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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第二章 暗黒竜のひきこもり部屋の主になったった
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第18話 ヒモになったった

 子ドラゴン――カゲミツのLV上げも終わり、全員が人化できることになって、いよいよ外の世界に出る目途が立ってきた!



「それで、アイザルトはこれからどうするつもりなの?」



 外の世界に出て何をしたいのか、と言えば――。

 実は、決まった目的なんか無かったりする。


 俺は、2度目の人生(っていうか正確には魔神生?)を楽しく暮らしたいだけの小市民なのだ。


 失われた超古代文明の秘宝を探すとか、世界滅亡の危機に立ち上がって世界を救うとか、ハーレム王に俺はなる、とか、スケールの大きいことは考えてないし、ましてや人族を滅ぼす魔王になって勇者に倒されるなんて論外だ。



「特に何か考えてるわけじゃないんだ。

 人族の社会に溶け込んで、アルタミラとカゲミツと、楽しく暮らせたらいいなぁ、とか?

 

 例えば……、良い武器を作る鍛冶屋になったり、うまい飯を作る食堂のオヤジになったりして、それで生活できたらなぁ、とか。


 ――まぁ、勇者に見つからない範囲でだけど。」



「アンタって、ホントに骨の髄まで庶民なのね~。


 仮にも魔神で、闇の神竜であるワタシと神竜人のカゲミツを従えてるのに、世界征服とか言い出さないところが実にアイザルトらしいわ。


――そこがアンタの良い所かもしれないけど?」



 アルタミラは「アンタを勇者から守る」と言ってくれたけど、彼女をチート持ちの勇者達と闘わせたくはない。

 それに、アルタミラを殺した連中に、彼女達の生存を知られたくない、というのもある。

 死の大空洞で初めて遭った時のような無残な傷を、もう二度と彼女に受けさせたくはないのだ。

 彼女達の実力は隠して、できるだけ目立たずに暮らしたい。



「でも、定住して良い武器を作ったり美味しい料理を出して評判になれば、勇者の目に留まるかもしれないわよ?」



 なるほど、アイギスの服屋とか、きっとそんな感じだろう。



「そ、それもそうだね。


 ――じゃあ、旅しながら生活できないかな?

 行商人とか、旅芸人とか、冒険者もやってみたいかなって。」



「それならいいかもしれないわね。

 ワタシも旅の踊り子とか歌姫とかやってみたかったし。」

「私も行商人とかやってみたいです!

 シグさんが持ってきてくれたようなお菓子を作って売ったらどうでしょう?」



 二人とも、概ね賛成してくれるようだ。


 アルタミラは、過去に何度も人化して人族の世界を旅している。

 俺とカゲミツも、人化していれば人族社会に溶け込むことは可能なはずだ。


 そして、勇者達を避けるためには、情報が必要だ。

 コルス達に情報収集を頼んだものの、ずっと頼りきるわけにも行かない。

 彼らには彼らの生活があるわけだし。


 人族社会に溶け込み、情報収集するためにも、コミュニケーション手段は不可欠だ。

 人族相手にいきなり念話とか、不審者すぎるしね。



 そんなわけで、カゲミツも加わって、一緒にアルタミラから人族公用語を習うことになったのだが。



「ワタシに続いて繰り返してね。

 『あなたは餌なのですか? いいえ、私はドラゴンです。』

 はい、続けて!」



「あなたは餌なのですか? いいえ、私はドラゴンです!」



 順調に言語を覚えていくカゲミツ。


 それに引きかえ、俺ときたら。



「ア、ナタ、ハ、エサ、デス、カ? イエ、ドラゴン、デス?」



「アイザルト、なんで疑問文に疑問文で返してるのよ?

 しかも発音がダメダメじゃない!

 カゲミツはもうこんなに上達してるのに、アンタって、ホントに馬鹿なの?」



「ぁう、面目なかとです。」



「ママ、おとーさんを責めないで!

 私は小さいころからママとおとーさんの授業で聞いてたもの。

 大きくなってから覚えるおとーさんは大変なのよ、きっと。」



 実際、LV1の状態から公用語の授業を聞いていたカゲミツが、大地に水がしみ込むように言語を吸収していくのに対し、LV100過ぎで学習を始めた俺は、既に脳の急成長期を過ぎたのか、なかなか頭に入ってこなかった。

 まぁ、アルタミラの色気に惑わされて、集中して勉強してこなかったせいでもあるが。



「こうなったら、アイザルトは、『はじめまして』、『こんにちは』、『ごきげんよう』、『私はアイザルトです』、これだけちゃんと言えるようにしときなさい!

 あとはワタシ達でフォローするから。」



「すまんこってすたい。

 しかし、これじゃ行商人として接客や交渉をするのは無理かなぁ。」



 スパイス&ドラゴン、って感じで異世界道中したかったのに。



「そもそも、人族社会の貨幣価値も物価も特産品も契約に関する法律も、何も知らないでしょ、アイザルトは。

 売れ残りや無価値なものを掴まされて無一文になるか、履行不可能な契約を締結させられて膨大な違約金をむしり取られるか、商業ギルドに収める会費が払えなくなって奴隷におとされるか。

 転落する理由なんていくらでもあるんだから、商人ナメるんじゃないわよ?

 

 ……ワタシもあの時は苦労したわ。」



 遠い目をするアルタミラ。



「あの時、って、アルタミラも行商人やったことあるの?」



「諸王国ができる前くらいだったかしら。

 貴族や大商人の愛妾とかに飽きて、手切れ金で行商人を始めたのよ。

 行商人の世話役をしている男から、うまい儲け話がある、って誘われたんだけど、最初からワタシを奴隷にするのが目的の罠だったのね。

 履行不可能な契約を締結させられて、違約金が払えないなら性奴隷になれ、と迫られたわ。」



「性奴隷!?

 それはなんとうらやま……けしからん!

 それで、どうやって難を逃れたの?」



「竜形に戻って街ごと焼き払ってやったわよ!」



 鼻息荒く、胸を張ってドヤ顔のアルタミラ。

 ……そんなやり遂げた顔されても。


 本人は『闇の神竜』と称しているのに、人族からは『暗黒魔竜』と呼ばれてる理由がわかってしまった気がする。

 当たり前だけど、人と竜では行動原理が違いすぎるのだ。

 ゲスい世話役の男はともかく、巻き込まれた街の人達のご冥福を祈ろう。



「俺達が行商人になるのは(人族にとって)危険だってことがよく分ったよ。

 となると、やっぱり旅芸人か冒険者かな?」



「街への出入りを考えれば、諸王国民登録台帳に載ってないワタシ達は、商人ギルドや冒険者ギルドの身分証ギルドカードを持っていた方がいいわね。

 どちらのギルドに加入するにしてもギルドメンバーの推薦が必要だけど、ここに出入りしている例の連中に頼めば、冒険者ギルドへの加入は簡単ってことになるわ。

 身分は冒険者ということにしておいて、街の広場とか酒場で芸を披露して日銭を稼ぐ、って感じでいいんじゃない?」



「なるほど、それが良さそうだね!

 アルタミラは歌や踊り、俺はカゲミツを助手にして手品でもやろうかな?」



「おとーさん、手品とは何でしょう?」



「大がかりな舞台装置は無いから、小物を出したり消したりする簡単なやつかな?」



「アイザルト、それって、ただのアイテムインベントリのスキルじゃない?」



 ……旅芸人ナメてました。



「アルタミラとカゲミツには歌や踊りをして貰って、俺は横で手拍子とかしてるよ。」



「サクラってことね、それでいいじゃない。」

「はい、私、頑張ります!」

 


「ぉ、おう。」



 最初は、人族の街で働いて手に職付けて二人を養おう、と思ってたのに、すっかり養われる側にまわってしまったらしいのが情けない。

 あれ、俺、もしかしてヒモになったった?



「あのさ、冒険者の仕事って、一人でもできるような簡単なのあるかな?

 アルタミラ達だけを働かせるのもなんだし、二人が街で仕事をしてる間に、街の近郊でできるような仕事を一人でやってみようかと思うんだけど。」



「どんな仕事があるかは、その街の冒険者ギルドに行ってみるまで分らないわよ?

 でも、一人で仕事をするつもりなら、言葉を何とかしないとね。」



 結局そこへ戻ったか。



「……うん、頑張るよ。」



「じゃあ、授業を再開します。

 ワタシの後に繰り返してね――。」






 そんな感じで何日か過ごした。


 途中、盗賊らしき数人の侵入があったものの、全て入口付近のゴーレムに撃退され、逃げていった。


 そして、カゲミツがすっかり人族公用語の日常会話を話せるようになり、俺の方も基本の挨拶と自己紹介だけはできるようになった頃、コルスとシグが補給と連絡のために現れた。



< お久しぶりでございます聖者様、ご機嫌麗しゅう。 >



「はい、こんにちは、私はアイザルトです。」



「おや、ずいぶんと公用語がお達者になられましたね!」



< いえ、コレが精一杯なんですよ。

 聞き取りの方も難しいんで、やっぱり念話でお願いします。 >



< はい、畏まりました。

 それでは、アンデッドドラゴン討伐隊のことからご報告致します。

 出征自体は諸王国会議に承認されたのですが、諸王国のうち、神聖ノトス帝国に国境を接するトルメク、イスハンの2国が、帝国との緊張状態を理由に出兵を渋っておりますので、編成にはまだまだ時間が掛かりそうです。 >



< そうですか。

 実は、そろそろ『暗黒竜の巣窟』を出て行こうかと相談していたところなんです。

 だから、諸王国の動静についての情報は、もう結構ですよ。 >



< 左様ですか。

 では、次の報告に移ります。

 首都アイギスの衣料品店『ブティック・かつを』の店主の件です。

 まずは店主の経歴ですが、『ファリーネ』12歳、平民階級のヒュームの両親のもとに3女として生まれ、8歳のときに見習いに出された服飾店で、10歳の時、常連客のポゴーダ男爵にその才能を見いだされ、男爵をパトロンとして独立開業しています。 >



 12歳か、若い、というより幼いな。

 その年齢でブランドを立ち上げ、店を切り盛りできるというのは、やはり転生者だろう。



< そのポゴーダ男爵というのは、勇者と何か関係があるんですか? >



< いいえ、多少の従軍歴はありますが、とても勇者のPTに加われるような武勲の持ち主ではありません。

 社交界に多少は顔が利き、商人ギルドともうまく付き合っている、というだけの、どちらかと言えば凡庸な人物でしょう。 >



 もう一つ気になることがある。



< その男爵――ロリコンですか? >



< いいえ、むしろ巨乳の熟女好きで、『ど』の付く変態、とシグが申しております。 >



 シグを見ると、カゲミツを見て鼻の下を伸ばし、ぽーっと頬を赤らめている。

 正体に思い当たらないのか、美少女ならなんでもいいのか。

 

 キサマにだけは、娘はやらん!


 ――まぁ、とりあえず、その男爵のことは忘れておこう。



< では、店主と勇者の間に何かつながりはありますか? >



< その件ですが……、どうやら、一時期勇者と思われる何人かの人物が常連だったようですが、今は断絶状態にあるようです。

 たまに勇者らしき人物が立ち寄った時には、追い返したり、店を閉めたりするそうです。 >



 ぉろ?

 何か予想と違ってるな。

 ちょっと、その店主に会ってみたくなってきた。


 ――べ、別にロリコンとかじゃないんだからね!



< 勇者達は最近もその店に立ち寄っていますか? >



< いいえ、最近では滅多に現れないそうですよ。 >



< アイギスの街自体に勇者が現れることは? >



< それはあまり考えられませんね。

 何しろ、諸王国最大のダンジョンであった『暗黒竜の巣窟』がこの有り様ですから。

 勇者達は攻略しがいのあるダンジョンを求めて他国へ赴いていることでしょう。 >



 よし、決めた。


 一度アイギスの街へ行ってみよう!






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