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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第三章 異世界冒険者になったった
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第49話 霊魂になったった



 トルメク国第三王女を蘇生した結果、桁違いの俺の聖魔法を見た王族たちは、俺を異世界から来たチート持ちの『聖者』と見定め、自分達の勢力に取り込もうと、俺に政略結婚を薦めてきた。


 半ば強引に言いくるめられようとしていた俺を見かねて、アルタミラは、『闇の神竜』の正体を顕わし、自分の力を誇示して王族達をビビらせようとしてくれたのだが。


 アイギスの住人を恐怖のどんぞこに突き落とし、騎士団を潰走かいそうさせたまでは良かった。

 だが、勇者アガタの召喚した現代兵器を破壊するついでに、街を破壊してしまうことに。

 どうみても巨大怪獣だ。


 さらに、この場に一番来て欲しくない、おっかない相手が登場。



< どういうつもりだお前達、我との盟約を反故にする気か! >



 怒り心頭の、輝ける白銀の巨竜、『光の神竜・バハムート』イクシオル。



 ……どうしてこうなった。




――――――――――――――――――――




< 何よ? ワタシはる気無かったのに、アイツが突っかかってきてんのよ!

 文句あるならアイツを止めなさいよ!! >

< イクス、待ってくれ! 街を破壊する気はなかったんだ。勇者アガタが…… >


< 言い訳は見苦しいぞ、アイザルトよ。

 街を破壊するお前達の所業、見過ごすわけには行かん。

 我が裁きの稲妻ライトニングを喰らうがいい! >

< よせ、話を聞いてくれ!? >



 雷を放とうと、大きく開かれたバハムートのあぎと


 光神教の司教として人族社会に溶け込んでいるから、アルタミラよりはイクスの方が人族社会の常識があるだろう、と期待していたのだが、やはりドラゴンは脳筋だった。


 バハムートの光属性範囲攻撃『稲妻ライトニング』――初めてイクスと対峙した時、天が裂けたかと思うほどの轟音と共に、広範囲に降り注いだ無数のいかずち


 探知画面には、その範囲に掛かる輝点が無数にある。

 避難の済んでいない住民たち、それに、転移石で脱出しようとしている王族と、その護衛についた愛理。


 ここであの無数の稲妻を辺り一面に落とされたら、カゲミツの張った障壁――聖属性以外の魔法を遮断する『聖域サンクチュアリ』――の外にいる者がどうなるか?


 みな、黒焦げになって死ぬだろう。

 獣人の集落で蘇生出来なかった死体のように、もはや魂の器となりえない消炭けしずみのような屍を晒すことになるのだ。


 そんなこと、絶対に……



「やらせないっ!」



 天狗の翼に魔力を込め、一気に加速した俺は、今まさに稲妻を放とうとするバハムートの咢へ飛び込んだ!




――――――――――――――――――――




< アイザルトっ、何する気なのっ!? >



 砲弾のように加速した俺の体が、雷を帯びたバハムートの口の前に。



「――人化、解除っ!」



 司祭の外套カズラを収納する手間も惜しみ、衣服を突き破って一気に巨大化する俺の体。



< なにっ!? >



 そのままの勢いで、頭突きをかます。

 衝撃で、空中で頭を大きく仰け反らせる白い巨竜。



< ぐふっ、馬鹿な! 何のつもりだ? >



 もちろんダメージは与えられない。

 相手はアルタミラ同様、元の防御力が高い上に『物理ダメージ半減』の耐性がある。


 だが、俺の狙いはバハムートを倒すことではなく、ライトニングを撃たせないことだ。


 そのまま、バハムートの頭や首に手を掛け、振り落とされないように胴体に足を絡めてしがみつく。

 そして、雷を放つ口を塞ぐべく、鋭い牙の生えたあぎとを、俺の左肩へ押し付けた。



「ゴボォォォォ? < 放せ、キサマ何を考えている? > 」

「こうすれば、ライトニングを撃てないだろ? それよりも、戦闘をやめて、話を聞いて……」

< 愚かな。我の稲妻は吐息ブレスではない。口を塞いでも無意味だ! > 



 バハムートの咢の隙間が、ビカリ、と輝いた瞬間。



「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!?」



 ビリビリと全身を駆け回る耐えがたい激痛と共に、意思を無視して体がガクガクとのたくる。

 熱さとも冷たさとも感じられる嫌らしい熱が、全身をいていき、焦げ臭いニオイが鼻をつく。

 眼球の水分が蒸発して水晶体が白濁し、何も見えなくなる。


 意識が、遠のく。



「 グアォォォォォンッ!? < アイザルトぉぉっ!? > 」



 ズルリ、とバハムートの体からずり落ちていく俺が最後に耳にしたのは、アルタミラの悲痛な叫びだった。




――――――――――――――――――――




「……相澤くん、キミ、結構無謀な人だよね~?」



 気が付けば、薄明りに満たされた空間に立っていた。


 床はふわふわとして頼りなく、周りの景色も、焦点が合わないようではっきり見えない。

 声のした方に意識を集中すると、目の前でもやもやした物が集まって塊になり、そこからまばゆい光が溢れだしてきた。


 思わず両手をかざして光を遮る。


 やがて、眩しい光がおさまり、薄目を開けた俺の前には。


 「受付」とかかれたプレートを載せたスチール製の事務机、その向うに、濃紺のスーツを着て背中から真っ白な翼を生やした……「天狗」がいた。



「あなたは、『風神・ティターンダエル』……」



 元の日本で、自転車通学中に交通事故で死んだ俺を、この世界に転生させた人物、いや、『神』だ。

 ということは、



「……俺、もしかして死んだんですか?」

「うん、そぉですよ~」

「え、でも、あれくらいのことで……? いくら耐性のない光属性って言っても、以前、空中戦で喰らった時には、すぐ回復できたのに!」



 信じられなかった。


 ステータスの体力値・精神力値から、いつの間にか『自分が死ぬことなんてありえない』、と思い込んでいたのだ。



「あの時と今回じゃ、喰らった量と時間が違います。

 どれだけ頑丈だろうと、生物を構成する細胞の大半が焼けたら、死ぬでしょ、普通に。」

「そんな、困りますよ、アルタミラとカゲミツを残して死ぬなんて!

 ファンタジー世界でしょ、あなた神様でしょ、何とかして下さい!!」

「ここに来た人は、みんなそう言うんですよねぇ~。

 キミを転生させる時に、もう特典使っちゃったんだから、そうそう特別扱いはできませんよぉ~?」

「でも、アルタミラとイクスの闘いが始まれば、あの街は壊滅するんです! 俺が止めに行かなきゃ!

 それに、亜空間に収納してた核ミサイル、俺が死んだら爆発するんじゃ?」

「まぁ、そうなるよねぇ。

 それだけじゃありません。

 光と闇の神竜が争いあって相討ち、それぞれに加担する者たちの最終戦争で人族は滅ぶ。

 さらには、愛する『おとーさん』を喪って絶望した『神子』――キミがカゲミツと名付けた子だよ――は滅びを選択し、邪神となって世界を閉じる。

 でも仕方ないんじゃない? キミが選択した行動の結果だよ。」


「そんな、俺のせいで、異世界が、滅ぶ?」



 剣と魔法のファンタジー世界で、第二の人生を謳歌おうかしようと思っていただけなのに。

 いつの間に、『セカイ系』の主人公になってたんだ、俺は?



「異世界?

 ボクが説明したこと、スッポリ忘れちゃってるみたいだねぇ。

 この世界は、かつてキミが生きていた時間から見て遥か未来だけど、同じ世界、同じ惑星ほし

 ――ここは、『地球』だよ。」




今回ちょっと短めでしたが、今月中に次話を投稿する予定です。

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