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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第三章 異世界冒険者になったった
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第40話 不審者になったった



ドゴォォォォォォォン!



 イゾから譲り受けた拳銃――『6連発ザ・シックス・シューター』から発射された魔力弾は、まばゆい閃光で俺の視界を奪った。


 無属性でありながら、膨大なエネルギーによって白光を放った魔力弾。

 直視してしまったため、何も見えない。

 慌てて目をつむり、もう一度開いたが、視力が回復する気配は無い。


 余裕があれば、『目が! 目がぁぁっ!』っていうジ○リの名シーンを再現するところだが。


 敵はどうなったのか?

 カゲミツ達は?


 発射した直後から、音だけは聞こえていた。


 じゅっ、と何かが蒸発するような音、ぽっ、と何かが燃え尽きるような音。

 そして、剣戟の音は無く、何か大型の生物達が慌てふためいて逃げて行く足音――おそらく食人鬼オーガどもは異常事態に驚いて逃げたんだろう。


 やがて、銃を握りしめてひざまずいた俺のもとに、ゆっくりと近付いてくる2人と1匹の足音。


 無事のようだ。ほっとした。



「凄い光でしたな。オーガ共も、怯えて逃げ散りました。」



 めしいていた視界が、ゆっくりと戻ってくる。



「おとーさん、大丈夫ですか?」

「御怪我はありませんか、聖者様?」

< わぅ、わぅ! くぅ~ん! くぅ~ん!(アニキ、オイラやったっすよ! ご褒美に撫でて! 撫でてくだせぇ!) >



 心配そうに覗き込んでいる褐色銀髪美少女カゲミツと、食人鬼そっくりなマウザーと、お腹を見せてひっくり返っている体長5mの駄犬シロ。

 ……シロ、平常運転だな。


 一応、被害らしきものは、目がチカチカすることと、マウザーの外見だけで済んだみたいだ。




 だが、視力が回復し、俺が撃った方向に視線を向けた途端。


 目に飛び込んできたのは――


 直径10m程の、大地の上に残された一本のみにくい傷跡――魔力弾が通過し焼き尽くした、死の空間。


 ソレは、視線の先、一直線にどこまでも続いていた。




――――――――――――――――――――




 街道の上に続く、焼け焦げた地面。

 周辺の木々も焼け焦げ、ところどころに火災が発生している。


 標的になったオーガ(その1)ばかりか、少し離れた場所に居たオーガ(その2)さえ跡形も無い。……カゲミツ達が銃口の先に居なくて良かった。



「うわぁ、やっちゃった感ハンパ無ぇ……」



 アルタミラとイクスの引き起こした大規模災害ほどでは無いにせよ、人目に触れる可能性の高い街道に、こんな傷跡を残してしまうとは。



 ってか、街道の上を真っ直ぐ……。



「この先って、……アイギスっ?」



 この焦げた道が続く先に、人の住んでいる街が!


 高出力のレーザー砲みたいな代物シロモノを、そんな場所に撃ちこんだなんて。

 もしかして俺は、それと知らずに大量破壊兵器のスイッチを押してしまったのか!?


 脳裏を、焼け焦げた街と、横たわる無数の黒い物体――人間の焼死体のイメージがよぎる。


 かつて、神殿騎士団に襲撃された獣人集落の惨劇を、この俺が、もっと大規模に再現してしまったかもしれないのだ。


 そうだ、シグの家族が住む『ステアー親父の満腹亭』、イゾの領地の物産を扱う『サミュエル商会』、街のどこかにはイクスと愛理も居るはずだ。


 もしも、彼らが……


 想像だけで思わず嘔吐しそうになるが、何とか堪える。


 銃把グリップを握ったまま固まっている右手の指を、震える左手で一本一本引き剥がし、銃をホルスターに仕舞った。

 立ち上がりかけて、脚に力が入らずによろけ、マウザーに抱き止められる。



「御加減がすぐれないようですが、少し休まれますか?」

「おとーさん、シロちゃんに乗って帰りましょう。おかーさんも待ってますよ。」

< あぅ、あぉん!(ささ、アニキぃ、オイラにまたがっておくんなせぇ!) >


「いや、それよりも、街の様子を見に行かなきゃ……大勢の人を、殺しちゃったかもしれないんだ!」



 ぽかん、とするカゲミツとシロ。

 対照的に、マウザーの顔がみるみるうちに青褪あおざめていく。



「もしや、あの光が街まで!?

 ……私が確認してきましょう。聖者さまはここでお待ち下さい!」



 アイギスの街へ向かって走り出そうとするマウザー。


 だが、



「マウザーはここで待ってて。その姿で街へ近づけば、オーガと間違えられるかもしれないから。」



 身長2.5m弱、人間離れした体形で筋肉付き過ぎな巨人。

 マウザーの顔を知っている人にもオーガと間違えられるレベルだ。

 俺も間違えたし。



「……それに、俺が、この目で確認しなきゃ、いけないんだ!」




――――――――――――――――――――




 罪の無い人々を、たくさん殺してしまったかもしれない。

 その不安で、胃がきりきり痛み、冷や汗がこめかみを伝う。


 元の世界――地球では、民間人を誤爆したり、それどころか焼夷弾で焼き払い、果ては核兵器や化学兵器で無差別大量虐殺するような戦争があった――いや、今もあるだろう。

 戦争ともなれば、そんな狂気の沙汰も正当化されてしまうのだ。


 俺も闘いの最中だったし、仕方無かったんだ。

 そもそも、こんな威力があるなんて知らなかったし。


 ……なんて、どれも言い訳でしかないな。


 どんな惨状さんじょうだったとしても、自分の罪を、自分の目で確認しなくては。


 上空から偵察するつもりでアイテムスロットから天狗3点セットを取り出すと、カゲミツが抱きついてきた。



「わたしもお供します。そんな顔してるおとーさん、1人にしておけません!」


「……ありがとう。」



 凍てつきそうな心を、カゲミツの温もりが和らげてくれる。


 そうだ、俺には守るべき存在、そして俺を救ってくれる存在――この世界で出来た、家族がいるんだ。


 罪の意識に囚われて、凹んだままではいられない。

 罪を背負って償う方法は、後で考えよう。



 下駄を履き、面を着け、団扇を右手に握る。

 発動するエフェクト――純白の翼。


 首に手を回すカゲミツをお姫様だっこし、心配そうな顔のマウザーと、何も考えてなさそうに尻尾を振ってるシロを地上に残して、俺は空へと舞い上がった。




――――――――――――――――――――




 上空から見下ろすと、魔力弾の通った直線状の焦げた跡と、ところどころ曲がっている街道とは、完全には一致していなかった。

 街道は、湿地状の場所を避け、川幅の狭い場所を選んで橋を架け、動かせない大岩を迂回し、という具合にところどころカーブしている。


 馬車で走ってきた時は直線状に真っ直ぐな道だと錯覚していたのだから、人の記憶や感覚はあてにならないな。


 だが、探知画面で確認すると、魔力弾の向かった方向にいくつもの黄色い輝点――アイギスの街があることに変わりは無い。


 人的被害が出ていないことを、この世界の神とかそういうモノに祈る。

 って、知ってる神っていうと、俺をこの世界に送り込んだ『風神』かぁ。

 あいつはなぁ、ちょっとアレだったし。

 そういや、俺も一応『魔神』だったわ。

 この世界の神、なんかダメっぽい。

 ……神頼みはやめよう。


 途中、小規模な森林火災が発生している場所には、カゲミツが範囲魔法の『氷雪雨アイシクルレイン』を撃ちこんで消化活動を行う。

 ささやかだが、出来ることをやっていこう。


 街が破壊され、死人や怪我人が出ていたら、俺の聖魔法で治療するつもりだ。

 もう、目立つのはイヤだとか言ってる場合じゃないしな。


 カゲミツを守ることも、一応貴族であるイゾや、なんだか有力者っぽいイクス(その正体は光の神竜バハムート)の後ろ盾がある。

 彼らの力を最大限利用させて貰って、何とかしよう。


 進むにつれ地面の焦げ目は薄くなり、周辺の木々が燃えていることも無い。

 やがて、地面の焦げ目がかすれて消えかかっている地点まで来ると、肉眼でアイギスの街の外壁が見えるようになってきた。

 この辺りで、威力が減衰して魔力弾も消えたのだろうか?

 そうであって欲しい!



 だが、俺の期待は裏切られた。


 アイギスの街壁には、ぽっかりと焦げた穴が開いていたのだ!




――――――――――――――――――――




 アイギスの南門には、これからモンスターの大群を討伐に出陣する、ガイエナ諸王国軍騎兵+魔術師の混成旅団と、数十人の冒険者の集団が陣取っていた。

 総勢2千人くらいだろうか?


 彼らの存在を探知画面で察していたので、見つからない距離で地上に降り、3点セットを亜空間に収納する。

 ここからは、徒歩だ。


 人相が分からないように大振りなマントを着、フードを被る。

 カゲミツにも同様の格好をさせ、肩を並べて歩き出した。





 城塞都市であるアイギスは、街の外周をぐるりと高い壁に囲まれている。

 石造りの壁の高さは20mに達し、壁の上部は弓を持った兵士が巡回できる通路となっており、各所に兵士の詰所も配置されている。

 その鉄壁の守りを評して、伝説の盾にちなんで名付けられたのが『アイギス』の街の由来だ。

 アルタミラのような空飛ぶ巨大怪獣には効果無いだろうが、一般の雑魚モンスターはもとより、魔術師団を連れた軍隊でも簡単に落とせるものではない。

 まぁ、飛行系モンスターが群れをなして襲ってくる、という事態になったらどうなるか知らんけど。



 近付くにつれ、街道が森を抜け、視界が広がってくる。

 街の代名詞ともいえる堅牢な城壁の上半分には、直径10mくらいの焦げた丸い穴がぽっかりと空いていた。

 俺の魔力弾がぶち抜いた痕だ。


 幸いなのは、結構地上から高い場所を通過したことだろう。


 平民街の民家はせいぜい2階建て、たまに富裕な商館で3階建てもあるが、高さ10m以上の建物はほとんど見掛けない。

 これなら、魔力弾の直撃を受けて死んだ人は居ないんじゃないかな?


 壁の修理代は高そうだが、ちょっと気が軽くなった。



 殺気立っている軍隊を避け、冒険者の誰かから話を聞こうと、南門前の広場の端っこへ移動。


 街道から現れた俺達は、冒険者達から怪訝な目で見られたが、準備に忙しいらしく追及されることも無い。


 誰を捕まえようか、物色しているところに後ろから声を掛けられた。



「アイザルト、とカゲミツ、だったな? こちらへ来たまえ。」



 フードとマントを被っているのに、どうして分かった!?


 振り向いた先に、流れるような眩い金髪、碧色の瞳、人を惹き付けて止まない美貌、そして、長さ15cmはあろうかという尖った細長い耳。


 そこに居たのは、アイギス冒険者ギルド局長――ハイエルフのグリューネワルトだった。









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