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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第四章 村人Aになったった
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第60話 にーさまになったった




 バッドエンドの未来を変えるべく孤独な鍛錬をしていた1歳児の俺は、エルフの里で、転生者やハーフエルフに偏見や反感を持つ者たちに敵意を向けられた。


 あの時は、エルフたちの頑迷さや狭量さにカッとなりかけたが、一方で、ヨルムンガンドの隧道を共に抜けた帰還組のエルフたちに助けられたり、珍しく取り乱し涙ぐんだ義母ロジーナに抱きしめられたり、自分を心配してくれる人達が居ることも分かって、里の中で居場所を見つけることが出来たのだ。


 あれから、はや5年が過ぎた。


 いつのまにか、再転生してから、最初の転生時より長い時間を過ごしてしまった。

 相変わらず転生者やハーフエルフを嫌う者も居るが、里の執行部からの勧告が効いたのか、表立って排斥されることは無くなった。

 好意を向けてくれる人達と出会い、彼らと交流しているうちに、つい今の人生を楽しんでしまいそうになる。


 だが、未来に残してきたアルタミラやカゲミツたち――俺の家族のことを忘れるはずはない。


 きたるべき特異点――最初の転生で魔神となって生まれる俺が出現し、今の俺が死ぬ瞬間――に備えて、魔神の魂のまま転生できる器(肉体)を探し出すため、出来る限りの準備をしておかなくては。




――――――――――――――――――――




「ぐはっ!?」

「動きが直線的過ぎる! もっと身軽さを活かして!」

「ひゃい」



 本気で蹴られたわけではないが、敏感な顔面の中央――正確には鼻っ柱にガツンと衝撃を受けて、ボタボタと鼻血を垂らしながら涙目でうずくまる。

 稽古を付けてくれているのは、共に隧道を抜けた元冒険者の人族女性・シフだ。

 振り下ろされた長剣ロングソードを掻い潜り、懐に入り込んで彼女の斜め下から革鎧の隙間にミスリルの短刀を突きつけようとした瞬間、こちらの動きを読んでいた相手から膝蹴りを喰らったのだ。

 幼児の身長の都合で、どうしても下からの攻撃パターンになってしまい、読まれやすくなっている。

 魔法を使って立体的な動きをすれば、もう少し良い勝負になるのに。



「ジョシュは、魔力で高めた防御力を過信してるきらいがあるな。避ける意識が低いから、相手の動作の起こりを察知出来ないんだ。

 俺の精霊魔法も、障壁魔法で受け止めるより躱した方がいいね。――『生命水アクエリアス』」



 鼻血を出す俺に回復系の水魔法を掛けてくれたのは、シフの夫で元冒険者のエルフ男性・アルベルト。

 10代後半くらいの少年にしか見えないが、ゆったりしたローブを纏って、あぐらを掻いて杖を突き、妻が幼児をしごく様を見物している彼は、結構歳くってるらしい(長寿なエルフの基準では若造だが)。

 ちなみに、俺に障壁魔法や浮遊魔法などの補助系無属性魔法を教えてくれた先生でもある。



「魔力で筋力を強化すれば、確かにスピードも攻撃力も上がるだろうけど、元の動きが単調なら見切るのも簡単よ。せめて、剣術・体術だけで私を倒せるくらいにならないとね。」



 脚が不自由になったアルに代わり、ずっと森で狩猟を行っているシフは、相変わらず引き締まった体付きをしている。

 剣の鍛錬も独自に続けているらしく、衰えは見られない。

 筋力やスピードだけなら、魔力で強化すれば俺の方がステータス的に上になるのだが、剣技では到底彼女に敵わないのだ。



「魔法も万能じゃない。魔素の薄い場所じゃ精霊魔法は使えないし、属性魔法を連発してMP切れになれば魔法使いは役立たずだ。俺も護身用に細剣レイピアたしなんでいたよ。」



 アルの言うとおり、魔法が使えない状況でも生き延びられるようにしておかなければならない。

 そんな訳で、シフからは素手の格闘術と短刀術をみっちり教わっている。



「さぁ、それじゃ俺も加わって総合演習といこうか。ジョシュ、キミも本気出していいよ。」

「本気って言っても、当てないでね? 私たちは当てにいくけど。」

「分かってますけど、なんか納得行かないなぁ……」

「魔法を解禁したら、段違いでしょ? ハァッ!」

風精霊シルフよ、見えざるやいばで切り刻め!》



 頭上からシフの長剣の斬撃が降ってくるのと同時に、アルの『風精霊シルフカッター』が横殴りに飛んでくる。

 前衛と後衛、慣れたコンビネーションだ。


 剣を躱しつつ、強化した脚力で一気にシフの横をすり抜け、アルに突っ込む。

 直進すると見せ掛けて、アルの魔法を躱しながら浮遊魔法と脚力で斜め上方に数mほど宙を飛び、虚空に生み出した透明な『壁』――障壁魔法で作り出したモノだ――を蹴って方向を変え、アルの背後に着地。

 振り向きざまに杖を振り抜こうとするアルの膝裏を蹴って尻もちをつかせ、襟首を取って喉元に刃を押し当てる。



「はい、降参。」



 シフの長剣に対し、降参したアルを盾にした状態で接近を待つ。

 動作の起こりを読む――攻撃しようとする気配を感じ取る。


 予備動作の無いさりげない一歩だったが、前傾姿勢へ移行しようとしていた――この体勢から来るのは――突きだ!

 踏み出しかけたシフの脚を邪魔する位置に障壁魔法で『壁』を作り出し、同時に剣の軌道を見切る。

 剣の切っ先に『壁』を作って突きの動作を邪魔しながら、右脚を『壁』で払われた形で体勢を崩していたシフの懐に潜り込み、左手の短刀で長剣を押さえながら右手をシフの左脚に添えて転倒させる。

 長剣を握った右手の関節を極めて腹ばいに押え付けながら、首筋に短刀を当てると、



「降参よ。『奥の手』も出してないジョシュに勝てなくなっちゃったなぁ。全く、子供相手に手も足も出ないなんて、情けなくなるわ。」

「無詠唱で魔力障壁の『壁』を同時にいくつも作り出せるなんて、本当に反則だね。教師が優秀だったせいかな。」



 引退したとはいえ、腕利きの元剣士と元魔術師のコンビを、わずか数十秒で倒すことができた。

 アルもシフも、口で言うほど悔しそうには見えない。

 むしろ、自分たちの技術を教えられることを喜んでいるようだ。



「今日はここまでにしておこうか。お迎えも来たようだしね。」

「はい、ありがとうございました。」



 アルの言葉に間違いはなく、俺にも気配を察知して騒ぐ精霊たちの『囁き』を聞き取ることが出来た。


(白いの)(おっきい)(子供)



「パパ、ママ、にーさま!」

「ハッハッハ、バゥ!」



 現れたのは、体長5mになろうかという巨大な白狼と、その首にしがみ付いて笑顔で手を振っているハーフエルフの幼女。

 それは、成長したブランカと、アル・シフ夫妻の娘で今年5歳になるアイシャだった。




――――――――――――――――――――




「にーさま、今日もパパとママにいじめられたの?」

「アイシャ、パパたちは、いじめてるんじゃなくて、俺が強くなるのを手伝ってくれてるんだよ。」

「むしろ、いじめられたのは私たちよね。」

「ああ。これで攻撃魔法を身に付けたらどうなるのか、末恐ろしいな。」



 里に数少ないハーフエルフであるアイシャは、同じくハーフエルフである俺の事を本当の兄のように慕って、心配してくれるのだ。


 なにしろ俺は、再転生してから一度もモンスターを狩ったことは無く、相変わらずLV1のまま(ゾンビにヒール掛けるだけでLVUPした前世が懐かしい)。


 その上、里の掟で、分別のない子供に攻撃魔法を教えることが許されないから(中身は20+6歳になってるつもりだが)、攻撃性のある魔法を修得できない。

 特に、精霊魔法に関しては、体が成長し魔力の自然回復量が十分になる時期――だいたい思春期くらいまで修得を禁じられている。

 エルフの価値観で言えば、『魔法の使えない者=弱者』であり、その基準は概ね正しいのだ。


 だが、気功と魔力操作、走り込みに筋トレと、地道に体を鍛えた結果、6歳児とは思えないバキバキな体になっていた。

 エルフの骨格のせいもあって食人鬼オーガのような体形にはならないが、結構な痩せマッチョである。


 毎日、浮遊魔法や障壁魔法でMPがカラになるまで魔力を使い続け、MPの最大量も増えた。

 さらに、習熟した気功によって、体を通して天地の気を交流させる『大周天法』を行えば、環境中に充満する魔素を同時に吸収し、瞬時にMPを全快できるようになっているのだ。


 実力的には、精霊魔法を修得する下地は出来ているはずである。


 さらにさらに、気功の副産物で精密な魔力操作を行うことに習熟した結果、結構早い段階で『勇者流剣術』のスキルを修得してしまった(これは、魔力を纏わせることのできる高価な武器――父母の形見となったミスリル製の短刀――が身近にあったお蔭でもある)。


 先ほどの模擬戦では使うまでもなく勝負が着いてしまったが、俺の『奥の手』というのが勇者流剣術だ。

 剣から無属性魔法の斬撃を放つ必殺技――前世で出会った冒険者・マウザーの『なんとかかんとかブレイド』を放つこともできる。

 もっとも、マウザーの斬撃で魔神の俺は怪我一つせず、同じ技を愛理(現役の転移勇者)から喰らった時は負傷したので、スキルLVやステータス、注ぎ込むMP、武器性能、などで威力が異なるはずだが。

 それでも、今の俺が使える最も威力の高い技であることに変わりはない。


 現在の俺が理想とする戦闘スタイルは、両手に短刀を握り、空中に障壁魔法で造り出した壁を足掛かりにしてトリッキーな動きで敵を翻弄し、ここぞという所で勇者流剣術の必殺技を繰り出すことだ。


 ここに属性魔法、精霊魔法の攻撃手段が加われば、さらに戦闘スタイルの幅が拡がる。



「それはそうと、ロジーナの尽力で、特別に入学を許されることになった、というのは本当かい?」

「はい。中身は幼児じゃないんだから、もっと早く認めてくれても良かったくらいですよ。」



 エルフの里には、子供たちに魔法を教える学校のようなモノがある。

 属性魔法を教える『初等科』は、本来なら9歳にならないと入学できないが、転生者であることを理由にロジーナが根回ししてくれたお蔭で、6歳での飛び級入学が認められたのだ。



「……キミは、なんだか生き急いでいる気がするな。

 転生者だからといって、幼い体をあまり酷使するものでは無いよ。」

「時間はいくらあっても足りませんよ。少しでも早く、強くなっておきたいんです。

 秘宝を探す冒険の旅に、実力はどれだけあっても邪魔になりませんからね。」



 心配してくれるのは有難いが、早く力を付けて、里を出たい。


 里の外の人族社会がどうなっているのか、約束の時までどれくらいの猶予があるのか。


 焦ってはいけないと思いつつ、俺は、判断材料の乏しい里の生活に焦燥感を覚えるようになっていた。





現在のステータス


≪アイザワ ヒロト≫

 種族: ハーフエルフ

 LV: 1

――――――――――――――――

<ステータス>

HP : 125/191

MP : 760/865

力  : 95

体力 : 88

知力 : 62

精神 : 83

器用さ: 127

速さ : 114

運  : 19


<スキル>

 ・気功    LV100

 ・魔力操作  LV65

 ・格闘術   LV21

 ・短刀術   LV30

 ・勇者流剣術 LV12

 ・心眼    LV25

 ・念話

――――――――――――――――

<魔法>    

・無属性   LV34

――――――――――――――――

<属性>

 光

 闇

 風

――――――――――――――――

<耐性> 

 ―

――――――――――――――――

<加護>

 光神

 闇神

 風神

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