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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第三章 異世界冒険者になったった
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第31話 Fランク冒険者になったった



 途中で変な同郷人のおっさんと面識が出来たものの、その後は特にイベントもなく冒険者ギルドに到着した。


 冒険者ギルドは、そこそこ大きい2階建ての石造りの建物だった。


 愛理の説明によると、石の壁は、積み上げた石を地魔法の「アースウォール」で補強して固めたものだ。

 アースウォールの効果は永続的なものではないので、年に何回か魔法を掛け直す必要があるのだとか。

 ドワーフの石工には、それだけを仕事として各町村を巡回する者もいるらしい。


 魔法の発達した社会ならではの職業、というのも色々ありそうだ。



 ギルドの厚い木製のドアを押し開け、中へ入る。


 1階は、受付窓口と、依頼掲示板、待合室のレイアウトになっていた。


 最もスペースが割かれているのは、依頼掲示板だ。

 衝立状の掲示板が何枚も立てられ、裏表に依頼カードが貼り付けてある。

 今は夕刻に近い時間なので閑散としているが、早朝には殺気だった冒険者でごった返すらしい。


 窓口は、登録窓口と、依頼受付窓口、報酬窓口に分けられているようだ。

 テンプレ通りに受付には美人のおねーさんが居るのを期待していたが、そんな人は居ませんでした。

 各窓口に一人ずつの男性事務員と、奥に経理担当っぽい年配女性が一人に管理職っぽい男性が一人。


 人物鑑定スキル持ちがいるかもしれないので、心眼スキルで確認したが、一応それらしき人物は居ない。

 イゾのおっさんの表示されなかった魔法やスキルのように、見抜けないようにする方法があるらしいので、心眼スキルも完璧ではないようだが。


 登録窓口の実直そうな事務員の男性に、イクスから受け取った巻物を渡した。


 その場で登録して貰えるのかと思ったら、2階へ案内するというので、全員でぞろぞろと付いて行く。


 2階の一番奥の部屋の前まで来ると、事務員はノックして扉を開けた。


 そこは、冒険者ギルドの局長の執務室だった。



 愛理を先頭に入室した俺達を待っていたのは。


 流れるような眩い金髪、碧色の瞳、人を惹き付けて止まない美貌、そして、長さ15cmはあろうかという尖った細長い耳。


 アイギス冒険者ギルド局長――彼女は、エルフだったのだ。




――――――――――――――――――――――――――――――




 ドワーフのブレタに会っていたので、エルフも存在するんじゃないかとは思っていたが。


 エルフの美少女、これぞ日本的ファンタジーの王道だよな!


 あまりジロジロ眺めては失礼な事は分っているが、ついつい顔と耳に目が吸い寄せられてしまう。

 まるで常時、魅了チャーム発動中のようだ。

 俺には魅了耐性があるはずなんだけど。



 と、左耳を強く引っ張る誰かさんが。



< ふ~ん、アイザルト、ああいう雌が好みだったの。 >



 耳の痛みよりも、生存本能に訴えかける何かを感じる。



「違う、ちょっと見てただけだって!

 俺の好みはアルタミラだよ!」



< そ? なら、許してあ・げ・る♡ >



 右腕をとられてそちらを見れば、いつの間にかカゲミツが腕に取り縋っている。

 上目遣いに見上げる視線に勝てるはずもない。



「も、もちろんカゲミツも大好きだよ!」



< はい! >



 そんな寸劇を呆れた目で眺めていたエルフの少女?は、俺に合わせてくれたのか、念話で話しかけてきた。



< アイザルト、アルタミラ、カゲミツ、アイギス冒険者ギルドへようこそ。


 私が局長のグリューネワルトだ。


 家名だけを名乗る無礼を許して欲しい。

 我ら(エルフ)のしきたりでな、部族以外の者に真名を名乗ることはできないのだ。


 しかし、アイザルト、嫉妬深いドラゴンの雌2頭に捕まるとは。

 ……同情するよ。 >



 そ、そうなんだ。

 ……やっぱり嫉妬深いんだ。


 っていうか、ドラゴンっていきなりバレた!?



「あ、あの、俺達のことは?」



< イクシオルからの書状に粗方説明されている。


 しかし、暗黒魔竜が生きていたとはな。

 私の部下達は優秀だが、報告は完璧では無かったようだ。 >



 どくん、と心臓が躍る。


 冒険者のマウザー達のことだ。



< 『暗黒竜の巣窟』にギルドから偵察隊を派遣したのだ。

 どこかで会わなかったかね? >



 俺の反応を見透かすような視線。



「いーえ! 俺達、しばらく前に洞窟から出て旅してましたんで。

 きっと行き違いになったんですよ、たぶん。」



< ……ほう。

 つまりキミは、暗黒魔竜のねぐらから、2頭のドラゴンと共に旅に出たのだね?

 そもそも、どういった経緯で危険度Sランクの暗黒竜の巣窟に潜ったのだ?

 キミは、一体、何者なんだい? >



 その下にある『死の大空洞』から来ました、なんて絶対言えない。


 そーいえば。


 イクスも愛理も、俺が人間じゃないことは知ってるけど、正確な種族=魔神ってのは教えてなかったはず。

 一体、何と答えたら?



「グリューネ、イクスが身元引受人なのですから、それ以上の詮索はやめて下さい。

 それに、暗黒魔竜の機嫌を損ねるマネは謹んで戴きたい、と書状にも記してあるはずですが?」



 愛理さん、助かったよぉ。



< ……良かろう。

 この街を灰塵に帰するのは本意ではない。

 キミ達3人は、今日からアイギス冒険者ギルド所属の『ヒュームの冒険者』だ。 >



 そう言って、3枚のカードを愛理に手渡すグリューネ。

 愛理からカードを受け取った俺達は、各々カードに手を翳し、魔力による『署名』を行う。



< そのカードを登録窓口へ持って行きたまえ。

 それで手続は終わりだ。


 ……くれぐれも、問題を起こすなよ? >



 念を押された。

 なにしろ、人族社会でのアルタミラの二つ名は『暗黒魔竜』だもんな。

 イクスのコネを使ったとはいえ、よく街に居るのを黙っててくれるよ。


 俺は、決して街では暴れさせません、と誓って執務室を後にした。




――――――――――――――――――――――――――――――




 登録窓口で、冒険者としての心得など簡単な説明を受けた後、事務員の男性が署名済みのカードを登録台帳の核石コアストーンに読み取らせて、公式に記録してくれた。


 これで身分証ができた。


 礼を言って、ギルドを出る俺達。



 そこへ、タイミング良く冒険者のコルスとシグが帰って来た。


 念話で、カードを作ったことと、エルフの局長に会ったことを伝えておく。



< 俺ら、面識ないことになってるんで、口裏合わせよろしくです。 >



< はい、聖者様の御心のままに。 >



 ギルドから少し離れた場所で落ち合う約束をして、コルスとシグがギルドへ入って行くのを見送る。



 愛理は「イクスに報告する」と言うので、一旦ここで分れることに。

 シグの親父さんの店で待ち合わせる約束をしておく。





 さて。


 俺は、冒険者になったんだな。


 ついに、異世界モノの王道的展開だ!

 ちょっと感激。




 これから、冒険者としてクエストをこなすのも良いし、この街で手に職を付けるのもいいだろう。


 あと、たまにはアルタミラとカゲミツが竜化できるようにさせてあげないとな。

 彼女達がストレスを溜めこんだらまずい。


 攻略難易度の高いダンジョンに潜るべきか、或いは強い敵を求めて魔の森へ行くか。



 ん、そういえば、何か大事な事があったような?



(……そうだ、獣人の集落の件を何とかしなくては!)


 東の商業都市国家連合『ギリーク』へ安全に亡命させるため、ポゴーダ男爵領の通行許可を得る、というプランを立てたんだけど。


 男爵への顔繋ぎは、やはりイクスのコネに頼るしかないか?


 確か、男爵は、転生者が経営する衣料品店のスポンサーでもある、という話だったが。


 コネは最終手段として、まずは転生者から男爵へ紹介してもらう方針で行く事にする。


 夕食には早い時間だし、シグが出てきたら、その『ブティックなんちゃら』へ行ってみよう。


 アルタミラとカゲミツにも相談して了承を得たので、ギルドでの用事を済ませたコルスとシグが合流したところで、ブティックへ行きたい旨を伝えた。




――――――――――――――――――――――――――――――




 冒険者ギルドのある貴族街西門から少し南へ下り、東西に走るナナガセ通りを西へ向かった所に、その店はあった。



 この周辺は、ちょっとやんちゃな若者が行き来する地区のようだ。

 カラフルな現代風の洋服を着ている者も見かける。

 この世界では、かなりの異装だと思うんだが。


 ときおり、目付きの鋭い少年が、シグを見付けて挨拶してくる。

 シグは、この辺りでは顔のようだ。

 きっと、ブイブイいわせていたに違いない。



 シグの案内で目的の店に辿り着いた俺達。


 この世界には珍しく、大きな窓ガラスで、外からも店内が良く見える。

 元の世界の日本にあってもおかしくないような店だが。


 ……ネーミングセンス、なんとかならなかったのか!?


 『ブティック・かつを』って。


 鮮魚店にしか見えないよ。




 店内の品揃えは、手前にカラフルなプリントシャツや短パンにジャージ、奥の方はゴスロリやメイド服。


 ……カオスだ。


 ファッションには詳しくないが、これは無いと思う。

 この店が何をコンセプトにしているのか、全く分りません。


 挨拶をして出迎えたのは、制服を着た犬耳と猫耳の女店員だった。

 首輪をしているところを見ると、やはりこの国で獣人は奴隷扱いが普通なのか。


 イゾのおっさんといい、この店の店主といい、同じ日本から来た転移者・転生者が奴隷を使役していることには、やはり引いてしまう。


 店主に会いたい旨を店員に伝えると、困ったような表情をされた。

 そりゃ、こんな大勢で乗り込んできた素情の知れない者を、主人に会わせていいとは思えないだろうな。


 シグが懸命に説得しているところに、店の奥から意外な人物のフォローが入った。



「よぉ、にーちゃん達~。また会ったな!」



 赤い蛍光色のプリントシャツに短パン、腰にガンベルトで二丁拳銃。



 昼間出会った日本からの同胞、井園勝雄イゾノ カツオの姿がそこにあった。






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