済み。

 魔力操作によって巨猿から例のタマを引っこ抜いてやれば、元のモンスターに戻るだろう。

 そうなれば、もはや大した脅威ではない。


 ただ、『勇者と魔王が大規模・高威力なスキルを撃ち合って魔素を消費することで、この星の魔素濃度を調節する』という、精神生命体の意図した趣旨には適わないかもしれないが。


(俺はチート勇者じゃなくって、あくまで村人Aの転生者なんだ。正攻法で魔王候補を討伐する義務は無いよね?)


 アイシャと、彼女を助けるために命を懸けてくれたブレタ、そしてブランカ。

 今は、どんな方法でもいいから、彼女らを守るため、目の前の危険を排除するのが最優先だろう。


 静止しているように見える巨猿に、分身体で接近する。


 分身体は実体ではなく精霊を集合させたエネルギー体だが、相手にも実体と重なるエネルギーのフィールドがあるため、体を素通りしようとすると、磁石の反発に似た軽い抵抗があった。

 俺の魔力を押し込んで、反発具合から該当部分の魔力濃度を探知していく。


(この辺か?)


 ヘソの少し下、人間なら臍下丹田と呼ばれるあたりに大きな魔力のかたまりを感じた。


 頭を巨猿の毛皮に突っ込むと、皮膚を通り抜け、体の中へダイブする。

 肉眼だったら真っ暗で何も見えないはずだが、分身体の目には、魔力の分布が淡い光の地図のように映った。

 明るい部分が、魔力濃度の高い部分だ。

 魔力の通り道ともいうべき経絡けいらくにそって、魔力の溜まっている部位がある。


 それらの中に、直径1mほど、一際大きく、明るい光の球。


(間違いない、きっとコレだ)


 経絡との繋がりを、俺の魔力をねじ込むことで、ブツリ、ブツリと引き剥がしていく。


ポコリ


 光の球が浮いた状態になった。

 完全に、繋がりを断ち切ったようだ。

 後は、魔力で押しながら外へ弾き出してやれば……


 分身体で光の球を抱え上げようとした瞬間。


ずぞぞぞぞぞ


 俺の肉体を模した分身体と、光の球が癒着し始めた!


(ぅお、吸い込まれ、いや、侵入されるっ!? やめろぉぉぉぉぉっ!)


 為すすべもなく、分身体の視界が、眩い光で埋め尽くされた。




――――――――――――――――――――




 夢の中のように、突如、景色が切り替わっていた。


 どこともしれない場所から光の差す、薄明るい世界。

 霧の中か雲の中にいるようだが、視界が塞がれているわけではなく、目の前に立つ人物はクッキリと見える。



『ヤぁ、ヒサシぶり。ゲンキにシテるヨウダね。』



 地味な紺色のスーツを着た、すらりとした長身の男。

 ただし……顔が猿だ!?



「お、おまえ誰だよ? さっきの巨猿か? 俺の精神を侵食して乗っ取る気なのか??」

『あァ、すまないネ、直前のヤドヌシに影響サレるんだヨ、この《ザ・シード》は。』



 某怪盗3世みたいなサル顔ではなく、ガチで凶暴なバブーンの顔。

 口蓋が人間の形と違うためか、若干聞き取りにくい。



ザ・シードだって??」

『ソうだヨ、魔モノをマ王候補に、ヒトを超ジンに。キョウセイ的に進化させる『種』、ソウいうことになってル。』



 両手で顔を覆い、ゴシゴシと擦ったかと思うと……



「おま、……いえ、あなたは」

「これで分かるよね?」



 ばさり、と背中に純白の神々しい翼。

 白人系の整った顔立ちに、碧い瞳、輝くような金髪のイケメン。



「風神ティタンダエル!」



 俺をこの時代に再転生させてくれた風神が、何故いま此処に??




――――――――――――――――――――




「ああ、言っておくけど、このボクは本体じゃないよ。

 『御霊分みたまわけ』によって本体から切り離された分体、特定の機能だけを果たしている廉価版、下位レプリカみたいなモノだと思ってくれれば。

 まぁ、本体とのメッセンジャーくらいは出来るけどね、今みたいに。」

「っていうか、何故この時代のアナタが俺を知ってるんです? 俺たちが出会うのは、ここより未来の時間なのに」

精神生命体ボクたちが何なのか思い出して欲しいなぁ。

 『高次元生命体』なんだから、時間軸の移動もできるし、平行世界の転移もできる。

 この分体ボクは未来の本体ボクとも繋がって情報を共有してるよ。」



 ん?

 未来と知識を共有できる、ってことは、未来の事なんでも分かるのか?



「待って下さい、それじゃ、アイザルトが失敗した未来についても、予め知ってたんですか?」

「もちろん、この星の生命が滅びた未来を知ってるからこそ、キミに教えてあげたんじゃないか。

 でも、この時間軸から分岐した別の時間軸だって存在してる。

 キミの主観では観測できないだろうけど、存在自体が特異点となりうるキミならば、この時間軸を分岐させ、別の未来へ繋げることが出来るんだ。

 そのために再転生させてあげたでしょ?」



 大雑把なSFっぽい話はよくわからんが。



「……それじゃ、この時代で、妹、アイシャがあんな目に遭うことも、知ってたんですか?」



 たまたま、神竜の角の封印が解けたから、命だけは救うことが出来た。

 しかし、彼女は人間ではないナニカ別のモノに変えられてしまったのだ、俺の一存で。

 アイシャは、それにアルやシフは、俺を許してくれるだろうか。



「あなたたちにとって、人間はただの盤上の駒ですか!」



 抑えたつもりだったが、声に批難の色が滲んだ。

 ここで魔王候補を産み出したのはコイツだ。

 それなのに、無関心を決め込んで、被害者が出るのをただ見ていただけなのか?、と。



「あぁ。彼女のことで心を痛めてるのかぃ? 地球上の全生命と秤にかけるなら、彼女1人の運命など取るに足りないじゃないか。」

「ぐっ」



 理屈としてはその通りなのか。

 『大を生かすために小を捨てる』、それが出来なければいけないのか。



「たまたまキミと縁のあっただけの人間を、いちいち特別扱いなんて出来ないよ。」

「……」



 そうだ、彼らは本物の神ではない。

 外宇宙から飛来した精神生命体で、彼らなりの目的があって協力してくれているだけの存在に過ぎない。

 いや、仮に全知全能の神なんてものがホントに居たとしても、個々人の幸不幸になんて興味無いのかもしれないな。



「それに、元々、キミが再転生しなければ、彼女は産まれていない。隧道で両親が命を落としていたはずだからね。」



 そうか、既に、俺の再転生が他人の運命を変えてしまってるのか。



「しかし、今回の魔王候補の件は、収穫が大きかったはずだよ。

 キミは正しい選択をしたんだ。」


「……何のことです?」

「第4の選択肢さ。

 伝説級の武器を手に入れるチャンスを棒に振ってまで、妹の生命維持のために体を造り上げた。

 この成功で、キミが未来のアイギスに用意するべき『魂の器』として、神竜の角で造る体が候補に浮上してきたじゃないか。」

「――っ!」



 これはいけるかもしれない!

 今までの肉体候補よりも、現実味が出てきた。



「未来のアイザルトは、亜空間に光神竜バハムートから受け取った『竜の誓いの角』を手つかずで持ってます! アレで体が造れるなら、もうゴールしたようなもんじゃないですか?」

「う~ん、仮にも『魔神の魂の器』だからね、最低でも2本、出来れば3本は欲しいところかな。」



 神龍シェンロンボールならぬ、神竜の角集めか。


 オラ、ワクワクしてきたぞ!




――――――――――――――――――――




「それじゃ、ボクは行くよ。魔王候補を産み出すのが役目だから。

 このままキミに融合してもいいけど、それじゃ迷惑するだろ? モンスター化したら目的に差し支えるだろうからね。

 次の宿主を探さなきゃ。……アレなんか良いなぁ。」



 いつの間にか風景が切り替わり、静止した夜の森に戻っていた。

 《ザ・シード》の視線が向いている先は……


(ブランカぇ……)


 巨猿から叩き出したタマがどうなるかは、あまり考えないようにしていた。

 っていうか、薄々分かってたんだ。


 ダイアーウルフ自体は珍しい魔物ではない。

 だが、白いダイアーウルフで、通常の倍以上ある全長5mの大狼、なんてそうザラには居ない。

 そして何より、今から赤いタマを叩き出すこの状況、とくれば。


 ……駄犬シロは、ブランカの未来の姿だ。


 まぁ、他の凶暴なモンスターが魔王候補になるよりは、変態でも聞き分けのいい駄犬に候補になって貰った方が良いかもしれない。


(すまん、ブランカ。悪く思わないでくれ。)


 凛々しく賢い我が愛犬が、何故にあんな変態犬になるのか、大いなる謎である。

 しかし、これだけは釘を刺しておかなければ。



「俺の白狼ブランカが本物の魔王になっては困ります。憑りついてもいいけど、本物の魔王には進化させないで下さい!」

「あぁ、その件ね~。

 ボクが進化させるのは、あくまでも卵――『魔王(仮)』の段階まで。

 そこから先の『魔王(真)』に覚醒するかどうかは、融合した個体の意思が尊重されるんだ。

 キミが飼主としてちゃんとしつけてくれれば、覚醒しないと思うよ、たぶん。」

「……まぁ、それなら。」



 こうして、俺は愛犬を人身御供に差し出した。

 ……ごめんよ、ブランカ。




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