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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第三章 異世界冒険者になったった
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第33話 奴隷商になったった


 余ってるボーナスポイントを、全部知力に振れ、ってことは。



「オブラートに包んで馬鹿って言われた!?」



 ドッキリとか、人をからかうにも程があるだろ。

 こっちは真剣だったのに。


 頭に乗った紙吹雪を手で払いながら、床から立ち上がって、手にクラッカーを持った中年とロリの二人を睨みつける。



「すまんすまん。

 馬鹿にしてるように聞こえたんなら謝っとく。


 でも、そんなんじゃねぇんだ。

 いいから、騙されたと思って、72ポイントを知力に突っ込んでみろって。」



 ポイントまで分ってるってことは、俺のステータスが完全に見えているようだ。



「俺に攻撃魔法が無いこと、分ってるんですよね?

 知力の値を上げて、一体何のメリットがあるんですか?」



 前回LVUPした時は、攻撃魔法が無いから知力は後回しで、ムラクモの攻撃が当たるように器用さを100まで上げたのだが。



「心眼スキルだよ。


 俺っちのステ、偽装した方のが見えてるんだろ?

 店の奥でファリっちに男爵への口添えを頼まれた時に、初めて気付いたんだけどな。

 にーちゃんLV200超えてるし、てっきり、こっちのステも筒抜けだと思ってたんだよ。」



「それじゃ、知力を上げれば、イゾさんの本当のステータスが見えるようになると?」



「ああ。


 俺っちの『偽装』スキルもLV30(MAX)だが、ほんとなら心眼LV30(MAX)で見抜けないはずねぇんだよ、上位鑑定スキルなんだから。


 見抜けないのは、俺とにーちゃんの知力値の差が100以上開いてるからだな。」



 そうだったのか。


 心眼をごまかされてるのはなんとなく予想してたけど、まさか知力の値が関係してくるとは盲点だった。



「この世界で、情報不足は命に係るぜ?

 せっかくの上位鑑定スキルも、知力を上げなきゃ宝の持ち腐れ、ってもんだ。」



「……分りました。

 今後の情報収集のこともあるし、言われた通り、知力上げてみますよ。」



 自分のステータス画面に意識を集中し、ボーナスポイントを配分する。

 知力25に72を追加して、97に。


 再び心眼スキルでイゾのステータスを見てみると。




≪イゾノ カツオ≫

 種族: ヒューム(貴族:ポゴーダ男爵)

 LV: 197

――――――――――――――――

【ステータス】

HP : 3045/3045

MP : 580/580

力  : 172

体力 : 153

知力 : 195

精神 : 153

器用さ: 181

速さ : 155

運  : 75

――――――――――――――――

【スキル】

・勇者流剣術 LV79

・射撃    LV82

・早撃ち   LV53 

・禁呪    LV47 

・全方位探知 LV30(MAX)

・気配察知  LV30(MAX)

・心眼    LV30(MAX)

・偽装    LV30(MAX)

・二刀流

・二丁拳銃

・念話

――――――――――――――――

【魔法】    

 ・光魔法  LV 75

 ・地魔法  LV 52

 ・水魔法  LV 41

 ・火魔法  LV 55

 ・風魔法  LV 63

――――――――――――――――

【属性】

 光

――――――――――――――――

【耐性】 

光属性の攻撃半減  

毒・混乱・即死の状態異常無効

――――――――――――――――

【加護】

 光神

――――――――――――――――




 「男爵に会える⇒ウソでした」というドッキリで騙されたのかと思ったが、イゾがポゴーダ男爵だったのか。



 ちなみに、偽装のスキルは他人のステータスにも効果を発揮するらしく、ファリーネは昨日確認した時LV11の『職人』だったのだが、実はLV104の『聖女』だった。

 スキルを見る限り、聖魔法以外は生産系に特化しているようだ。



 それはさておき。



「何で、昨日教えてくれなかったんですか?

 悪ふざけにも程があるでしょうが!」



 ニヤリと笑いながら、顔を見合わせるイゾとファリーネ。



「ごめんなさいね~。

 私に頼みごとっていうから、てっきり『聖女』としてパーティーに参加しろって言われると思ってたの。

 まさか、イゾ本人の前で『イゾに会いたいから助けてくれ』なんて斜め上は予想してなくて。

 笑いを堪えるのに必死だったのよ~。」



 プルプル震えてたのは、笑いを堪えてたのか。



「わりぃわりぃ。

 にーちゃんの呆れる顔を想像したら、どうしても『ドッキリ大作戦』をやりたくなってな。」



 ……こいつ、『少年の心を持った大人』というよりは、『イタズラっ子がそのまま大きくなりました』ってタイプだな。



「罪滅ぼしと言っちゃあ何だが、獣人集落の件、報酬抜きで力を貸そうじゃないか。」



 ぽりぽりと頬を掻くイゾから、願っても無い言葉が!



「いいんですか!?」



 ずいぶん気前が良い話だ。



「ああ。

 にーちゃんが気に入ったんでな。


 昨日、にーちゃんは俺っちをLV16の商人だと思ってたわけだろ?

 それでもこちらを侮ることなく、力押しの解決を選ばなかった。


 この世界に流れ着いた先輩として、お人好しな後輩を手助けしてやりたくなったのさ。」



「イゾさん……。」



 何だ、思ったより良い人じゃないか。



「ところで、提案なんだけどよ。」



「何でしょう?」



「その集落の獣人、亡命させるんじゃなくて、俺っちの奴隷にしないか?」



 奴隷ですか、そうですか。



「って、ちょっと待てぇぇぇっ!?」



 困ってる人達の足元を見て奴隷にするとか、どんだけ鬼畜なんだよ!?



「他人の弱みに付け込むなんて最低だ、見損なったよ!

 もうアンタ等には頼まん!」



 こうなったら、自力で魔の森突っ切って、獣人率いて隣国行ってやろうじゃないか!

 俺達はバハムートのイクスでさえ倒したんだ。

 並のモンスターなど、アルタミラのブレスで一発だ、たぶん。


 ……いや、待てよ、味方まで危ない気もするな。



「おぃおぃ、話最後まで聞けって!」



 引き止める声を無視して、怒り心頭で部屋を飛び出ようとした俺だったが、


 ぼぃんっ。


 身を翻した途端、柔らかい壁に激突。

 跳ね返されそうになったところを抱きとめられた。


 立ったままの俺の顔の位置で、巨大な胸の双丘が、俺を受け止めている。

 顔を双つの肉の丘に挟まれながら、恐る恐る見上げると。



「ごめんなさいねぇー。

 うちのダンナ様は、悪気はないんですけど、説明が足りないっていうか、人を驚かせるようなことばかり言うんですよー。」



 巨大獣人メイドが、ほわっと優しく微笑んでいた。




――――――――――――――――――――――――――――




「おぃ、ベアトリス、俺っち以外の男にパフパフはやめろぉっ!?」



 焦り気味なイゾの声にちょっと溜飲が下がるが。


(ち、窒息するぅ。)


 名残惜しいけど、離してくれと手でタップする。



「あらあら、まぁまぁ。気が付かなくて、ごめんなさいねー。」



 解放されて胸一杯に息を吸い込むと、ベアトリスのメイド服からの移り香が鼻腔をくすぐる。

 香水の匂いもしているのに、何故、至近距離に近づかれて気付かなかった!?


 ベアトリスを心眼で確認する。


 熊獣人の拳闘士、LV216だ。

 こんなに傍まで近付かれたのに気付かなかったのは、『隠密』スキルのせいだった。


 全方位探知とは別に、『気配察知』というスキルがあるようだが、そのスキルがあれば気が付いたのだろうか?

 確か愛理も持ってたはずだ。



「にーちゃん、落ち着いたか?

 男爵領までの通行手形や領内の通行許可証を出すのは問題ない。

 だが、にーちゃんの計画には色々不備がある。

 順を追って話すから聞いてくれ。」



 まず、隣国ギリークまでの距離の問題。

 男爵領を通ると、かなりの遠回りになるので、徒歩なら数か月掛かる。

 その間の衣食住、道中の安全を確保できるのか。

 関所での通行料をどうするのか。


 また、国境を越えたとして、ギリークが難民を受け入れてくれるのか?

 ギリークは商業都市国家連合なだけあって、金次第で大抵のことは片が付くらしいが、焼け出された難民達にそのお金は無い。

 下手をすれば、密入国者として本国に強制送還されてしまう。



「それだったら、俺っちの領地で、男爵所有の奴隷という名目で保護してやった方が安全だ。

 それなら、移送用の馬車を用立てることも出来るし、途中の関所でも俺っちが一括して通行料を納めれば済む。

 食糧や野営用の天幕だって面倒みるぜ、俺っちの責任で。


 ウチの領地では獣人の人口割合が高いこともあって、獣人差別はそれほどひどくないんだ。

 それに、奴隷といっても、商工ギルドの労働奴隷みたいな扱いをする気はない。

 農奴として、実質的には小作農並みの待遇をする。


 どうだ、これでも酷いと思うか?」



 確かに、より安全かもしれないが、……獣人だというだけで自由を奪われ安い賃金で扱き使われるなんて。



「やっぱり、彼らを奴隷に落とすなんて、俺にはできません。」



 憲法で『奴隷的拘束の禁止』が謳われてる国で生まれ育ったからな。



「にーちゃんは、獣人を奴隷にすることに反対なのか?」



 こくり、と頷く。



「奴隷になるのは獣人だけじゃない。

 犯罪者奴隷もいれば、戦時の捕虜を奴隷にすることもある。

 それどころか、誘拐されて奴隷に落とされることも珍しくない。


 だが、この世界では、奴隷は当然なものと考えられてるんだ。

 ほとんどの産業が、奴隷という安価な労働力抜きで成り立たないのが現状だ。

 奴隷制ってもんが、社会に必要な機構としてしっかり組み上がっちまってんのさ。」



「それでも、異世界から勇者とかが大勢来てるんでしょ?

 イゾさんだって、貴族にまでなってるじゃないですか。

 獣人が差別されてることについて、意識改革とかしないんですか?」



「にーちゃんは、異世界人にどの程度の発言力や影響力があると思ってんだ?

 自然権思想も基本的人権の概念も生み出されてない世界で、差別を廃止しろなんて言ったって、誰も耳を貸しちゃぁくれねえよ。


 獣人差別については、俺っちもファリーネも、当然反対さ。

 だが、俺達が何か言ったところで変わりはしない。


 俺っちがベアトリスを奴隷にしてるのも、ファリーネが店員の娘達を奴隷にしてるのも、街での安全のためなんだよ。

 平民の獣人は、犯罪の被害にあっても救済されないからな。

 だが、獣人奴隷なら、所有者の財産として保護の対象となるわけだ。


 俺達にできるのは、手が届く範囲で、守れる者を守っていくことだけだ。

 この世界に残ったのも、貴族になったのも、手が届く範囲を拡げるためさ。」



 そういうもの、なのか。



「奴隷制がこの世界では必要悪だってことと、獣人を守る手段の一つになるってことは分かりましたけど、俺の一存では決められません。」



 これは、集落の人達の意思を無視して決められることじゃない。



「それについちゃあ、こっちも無理強いする気はねぇよ。

 俺っちが出向いて、そいつらを説得しようじゃないか。

 納得した者だけ、うちの奴隷として保護しよう。


 なに、奴隷といっても、期間契約奴隷だ。

 食糧や移送料、人頭税、通行税等々、頭割りした金額を期間内に返済したら、平民に戻れる。

 後は、領内で好きなように暮せばいい。


 どうしても亡命したいって奴は、うちの領地で働いて金を貯めて準備してから向かわせりゃいい。

 それでどうだ?」



 納得したわけではない、が。


 イゾがベアトリスを大事にしているらしいことは伝わってくるし、ファリーネの店で働いていた獣人の娘達も不満はなさそうだった。


 もし、集落の人達が納得するなら、イゾの提案を受けるのが一番いい、のかな?



「分かりました。それじゃ、集落の人達の説得、お願いします。」



「おう! 善は急げ、だ。

 早速馬車の手配をするから、午後になったらまた来てくれ。」





 この日の午後、俺とアルタミラにカゲミツ、冒険者マウザーPTにイゾ主従+ファリーネの一行が、ポゴーダ男爵領を目指して、数週間の馬車の旅をすることが決定したのだった。







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