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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第三章 異世界冒険者になったった
34/102

幕間3 グルメリポーターになったった(僕と彼女と人斬り包丁)


 アイギスの街で冒険者として登録した日の夜のこと。


 冒険者ギルドで運良くコルスとシグに再会した俺達は、シグの親父さんが経営する酒場兼宿屋「ステアー親父の満腹亭」にて夕食をとることになった。


 酒場のスペースはそれほど広くないが、住居兼店舗ということを考えれば決して狭くも無い。

 L字型に6人・4人掛けのカウンターと、5~6人が座れる円卓が3つ。

宿泊スペースは2階になるようだ。


 元冒険者の親父ステアーさんは、金髪を短く刈り上げ、口の周りにヒゲを生やした中年で、多少腹が出ているものの、太い手足に、胸板は厚く、肩幅は広く、肩や腰まわりにみっしりと筋肉の付いたゴツい体型。


 一見強面だが、酒場の接客業が長いせいか、笑顔は人懐っこい。

 デカい声で乱暴な口調ながらも、開放的で親しみやすい人物のようだ。

 初対面の俺に向かって、両肩をバンバン叩きながら笑顔で話しかけてきた。


 良く聞き取れないが、たぶん、「うちの馬鹿息子が世話になったな」くらいのことを言ってるんだと思う。



 円卓を囲む5人は、俺の両側にアルタミラとカゲミツ、対面にコルス、カゲミツの隣にシグ。


 マウザーとブレタには、明日ギルドで会えるはずだ。

 その時に、獣人の集落の件で色々とアドヴァイスをして貰おう。


 愛理はイクスに報告すると言うので、ギルドから出たところで別れた。

 この店で夜に落ち合う予定だ。


 しかし、イクスと愛理は、この街で一体どんな職業に就いているのだろう?

 自分達のことで手一杯で、何となく聞きそびれた。

 イクスの「俺社会的地位が高いもんね」発言とか、人化した時ローブを着ていたことから、宮廷魔術師ではないかと疑っている。

 その部下としてチェインメイルを着込んで刀を振るう愛理は、この国の騎士ということか?

 有力者なら、獣人の件でポゴーダ男爵領の通行許可をとるのに口添えして貰えるかもしれん。

 まぁ、いずれ教えてくれるだろう。



 さて、面倒事は明日考えるとして、今はこの世界に来て初めての文化的食生活を堪能せねば!



 まずは、赤ワインに似た酒で乾杯。


 暗黒竜の巣窟で差し入れして貰ったのと同じ酒だが、革袋に詰められて味の変質したものではなく、蛇口を取り付けられた木の樽から直接注がれたものなので、味が違う、とコルスから説明された。


 木彫りのお椀のようなものに注がれた酒を口に含んでみる。

 多少渋みが強いものの、口腔に広がる爽やかな酸味とほのかな甘さ。

 なかなか豊潤な味わいだ。

 観光地で売ってるキワモノ果実酒みたいだが、結構イケる。


 アルタミラとコルスが早速おかわりを注文すると、シグが席を立って直接汲んで来てくれた。

 勝手知ったる我が家の厨房、ってことなんだろうけど、シグ本人は落ち着いて飲み食いできないだろうに。

 まぁ、本人が楽しそうだからいいか。



 酒場の看板娘、シグの姉のエミリーが厨房から大皿の肉料理を運んで来た。


 エミリーは父や弟に似ず、小柄で笑顔の可愛らしい金髪女性だった。

 一度嫁いだのだが、子供が出来ずに離縁され、実家に戻って来て家業を手伝っているそうだ。

 いずれはエミリーに婿を取らせて酒場を継がせたい、というのが両親の意向で、シグも姉のために、自分は冒険者として金を稼いで独立し、家業は譲る気らしい。

 俺達も冒険者になった事だし、シグ達と一緒にダンジョン潜って稼ぐのもイイかもしれないな。


 運ばれてきた料理は、謎肉の香草焼きだった。


 なんでも、畑を荒らす中型モンスターの肉で、材料は安いのだがそのままでは固くて臭みが強いので、調理に手間が掛かる一品とのことだ。


 シグが骨付きの肉塊を解体して小皿に取り分け、皆に分けてくれた。

 フォークを突き刺して恐る恐る口に運んで見る。


 少し固いが食べられない程ではなく、噛めば噛むほど肉の味が沁み出てくる。

 野趣に溢れる濃厚な味だ。

 きっとイノシシのようなモンスターだと思うのだが、違うだろうか。

 多少臭みがあるものの、香草とガーリック?などの薬味の入った濃い目の塩ダレで味付けがしてあるので、あまり苦にはならない。

 石窯で焼き立ての肉にハフハフ言いながら下鼓を打つ。

 これはご飯と一緒に食ったら美味そうだな~。



 次に運ばれてきたのは、パスタっぽい感じの麺類だ。

 スープパスタ的なモノが、お玉を突っ込んだ大きなドンブリに入って出てきた。


 中世風ファンタジー世界なら固くて黒いパンが出てくるかと思っていたら、良い意味で裏切られた。

 麺は細めのうどんくらいの太さで、長さは短い。

 穴の開いてないマカロニみたいな麺。

 それが、野菜ベースのスープに浮いている。

 少し大きめの木のお椀も人数分運ばれてきたので、俺がお玉で全員分をよそって渡す。


 熱いからふーふーして食べるんだよ、とカゲミツに注意すると、「どうやるのか、お手本を見せて下さい」と言われたので、俺の匙ですくったスープと麺をふーふーしてカゲミツに食べさせてやる。

 ニッコリと微笑むカゲミツを見て、鼻の下を伸ばしている俺とシグ。


 反対側から視線を感じて振り向くと、ニッコリと笑うアルタミラ。

 ……同じニッコリなのになんだか怖いのは何故だ。

 アルタミラにもふーふーして食べて貰ったことは言うまでも無い。


 で、謎パスタの感想としては。


 食べやすいけど、一味足りないというか、なんというか。

 タマネギとキャベツに似た野菜のスープ、味は悪くないのだが、麺と一緒に食べるとパンチが効いてない感じだ。

 麺をもっと細くするなり穴を開けるなりして、スープの味が絡むようにした方がいいと思う。


 あるいは、スープの味を濃くするか?

 いや、そうすると、スープがくどくなって飲み干せない。


 そうだ、スープにも肉や魚のダシを使うべきだな。

 そして醤油ベースで、チャーシューと刻みネギをトッピング。


 ……つまり、ラーメンが食べたい。


 まぁ無理だろうけど。




 そんな感じで、ドラゴンゾンビの塩焼きや固い保存食に慣れた俺の腹は、ひさびさに人間らしい「食事」をした、という満足感で一杯だ。

 料理はまだまだ出てくるが、人化している俺の体型はこの世界でも小柄な方なので、既にごちそうさまモードである。


 ただ、美味いモノというと、どうしても元の世界の食事を思い出してしまう。


 転移者か転生者の誰かが、地球、それも出来れば日本の味を再現した食堂とか開いてくれないだろうか。


 最低限、醤油と味噌とカレーとマヨネーズだけでも普及させて欲しいものである。


 ……日本の味じゃないのも混じってるか。




――――――――――――――――――――――――――――――




 気が付くと、店内は常連客とおぼしき連中でほぼ埋まっていた。

 近隣の職人や商人、馴染みの冒険者などで、エミリー目当ての独身男が多いそうだ。


 イイ感じに酒の回った冒険者風の男が、シグに挨拶しながらフラフラとこちらのテーブルに近付いてきた。


 アルタミラの美貌に惹かれてか、なんやかんや彼女に話しかけているが、ギンッ、と一睨みされてスゴスゴと退散。


 次に大人しそうな美少女のカゲミツに声を掛けようとするが、シグが酔っ払いの肩を抱いて仲間の所へ連行していった。


 ナイスディフェンス!


 俺の視線を感じたのか、ちらりとこちらを振り返ったシグにサムズアップして見せると、ニヤリと笑いながらサムズアップを返してきたシグ。


 だが、カゲミツはやらん。



 他にも、こちらにチラチラと視線を送ってくる男達が居る。

 そりゃ美女と美少女が居たら、こっち見るわな、男なら。


 俺はいつの間にかリア充というものになったらしい。


 まぁ、俺自身の魅力とか実力で彼女達をモノにした、という訳じゃないし、そんな肉食系男子じゃないので、自慢する気にはならないが。


 言ってみれば、巡り合わせとチートな回復魔法のお陰だ。

 元の世界で死んだのは運が悪かったが、こちらの世界に来てからは幸運だな、俺。


 などと自らの幸せをかみしめて悦に入っていた俺に、フード付きのローブを着た人物から日本語で声が掛けられた。



「お待たせ~、相澤く……、アイザルト!

 愛理が居なくて寂しかった?」


「いや、全然。」



 即答である。

 ハーレム云々は誤解だと説明してあるので、俺達は男女関係とかになる予定はないのだ。

 恋人みたいなイチャコラトークを求められても、対応致しかねます。



「ちょ、なにそれー、ひっど~い、ちょームカツクんですけどー。」



 愛理が、ローブを脱いで手に掛ける。

 現れたのは、貴族が平時に着るような仕立てのいいコットンシルクのチュニックとズボンに身を包み、足元は洒落た皮のブーツ、腰に日本刀を佩いた、亜麻色の髪の美少女。


 しかし、ここは平民街、それもスラムに程近い場所にある酒場なのだ。


 そこに男装した貴族の美少女、などという珍獣が現れたものだから、酒場中の視線を集めることになってしまった。


 男達の無遠慮な視線を受けて、ふいに表情を消し、能面のような顔になる愛理。



「お疲れ。まぁ、とにかくこっちに座ってよ。」



 無表情な愛理に違和感を覚えつつも、立ち上がって迎え、ローブを受け取って壁に掛けると、アルタミラとコルスの間の席へと誘う。




「う、うん、お腹減っちゃった~。」



 取り繕ったように笑顔を浮かべるが、表情が不自然だ。

 動作を見る限り、緊張で強張ったりしていない自然な動きだが、まるで敵地に赴いた剣客のような、張りつめた、油断のない立ち居振る舞いだった。


 空腹だと言ったのに、料理にも手を付けようとしない。


 そこに、俺とアルタミラが頼んだお酒のおかわりを持って、シグが帰ってきた。

 俺達に木のお椀を渡すと、愛理に向かって屈託のない笑顔で色々話しかけている。

 断片的に聞き取れた範囲では、「さっきギルドで会ったね」とか、「飲み物何にする?」など、当たり障りの無い内容なのだが。


 愛理の人形のように整った無表情な顔が、わずかに歪み、額には冷や汗が浮かんでいる。

 シグは空気の読めない子ではなく、むしろ緊張を解こうと声を掛けてくれたのだが、逆効果だったようだ。


 突然、予備動作もなしに、すっくと立ち上がった愛理。



「ごめん、相澤くん。……今夜は帰るわ。」



 そう言って壁際まで後ずさると、足音も立てずに出て行こうとする。



 これは下手に引き留めない方がいいのか?

 何か、精神的なプレッシャーを感じているようだ。


 しかし、このまま、というのも何だかなぁ。



 その時、壁に掛けたローブがそのままなのに気付いた。


 これを渡しつつ店の外で少しだけ話を聞いておこうか。


 様子がおかしいなら、念のためイクスのところまで送っていこう。


 アルタミラに事情を話して、ローブを手に愛理を追いかけることにする。




 愛理が酒場の木製のドアに近付いた時、空気を読まない人物が行く手を塞いだ。


 さっき、こちらのテーブルまで近付いてきた冒険者風の酔っ払いだ。

 ニヤニヤしながら、愛理を引き留めようと話しかけているようだ。


 愛理の顔が強張っている。


 近付いて間に入ろう、と思った瞬間、酔っ払いは両手を突き出して、手で揉むようなジェスチャーをして見せた。



 刹那!



 愛理の能面のような顔が、一瞬泣き笑いのような表情になったかと思うと、般若のような恐ろしい相貌へと変化した!


 左手が刀の鯉口を切るのを見て、抜かせてはマズイ、と愛理の前に飛びだし、刀の柄を押さえようとする。


 刀の柄、愛理の右手が掛けられた部分の傍を掴んで、亜空間に収納しようとした瞬間。


 いつの間にか刀が抜かれていた。


 愛理の右手は全く前に動いていなかったはずなのに。


 続いて、木の床がせり上がって来て、俺の右肩を痛打した。


 いや違った。

 俺が投げられて、床に叩きつけられたのだ。



 痛みを堪えつつ、床から見上げた光景は。


 酔っ払いの喉元に刀の物打ちをあてがった、一人の般若、いや剣鬼だろうか。


 店内のざわめきが途切れ、賑やかな空気が一転して凍りつく。


 青ざめた酔っ払いの足がガクガクと震えると、首筋からたらりと一筋の血が垂れた。



「やめるんだ! 齋藤さん!」



 俺の叫びが耳に届いたのか、愛理の顔が般若から能面に戻った。

 酔っ払いに突き付けた刀を離し、血払いをくれた後、何事も無かったかのように納刀すると、そのまま店を出て行ってしまった。


 床に落としたローブを拾い、酔っ払いの傷にヒールを掛けて、店内に向かって頭を下げた後、俺も愛理を追って店を出た。




――――――――――――――――――――――――――――――




 酒場の扉を開き、外へ出ると。


 月明かりの下、石畳の路上に行き交う人影もまばらだ。


 愛理を探して走り出そうとし、探知画面を出せば良いことに気付く。


 だが、アイギスの街の中に愛理は表示されなかった。


 ……隠密スキルを使ってるのか。


 やはり闇雲に走って探すしかないか?



「相澤くん。」



 走りだそうとした俺に、酒場と隣家の間にある路地から声が掛かった。


 薄暗い路地にしゃがみこんだ愛理は、泣き笑いのような顔をしていた。


 ……これは、中学でいじめられていた時に見た表情だ。


 顔を隠せるように、フードを愛理の頭に被せて、ローブを肩に掛ける。

 痩せて別人のように肌がキレイになったとはいえ、顔の骨格は変わらないもんな。

 思いがけず昔の齋藤さんの顔に再会した俺は、一つの可能性に思い至る。



「齋藤さん、……もしかして、男の人が怖いの?」



 コクリと頷く愛理。


 中3で転校してから、この世界で再会するまでに、彼女に何があったのか。

 それは、聞くべきではないようだ。

 話題を変えよう。



「齋藤さんさ、痩せてすごくキレイになったよね。

 なんか特殊なダイエットでもしたの?」



 愛理の隣に腰を下ろし、できるだけ明るい口調で話しかけてみる。

 呼び方も、昔通り、相澤くんと齋藤さんでいこう。



「転校してから、不登校になって拒食症になったんだ。

 しばらくは肌もガサガサだったよ。」



 これも聞いてはいけないことだったか。

 気まずい。

 話題を変えよう。



「さっきの居合、どうやって刀抜いたの?

 齋藤さんの右手、動いてなかったよね。

 その後もどうやって投げられたのか分らなかったよ。」



 居合っていうと、抜いた勢いでそのまま斬り付けるイメージだったので、抜く前に柄を押さえれば良いと思ったんだが。



「あれはね、体の使い方よ。

 股関節を使って腰を開きながら後ろへ退く、居合腰っていうの。

 刀を動かさずに体ごと鞘だけ後ろへ引っ張って抜くイメージかな。

 狭い場所や、至近距離に居る相手を斬るときに使う抜き方なの。


 投げたのは柔術の技で、柄を握っている小手を極めて崩しただけよ。

 刀を奪われるなんて士道不覚悟だから。

 柄を掴まれた時の防ぎ技として、投げ技や押さえ技があるの。」



 昔の侍みたいだな。



「なんだか、まるで新撰組の齋藤一みたいだね、齋藤さん。

 中学生の頃、好きだって言ってたもんね。」



「……中学生の頃、か。

 私にとっては、まだ、ほんの1年前のことなんだよね。」



 愛理が若いままの秘密。

 魔法とかで若さを保っているのかと思ったが、この世界と元の世界では時間の流れ方が違う、ってことか?



「この世界の1年は、元の世界の5年分なのかな?」



「それは違うと思うわ。

 たぶん、異世界と繋がる時間がバラバラなんじゃない?

 私に居合と柔術を教えてくれた先生は、2050年代から来た未来人だったし。」



 そうだとすれば、この世界で俺達が同時代に存在するのも一種の奇跡か。



「それにしても、よく一年でそこまで居合とか上達したよね。」



「それはチートのお陰よ。

 相澤くんも会ったんでしょ?

 天狗のカッコしたイケメンの、ティタンダエルって人。」



「アイツ、イケメンだったの?」



 天狗の面被ってて、顔なんて分らなかったんだけど。



「お面はずしたら、金髪のイケメンだったわね。


 そのイケメンが、チートの武器や能力をくれる、って言うから、居合とかのスキルLVを上げたのと、この鬼神丸クニシゲを貰ったのよ。

 まぁ、LVが高くても技の使い方を知らないから、先生に弟子入りして教えて貰ったんだけどね。

 でも、スキルLVのお陰で習得が早かったのよ。」



 俺も聖魔法LV100だけど、まだ使いこなせてないもんな。

 しかし、スキルが高LVなら、使い方を教われば上達するのも早いと云うわけだ。


 それにしても。



「齋藤さんって、ほんとに新撰組好きだったんだね~。

 まさかリアル齋藤一になるなんて、予想もしなかったよ。」



「……斬りたかったんだ、私を傷付けた人達を。

 特に、力ずくで私を襲った男達みたいな、人の皮を被ったケダモノ達を。」



 憎悪に満ちた声。

 俺は、相槌すら打つことができない。



「私が転校した理由、知ってる?

 あの山科さんがね、いじめのことで、私にお詫びをしたいなんて言ったの。

 信じてカラオケBOXにノコノコついて行ったら、DQNな男の人達が5人くらい居てね。」



「もういい!

 話さなくて、思い出さなくていいよ!」



 知らなかった。

 まさか、そこまでの事をされていたなんて。


 その時から、彼女にとって、まだ1年しかたっていない。

 トラウマが残っていても、当然だ。



「本当はね、この酒場に入るのも怖かったんだ。

 ああゆう雰囲気で、男の人から『女』を見る眼で見られると、頭が真っ白になって、叫び出したくなるの。」



 知らずにこの酒場を合流場所に指定したのは、彼女にとって酷なことだったようだ。



「ごめん、他の場所で待ち合わせれば良かった。」



「ううん、あの場所でローブを脱いだ私が軽率だった。

 相澤くんと一緒だから、つい浮かれてたのね。」



 そう言って微笑んだ愛理。

 少し落ち着いてきたのか?



「……俺のことは平気なの? 男だけど。」



「男の人、っていうだけで怖いわ。

 でも、相澤くんとイクスだけは別。

 二人だけは、私のこと助けてくれたもの。」



 こちらの世界でも、助けられるようなめに遭った、ということか。



「相澤くんは、私みたいな汚れた女に興味無い、ってことは分ってるの。

 でも、私は……相澤くんのこと、好きだよ。」



 そう言うと、俺の頬に軽くキスをした愛理。

 不意打ちに、言葉が出てこない俺。



「ふふっ、隙だらけでござるぞ、アイザルト!

 油断しておると、それがしの刀のサビにしてくれようぞ?」



「その刀、ミスリルにオリハルコンを挟んで練成してあるんじゃなかった?

 確か、錆びないはずじゃ?」



 思わず、的外れなツッコミをしてしまった。



「やだなぁ、刀のサビは冗談だよ。


 ……今夜のことは、ほんとゴメンね。


 冒険者ギルドの窓口に事付けて貰えば、連絡取れるようにしておくから。


 また会おうね。

 おやすみ、アイザルト。」



「ああ、おやすみ、愛理。」



 俺の優先順位はアルタミラとカゲミツが第一。

 そのことにブレは無いが。


 去っていく愛理を見送りながら、彼女のことも何とかしてあげたいな、と思った。






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