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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第四章 村人Aになったった
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第71話 猿ハンターになったった

 白狼ブランカに乗って、真銀ミスリルの天然鉱脈を探しにロゴス隧道へ向かったらしいアイシャ。

 アル達の制止の声を振り切り、彼女を追い掛けようとした俺の行く手を遮るように、赤羚羊ヤクールに跨った武者が。



「後ろに乗って。目的地の指示を」



 それは、槍と手斧で武装し、革鎧に身を固めた炭鉱族ドワーフの女戦士、ブレタだった。




――――――――――――――――――――




 里から地竜門までは、街道の一本道。

 身体強化して走っていくつもりだったが、……少し頭に血が昇っていたらしい。

 現着した時疲れ果てていたら意味が無いし、騎獣に乗っていけるならそうすべきだ。


 ブレタに対して、わだかまりが無いわけではない。

 だが、一刻一秒を争うこの場面で、差し伸べられた手を払うほど、俺もガキじゃない。



「恩に着ます。アイシャ達が向かったのは、ロゴス隧道トンネルです!」

「わかった。森を直進してショートカットする。」



 差し出された手に掴まって、赤羚羊ヤクールの背に跨る。

 ヤクールは、赤い毛並に捻じれた角を持つ、馬より少し小さい体躯の、カモシカのような動物だ。

 平地では馬の方が早いだろうが、整備されていない山野を駆け回るにはうってつけの騎獣。



「振り落とされないように気を付けて。」

「はい!」



 ブレタの腰にしっかり手を回すと、勢いよく駆け出すヤクール。

 街道を逸れ、森の中の獣道へずんずん入って行く。



「前方、枝が張り出してる。伏せて」

「川幅の狭いところを探して飛び越える。ジャンプに備えて」



 暗視の効く炭鉱族ドワーフのブレタには、夜間の森の中も苦にならないようだ。


 急斜面を駆け上がり、細かい足場に着地しながら崖を降り、狭い渓流を飛び越え、ジェットコースターのように目まぐるしい。

 上下動が激しく、振り落とされないようにするのが精一杯。

 途中、夜行性動物の気配や、モンスターが放つ白い殺気を感じ取ったが、追いかけてくる者は無かった。

 追い付けないと分かっているのかもしれない。


 俺に出来るのは、ブレタを信用してしがみつくことだけだった。




――――――――――――――――――――




「もうすぐ地竜門。準備して」



 目的地に近づく頃には、慣れない赤羚羊ヤクールの騎乗で足がガクガクしていたが。



「――了解!」



 身体強化して街道を走っていたら、とてもこの短時間では到着できなかったはず。

 ヤクールが並足になったところで、呼吸を整え、気功の調息法を実施する。

 そして、突入に備え身体強化を掛けようとしたところで。



「待って! 魔法を発動すれば、そのシャベルに魔力を吸い取られる」



(――そうだった!)


 布ケースにしまって背中に括り付けた魔道具のシャベル。

 こいつを持ったままで、魔法は使えない。


 そういえば、日課の鍛錬の後、着替えもせずにアルの図書館へ直行したんだった。


 俺の装備は「布のふく」「皮のくつ」「なぞのスコップ」の3種類だけ。

 両親の形見・ミスリルの短刀2本組や、ロジーナがくれた外套マントを装備してくるべきだった。


(どんだけ頭に血がのぼってたんだよ、俺!?)


 アイシャたちのことが心配なのと、ブランカが付いているのに戻って来れないことから考えて、今のジョシュになって初の実戦を経験する可能性がある。

 不安と興奮と緊張で、冷静さの欠片も無くなっていたようだ。


 ミスリルの短刀さえあれば、勇者流剣術の斬撃『なんたらブレイド』を撃てるのに。

 前世の魔神アイザルトの時は亜空間からアイテムを引き出せたので、装備の点検をすっかり失念していた。

 悔やんでも、取りに戻る時間は無い。


(どうする、シャベルをここに置いていくか?)


 ――いや、俺はまだ勇者流拳法のスキルを獲得していない。


 素手では強力な『無属性魔法+気』の打撃を撃つことは出来ない。

 八卦掌も素人の生兵法レベル。

 対人ならまだしも、ロゴス隧道のモンスター相手に通用するとは思えない。

 この際、シャベルでも、素手よりはマシだろう。


 それに、俺1人ではなく、味方が居る。



「ベレッタさん、俺の武器はシャベル一本。――頼りにしてますよ?」

「……まかせて」



 槍を扱くブレタが、頼もしく見えた。




――――――――――――――――――――




 地竜門の前に着き、ヤクールから降りる。

 怯えたヤクールが、どう宥めても隧道内には入ろうとしないからだ。


 ブレタが鼻づらを撫でながら何か囁くと、ヤクールはキュゥ、と一声鳴いて森に駆け込んでいった。



「帰りはどうするんです?」

「呼べば戻ってくる。繋いでおけばモンスターの餌。」



 なるほど、森の中を自由に駆けまわっている方が、ヤクールには安全なのだろう。



「それじゃ行きましょうか」

「待って」



 地面にしゃがみ込んだブレタが、何かを調べている……



「大きい狼の足跡。隧道内じゃなく、森に向かってる。それだけじゃない、複数の魔獣の足跡……」



――キュィィィィィィッ



「あの鳴き声は!?」

「ヤクールの悲鳴、足跡と同じ方向」

「行ってみましょう!!」



 シャベルを槍のように構え、地竜門から脇に逸れた森の中へ突っ込む。

 ブレタが先頭で、夜目の効かない俺は彼女の背中を見失わないように追いかける。


(――!?)


 突如、前方から、俺にしか見えない白い殺気の光芒!



「危ないっ」



ブンッ


 白い軌跡をなぞるように、ブレタに向かって何かが投げつけられた。

 足を止めたブレタを追い抜き、シャベルのブレードを盾のようにかざして、ぶち当たってきた物体を受け流しつつ払い落とす。


ぐちゃり


 潰れながら落下したソレは、



「ヤクール……」



 俺たちを乗せてきてくれた騎獣の生首だ。



「ジョシュ、気を付けて。人喰猿マーダーバブーンの群れ。」

「ええ、前方、木の上に3匹、地上に4匹。」



 暗視の効かない俺には敵の姿が分からないが、殺気の白い光芒で相手の居場所も数も分かるのだ。


クカカカカッ、ホゥッ、ホゥッ、ホホホホホゥッ


 嘲笑うかのような鳴き声は、威嚇と同時に、仲間を呼び集める警報でもある。


 ぐずぐずしていれば囲まれる。

 速攻で倒すしかない!



「樹上は俺が。ブレタは地上の4匹を」

「承知」



 気功と魔力操作によって、俺の体はかなり鍛えられている。

 身体強化を掛けなくても、近場の木の幹を蹴って飛び上がれば、太い枝の上に陣取る猿型モンスターに届く!


ダンッ


 突進した先の幹を蹴って、斜め上方に飛び上がると、届くはずがないと油断していたらしい猿より、高い位置に跳んだ。



「クケェっ!? ――ギャッ」



 そのまま、シャベルのブレードを振り下ろすと、頭蓋を叩き割りながら地上に叩き落とす。

 猿が居た枝にしがみ付き、何とか這い上がって下を見下ろすと。

 少し慣れてきた夜目に見える死骸は、体長2mほど、ゴリラよりもヒヒに近い体付きで、凶悪な顔つきの魔獣だ。



「ホウッ、ホウッ」「カァッ」



 仲間がやられたのを見て、太い枝から枝へジャンプしながら迫ってくる2匹の魔獣。

 想像以上に身軽だ。

 暗視の効かない俺は、この枝から別の枝に飛び移ることは出来ない。

 地の利は向こうにある。

 ここでの戦いは不利。


 素早く地上に降り立つと同時に、怒りで興奮した猿たちが俺目掛けて飛び降りてくる。


ゴスッ


 一匹目の落下にカウンター気味の突きを見舞うと、猿の鳩尾のあたりに、ゾブリ、とシャベルのブレードが埋まる。



「ゲェェッ」



どさり


 下敷きにならないように回避するが、シャベルは手放すしかなかった。



「カカカカッ」



 俺が得物を手放したのを見て、既に地上に降りていたもう一匹が、調子づいて飛びかかってきた。


 とっさに、八卦掌の歩法で転身して躱しながら、瞬間的に身体強化して踏ん張り、残しておいた足を引っ掛けると、面白いようにつんのめって地面に激突する猿。

 障壁魔法を張って上から押さえつけ、その首筋を踵で踏み砕いた。

 ビクンビクンと痙攣する猿から、糞尿の臭いが立ち昇る。



『相手に自分の武器を印象付けてから、わざと手放すことで相手をコントロールする、という戦法もあるぞぃ。』



 わざと手放したわけではなかったが、訓練中のジジイとの雑談を思い出したおかげで、武器を失ったことによるパニックに陥らずに済んだようだ。

 シャベルが無ければ攻撃手段が無い代わりに、補助魔法を使えるのだ。

 臨機応変に戦うべきだろう。




――――――――――――――――――――




 ブレタの方も4匹を瞬殺したらしく、俺が鳩尾を刺した猿に留めを刺してシャベルを回収した時には、槍を振って血払いしていた。

 赤羚羊の仇は取ったな。



「ジョシュ、狼の足跡は先に続いてる。」

「分かった、急ごう。」



 さっき、思わず『ブレタ』と呼んでしまったが、特に気にしてないようだ。

 まぁ、それどころじゃないし。


 森の中、四方から、白い殺気の塊りがこの場所目指して集まってくる。

 囲まれたら終わりだ。

 早く移動するにこしたことは無い。


 途中、1匹か2匹で向かってくる猿を倒しながら、更に森の奥へ進む。


 いずれ、エルフの里の大人たちの捜索隊が向かってくるだろう。

 精霊たちからこの騒ぎを聞き取り、闘争の場にやって来られると期待しているので、脱出はあまり心配していない。


 それよりも。


(アイシャ、ブランカ、どこに居るんだ)


 時折、飼い主の俺の目を盗んで森へ散歩に行き、おやつ代わりに狩りもしていたブランカは、LVもちょっと上がっている。

 この程度の魔獣の群れに後れを取るとは思えないが、アイシャを守りながら、となれば話は別だ。


(――無事でいてくれ!)


 祈るような気持ちで暗い森の中を走るうち、前方に開けた場所があるのに気付く。



「ここは……」

「静かに。」



 前方に満ちる、複数の白い殺気の塊り。

 ブレタに口を塞がれる。


 いつの間にか上っていた月が、闘技場のように丸く開けた場所を白々と照らし出すと。


(ブランカっ!!)


 白い毛並を血に染めた大狼が、無数の人喰猿マーダーバブーンに囲まれ。


 さらに、白狼の正面、奥の方には、体長5mのブランカが小さく見える、巨大な6本腕の猿が!!



「何だ、アレは……?」



 『心眼』スキルを発動させると。



《???》

種族:アスラ・バブーン(魔王の卵)

LV:76

――――――――――――――――

【ステータス】

HP : ***/***

MP : ***/***


……


 魔王候補じゃねぇか!?




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