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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第一章 異世界転生者になったった
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第8話 変身ヒーローになったった

           


 金属で舗装された岩棚の床を蹴り、天狗の団扇を握りしめ、下に見える空――『死の大空洞』――目がけて身を投げた俺。



「しまった、やってみたらすげぇ怖ぇ!?」



 今さら怯える俺の気持ちとは無関係に、自由落下でどんどん加速して行く。



「アルタミラっ、アルタミラさん、アルタミラ様ぁ!


 早くっ、早く、レビテーション掛けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



< 何よ、この程度で音をあげる気?


 闇竜を統べる者にして、天空を駆ける漆黒の女王、この神竜アルタミラは、誰よりも速いのよっ!!


 ワタシのシモベなら、根性見せなさいっ、アゲていくわよっ!


 ァハハッ、アハハ、アハハハハハァァァァッ!! >


 

 ……駄目だコイツ、早くなんとかしないと。




 くそ、このまま加速し続ければ、いくら俺が丈夫でも死ぬだろ、たぶん。

 アルタミラはやっぱりアルタミラだった。

 駄竜をあてにしていたら、間違いなく死ぬる。



 ――何か、何かできることは無いのか?

 


 あまりの速度に、風圧で目を開けていられない。

 ゴーグルがあれば、…って、そういえば天狗面があるわ。


 ――天狗面、装着!



 後、着地に備えて下駄も履いておこう、ヤケクソ的な意味で。


 ――高下駄、装着!



 そして現れる恥ずかしいエフェクト――、純白の翼!!




「天狗レェェェッド、見、参ッ!!」



 もう、どうにでもな~れ。


 その瞬間、翼が輝いた!




――――――――――――――――――――――――――――――



 身を切るような風が、何かに遮られる。


 おそらく、俺を中心に何らかの力場が展開されているのだろう。

 なんとかフィールド全開!な感じである。


 最初に翼を出した時は、突っ立ってただけだから気が付かなかったのか?


 そして、今、俺がしているのは自由落下ではない。

 俺は今、自分の意思で、下に向かって「飛んでいる」のだ。


 心眼で見た翼は、


・天狗の翼:風神ティターンダエルの翼を模したエフェクト。

      3点セット装着時、常時発動。

      飛行能力付与。

      風防機能有り。



「見た目だけのエフェクトじゃなかったのかよ?

 風神様、まじG.J!!」



< え!?

 やだ、なにこの翼?


 ……ちょっとカッコいいかも。 >



 かっこいいの基準は人それぞれだな。

 スルーしておく。



 もはや、恐怖は感じない。


 この飛翔は、俺の意思で完全にコントロールされている。


 地面が目前まで迫っていたが、機首、じゃなく首を上げ、地面と水平な飛行へと移る。



「アルタミラの体と、子ドラゴンはどこだ!?」



 飛行に気を取られて探知画面を忘れていた。


 2D画面を範囲最大で開くと、進行方向から見て左後方に、赤い輝点と青い輝点を確認。

 青は子ドラゴン、赤は……やっぱアルタミラだよな。


 俺は、急旋回すると、2つの輝点を目指し、さらに速度を上げる。



「子ドラゴンと、アルタミラの体、どちらも守ってみせるっ!」



 ……これ、死亡フラグとかじゃないよね?




――――――――――――――――――――――――――――――



 すぐに、黒く巨大な山脈のようなモノが、土埃を巻き上げて暴走する姿が見えてきた。

 さっきのブラックドラゴンのゾンビなんて、かわいいもんだ。


 子ドラゴンが必死に攻撃を避け続けている!


 2足歩行で、なんとなくドラゴンらしくない人間っぽい動きだが、身体能力を生かしてジグザグに移動したり、時折ジャンプしアルタミラの背中を踏み台にして後方に抜けたりと、子ドラゴンが一方的に翻弄しているようだ。


 だが、一撃でも当たればお終いだろう、あの爪と牙と尻尾なら。


 まずはこの子をレスキューだ!


 子ドラゴンが地面に着地するタイミングを見計らって、一気に降下し、背中から抱え上げて急上昇する。



「< みぃ~! みぃ~!(おかーさん! 来てくれたんだ!) >」



 今の俺からしたら、子ドラゴンも小学校低学年くらいのサイズなので、抱き上げるのも不可能じゃない。


 一旦、牙や尻尾の届かない高さまで退避!



「アルタミラのドラゴンゾンビって、空飛べるの?」



 さっきの広間は飛び回るには狭かったせいか、ドラゴンゾンビは走って突進してきた。



< ドラゴンの体は、翼の力だけでは空に持ちあがらないの。

 翼は滑空したり方向転換する時の補助に使うだけ。

 浮遊魔法で浮かび上がってから、飛翔魔法で飛んでるのよ。

 知性も精神もMPもないゾンビに魔法は使えないから、アレが飛ぶことは無いわね。 >



「よし、ここから延々とヒール撃ってれば勝つる!」



 なんて思ってた時期が俺にもありました。


 超特大のドラゴンゾンビは、突如、首をもたげて上空へ逃げた俺達に向け、カッと顎を開くと、その口からどす黒いブレスを吐き出してきた!

 

 避け様の無い範囲攻撃――いや、届かないところまで距離を取れば!


 黒い霧に追い付かれない速さで急上昇し、何とかブレスの範囲からは逃れた。



「ちょっと、アルタミラさんっ!?

 なんすか、アレ、聞いてないっスよ?」



< さすが、ワタシの体のアンデッドね!


 ブレスの撃てるドラゴンゾンビなんて、そんじょそこらに居ないわよ? >



「褒めてないから!」



 弱点やスキルを確認せずに近づいたのは迂闊だった。

 改めて、心眼で見てみる。


≪―≫

 種族: デスバハムート

 LV: 935

――――――――――――――――

【ステータス】

HP : * / *

MP : ―

力  : 792

体力 : 812

知力 : ―

精神 : ―

器用さ: 223

速さ : 255

運  : ―

――――――――――――――――

【スキル】

・イービルブレス LV 1

・邪神の傀儡

――――――――――――――――

【魔法】    

― 

――――――――――――――――

【属性】

 邪・闇

――――――――――――――――

【耐性】 

物理攻撃ダメージ半減  

邪・闇・地属性の攻撃無効  

聖属性の攻撃ダメージ2倍

魅了・麻痺・毒・睡眠の状態異常無効

――――――――――――――――

【加護】

 邪神

――――――――――――――――



 約100万あるHPは、7桁だからやっぱり表示されなかった。

 LVは生前のままのようだ。

 各ステータスは生前より低くなってるはずだが、特に力と体力の値はさすがとしか言いようが無い高さ。


 しかし、LV935のアルタミラですらこの値、ってことは、俺の体力・精神ステータスの1000って値はこの世界の上限なのだろうか?

 もしそうなら、防御力に関してだけは、この世界で無敵ってことになる。


 デスバハムートの弱点は、さっきのドラゴンゾンビと同じで聖属性だな。


 問題は、さっきのブレス。


・イ―ビルブレス:邪属性の竜のブレス。

        負の耐久力(HP)を毒素に変換して吐き出す。

        石化・魅了・麻痺・毒・睡眠の状態異常付与。

        攻撃力は使用するHPに依存。

射程約500m。


 ドラゴンのブレスって、魔法攻撃のイメージだったんだけどな。

 状態異常は睡眠以外無効化できるから、何とかなりそうだけど。


 問題は邪ブレスの威力だ。

 ……よりにもよって、HPの使用量に依存とか。


 HP100万超えのアルタミラの場合、仮にHP1万を使っても100回以上撃てる。

 それに、HPの自然回復量も考慮すれば、ほぼ無限に撃てるのかもしれない。

 HP1万の邪ブレスの威力は数値計算でどれくらいになるのか。

 それどころか、一回に1万じゃなく10万とか使われたら?


 ――ヤバい、俺の防御力でも無理だろ?


 ブレスの射程外からヒールが届けば良いんだが、さっきから何度唱えてもデスバハムートの体が光に包まれることは無かった。


 ダメージ覚悟で突っ込んで、ヒールを掛けて離脱する戦法しかないか。


 俺のHPも心眼で表示出来ないんだから、5桁以上、最低でも1万はあるはず。

 ダメージの判定方法が不明だけど、即死しなければ自分にヒールで回復できる。


 しかし、アルタミラぇ。

 HP100万て……ヒール何発掛ければいいのやら。


 そう言えば、ヒールの回復量ってどんな計算になってるんだ?

 心眼で確認。


・ヒール:怪我の治療、耐久力(HP)の回復、

     必要MP5以上。

     相手の魔法抵抗力無視。

     回復量は{(知力+精神)×聖魔法LV×(使用MP/5)}。



 心眼のLVが上がったお陰で、前よりちょっと説明が詳しくなってる。

 俺の知力5、精神1000、魔法LV12、あとは使用MPか。

 使用MPを必要最低限の5とすれば、1005×12×1=12060。

 もし、使用MPを500にすると、1005×12×100=……、120万6千か。


 いけるかも知れない!



 今までMP使用量を調節したことがないので、500以上の判断が出来ないが、MPの半分もぶち込めばいいだろう。

 なにせ、MPも5桁以上あるんだから。


 後は、殺されずに近づく方法だけだな。

 危ないから、子ドラゴンを安全な場所まで運ぼう。





 子ドラゴンの安全確保のため、デスバハムートから離れた場所へ向かおうとするが、特大ゾンビは上空の俺達を執拗に追跡してくる。


 いっそ、暗黒竜の巣窟まで戻るか?



「< みゅ? にゃぉ?(おかーさん? どこ行くの?) >」



「キミを安全な場所まで送ってから、アイツを倒すんだよ。

 ヒール掛けるには、ブレスの中を突っ切るしか無いからね。」



 俺が更なる上方へ向かおうとすると、



< 待って!

 この子なら、あのアンデッドのブレスに対抗できるかもしれない! >



「と、仰いますと?」

 


<この子を鑑定してみて!>



≪―≫

 種族: 神竜人

 LV: 1

――――――――――――――――

【ステータス】

HP : 1000/1000

MP :  500/500

力  : 50

体力 : 60

知力 : 50

精神 : 50

器用さ: 40

速さ : 100

運  : 100

――――――――――――――――

【スキル】

・ホーリーブレス  LV 1

・ライトニング   LV 1

・ダークブレス   LV 1

・ペトロブレス   LV 1

・アイスブレス   LV 1

・ファイアブレス  LV 1

・トルネードブレス LV 1

・サンクチュアリ  LV 1

・覚醒

・念話

・人化

――――――――――――――――

【魔法】    

 ・光魔法  LV 1

 ・闇魔法  LV 1

 ・地魔法  LV 1

 ・水魔法  LV 1

 ・火魔法  LV 1

 ・風魔法  LV 1

――――――――――――――――

【属性】

 聖・光・闇

――――――――――――――――

【耐性】 

物理攻撃ダメージ半減  

聖・光・闇・地・水・火・風属性の攻撃無効  

石化・魅了・麻痺・毒・混乱・睡眠の状態異常無効

――――――――――――――――

【加護】

 聖神

 光神

 闇神

――――――――――――――――




 ちょっ、何この勇者っぽいスキルや魔法や加護のオンパレード!?



「この子、アルタミラの実子なんだよね、なんでダークバハムートじゃないの?

 それに、この主人公っぽい能力は一体!?」



< その子は、ワタシとカレ、そうヒュームの勇者ヨシーロとの愛の結晶なのよ!! >



「なんだってぇぇぇ!?

 ……って、まぁいっか、後回しで。」



 ヨシーロはきっとヨシヒロかヤシロだな。

 日本語の発音はこちらの世界じゃ無理なんだろう。

 俺同様、異世界に転生とか転移してきた童貞、もとい同胞の可能性が高い。



< ちょっとぉ、色々聞きたいことがあるでしょぉっ?


 ワタシとカレの愛の馴れ初めとか、

 カレがいかにワタシを愛してくれたかとか―― >



 いや、それよりも、遺伝子的にヒトとドラゴンの間に子が出来ることの方が、……ってファンタジーか。



「そんなことより、早くイービルブレスに対抗できる手段を聞きたいデース!」



< ……むぅ、確かにそれどころじゃなかったわね。


 勇者ヨシーロには、邪属性の攻撃を完全に遮断する障壁を作り出す力があったの。

 この子もそれを受け継いでいるはず! >



 障壁、っていうと、怪しいのは――、



「サンクチュアリ(聖域)かな?」



・サンクチュアリ:邪・光・闇・地・水・火・風属性攻撃を遮断する結界。

         結界の範囲は、半径{精神×スキルLV}タル。

         展開中MP消費。 

         消費MP1ザンあたり{スキルLV×100/(知力+精神)}。



 なんというチートバリア!!



 結界の範囲を決めるのは、精神50にLV1、あとタルって何だろう、長さの単位?

 1ザンって何秒?何分?

 1ザンあたり100÷(60+50)=0.909……、うん、無視しておk!

 まぁ、障壁出してみれば分る!



「子ドラゴン!って言い難いな、名前決めとくんだった。

 とにかく、サンクチュアリっての使える?」



「< みゃー!(まかせて!) >」



 腕の中の子ドラゴンを中心に、音も無く光がはじけて拡がっていく!

 それは、俺達を包む半径50mくらいの球状の光の壁となった。



「さぁ、突っ込むぞ!

 デスバハムートを倒して、アルタミラの体を復活させてやる!」



 俺達は、ブレスで迎撃しようと待ち構えるデスバハムートへ向かって、急降下で突撃した!






注 1タル=1メートル、1ザン=1秒です。

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