表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第三章 異世界冒険者になったった
37/102

第32話 ガンマンになったった




 店の奥から俺達に声を掛けてくれたのは。



「イゾさん!?」



 どうしてここに? と聞きかけて、服装を見て納得する。

 この店の常連さんだよね、どー見ても。



「ファリっちに会いたいってか?

 あの娘は結構、人見知りで気難しがりやさんだからなぁ。」



 「恥ずかしがりや」じゃなくて「気難しがりや」?



「そこを何とか、店主さんに取り次いで貰えませんか?

 同郷のよしみで、どうしてもお願いしたいことがあるんです。」



 イゾはポリポリと頬を掻くと、呆れ顔になる。



「にーちゃん、自分で面会のハードル上げてどうすんだ?

 初対面の相手に頼みごとしたいから会わせてくれ、とか、セールスだったら門前払いだぜ?」



 う、ごもっとも。



「何かを無理強いする気はありません。

 話だけでも聞いて貰いたいんです!


 取り次いで戴けたら、イゾさんにお礼もします。

 手持ちのアイテムの中で気に入ったものがあれば、差し上げますよ。」



「最強のドラゴン引き連れて乗り込んで来た魔神が、無理強いする気は無い、ときたか。

 こいつぁとんだ笑い話だ!


 ……にーちゃん、その気が無くても相手を威嚇してる、ってことに気付けよ。」



 俺達の正体が判る人達から見れば、そうなるのか。


 確かに、剣を突き付けてする「お願い」は「強要」だよな。

 この状態で無理やり会っても、協力して貰うのは難しそうだ。



「分りました。

 今日のところは引き下がりますよ。」



 やはり、イクスに頼るか?

 イクスと男爵が敵対関係でもない限り、何とかなるだろ。



「まぁ待ちな。


 圧力を掛けて交渉すること自体は間違いじゃねぇよ。

 相手の共感や自発的な協力は得られないが、従わせるだけなら問題ない。


 俺っちを押し退けてそこの扉を開ければ、ファリーネに会えるんだぜ?


 どうする?」



 せっかく敵対関係に無い同郷人と知り合えたのだ。

 イゾともうまくやって行きたい。



「そのつもりは無いっす。


 圧力を掛けあうような関係じゃなくて、対等な友人関係になりたかったんで。

 問題解決の手段は、別の方法を考えますよ。

 店主さんによろしく言っておいて下さい。


 それじゃ。」



 帰ろうとして振り向くと、ミニスカやスクール水着を手にとって見ているアルタミラと、メイド服に興味を示すカゲミツの姿が。

(シグは猫耳店員にナンパモード、コルスはゴスロリに興味があるようだが、見なかったことにする。)


 そういえば、街道の戦いで、アルタミラとカゲミツは背嚢を無くし、中の着替えも失ってしまったんだった。


 せっかく来たんだし、何か買ってあげようか。


 そう思って二人に声を掛けようとした時、ギィ、という音と共に店の奥の扉が開いた。



「イゾ~、意地悪はそのへんにしときなさいよ~。」



 現れたのは、ゴスロリファッションの美少女だった。




――――――――――――――――――――――――――――――




「あぁ~、わりぃわりぃ。

 このにーちゃん、素直っつーか、単純っつーか。

 つい、からかいたくなっちまってよぉ。」



 どういうことだ?



「明け方から、南の方で大ゲンカやらかしてたろう?


 俺達には丸分りだよ。

 それで、この街に入った時から監視してたわけだ。


 さっき路上で会ったの、偶然だと思ったか?」



 ぞっとした。


 探知スキルを持つのは俺だけじゃないんだ。

 敵意を持つ相手なら、とっくに攻撃されていただろう。



「まぁ、人柄は見させて貰った。

 単純だが、悪い奴じゃねぇだろ。


 後は、ファリっちがどうするか決めてくれ。」



 ゴスロリ美少女が俺に近付いてきた。


  にっこりと微笑んで会釈した少女。



「店主のファリーネよ。日本名はひ・み・つ。」



 ゴスロリ店主は、紫の髪に藤色の眸、おっとりした感じの美少女だ。

 身長は、俺のあごまで届かないくらい。

 年齢は12歳ということだったが、少し大人びて見える。

 日本なら中学生くらいの感じだ。



「とりあえず、奥の部屋で話を聞かせて貰うわ。

 お茶ぐらいお出ししないとね。」



アルタミラ達に「欲しいものを見繕っておいて」と伝え、俺は扉の奥へと招き入れられた。




――――――――――――――――――――――――――――――




 勧められた席に座り、元日本人3人だけの秘密会談が始まった途端、少女のおっとりした雰囲気が一変した。

 立ち上がり、つかつかとこちらへ歩いてくると、険しい表情で俺に顔を近付けてくる。


 間近まで近付いた少女が俺の目を覗き込むと、瞳の色が藤色から真紅に変わった!



「真贋のスキルを発動したわ。

 嘘をつけばすぐ分かるから。


 今からする質問全てに、5秒以内で答えて!」



「は、はい!」



「それじゃいくわよ。


 第1問。


 YESロリータっ?」



「はぁ? ……の、NOタッチっ!?」



「第2問。


 美女と幼女、好きなのはどっちっ?」



「え? び、美女!」



「第3問。


 ツルペタと巨乳、好きなのはどっちっ?」



「巨乳!」



 ってか俺の性癖を知ってどうしようと?



「ふぅ、合格ね。」



 額の汗をぬぐうゴスロリ少女。

 疲れるほどのことか!?



「俺は何に合格したんだ?

 そもそも、そんな大げさなスキル使ってまでする質問か!?」



 やれやれ、と首を振りながら答えるファリーネ。



「アナタ、チート持ちのロリコン野郎にストーカーされる幼女の気持ち、想像できない?」



 ……なるほど、保安上の理由か。

 俺が伸士でかつロリコンでは無い、と確証が必要だったわけだ。


 ってか、魔神の俺に聞くこと、もっと他にあるんじゃない?



 イゾがフォローに回る。



「まぁ、アレだ。

 こっちの世界来たばっかの奴ってさ、結構面倒な連中も多いんだわ。


 この店は、ファリっちの趣味だけじゃなく、異世界に放り出されて難儀する転生者・転移者をサポートするために作られたんだ。

 シャツに地球の言語をプリントして売ることで、ここに辿り着けるようにしてな。


 ところが、自分だけがチート持ちだと勘違いして上から目線だったり、店で働いてる獣人の女の子を『奴隷にするとは怪しからん、解放しろ、俺が保護する』と下心丸出しでいちゃもん付けてきたりするような奴が、必ず居るんだ。


 特に、幼女のハーレムを作ろうとしてファリっちにストーカーした奴が居てさ、トラウマになってんだよ。


 とりあえず、ロリコン認定した奴は、例え伸士であっても入店お断りだ。」



 な、なるほど。



「もし、俺がロリコンだったら、どうなったんです?」



 時間がコマ送りされたかのように、突如、銃口が突き付けられていた!


 西部劇に出てくるような、古めかしい回転式拳銃リヴォルバーだ。

 銃身の下に、銃剣――大型のナイフの刃が付いている。

 なかなか厨二なデザインだな。

 両手を上げて降参のポーズ。



「こいつは、火薬じゃなくって、風の基本魔法ウィンドを圧縮しておいて弾丸を飛ばす、いわばエアガンだ。

 今仕込んでいる弾丸に殺傷力は無いが、特別な魔法の籠ったシロモノでな。

 ファリーネのネックレスに仕込まれた結界からはじかれて、接近できないようにする、一種の呪いを打ち込むんだ。

 これで、二度とファリーネの前に現れることは無い、というわけさ。」



 呪いの接近禁止命令か、ストーカー対策としては完璧だな。


 ってか、呪いって怖すぎ。

 どんなスキルだ?



「ところで、にーちゃんはファリっちに何の用があったんだ?」



「実は、……」



 ここへ来るまでに、獣人集落が襲われてる現場に遭遇したこと。

 彼らが安全に生活できるように協力する、と約束したこと。

 獣人差別の無い商業都市国家連合『ギリーク』へ亡命させる計画を立てたこと。

 魔の森を迂回して安全に亡命できるよう、ギリーク国境に接するポゴーダ男爵領を通過する、というプランを立てたこと。



「……というわけで、男爵領の通行許可証が必要なんです。


 ファリーネさんのお店は、ポゴーダ男爵の援助を受けていると聞きました。

 男爵と懇意にしているファリーネさんに、通行許可証を発行して貰えるよう、お口添えをお願いに来たんですよ。」



 説明を終えたが。


 ファリーネは、俯いて顔を上げようとしない。

 肩が小刻みに震え、ゴスロリのスカートを握りしめる手が白く強張る。


 イゾは、立ち上がったかと思うと、柱に拳を打ち付け、壁に額を付けて肩を震わせている。



 どうしたんだ!?

 俺、そんなに怒らせるような事言ったのか??



「あの~、ファリーネさん? イゾさん?」



 しばらく、返事が帰ってこなかったが。


 やがて、意を決したようにファリーネが顔を上げると。



「ごめんなさい、私はその件で、もう力になれることは無いわ。

 後は、イゾにお願いしてみて。」



 そう言い残し、ふらつく足取りで建物の奥へ去ってしまった。


 壁を向いていたイゾがこちらへ向き直ると、何かを堪えるように、喰いしばった歯の間から長い吐息を押し出す。


 決然とした表情で、俺に近付いたイゾは、2丁拳銃のうち1丁を抜いて、俺に銃把グリップを向けて渡すと、痛みに耐えるような表情で言った。



「この銃を貸してやる。

 こいつを持って、明日の午前中に、アイギス大通り南・東側街路2-1にある、男爵領の特産品を扱うサミュエル商会へ行け。

 銃を見せれば、男爵に会う手筈を付けて貰えるはずだ。

 幸運を祈るぜ。


 ……今日は、これで帰んな。」



 俺の顔を見ないまま、そう言い捨てて歩き去るイゾ。


 彼らと男爵の間に、一体、何が起きたのだろう。


 一抹の不安を抱いたまま、店内へと戻る。



 こうして、スク水とミニスカとメイド服を購入し、俺達はファリーネの店を後にしたのだった。




――――――――――――――――――――――――――――――




 昨夜、シグの親父さんの酒場で愛理が一悶着起こして、その後重い過去話を聞いたりと鬱な展開があったが、アルタミラがスク水プレイで俺を癒してくれた話とかは省略。



 今日は、午前中に男爵領の特産品を扱うサミュエル商会に行って、男爵との面会の約束を取り付け、午後は冒険者ギルドに顔を出し、冒険者のマウザーとブレタに再会する予定だ。


 もし、男爵領の通行許可証が貰えるなら、マウザー達の冒険者PTに、俺達と一緒に獣人達が移動する際の護衛を頼めないかと考えている。

 彼らなら、俺達が常識外れなマネを仕出かしても、口止めをする必要は無いだろう。




 とりあえず、俺はシグの案内で、サミュエル商会へ向かっていた。


 アルタミラとカゲミツは、「ステアー親父の満腹亭」で手伝いをしている。

 昨夜泊めて貰ったのだが、どうしても宿泊料を受け取って貰えないので、御礼に掃除・洗濯・皿洗いを手伝うことにしたのだ。

 アルタミラは面倒くさがっていたが、カゲミツはメイド服を着て、喜んで働いていた。

 ちなみに、コルスはアルタミラの飲むペースに乱されたのか、二日酔いでダウンしている。


 そんな訳で、俺とシグの二人なのだが。



< ほんとにここなの!? >



 コクコクと頷くシグ。


 俺は公用語を上手く話せないし、シグは念話を使えない。

 コミュニケーションに不安がある。


 それというのも。


(男爵領の特産品を扱う商会が、こんな小さくてボロい建物でいいのかよ!)


 周囲に2階建てや3階建てで、間口の広い立派な商館が建ち並ぶ中、平屋で間口の狭い古ぼけた建物が、目的地だというのだ。


 中の様子が分らないが、もう開店しているのだろうか?


 仕方なく、木製の扉をノックしてみる。


 しばらくして、上等な生地ではないものの、清潔な服を着た使用人らしき男が現れた。

 尖って獣毛に覆われた耳から、獣人であることが判る。

 首にちらりと覗くのは、首輪のようだ。

 やはり奴隷か。


 彼に、イゾから預かった拳銃を見せると、頷いて商館へ招き入れられた。


 館内には、所狭しと壺や袋に毛皮、樽などが置かれている。

 ここに集められた荷を、路面小売店や行商人へ卸しているようだ。


 ふと、懐かしい匂いが鼻腔をくすぐる。


(この匂いは、……醤油?)


 足元の壺がソレっぽいが。

 確認するのは後回しだ。


 面会の約束を取り付けたら、ゆっくり商品を見せて貰おう。



 しばらく待つと、奥に引っ込んでいたさっきの獣人の使用人が戻って来た。



 何と、男爵が立ち寄っているので、今から会うことが出来る、というのだ!


 これは願っても無いチャンスだ。


 念話で話すことになるが、機嫌を損ねないよう、口上を考えておかないと。

 贈り物は、ブラックドラゴンの角でいいかな?


 ……緊張する。



 俺一人で付いてくるように指示され、使用人の後に従う。


 半開きの扉を示すと、去って行く使用人。


 緊張に、喉がゴクリと鳴る。


 ノックして、扉を押し開きつつ、中に入った途端。




パァァァンッ! パァァァンッ!




 火薬の爆ぜる音!

 銃で撃たれたのか?



 とっさに床に伏せる。

 そこに舞い散る紙吹雪と紙スダレ。


 顔を上げた俺の前には。





 『ドッキリ!』のプラカードを持ったイゾと。


 『大・成・功!!』のプラカードを持ったファリーネが。




「……え?」




 呆然としている俺に、上等な生地の上着ジュストコール胴衣ジレ、パンツを纏った眉毛の太い中年が声を掛けてきた。



「にーちゃん、余ってるボーナスポイント、とりあえず全部知力に振っとけや。」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ