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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第四章 村人Aになったった
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第59話 ご近所さんになったった




 ハーフエルフの『ジョシュ・フィーロ』として、この時代に再転生し、1年。


 気功と魔力操作の甲斐あってか、既に走れるようになった俺は、山中で拾った白い仔狼『ブランカ』と共に、日課のランニングでエルフの里の中を走り回っていた。


 その途中、ハーフであることと転生者であることを理由に、エルフの悪ガキ達から、魔法による攻撃を仕掛けられた。


 子供とはいえ、土属性の初級攻撃魔法でブランカに傷を負わせた悪ガキども。

 タチの悪いイタズラを許すことは出来ず、魔力で肉体強化した1歳児の「ぶちかまし」で撃退してやった。


 だが、ブランカの傷を魔力操作で治そうとしていたら、いつの間にか、弓に矢をつがえたエルフたちに囲まれており。



「転生者のガキだな? お前の狼が、ウチの子を襲ったと聞いた。流れ矢で怪我したくなければ、大人しくソイツを差し出せ!」



 あのクソガキども、大人たちに嘘の告げ口しやがった!?




――――――――――――――――――――




「待って下さい! ブランカは子供たちに指一本触れてません!

 狼に襲われたと言うのなら、傷口に牙の痕でもありましたか?」


「あの子らは、既に属性魔法の初級攻撃魔法を使えるんだ。並みの低LVモンスターなら自力で撃退できるだけの実力がある。それが、あんな怪我をして帰ってきた。転生者のお前が、狼をけしかけたんだろう?」


「それは言い掛かりです! 子供たちがいきなり俺とブランカに『石礫ストーンバレット』を撃ってきました。ブランカが怪我をして俺も危険だったので、自衛のために、俺が彼らを撃退したんです。」


「転生者だろうと、魔法も使えない赤ん坊にそんなことが出来るのか?」

「狼を庇うために嘘を付いているに決まっている。」

「そもそも、隷属紋を刻まずに魔獣を里の中で放し飼いにするなど、非常識だ。」

「ああ、いつかこんな事が起こると思っていたんだ。」



 頭の固い連中だ。

 とはいえ、ブランカに隷属紋を刻んでいないのは事実。

 こちらにも引け目がある。

 ここは、感情的になっては駄目だな。



「里の決まりごとを無視したのなら謝ります。ブランカにも隷属紋を刻みましょう。

 だけど、一方的に攻撃を仕掛けたのはあなた達の子供なのに、それを棚上げしてこちらだけを責めるのは非礼ではありませんか?」


「これだから転生者は困る。」

「我らの文化・儀礼・慣習を軽んじ、異世界の価値観を持ち出してを通そうとするからな。」

「しかも、汚らわしい普人族ヒュームとの混ざり物だ。」



 怒りを通り越して、呆れてくる。

 普人族を馬鹿にしているが、エルフの先祖も普人族と同じ――魔素によって突然変異した地球人ヒューマンだということを知らないらしい。

 まぁ、教えても信じないだろうから黙っておくが。



「早くそこを退け! 目の前で飼い犬を撃ち殺されれば、少しは身を弁えるだろう。」



 ニヤニヤしながら、弓を引き絞るエルフの男。

 整った顔立ちが、醜悪な表情を浮かべている。

 これは、弱者を嬲って鬱憤を晴らそうとする者の顔だ。


 ……こいつら、先に手を出したのが悪ガキだということも、ブランカが何もしていないことも、承知の上で言い掛かりを付けてるんだ!



「退きません!

 俺とブランカは、何も悪いことをしていません。

 下らないプライドを満たすために俺の父母を貶め、言い掛かりを付ける行為に、断じて屈するわけにはいかないっ!」

「わん、わわん!」



 俺の闘気に反応し前に出ようとするブランカを押しとどめ、気で魔力を導き、頭部、心臓を覆うように集め、守りを固める。

 さっきの石礫と違い、ベテランの狩人が放つ矢。

 全身を防御するには、俺の少ない魔力では心もとないので、重要な部位に魔力を集めて保護しておく。

 あとの部分は、万一重傷を負ったとしても、ロジーナの回復魔法に期待するしかない。



「生意気な奴だ、赤ん坊のなりで偉そうに!」



 激高したエルフ狩人の1人が矢を放った。


ヒュンッ


 一直線に飛来する矢。

 魔力で強化した目には、スローモーションでゆっくり飛んでくるように見える。

 その弾道は、俺の顔の横をすり抜け、……後ろに蹲るブランカを狙ったコースだ!


 俺の右手が腰の後ろに回され、片刃の短剣の柄を握った。

 父・ガッシュの実家により俺たちが引き離された時に、餞別として渡された、真銀ミスリル製の2本の短剣のうちの1本だ。

 いわゆる『両刃の短剣ダガー』ではなく、『ボゥイナイフ』と呼ばれるガード付きの大型ナイフに近い形をしている。


キィィンッ


 短剣を引き抜き、刀身の腹の部分でやじりを跳ね上げ、弾道を大きく逸らした!



「な、小癪なマネを!」



 1歳児に矢を跳ね除けられ、プライドを傷つけられたのか、ムキになって2の矢をつがえようとする狩人。



「そこまでだっ」



ゴゥッ


 突如、俺とブランカを中心に、風が捲き起こった。


 これは、風の精霊魔法――『風精霊シルフ之守護ガード』!

 矢・投擲物などの飛び道具から、対象を守る魔法だ。



「さっきから、随分と大人気ない。

 それに、普人族やハーフを馬鹿にすることは、執行部グリューネワルトからの通達で禁じられている行為だ。

 里の秩序を乱しているのは、お前たちだと思うがな。」



 杖をつき、脚を引き摺りながら現れた少年――いや、若いエルフは、地神竜ヨルムンガンドのロゴス隧道を抜けた時、一緒にPTを組んだ、元冒険者夫婦の夫の方だ。

 その背後には、普人族の女性――妻も居る。


 そういえば、この辺りは、帰還難民たちの入植地だったのだ。



「出戻りどもか。関係ない者が、口を挟むな!」

「関係はある。俺の妻は普人族だ。

 先程、汚らわしいだの混ざり物だの、聞くに堪えない発言があったようだが、これは、執行部に願い出て、総会の議題に上げて貰うべきかな?」

「くっ」



 気が付けば、狩人にプレッシャーを掛けているのは、彼だけではない。

 各家々から、共に隧道を抜けたエルフたちが顔を出し、狩人たちに批判がましい目を向けて、成り行きを見守っている。



「行き過ぎた発言があったようだ、非礼は詫びよう。帰るぞ。」



 狩人のリーダーらしき人物がそう言うと、悔しそうな顔をしながら取り巻きを連れて去って行った。



「あいつら、キミへの謝罪も無しに。」


「……ぁ、言われてみれば。

 でも、別にいいですよ。

 そんなことより、助けて戴いて、ありがとうございました。」



 正直、どうでもいい連中なので、これ以上口も利きたくなかった。

 それよりも、俺とブランカに笑顔を向け近づいてくる人々に、感謝の気持ちを伝えたかった。



「大したことじゃない。

 PTを組んだ時にも自己紹介したが、改めて。

 俺の名はアルベルト、妻はシフだ。」

「どうも、アイザルト……じゃなくて、ジョシュ・フィーロです。」



 差し出された右手の親指を握り、相手にもこちらの親指を握らせる。

 エルフ流の握手だ。



「あの時、キミの念話で命拾いしたからな、妻ともども、感謝してるんだ。

 それより、キミの狼は怪我をしているんだろ? ウチに寄って、治療して行きたまえ。」


「それなら、ワタシが水魔法の『生命水アクエリアス』を掛けてあげるわ。」

「傷薬、作り置きした分があるから、分けてあげるね。」

「わんっ! ハッハッ」



 ブランカが、笑顔で近寄る女性たちに、尻尾を振って歓迎する。

 こちらも、隧道PTで一緒だったエルフの女性たちだ。

 確か、ルメールで魔術学校の教師をしていたクローディアと、薬草店の雇われ店長だったバーバラ。



「あ、ありがとうございます!」



 ロジーナ以外から、こんなに優しくされ、笑顔を向けられたのは、久しぶりだ。


 エルフも、排他的で高慢な者ばかりじゃないんだな。




――――――――――――――――――――




「キミは、1歳の割に、随分成長が早いな。

 それに、魔力と違う微弱なエネルギーの流れを感じる。」


「『魔力障壁シェル』も張らずに石礫ストーンバレットを受けて、服はボロボロなのに、怪我一つしていないのも不思議よね。

 何か特別な鍛錬をしているの?」



 アルベルト・シフ夫妻の家に招かれ、里に着いてからの彼らの生活や、冒険者時代の話を聞くうちに、話題が俺の異常さに移った。



「ええ。実は……」



 転生前に『気功』という技術を知り、生まれた時から修練していること。

 気功によって『魔力操作』を行っていること。

 操作した魔力を体に纏わせることで、筋力や防御力を一時的に上げられること。

 その副作用で、肉体の成長が早まったこと。

 ブランカにも気功を施し、成長を早めていること。

 その他、魔力総量(MP)を増やすため、魔力を使い切る目的で念話を練習したこと。


 俺の足元に蹲って、スピスピと寝息を立てているブランカをモフりながら、鍛錬法を説明した。


 情報開示しても問題ないだろうし、元冒険者の彼らから、何かアドヴァイスを引き出せないかという狙いもある。



「今は、魔力の自然回復量を増やすために、肉体を鍛えようと思ってランニングしているんです。早く魔法を使えるようになりたいので。」


「そうか。日常的にそれほどの鍛錬を継続するとは、尋常ではないな。」

「よほどの目的があるんでしょうね?」


「……はい。」



 未来での世界破滅回避、という俺の目的は、口外しないようにとロジーナから釘を刺されている。

 長老の決定なのだとか。



「話せないなら、無理に話すことは無いさ。それより、精霊魔法は仕方ないにしても、何故、属性魔法の修得まで禁止されているんだい?」


「多分、攻撃魔法を制御できないと危険だから、だと思うんですが。」



 長老たちは、俺が気功で魔力量の調節が出来ることを信じていないらしいのだ。



「ふむ。では、攻撃力のない『無属性の魔法スキル』なら問題ないんじゃないか?

 念話も似たようなものだし。

 『浮遊レビテーション』や『魔力障壁シェル』で良ければ、俺が教えてあげよう。」


「いいんですか? 執行部グリューネワルトにバレたら、あなた達に迷惑掛かるんじゃ……」


「なに、この家の外では使わないようにしてくれれば、バレたりしないさ。

 それより。」



 アルベルトとシフが顔を見合わせると、2人の顔が自然とほころぶ。



「私たち、赤ちゃんが出来たのよ。」

「キミと同じハーフエルフだ。生まれたら、仲良くしてやってくれないか。」


「……はい、喜んで!」



 魔法の先生と、同じハーフエルフの弟分か妹分が出来た。


 どうやら、家族ぐるみのお付き合いの出来る、良いご近所さんになりそうだ。




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