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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第四章 村人Aになったった
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第67話 鬼ごっこの鬼になったった




 ハイエルフの鬼ジジイことブルー校長の正体は、転生者で元槍の勇者、『青野アオノ三郎サブロウ』だった。


 ……まぁ、腹の出た中年イゾノ カツオが元『黒鉄くろがねの勇者』だったりした前科があるので、耳の長いハゲジジイが元勇者だったとしても、そんなに驚かないけど。


 そんな青野氏の説明により、『精神感応金属オリハルコン製の自動人形オートマタ』の入手は諦めざるをえないと分かった。


 一方、『高純度魔結晶を材料とする人造人間ホムンクルス』については、制作できる人物の心当たりはあるものの、材料となる高純度魔結晶は、『死の大空洞』付近でしか産出しない希少で入手困難なモノらしい。

 さらに、元々入手困難なことに加え、国家により厳重に管理されるシロモノなので、仮に闇ルートで入手出来たとしても、怖ろしく高価であるという。

 ならば、死の大空洞へ自分で取りに行くのはどうか、と問うたところ、生身の人間がおもむける場所ではない、という返事。


 これは詰んだかと思いきや、そこで、死の大空洞でも平気な生物の存在を思い出した。



「それじゃ、神竜に取って来て貰ったらどうでしょう?」




――――――――――――――――――――




 ガックリと外れるように顎が落ちたかと思うと、ぽかん、と呆けたような表情で俺を見詰める鬼ジジイ。



「き、貴様、なんという怖い物知らずなんじゃ……

 神竜をパシリ替わりにしようなぞ、命がいくつあっても足りんぞぃ。」



 ぇ? そんなにヤバイか??


 俺の知る神竜たちを脳裡に思い浮かべると。


 地神竜ヨルムンガンド・レギダスはエルフと盟約を結ぶくらい義理堅いし、ロゴス隧道での別れ際、俺にも協力すると約束してくれた。


 光神竜バハムート・イクシオルは、頑固そうではあったが、公明正大を旨とし、話の通じない相手ではなかった。


 そして、我が愛する妻、闇神竜ダークバハムート・アルタミラは――

 付いたあだ名が『黒い災厄』、『暴虐の女王』、『暗黒魔竜』。


 ……うん、ヤバイな。



「ヨルムンガンドは協力的でしたし、バハムートも事情を話せば分かってくれそうな気がしますけど?」

「お主が挙げたのは、大人しい神竜ばかりじゃ。

 しかしながら、地神竜ヨルムンガンド我等エルフとの盟約によりロゴス山脈から離れることは無い。それこそ、『人魔大戦』クラスの非常事態でも勃発せん限りはな。

 光神竜バハムートは、光神教団の教皇として城塞都市アイギスから動こうとせん。おそらく、自分が動いて人族社会へ不必要に介入しないよう、自重しておるのだろう。」

「そ、そうですか。無理っぽいですね……」



 なるほど、どちらの神竜も理性的な分、内在的なルールに縛られて気軽には動けないタイプかもしれない。


 となると、アルタミラぇ……


 良く言えば情熱的、ありていに言えば自由で気ままで衝動的な彼女を、果たして説得できるだろうか?

 ジョシュの事を知らない彼女に、頼み事をしても聞いて貰える気がしない。


 う~ん、ここは他の神竜とコンタクトを取るべきかな。



「知己の闇神竜ダークバハムートを候補に挙げなかったのは褒めておこう。

 だが、残る神竜も危険なヤツラじゃ。

 火神竜フレイムドレイク・クリムゾンスター、水神竜レビアタン・オンディーヌ、どちらもプライドが高く、人間の頼みごとを聞くようなタマではないぞ?」

「……会う前から説得は無理と決め付けるのも何なんで、とりあえず保留にしときましょう。」



 火と水の神竜よりは、アルタミラの方が良さそうだ。

 なんだかんだ言って、彼女はお人好しで情の深い女性だし。


 それと、使いたくない『奥の手』――彼女を説得できそうな人物が約1名存在するのだ。


 アイザルトと出会う前のアルタミラと、恋人だった男。

 カゲミツの実の父親。



『勇者ヨシーロ』



 ヨシヒロかヨシロウか知らないが、おそらく日本人男性で、アルタミラいわくイケメン。


 会ったこともないソイツのことを考えるだけで、嫉妬で胸がザワザワするような不快感を覚えるが。


 いざとなれば、ソイツを探し出し、私情を押さえて協力を仰ぐしかないだろう。




――――――――――――――――――――




「それでは、『人造人間ホムンクルス』の件は可能性を保留するとして、『実体系高位アンデッドの肉体』を検討しよう。儂としては、これが一番、成功する可能性が高いと思うておる。」

「アンデッドかぁ……」



 聖魔法で、ドラゴンゾンビにヒール掛けまくってLV上げしたのを思い出す。



骸骨スケルトンやゾンビになるのはちょっとなぁ」

「そんな下位のアンデッドが、『魔神の魂の器』になるはずなかろう? 儂が考えておるのは、吸血鬼真祖トゥルーヴァンパイアじゃ。」



 なるほど!

 神竜とタイマン張れるくらいのアンデッドなら、或いは……



「って、また『吸血聖女』ですか? まず倒せる気がしないし、女体化も勘弁して欲しいっす。」



 TS転生するのは想定外だ。

 復活しても、アルタミラと夫婦生活出来ないじゃまいか。



「そうは言うがな、『吸血聖女マリナ』なら器として十分じゃろ?

 他に候補になりそうなアンデッドといえば、不死王ノーライフキングは元より、リッチー程度でも、進化すれば魔王になりそうなアンデッドは軒並み討伐対象として勇者に討ち取られてしまっておるぞ。

 その点、アンデッドでありながら『聖女』でもあるマリナは、裏の顔はともかく、表向きは病者貧者救済のため旅をしている漂白の聖者。

 討伐対象のモンスターではなく、民衆の信仰対象扱いじゃ。

 お主が入れ替わった後も、人族社会で暮らすのに問題あるまい。

 そして、倒す方法は儂が考えてある。」

「う~ん……」



 もっともらしいこと言ってるけど、なんか、やたらに吸血聖女と戦わせようとしてないか?



「ある程度は妥協っていうか、我慢しなけりゃいけない、ってのは俺も分かります。この際、復活できるなら性別には目を瞑りましょう。

 でも、青野さんは聖女マリナと元は仲間だって言ってませんでしたっけ?

 元仲間を倒すことに、抵抗は無いんですか?」



 俺の言葉に、苦痛を堪えるような表情を見せる鬼ジジイ。



「……儂はな、あやつをアンデッドの体から解放してやりたいのじゃ。

 儂と、魔王堕ちした金田と、吸血聖女マリナとは、長い付き合いだった。

 金田を倒す時、儂は現場に立ち合わなんだ。その結果、辛い役目をマリナに押し付けてしまったのかもしれん。彼女を歪ませてしまった責任は儂にもある。

 せめて、儂の寿命が尽きる前に、彼女の狂った魂を、不死の肉体という永劫の牢獄から解き放ってやりたいのじゃ。

 老いさらばえた儂の力では、もはや彼女を倒すことは出来ん。じゃが、伸び盛りのお主に儂の奥義を全て伝授すれば、それも可能となるやもしれんのだ。

 どうだ、儂の代わりにやっては貰えぬか! この通り、頼むっ!」



 がばっ、と俺の前で頭を下げる青野さん。

 そうか、死期を悟り、思い残したことを俺に託そうということか……



「頭を上げて下さい。人造人間の線も保留で行きますけど、どのみち吸血聖女は母マリエルの仇で、神竜を滅ぼそうとする者は俺の敵。倒すために全力を尽くします!」

「おぉ! やってくれるか!」



 がっし、と手を握り合う幼児おれとジジイ。

 傍から見れば微笑ましい光景かも?



「それで、青野さん、こんなこと聞くのは失礼ですけど、後、どれくらい生きられるんですか……?」



 パッと見た感じ矍鑠かくしゃくとしてるので、数日間や数週間ということは無いだろうが、余命半年か、1年か。

 残された時間で、奥義とやらを修得しなければならない。



「……そうじゃな。いくらハイエルフが長寿と言っても、永遠に生きられるわけでは無い。

 儂は、既に長き歳月を生きた。残る寿命はせいぜい……」



 フッと寂しげな笑みを浮かべる青野さん。



「――せいぜい200年くらいかのぉ?」

「ピンピンしてんじゃねぇか、自分で戦えや、クソジジイっ!!」




――――――――――――――――――――




 一旦は敬老精神をかなぐり捨てた俺だったが、技術を伝授して貰う以上、相手に敬意を払わない訳にはいかない。


 気を取り直して、武術とやらを仕込んで貰うべく向かいあって礼をしたが……



「ホレ、ぶすくれとらんで掛かってこんか。」



(やってられっかよ)


 鬼ジジイがやろうと言い出したのは、『鬼ごっこ』だった。

 あちらは手出しせず避けるだけ。

 俺が相手を捕まえるだけの、簡単なお仕事だ。


 魔力を吸収するスコップは、鬼ジジイの魔道具『魔導収納背嚢マジック・ディバッグ』に仕舞って貰った。

 つまり、補助魔法で筋力強化できる。楽勝。



「儂は肉体強化はせんからの。遠慮せんで、全力で来い。儂の体の一部でも掴めば、お主の勝ちじゃ。」



 幼児と大人の歩幅のリーチ差も、これで問題無いだろう。


(よし)


 軽くステップを踏んで、全身のバネが強化されているのを感じる。

 ――行ける!



「おらぁっ」



 クラウチングスタートのような前傾姿勢から、地面を蹴って砲弾のように鬼ジジイに突っ込む。

 頭突きのような体勢で膝上にタックルすることになるが、老人とはいえ元勇者、大したダメージは受けないだろう。


(つか、少し痛い目に遭わせちゃる)


 数mを一気に飛び、拡げた両手で鬼ジジイを捕まえた!


 ……と、思いきや、飛び込んだ俺の目の前には、誰も居ない?


(どこだ??)



「どこを見ておる? 儂はここじゃ。」



 通り過ぎて、ズザザッ、と姿勢を低くして地面に踏ん張り停止したところで、背後からの声。


 慌てて振り返れば。


 涼しげな顔の鬼ジジイが、最初とさほど離れていない場所に立っている。



「どうした? ヨボヨボの年寄りも捕まえられんとは、とんだウスノロじゃのぉ。」



 ニヤニヤと意地悪そうに笑ってるのがムカツク。



「今のはちょっと遠慮しましたけど、次は本気で行きます。衝撃に備えて、肉体強化しておいて下さいよ?」

「ふふん、儂が捕まることなぞありえんから、必要ないのぅ。口上はそれくらいにして、掛かってこんかい。」



 先ほどは怪我させないように、という遠慮があった。

 今度は、避けられないようにじりじりと近付いておいて、さっきより多めの魔力を脚に巡らし、強く地面を蹴る。



「警告はしましたよ――ぬんっ!」



 角度的に、ジジイの上半身かヘタすれば顔面に激突することになる。

 たぶん、一撃でノックアウトだ。

 倒れれば後頭部を打つ危険もあるが、足元は俺がさんざん掘り返して柔らかくなった地面。

 たぶん大丈夫だろう。


(――??)


 衝撃に備えて体を固くした俺は、目標を捉えることなく、またしても空を切った。


 そのまま、走り幅跳びのように放物線を描き、10m以上離れた場所に落下。

 着地する勢いでバランスを崩し、前転しながら受身を取って立ち上がる。



「ひょっひょっひょ、飛んだり跳ねたり元気がいいのう。その元気がいつまで続くか、せいぜい頑張るんじゃな。」



 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)な鬼ジジイ。

 殴りたい、この笑顔。




――――――――――――――――――――




「参りました!」



 後半、魔力が切れて肉体強化も出来なくなり、転びまくって擦り傷だらけになった俺は、正座して青野さんに頭を下げた。


 結局、何十回チャレンジしても、煙か残像のように視界から消える彼を捉えることは出来なかったのだ。

 『心眼』で確認しても、瞬間移動のようなスキルは持ってないのに。



「どうじゃ、使えるじゃろ、八卦掌はっけしょうの『歩法ほほう』は。」



 これが、勇者流拳術MAX(推定)の実力か。

 ドヤ顔、自重しろ。



「俺の負けは認めますけど、避けてるだけじゃ相手に勝てませんよ?」

「武術とスポーツの最大の違いはな、『勝つ』ことより『生き残る』ことを目的としておる点じゃ。

 お主は『気』を読んで攻撃を察知することも出来る。

 相手が単体攻撃スキルしか使えない相手なら、飛び道具であれ魔法であれ、歩法で避け続けることが可能じゃろう。」

「はぁ……」



 まぁ、俺の目的は『吸血聖女マリナ』を倒すことであって、ドラゴンと戦う必要は無いから、ブレスなどの範囲攻撃よりも、強力な単体攻撃を警戒すべきなのか?



「いや、ちょっと待って下さい! 吸血聖女が範囲魔法撃って来たらどうするんです?」

「ああ。あやつの魔法は『聖魔法』のみで、精霊魔法も属性魔法も使えんはずじゃ。吸血鬼真祖トゥルーヴァンパイアのステータスを活かした攻撃力と不死身の肉体、さらに聖魔法による補助で底上げして肉弾戦、という戦闘スタイルがメインじゃったの。

 後は邪眼による状態異常と、アイテムを組み合わせて使ってくるくらいか。

 どっちにしろ、致命的な攻撃は物理攻撃なのじゃ。」



 なるほど、吸血聖女と戦うなら、武術的な動きは有効かもしれない。



「でも、避けてるだけじゃ勝てないでしょ?」



 『生き残る』だけでは不十分で、相手に『勝つ』必要があるのだ。



「倒す方法はある、と云うたじゃろ? 次は、儂の編み出した奥義、『精霊合体』を見せてやろう!」



 ……聞いた感じ、強そうに思えないけど?




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