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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第二章 暗黒竜のひきこもり部屋の主になったった
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第16話 ゴーレム職人になったった

 色とりどりのシャツに目を奪われているアルタミラ。

 やっぱり女性はファッション関係には目を輝かすんだな。


 いや、そんなことより。


< この服! どこで手にいれたんですかっ!? >



< 『ブティック・かつを』――首都アイギスの平民街、繊維店が軒を連ねるナナガセ通りの一角にある衣料品店です。

 何でも、若者に人気のある店だとか。

 シグが購入してきたものですが、お気に召しましたでしょうか? >



 何、その鮮魚店みたいなネーミング。

 ひょっとして、「かつを」というのが店主の名前で、日本からの転移者なのだろうか?



< もしかして、『かつを』って人が店主なんですか? >



< いえ、店主は『ファリーネ』という女性です。 >



< では、デザイナーとか製作者とか、店の関係者に『かつを』という名の男性は? >



< さあ、そこまでは。

 ただ、デザインも縫製も一貫して店主が行っているそうですよ。 >



 ドクン、と心臓が跳ねる。

 きっと、転生者。

 それも日本人だ。


 ……勇者、なのか、ソイツは?



< その店主さんのこと、調べて貰えませんか?

 経歴、交友関係、店を出した経緯、何か特殊な能力があるのか、ないのか。

 特に、勇者との関係があるかどうか。


 ……それと、くれぐれも俺達のことは内密にお願いします。 >



 本人が勇者で無かったとしても、日本から転移・転生した勇者との面識が必ず有るはずだ。

 異世界で懐かしい日本語を見れば、絶対に製作者本人に会おうと探し求めるはず。


 俺も、「魔神」とは名ばかりの、勇者に狩られる側のイベントボスモンスターでなければ、すぐにも店に飛んで行って交流を深めたいのに。



< 畏まりました。それが聖者様の御心であれば。

 探索はシグが適任でしょう。

 次の物資の補給と報告は1週間後になりますが、その時も私とシグが参ります。 >



 俺の人族公用語は幼児の片言レベルだし、ヒアリング能力もまだまだだ。

 補給だけならともかく、報告には念話の使えるコルスにどうしても同席してもらう必要がある。



< お願いします。


 それと、国や軍の方はどんな感じなんでしょう? >



< 3日前、マウザーが冒険者ギルドの局長と共に、開発担当伯の許へ出頭しております。

 私共はマウザーが帰る前に出立致しましたので、詳細はまだ。

しかし、アンデッドドラゴン討伐隊の出征が決定されることは、まず間違いないでしょう。

 冒険者ギルドは、無用の被害を出さないためと、軍との関係を悪化させないため、『暗黒竜の巣窟』への冒険者の私的な立入を禁止する方向です。 >



< コルスさん達は、ここに出入りしても大丈夫なんですか? >



< 私共は、『暗黒竜の巣窟』からアンデッドドラゴンがさまよい出て、近隣の集落に被害が及ばないよう監視する、という名目でこちらに参っております。

 いずれ、諸王国軍の威力偵察隊が先遣隊として入口付近に展開するでしょうが、それまでは誰にも見咎められずに出入りできるでしょう。 >



< じゃあ、しばらくは大丈夫そうですね。 >



< ただ、懸念がございます。

 私共がダークラプトルの角4本を冒険者ギルドに持ち込んだことで、欲に目の眩んだ輩が出てこないとも限りません。

 冒険者ギルドに所属している正規の冒険者はギルドの方針に従うでしょう。

 しかし、裏社会の者達がどう動くかは分りません。

 盗賊や用心棒、暗殺者など、なまじ腕に覚えのある犯罪者は、深奥へ来るつもりまではなくとも、入口付近の小型竜のゾンビを狙って来る可能性が無いとは言えないでしょう。

 その者から、アンデッドの不在が漏れれば、拙いことになりかねません。 >



< そうか、肉目当てにヒールで倒しまくって角を取ったのは早計だったな。 >



 子ドラゴンのLV上げ用にと、角を取らずに残してあるゾンビは、わずか3体である。

 LV25のブラックドラゴン、LV18のダークレイドス、LV19のダークラプトル。

 コルス達の通り道にさまよい出ないよう、アルタミラの土魔法を使って中層あたりの小部屋に一体ずつ閉じ込めている。

 まぁ、臭いがひどいことになってきた、ってのもあるんだけど。


 そいつらを、番犬代わりに入口付近に解き放つべきだろうか。


 それに。



< 盗賊とかのこともそうだけど、いずれ討伐隊が乗り込んできた時に、アンデッドドラゴンが居なかったら、コルス達も、報告が嘘だったことになって困るよね?

 骨だけになってるやつに、角くっつけて再アンデッド化できないかな? >



< さあ、どうでしょう?

 そもそも、死んだドラゴンの角を修復するのは、治療魔法では不可能でしょう。

 邪魔法の『メイクアンデッド』なら、角の無い死体からでもアンデッドを作り出せますが。

 禁忌に手を出した死霊術師ネクロマンサーか、リッチでもない限り、そのような事は不可能です。 >



 邪魔法は聖魔法の対極だから、俺には使えないよな。

 っていうか、闇属性なら本来使えるはずの闇魔法と4元素魔法すら使えないのだ。

 どういうことなのか、自称風神をとっ捕まえて、小一時間正座で問いただしたい。



< それよりも、大量の魔力が必要ではありますが、魔力を注ぎ込んでゴーレム化してはどうでしょう? >



< そんなことが出来るの?

 っていうか、それってアンデッドとどう違うの? >



< アンデッドは、肉体に蓄積された魔素が、魔力に変換されることなく、負の耐久力(アンデッドのHP)に変換されたものです。 

 これに対して、ゴーレムは、非生物に直接魔力を注ぎ込んで魔法生物化したものです。

 本来、ゴーレムを作るためには、注ぎ込んだ魔力を留めておくための核石が必要となります。

 しかし、魔力と相性のいいドラゴンの骨ならば、飽和するまで魔力を注ぎ込めばゴーレム化できるはずです。

 ドラゴンの牙を核石の代わりに使った竜牙兵ドラゴントゥースウォリアーなどは、護身用に作成する魔術師も多いですよ。

 もっとも、恒久的なものではなく、あくまで一時的な使用を想定した簡易ゴーレムとなりますが。 >



 それ、何でもっと早く言ってくれなかったかな?

 LVの高いゴーレムを作って子ドラゴンに倒させれば、さくさくLV上がったのに。

 って、こっちが事情を話してないからか。



< ちなみに、一時的って、どれくらいの時間保つの? >



< 大きさ、つまり骨の量に拠るでしょうね。

 30タル級なら、2~3カ月くらい保つのではないでしょうか。

 もちろん、注ぎ込む魔力は膨大なものになりますが。 >



 俺にはチートなMPがあるから問題無い!



< 一つ心配なのは、討伐隊に聖魔法の遣い手が居たら、アンデッドじゃないってばれちゃうんじゃないか、ってことなんだけど。 >



< その点については、問題無いでしょう。

 現在、諸王国で『ターンアンデッド』を使えるアークプリーストは、高齢で従軍できません。

 『ヒール』でアンデッドを倒せるほどの回復量を持つ者は、聖女様か聖者様くらいのものです。

 現在、この国に聖女様はいらっしゃいません。

 高位の神官は何名か従軍するでしょうが、アンデッドにヒールを掛けさせるよりは、回復に専念させ、重装備の騎士団と魔術師団の編成で力押しをしてくるでしょう。

 倒した時に、角が無いことは疑問に思われるかもしれませんが、あくまで魔結晶採掘のためにアンデッドを排除するのが目的なのですから、深くは追求されないのでは無いかと。 >



 まぁ、角のことまでは知らないよ。

 ドラゴンゾンビやスカルドラゴンがうろついてる、っていうコルス達の報告が嘘じゃなかったことになればそれでいい。


 後は、アルタミラの気持ち次第か。


 横に目をやれば、いつの間にかピンクの蛍光色のプリントシャツを着こんでいるアルタミラ。

 それ、男物だからきっと俺用だ。


 俺の体型に合せて選んだのだろう。

 胸のあたりがはちきれそうになって、生地が延びて薄くなってしまっている。

 その光景は、すごくイイ。



 だが、そこに書かれている文字が……、


「体は大人、頭脳は子ども!」


 って逆コ○ンかよ!




「アルタミラ、そのシャツだけはやめよう。


 ……それより、ドラゴンの骨でゴーレム造るつもりだけど、良いかな?」



 眷属の闇系ドラゴンが、アンデッドという邪神の傀儡にされるのを嫌がってたもんな。



「構わないわよ。

 ワタシはあんたのドラゴン。

 ワタシの眷属も、アンタの役に立つなら本望でしょ。


 それより、この服の色、可愛いじゃない。

 ワタシはこれがいいわ!」



 意外とさっぱりしてる。


 邪神と魔神って、ちょっと近い気がするけど、気にならないのかな。


 ……それより、大好きな人にそのシャツは着せられんわ。

 後で別のを選んであげよう。



< じゃあ、とりあえず一体造ってみようか。 >



 アイテムスロットの一つを埋めている「ダークラプトルの骨」の中から、一体分を取出し、魔力を注ぎ込んでみる。


 すぐに、体高3mほどのダークラプトルの骨格がぴょこりと立ち上がった。

 筋肉などの組織も無いただの骨なのに、どうやって体を支えて動かしてるんだ?


 うん、考えちゃだめだ。

 ここ、ファンタジーの世界だからな。


 ダークラプトルの骨は、立ち上がった後は身じろぎもしない。



< これ、立ってるだけなの? >



< 作成者が命令しないと動きませんよ。

 ただし、あまり難しい命令はこなせません。

 命令内容は3つまでにしておくのが良いでしょう。 >



< じゃあ、侵入者を排除せよ、みたいなのでいいかな?

それと、コルス達が襲われるようなことは無いの? >


 

< 作成者の魔力が籠ったアイテムを身に着けていれば、敵とは認識されないでしょう。

 私が持っている魔結晶の指輪に、聖者様の魔力を籠めていただけますか? >



 コルスは、両手の指にいくつもの指輪を嵌めていたが、右手中指に嵌められた指輪を差し出してきた。

 俺が魔力を送り込むと、結晶が赤い光に包まれる。

 やがて光が収まると、以前より色が濃くなったようだ。



< 今後こちらへお邪魔する際は、メンバーの誰かにこの指輪を持たせます。 >



 よし、何体か造ってうろつかせよう。


 しかし、こうやってダンジョンにモンスターを放って侵入者を待ち受けるとか、すごく魔王っぽいな。

 いいのか、これで?


 まぁ、この「暗黒竜の巣窟」からは出ないように命令して、侵入者も逃げたら追わせないようにしようか。



「この洞窟の入り口を守護し、侵入者を排除せよ。逃げる者は追うな。」



 ダークラプトルの骨格標本は、「了解しました!」とでも言いたげにペコリとうなずくと、上の階層へ向かって走って行った。


 滑稽と不気味の中間くらい、なんとも微妙な動きだ。




 それじゃ、アルタミラにもっとマシなシャツを選んであげるとしよう。


 しかし、シグのセンスってどうなってるんだろうな。

 冒険しないで街に居る時はアレ着てるんだろうか?


 とりあえず、この世界の普通の服が欲しかったなぁ、と俺は思った。







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