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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第四章 村人Aになったった
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第58話 飼い主になったった




 エルフの里へ帰還する旅の途中、転生者による襲撃を受け、母・マリエルを喪ったジョシュは、ハイエルフのグリューネワルト――『ロジーナ』の養子となった。


 未来の事情などを説明し、グリューネ=ロジーナの保護監督下で精霊魔法修得の準備をすることに。

 10代後半の金髪美少女にしか見えないロジーナに抱っこされ、里から離れた森の中へ連れて来られて、精霊を知覚する訓練を開始。

 『精霊の囁き』を聞き取るべく、耳を澄ませていると、魔獣同士で争う声――唸り声と悲鳴を聞きつける。


 もっと聞き取ろうと、ハーフエルフの耳に『気』を巡らせ、多いとは言えない魔力を導いて聴力を強化しようとした結果。


(小さい)(オソワレテル)(白いの)……


 『精霊の囁き』を聞き取ると共に、野良精霊の透き通る発光体を目にすることが出来るようになった。

 ロジーナの『課題その1』をクリアしたのだ!


 だが、課題クリアの喜びよりも、幼い魔獣の悲鳴が気になった俺。


 ロジーナに我儘を言って、襲われている幼獣を助けて貰うことに。

 彼女は、『火精霊サラマンダー』を使役して、体長2mほどの岩オオトカゲを追い払ってくれた。


 そこで目にしたのは。


 血塗れで横たわる母狼の死体を守るように、地面に足を踏ん張ってキャンキャンと吠えたてる真っ白い子犬――いや、仔狼だった。




――――――――――――――――――――




「これはダイアーウルフだな。ありふれた魔獣だが、白い個体は珍しい。」



 ロジーナはそれほど関心が無いようだが。


(そうだったのか。)


 俺が、仔狼の鳴き声に感じたモノの正体。


 それは、母親を守ろうとして小さな体で一生懸命敵を威嚇する、仔狼の必死さ――鳴き声からにじみ出る、母への愛情だったのかもしれない。



「どうした、マリエルのことを思い出したのかね?」

< ……ええ、安っぽい感傷かもしれないけど、他人事と思えなくて。 >



 ふむ、と頷きながら、赤子のジョシュを抱いたまま、仔狼の前にしゃがみ込むロジーナ。



「……そうか。自分の姿に重ね合わせたのだな。

 無理もないか。

 どれ、キミに適性があるかは分からないが、『魔獣使テイマーい』の訓練も始めてみるかね?」

< ぇ、それって?? >



俺と視線を合わせ、にこり、と微笑むロジーナ。



「飼ってもいいよ。」

< いいんですか? 俺、居候いそうろうさせて貰って、その上、精霊魔法まで教えて貰ってるのに…… >

「キミを養子にした以上、私はキミの母親になったのだ。

 あまり遠慮ばかりするものではない。

 たまには私に甘えてくれていいんだよ?

 ただし世話はキミが、……ってまだ無理だな、その体では。」



 やれやれ、と頭を振りつつも、胸に抱いた俺に微笑みかけるロジーナ。

 その姿に、在りし日のマリエルの姿が重なって、不覚にも泣きそうになった。



「さて、コイツを魔法で眠らせて連れ帰ろう。

 里にいるテイマーに頼んで、魔獣用の隷属紋を刻んであげるから、キミの魔力を通すといい。」



 母狼の体から離れようとしない仔狼を『闇精霊シェード』の魔法で眠らせると、ロジーナの背嚢ザックに入れて帰路につく。

 俺の課題があっけなく済んだこともあり、しばらくこの森に用は無い。

 『風精霊シルフ』の補助魔法により、俺を胸に抱いたまま、飛ぶように森を駆け抜けて行くロジーナ。


 こうして、家族が1匹、増えました。




――――――――――――――――――――




 屋敷に連れ帰った当初、頑なな態度で、ロジーナがエサを与えても食べようとはしなかった仔狼。

 時折母狼を求めて鳴く声を憐れに思った俺は、魔獣用の隷属紋を刻むのは少し待って貰い、念話の練習を兼ねて、毎日、白い仔狼に話しかけていた。



< オマエは偉いな。チビなのに、立派に母親を守ってたよ。俺なんて、マリエルが目の前で殺されたのに、何も出来なかったんだ。 >

「きゅぅ~ん?」

< 俺は、早く力を付けて、この里を出る。その時までに、オマエも大きく強くなって、俺のお供をしてくれよ? >

「ひゃん! ひゃん!」



 パタパタとふさふさの尻尾を振る仔狼。

 現在は、首輪を付けられて、俺のベビーベッドの傍に繋がれている。

 念話に言葉の返事が返ってくるわけではないが、話し相手が居るというのはいいものだ。


 ロジーナは、里を運営するエリート集団、『グリューネワルト』の一員として忙しく、普段、俺に付きっきりというわけにはいかない。

 どことなく和風テイストを感じる木造の屋敷の中には、使用人とおぼしきエルフ達が数人居るが、ジョシュが普人族との間に生まれたハーフエルフだからなのか、それとも転生者だと知れ渡っているからなのか、表面上は礼儀正しくとも、笑顔で親しげに話しかけてくれるような者は居ない。


 少し寂しいが、日課の鍛錬をこなすためには好都合でもある。


 成長のために睡眠をとり、使用人ベビーシッターにおしめを交換してもらったり、重湯を飲ませてもらったりする合間に、『気功』と『魔力操作』の練習、そして仔狼相手の念話で『魔力を使い切って最大魔力量を増やす』練習を、黙々とこなしていった。




――――――――――――――――――――




 生後1年。


 気功と魔力操作による肉体鍛錬の甲斐あって、俺は歩けるどころか、既に走りまわれるようになっていた。

(人間の場合、だいたい1歳2か月くらいから、よちよち歩きが出来るようになる。)


 スキル『心眼』で見る自分のLVは1のままだが、魔力操作のLVは10、気功に至っては生後すぐに鍛錬を開始しただけあって、LV19にも達している。

 5しか無かったMPの量も、40まで増えた。

 気功で誘導する魔力操作と合わせれば、魔力節約によって5倍ほどの水増し効果があるので、実質200以上あるのと同じだ。

 普人族ヒュームのAクラス冒険者、マウザーのPTに居た魔術師コルス。

 彼女のMPが200そこそこだったから、今の俺のMPでも、そこそこの魔法が放てるはずである。


 問題は、肝心の魔法が使えないことだった。


 精霊を知覚できるようになったものの、魔力自然回復量は肉体が成長しないと増えないので、今の俺では精霊との契約ができず、精霊魔法を修得できない。

 せめて初級の属性魔法を教えて貰いたいところだが、ロジーナによれば、長老たちから「まだ早い」と言われているらしい。


 そんな今の俺がおおっぴらに取り組めるのは、肉体鍛錬しかない。


 というわけで、お供に白い仔狼を引き連れて、日課としてランニングを始めた。

 最初は屋敷の塀に沿って周回していたが、今では里の中を走り回るようになっている。



「ブランカ、早いぞ、俺を置いてくなよ!」

「ハッハッ、わわん!」



 振り返って尻尾を振りながら待つ仔狼。

 まだ隷属紋を刻んでいないが、俺の命令は聞いてくれるのだ。


 白い仔狼には『ブランカ』と名付けた。

 何語だったか知らないが、確か「白」を意味する言葉だったはず。

 未来のアイギス近郊で出会った変態狼、『駄犬シロ』みたいにはならないように、という願いを込めて、少しかっこ良さげな名前にしたのだ。


 拾ったころは生後2~3か月だったのだろう。小型犬サイズだった。

 あれから半年弱、既に中型の成犬ほどの大きさになっている。

 元々、成長すれば体長3mにもなる狼だが、俺が毎日モフモフしながら体を撫で回し、気功と魔力操作を施しているお蔭で、かなり成長が早まっている気がする。

 このまま行けば、平均を大きく上回るサイズになりそうだな。



 そんな俺とブランカは、随分人目に付いていたようだ。


 里の中でも人家の疎らな場所――ルメールからの帰還難民が新たに入植した地域――に差し掛かったところで、背後に微弱な魔力を感じた。


ヒュンッ


 風切り音と共に俺の体を掠めて飛んで行く、複数の小石の礫。

 投げられたのではない。

 土魔法の初級攻撃魔法、『石礫ストーンバレット』だ。



「おぃ、見ろよ、おむつの取れてない赤ん坊が、生意気に走り回ってるぜ!」

「外見は赤ん坊でも、中身は大人らしいぞ? 転生者だってよ、気持ち悪ぃ。」

「俺だったら、恥ずかしくてあんな格好できないな。」



 こちらを指さしてゲラゲラ笑ってるエルフの悪ガキ共。

 全員美形だが、それだけに表情の醜悪さが際立つ。

 エルフの年齢は分かりにくいが、精霊魔法を使ってこなかったことから考えて、10歳以下だろう。



「グルルルルゥ……」

「やめるんだ、ブランカ。」



 俺を守ろうと悪ガキどもに牙を剥いて威嚇するブランカを止める。

 万一子供たちに怪我をさせれば、処分されるのはブランカだ。



「俺のおむつなら、もう取れてるよ。

 こいつは万が一に備えたトレーニングパンツだ。おむつじゃない。」



 走り回れるんだから、自力でトイレ行けるに決まってんだろ。



「それより、赤ん坊相手に魔法撃ってくるとか、エルフの誇りをどこに忘れてきたんだ?

 弱いモノいじめなんてダサい真似、普人族ヒュームでも、誇りある者ならしないな。」


「くっ、テメェ、赤ん坊のくせにぺらぺら屁理屈を」

「エルフを迫害した普人族の肩を持ちやがって、やっぱり混ざり物だな、コイツ」

「どうせ、お前なんて、ママがケダモノみたいな普人族にレ○プされて産まれたんだろ?」

「やーい、鬼っこ! お前なんて、生まれてこなけりゃよかったんだよぉ」


「……その発言、取り消してもらえないかな?」



 安い挑発に乗ってはいけない、と思っていたが、ガッシュマリエルを侮辱されては黙っていられない。



「ばーか、これでも喰らえ!」



 一斉にストーンバレットを撃ってくる悪ガキども。



「キャィンっ!?」

「ブランカっ!」



 俺を庇おうとした仔狼が、石礫を受けて倒れた。

 白い毛皮が出血で赤く染まる。


 子供とはいえ、こんな威力の魔法を撃ってくるなんて、もうイタズラでは済まされない!



「へへっ、ざまーみ……ぎゃっ」



 俺の頭突きを受けて、吹っ飛ぶ悪ガキ1号。


 真ん中の一番大きいガキが言い終わる前に、気で魔力を導いて強化した脚力で突進し、魔力を纏わせた前頭部を相手の下腹部に激突させたのだ。

 相撲でいう『ぶちかまし』だ。


 1歳児の体重など知れているが、速度があれば威力は出せる。



「こ、この鬼っこめ!」

「死ね、混ざり物!」



 続けざまに放たれるストーンバレット。

 ビシッビシッと何発も体に喰いこむが、気で巡らせた魔力が体全体をカバーしているので、その程度で大した傷は付かない。

 石礫を無視し、再び、高速ダッシュでぶちかましを喰らわせる。



「ぎゃっ」「わーん、痛いよぉ」「くそっ、憶えてろぉ」



 1歳児相手に惨敗し、泣きべそを掻きながら去っていくエルフの悪ガキども。

 まったく、親の顔が見たい。どうせ似たような美形揃いだろうけど。



「大丈夫か、ブランカ?」

「きゅ~ん」



 ペロペロと俺の頬を舐めるブランカの体を、触って確認する。

 もふもふの毛皮越しに受けた石礫なのに、出血するほどの怪我を負わせるとか、侮れない威力だ。

 もしもブランカが庇ってくれず、俺がただの赤ん坊だったら、一生消えない大怪我を負わされた可能性もある。

 ……まぁ、ただの赤ん坊なら、そもそも狙われてないだろうが。


 ブランカの傷口に『気』を導いて、ブランカ自身の魔力を傷口に集め、再生力を高めてやる。

 聖魔法のヒールが使えれば一発で治るのにな。



「よし、帰ってロジーナに『生命水アクエリアス』を掛けて貰おうな。

 行こう、ブランカ。

 ……どうしたんだ、ブランカ?」

「……グルルルル」



 仔狼が、俺の背後に向けて唸り声を上げる。

 そこには、いつのまに接近されたのか、気配と魔力を隠して近づいた大人のエルフが数人、弓に矢をつがえてこちらを狙っていた。



「ロジーナんとこで世話になってる転生者のガキだな?

 お前の狼が、ウチの子を襲ったと聞いた。

 大人しくソイツを差し出せ。さもないと、この場で射殺すことになる。

 そうなれば、流れ矢でお前も怪我するぞ!」



 明らかに、腕の立つ狩人ハンターばかりだ。


 あの悪ガキどもめ、親に嘘の告げ口しやがった!




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