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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第三章 異世界冒険者になったった
55/102

第50話 聞き役になったった

設定の説明回です。




 破壊されるアイギスの街を見て、怒り心頭の『光の神竜・バハムート』イクシオル。

 彼が放とうとした『稲妻ライトニング』は、愛理や街の住人たちを巻き込みそうになっていた。

 稲妻ライトニングが放たれるのを防ごうと、イクスに密着して口を塞いでみたところ、至近距離(っていうか密着状態)で強烈な電撃を浴び続けた俺は……、



 ――いつの間にか、どこともしれない薄明るい空間に居た。


 目の前には、安っぽい事務机と、天狗の面を着け背中に翼を生やしたスーツ姿の人物。


 この人物は……

 前世で死亡した俺を、この世界に転生させた『風神・ティターンダエル』だ。



「もしかして、俺、死んじゃったんですか?」

「そうだよ~。」



 前世に引き続き……、俺は、またしても死んでしまったのか。



「アルタミラとカゲミツを残して死ぬなんて、困ります、そんなの!

あなた神様でしょ、何とかして下さいよ!?」


「ここに来た人はみんなそう言うんだけどね~。キミだけをそうそう特別扱いできないよ~。」

「でも、俺が行って、アルタミラを止めなきゃ。でないと、街が」

「この後の闘いで、あの街どころか世界も滅んじゃうけど?

 『神子しんし』――キミがカゲミツと名付けた子だよ――が邪神になっちゃうから。

 まぁ、キミの無謀な行動の結果だから、仕方ないよね~。」



 俺の死が原因で、アルタミラとイクスは人族社会を巻き込んだ死闘を繰り広げて相討ち、カゲミツは邪神となることを選び、世界を滅ぼすことになる、と。



「俺のせいで、異世界が、滅びるなんて……」


「異世界?

 ボクが説明したこと、スッポリ忘れちゃってるみたいだねぇ。

 ここは、かつてキミが生きていたのと同じ惑星、


 ――『地球』だよ。」




――――――――――――――――――――




 ここが……、地球だなんて、



「そんな馬鹿な! 愛理もイゾも、『異世界に勇者召喚された』って言ってたし、この世界の王族やギルド長も、俺たちを『異世界人』だって……」

「あ~、『転移勇者組』には本当のこと教えないよ~。彼らは『魔王討伐』したら元の世界に帰る可能性があるからね。

 この世界が、自分達の文明が滅びた後の未来だって、知らない方が幸せに生きられるでしょ?

 もちろん、『転移組』に伝わらないように、『転生組』も生きている間は思い出せないようにしてあるんだ。」



 そういえば、『死の大空洞』で、天狗に会ったことを思い出しかけた時、ただ『人間っぽいモノ』に転生できる、と説明されたこと以外、具体的なことは何も思い出せなかった。



「どうだい、思い出して来たかい? ここに来てボクの顔を見れば、すぐ思い出すはずなんだけどねぇ?」



 ……そうだ、だんだん、思い出してきた。



 確かに、最初の死亡時、天狗から転生先の世界について説明されていた。




 この世界は、俺たちの科学文明が、核戦争と小惑星の激突で滅んでから『1万2千年後』の世界だ。

 21世紀、帝国主義的な領土拡大を図る軍事大国の争いから、世界はついに禁断の核戦争へと突入した。

 人口は10分の1以下に激減し、『核の冬』によって世界は灰色の空に閉ざされ、生き残りの人類は放射能と飢餓に苦しみながら衰退の一途を辿り。

 やがて、科学文明を維持できなくなったころ、大量の隕石群が地球へと飛来。

 もはや人類には何らの対抗手段もなく、天を仰いで運命を受け入れるほか無かった。

 衝突した隕石による爆発は核爆弾数十発分に相当し、全地球規模で衝撃による巨大地震が発生。

 高さ1000mを超える津波により、人類は滅亡し、文明の痕跡は根こそぎ洗い流された。

 地上の生命は、ごく一部を残し死に絶えた。


 地球は死の星となった。

 そのはずだった。


 そう、彼らが現れるまでは。




――――――――――――――――――――




「あなた達は、『神』? ……いや違う、別の惑星で進化を遂げた、『精神生命体』……?」


「そうだよ~。思い出してくれたみたいだね。

 この姿は、キミ達、地球の人類の霊体に合わせて形作られたモノだよ。」



 ティターンダエルがつるりと顔を撫でると、天狗の面が外されて、中から白人系の美青年の顔が現れた。

 あおい瞳とウェーブした金髪の持ち主で、神々しいほどの美形だ。



「本来は個性や特定の姿を持たないエネルギー体だったんだけど、キミ達に合わせてこの姿で居るうちに固定されちゃってね。

 結構気に入ってるんだ。」


「あなた達――、そう、この世界に実在する『神』の正体は、他星系から来て地球の環境を回復してくれた『精神生命体』だったんですね。」



 この世界を異世界だと思い込んだ理由はいくつかある。


 例えば、元の地球には存在せず、この世界にのみ存在する『魔法』。


 その行使を可能とするのは、この世界を満たす『魔素』。


 ――『魔素』の正体は、精神生命体がその身を半物質化させたモノだ。


 精神生命体が直接物質に働きかけるのは、常時念動力を発動させるようなもので、効率が悪い。

 一方、魔素には思念を具現化させる媒介としての力がある。


 精神生命体の大半が、死の星と化していた地球を再び生命の楽園へと変えるべく、半物質である魔素粒子へと己が身を変換し、惑星全土を覆った。

 残りの精神生命体が、魔素に思念を送り続け、2千年かけて、暴風雨の荒れ狂う地球の大気を鎮め、隕石大量衝突の衝撃でずれた自転軸を調整し、放射性物質や有害な化学物質を浄化し、再び物質生命体の生存可能な惑星にしてくれたのだ。



「この星を救ってくれたことには感謝しますけど、それじゃ、今、この世界に生きてる人々は、いつ、どこから来たんです?」



 地球誕生から46億年掛けて進化してきた生命、その中から高度な知能を持つに至った人類が、ほんの数万年程度で再び自然発生する筈が無い。



「惑星環境の調整後に、復活させたのさ。

 ボクたちに近い段階まで進化した知的生命体は貴重だからね。

 精神生命体であるボクたちは、4次元以上の高次元で活動できる。

 当然、時間遡行も可能だから、過去世界にアクセスして人類を少しずつ召喚し、一定以上の人口を確保した。

 後は、出来るだけ干渉しないで自然増加する新生人類を見守ってきた、ってとこかな~。」


「人類の一員としてありがたい話ですけど、そんなことまでして、あなた達に何か得があるんですか?」


「もちろんあるよ~。

 ボク達は物質的な栄養を取り込む必要が無い代わりに、精神的なエネルギーを必要としているんだ。

 それは、他の知的生命体と精神的な交流をすることでしか得られない。

 具体的には、キミ達人類がこの世界で『魔法』を行使して『魔素』を消費する際に、キミ達から精神エネルギーを受け取ってるんだよ。

 さらに、ボク達の至上の目的は、新たな精神と交流し、学び、理解し、吸収し、統合することで、ボク達自身が進化することなんだ。

 だから、新たな知的生命体と出会うため、星々を巡ってきたのさ。」



 なるほど、そこまでは良いとしよう。



「だとしたら、俺たち転移者や転生者にチート能力を与えて、この世界に送り込んだのは、何故なんですか?」


「それは、この世界の魔素濃度を抑えるためだね~。

 環境調整のために魔素で惑星全土を覆う必要があったんだけど、その後、供給過剰になってきてね。

 あまりに魔素濃度が高い環境では、精神が肉体に過干渉して物質生命体は自壊してしまうんだ。

 例えば、キミが転生して最初に出現した場所――『死の大空洞』――あそこが魔素の供給施設になっててね、文字通り、物質生命体が生きられない環境だよ。

 アレってボク達の知識で造り上げた直径20kmのオリハルコン製の円盤の内部空間なんだけど、同様の施設が各大陸に一つずつ、全部で6つある。

 その付近に生息していた動植物は魔素の影響を受けてモンスター化し、人間も食人鬼オーガ矮小鬼ゴブリンに変わってしまった。

 せっかく再現した人類が、精神的・知的位階の低いモンスターになってしまっては、ボクたちの目的にそぐわない。

 だから、魔素濃度を一定以下に保つため、干渉することにしたんだ。

 魔素を大量に消費する大魔法やスキルを構成し、バンバン使って貰おうと思って、勇者や魔王の役割を創り出した。

 だが、この世界の人類は、生まれた時から魔素に馴染んだ生活を送り、ある意味退化している。

 大量の魔素を消費できる程、魂の器が大きくないんだ。

 そこで、魔王の方は、この世界のモンスターに『魔王の種』を植え付けて強制進化させ、勇者の方は、過去世界の住人を直接召喚したり、魂を転生させたりしてきた。」


「俺たちは、あなた達の手の中で踊らされていたんですね……」


「う~ん、そう言われるとそうかもね。

 でも、精神が物質に干渉できる力――『魔法』を手に入れたのに、創造的なことに使うのではなく、ひたすら闘争に用いてきたのは、キミ達人類だ。

 『勇者対魔王』という構図は、キミ達の性質に合わせて創られたモノでもある。

 そして、この世界を現生人類が住める環境に保つためには、必要なことだった。

 ――まぁ、その役目も、キミで最後だけどね。」


「俺で、最後??」


「そう。

 裁定者である『神子』。

 その役割は、この世界へのボク達の干渉(援助)を、継続するか打ち切るか、その決断をするプログラムなんだ。

 神子が人類に絶望し、世界を拒絶すれば、打ち切り決定だ。

 キミが彼女に出会ったのは偶然じゃないよ。

 彼女に希望を与えるために、人類にチャンスを与えるために、あの場所に降り立ったんだ。」


「俺たちが出会ったのは、偶然じゃ、なかった……?」


「そう。キミは巻き込まれたんじゃない。始めから、渦の中心に居たんだ。

 わざわざ『魔神』なんて規格外の存在に転生させてあげたのは、そのためだったんだよ。」



 それじゃ……、俺がしくじったせいで、人類は、滅びるのか。



「仮にキミが神竜を蘇生せず、神子を孵化させなかったら、別の場所で別の神子が生まれて、即、邪神になる予定だったんだ。

 途中までは、キミは良くやっていたよ。

 だけど、キミは自分を過信した。

 愛する者を守るなら、まず自分の身を自分で守れないとね。

 失敗したのは、防御力を過信するあまり、自らを高める努力を怠った結果だよ。」



 自分の物理・魔法防御力を過信した無謀な行動の結果を、悔やんでも悔やみ切れない。



「神子が邪神プログラムを発動すれば、魔素供給施設は逆転し、世界中の魔素粒子を本来の精神生命体へ変換するんだ。

 その際には大量のエネルギーが必要だから、この世界から吸収する。

 当然だよね、ボク達がこれまで提供してきたモノを返して貰うだけだから。

 そうなれば、地球上は絶対零度の氷結地獄となり、今度こそ死の惑星となるね。」


「そんな、精神エネルギー補給のために人類を勝手に蘇らせておいて、また滅ぼすなんて、勝手じゃないですか!?」


「ボク達は、進化のために新しい出会いを求めて旅に出なくちゃならない。

 人類の精神は、既に十分理解し、吸収した。

 冷たいようだけど、もう、現生人類から学ぶモノは無いんだ。

 後は、キミ達がボク達と同じ段階へ進化する見込みがあるかどうか、ってだけだね。

 見込があれば、進化するまで何万年でも待ってあげても良かったんだよ?

 その判断は神子に委ねられていて、その結果が、もう出てしまったわけだ。」


「そん……な……」



 俺1人が死ぬのは仕方無い。

 誰だって、いつかは死ぬんだ。


 だけど、この星の生命が死に絶える。

 これまで、数えきれないほどの命が繋いできて、これからも、誰かに繋がれていくと信じていた未来が、ぷっつりと途切れ、無くなる。


 そして、アルタミラが死ぬ。

 俺の愛した女性が、俺の死によって、怒りと絶望の中で、傷つき斃れる。


 カゲミツも死ぬ。

 守ってあげると約束した子が、世界と自分を拒絶し、この世を虚無の氷結地獄へと変えてしまう。



 ……嫌だ。


 イヤだ。


 そんなの、絶対に、認められない!!



「お願いだ、いや、お願いします、ティターンダエル!

 もう一度、もう一度だけ、俺に、人類に、地球に、チャンスを下さい!

 カゲミツに、そんな絶望を味わわせないで下さい! アルタミラに、そんな最後を与えないで下さい、お願いします、お願いしますっ!

 そのためなら、何だってします!!」



 土下座し、涙と鼻水をまき散らしながら、頭を擦り付けて懇願する。



「う~ん、『何でもする』って?

 それよりも、この記憶を消して、過去世界に転生させてあげよう。

 その方が、当たり前の幸せな人生を送れるよ。

 キミにはその権利があるからね。」


「そんなの要りません!

 アルタミラに、俺の元気な姿を見せたいんです。カゲミツに、幸せな人生を味わってほしいんです。お願いします、俺が死んだ場所に、生き返らせて下さい!!」


「残念だけど、それは出来ないね。あの肉体は、もう魂の器として機能しない。あの場所に、キミの魂の受け皿となる肉体が存在しない以上、ボクでもキミを生き返らせることは出来ないよ。」


「そ、そんな……」



 絶望に、目の前が暗くなる。



「――だけどね。1つ方法があるよ。」




これまでに伏線をちゃんと張っておけば良かったんですが、構成とかに気が回ってなくて、いきなり感がハンパ無いかもしれませんね^^;

ハッピーエンドを目指しますので、これからも拙作にお付き合い戴ければ幸いです。


次話で3章を終えて、新展開になる予定。

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