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異世界転生して○○になったった(仮)  作者: 太もやし
第一章 異世界転生者になったった
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第1話 全裸になったった

異世界転移・転生モノが好きです。

読む専でしたが、なろうの作品に面白いものが沢山あったので、自分でも書いてみたくなりました。

初投稿、処女作、習作ということで、お見苦しい点も多々あろうかと思いますが、拙作に御付き合い戴ければ幸いです。

 赤茶けた大地と、灰色にくすんだ空。


 岩石が点々と転がるばかりで、植物は見当たらない。


 大地には、巨大な爪で抉られたかのような裂け目が幾筋も走っている。


 もしも、はるか上空から観察する者が居たならば、運河の跡など人工的な地形だと思うのではないだろうか。


 その中でも、一際大きい裂け目が十文字に交わる場所に、ソレはあった。



 大きさは、高さ2m、直径1m程度、赤い結晶の柱である。



 それは、明滅を繰り返していた。

 まるで心臓の鼓動のように。


 半ば透き通った結晶の中には、人のような姿が見えている。

 

 明滅していた光が一際強く輝いた瞬間、結晶にビシッと亀裂が走った。


 明滅するたびに亀裂が増えて行き、瘴気のようなものが噴き出してくる。


 ついに、ガシャッという音とともに結晶が砕け散り、中から人に似てヒトでないモノが現れた。



 細身で身長は中くらい、顔立ちは若い男性のようだが、赤い肌、頭から生える二本の角、そして呼吸のたびに漏れ出す大量の魔素が、この生物が人間ではないことを示している。


 ソイツはゆらゆらと立ち上る魔素を纏わりつかせながら一歩を踏み出し、声を上げた。



「フーッ、ハァァァッ、…………ハァーーーーックション!」



 一発クシャミをかましてズルリと鼻をすすり、心細げに周囲を見回すと、一言。



「ここ、どこ???」



 日本語であった。




――――――――――――――――――――――――――――





 気が付けば、谷底のような場所で、足元に赤いガラスのような破片が散らばっており、しかも肌の色は日焼けし過ぎたってレベルじゃなく赤くなっており、髪の毛は緑色、それもアニメでみるようなキレイなライトグリーンではなく、ワカメのような色だ。


 そして肌寒い。


 というのもフルチン、つまり全裸、人に見られれば「お巡りさんこっちです」状態である。



「誰もいない場所で、本当に良かった。

 危うく露出狂の変態紳士に……いや、それどころじゃないだろ!?」



 相澤広人あいざわ ひろとは、混乱しながらも、直前までのことを思い出そうと努力していた。


 自分は、日本人で、これといって特徴のない20歳の大学生だったはずだ。

 その日の朝、自転車で通学中に転倒し、打ち所が悪くあっさり死んでしまうまでは。


 激痛の後、自分の体を空中から見降ろしていた広人は、己の死を確認した。


 そして、気が付くと、「受付」と書かれた机の前に座っており、妙な格好の人物に出会った。



 そこで、何か大事な話をした……ような気がする。



 その人物の格好や、話の内容を思い出そうとすると、ズキリと頭が痛んだ。


 思わず頭を抱えると、そこに硬く尖った何かがあることに気が付く。



「なんだコレ、ってか角!?」



 意識の無い間に、誰かに猫耳でも着けられたのかと思ったが、間違いなく2本の角だ。


 外そうとしてみたが、頭蓋骨からしっかりと生えてるようで、強く握って引っ張っても取れない。



 赤い肌で頭に角、とくれば。



「俺、赤鬼になったの?」



 昔話や童話に出てくる、節分で豆をぶつけられるアレを思い浮かべる。


 金棒と虎皮の腰巻があれば完璧だったけど、フルチンじゃかっこが付かない。

 さらに言うと、体型は以前のまま、つまり生前のもやし体型である。

 さらにさらに言うと、フルチンになっているアレも、残念ながら生前のサイズである。



「鬼って、もっと強そうな外見じゃないと様にならないんじゃない?

体、鍛えとくんだったなぁ。

 って、そんなんどうでもいい!」



 一体、自分に何が起こったのか?



「ここはどこなんだ。

 俺は確か死んだはずなのに、何故か生きている。

 でも、鬼みたいになっているし?」



 今の自分はどうなっているのか?


 自分の状態を確認したい、と思った瞬間、視界の右上の隅で点滅するものに気付く。


 そちらを向いたが、その方向に実際に何かある訳では無かった。

 視界を移動させても、あくまでも視界の中で、右上に点滅している。


 それに意識を向けてみると、PCの画面で何かをクリックした時のような感覚と共に、視界の中に透明なモニターのような物が浮かびあがる。



 そこに記されているのは、


≪アイザワ ヒロト≫

 種族: マジン(固有種)

 LV: 1

――――――――――――――――

<ステータス>

HP : 40/40

MP : * / *

力  : 4

体力 : *

知力 : 5

精神 : *

器用さ: 4

速さ : 3

運  : 2




「赤鬼じゃなくてマジンなのか。ってか、ステータス値ひっくぅ?」



 マジンってのはさすがに魔神じゃなくって魔人だよな。


 分ってたけど、人間じゃないんだ。

 ちょっとショック。


 ん、ということは、俺は人間⇒魔人へ生まれ変わったってことでOK!?



 ぁ、何か思い出しそうな~、……ぁあ!



 そういえば!!



 記憶のあいまいな「受付」で、「あなたは童貞だから異世界に転生できますよ~」みたいなこと言われて、あっさり飛びついたことを思い出した。


たしか「人間っぽいモノ」に転生させてやる、という話だったはずだが、魔人ってどうなの?

 むしろ人類の敵っぽいんですけど。


 まぁ、スライムやゴブリンに転生、なんて事にならなくて良かったかな?


 でもって、ここは異世界で、……周りの雰囲気からすると魔界、とか?


 異世界転生ならチート勇者になってハーレムが王道だと思うの。

 ……まさか魔界でボッチの刑とか、無いわ。


 気を取り直してステータス値チェック。


 *って表示は数字が無い、つまり0か、あるいは設定が無いって意味だろうか?

 「体力」という表示に意識を集中すると、説明文が表示された。


体力:物理防御、HP自然回復値に影響する。


 同様に、「精神」は魔法防御とMP自然回復値に影響している。


 つまり、俺、紙装甲ってことですね。


 比較対象が無いのでステータス値の高低は正確に判らないが、物理攻撃力に影響する「力」、魔法攻撃力に影響する「知力」、どちらも一ケタだ。

強そうには思えない。

 体型は人間だった頃と変わらない「もやし」なので、外見からしても弱そうである。



「しかし、LVがあるってことは、これから成長できるんだろう。

 やっぱりゲームみたいに戦闘して経験値貯めてLVUP、みたいな流れかな。」



 丸腰どころか全裸な俺にどうしろと。

 低LVの雑魚にすら一撃でヌッ殺される自信がある。


 今までの事から考えて、装備やステータスに依存しない戦闘力が必要ってことだが、現在の俺の種族である魔人には特殊な攻撃能力があるのだろうか?

 せめて魔法とか使えないと、摘んでるぞコレ。


 画面の下に点滅する箇所がある。


 ページの続きがあるようだ。

 そこに意識を向けると次のページが表示された。


<スキル>

・心眼    LV1

・亜空間収納 LV1

・全方位探知 LV1

・念話

・人化

――――――――――――――――

<魔法>    

・聖 LV1 

――――――――――――――――

<属性>

 闇 

――――――――――――――――

<耐性> 

闇・火・水・風・地属性の攻撃無効 

石化・魅了・麻痺・毒の状態異常無効

――――――――――――――――

<加護>

 闇神

 風神



「やった!チート付いてるじゃん!?」



 耐性とかてんこ盛りだし、とりあえず魔法も使えるみたいだ。

 本人が闇属性なのに、加護に闇神だけじゃなく風神がいて、魔法は聖魔法しか使えないってのが謎だけど。


 まずはスキルの確認だ。


 「心眼」って、ネーミングが厨二っぽい。

 だが、そこがいい。


・心眼:ステータスやスキル、アイテムの詳細を鑑定することができる。

    LVに応じて鑑定内容の精度が上がる。


 自分のステータス等を見ることができるのも、たぶん、このスキルのお陰だろうな。

 人物鑑定で、危険人物をスル―したり、有力者とお近づきになったりするのに役立つね。

 ゴミの中からレアアイテムを発掘したり、呪われたアイテムを隔離するにも必須だ。

 さっそく何か鑑定してみよう。


 周りを見回すが、石ころ以外に目に付くのは、足元に大量に散乱している赤いガラス片しかない。

 手頃な大きさのものを手に持って「心眼」を使うように意識してみる。


・魔結晶の欠片:魔石に大気中の魔素が浸透・濃縮され結晶化した物。


 ちょっと良さげなアイテムゲット!

 とりあえず全部拾っておくか。


 そこで役立ちそうなのが、次なるスキル「亜空間収納」!


・亜空間収納:亜空間にアイテムを収納することができる。

インベントリースロット数は{10+スキルLV数}。


 四○元ポケットみたいに何でも無限に容れられる訳ではなかったか。

 しかし、「収納」と念じながら魔結晶に触れるだけで、掻き消すように消えて行く。

 あまりに小さい破片は無視したが、それでも大小100個くらいの結晶を収納できた。

 視界の左上の隅で点滅する「アイテム欄」を確認すると、11個あるスロットの一つに「魔結晶の欠片(1.5ガド)」と表示されている。

 括弧内は重量かな?

 でも重さは感じないし、しかも種類が同じならスロット一つでOK。

 これは便利だ!


 心眼と組み合わせれば、行商人としてやっていけそうな予感。


 ふと気付くと、アイテムスロットがもう一つ何かで埋まっている。



『風神のお土産』



 なんぞこれ???


 さっき収納したはずは無いので、最初から持ってたことになる。

 謎のアイテムに意識を集中すると、虚空から何かが引き出され、両手にいつのまにか風呂敷包みが握られていた。


 これも鑑定してみる。


・風神のお土産:風神ティターンダエルの祝福を受けたアイテム3点セット。全て装備すると、常時エフェクト発動。



 風神ティターンダエル?



 この世界の神様か??

 ……何か聞き覚えがあるような。


 風呂敷をほどいてみよう。


 しゅるっと解けた瞬間、白い光とともに風呂敷はかき消え、ドサドサドサッとアイテムが放り出された。


 地面に落ちているそれは、


・天狗の面:風神ティターンダエルの御使いである天狗を象った面。

      MP+10

・天狗の高下駄:バランスを取るのが難しい一枚歯の高下駄。速さ+5

・天狗の団扇:風の基本魔法ウインドを使うことができるうちわ。

       扇ぐと涼しい。


 天狗!!


 そうだ、「受付」で話した人物は、天狗の面を被って、「ティターンダエル」と自己紹介したんだった。


 「異世界転生するなら、イイ世界があるんですよ~」とか言って薦めてきたのは、自分が神様やってる世界だったのかよ。


 加護の風神、ってのも、あの天狗のことだよな。

 アイツ、公務員みたいな事言ってたけど、査定か何かの点数稼いだんじゃないだろうか?


 ――あっさり載せられた俺、ちょろいな。



 しかし、この3点セットである。



 裸足だから下駄はありがたいけど、ちょっと履きにくい。


 ここ肌寒いから、今のところ団扇は役に立たないな。


 後、赤い天狗の面とか使いどころが無いだろ。



 正直、下着代わりになりそうな風呂敷が消えたのが痛い。


 一応、セットのエフェクトとやらでも見ておこう。



 全裸に下駄を履き、天狗の面をつけて、意外に丈夫そうな造りの団扇を右手に握る。


 シュールだ。



「何も起きないぞ?」



 周りを見回そうと振り向き、俺は凍りついた。

 視線に飛び込んできたのは、背中から生える、神々しいまでに白く輝く立派な「翼」でございました。



「……全裸より恥ずかしくなってるよね、コレ?」



 もはや変態ってレベルじゃねぇ!


 思わず、天狗セットを脱ぎ散らかし、体育座りになって焦点の合わない目で地面を見つめてみる。


 うん、何も見なかったことにしよう。


 そそくさ立ち上がると、3点セットを亜空間へ、



「収納! 収納! 収納ッ!」



 アイテムスロットが3つ塞がったのが地味にやるせない。





 気をとりなおし、次のスキル、「全方位探知」。


・全方位探知:一定範囲内の地形、生物を探知する。

       使用中、常時MP消費(小)。

       スキルLVに応じて探知範囲が広がる。


 いかにもダンジョン攻略しやがって下さい! と言わんばかりのスキルだ。

 敵の存在を探知できれば、不意打ちを受けることなく、こちらは先制攻撃が可能となり、紙装甲の俺でも戦えるかもしれない。


 後は「念話」と「人化」。


・念話:言語を介さず、直接相手の心と交信できる。使用時MP消費。

    言語の通じない相手とも交信可能。

・人化:外見を人族に変えることができる。使用MP5。


 それぞれの内容は予想通り。


 しかし、人化って、もっと人外な形のモンスターとかが人型になることじゃないの?

 つまり「魔人は人族に含みません」ってことだろうけど、ちょっと傷付くね。


 ここまで見てきたスキルやアイテムで、攻撃力というか戦闘力に直結するものは無かった。

 ということは、やはり魔法で戦うしかない! ということになる。



「ついに、俺サマの隠された力が明らかに!

 ワクテカが止まらないぜ。

 出でよ、エターナルフォースなんとかっ!」



・聖魔法:創造神の加護によって奇跡を起こす魔法。


 なんか、主人公っぽいのキタコレ!



 聖魔法の内容を確認すると、


・ヒール:怪我の治療、耐久力(HP)の回復、必要MP5以上

・キュア:病気の治療、状態異常の浄化、必要MP3以上



「え、2つだけ?」



 LV1だから仕方ないのか。

 って攻撃魔法無いし!?


 いや、そういえば、そもそもMP無かったっけ、俺。

 こんな時こそアレだ、天狗の面を付ければMP+10だね。


 つか、被らねえよ、絶対ッ!



――――――――――――――――――――――――――――




 ……俺に戦闘力は無かった。


 つまり、この危険そうな世界にたった一人で放り出され、LVを上げるどころか身を守る方法も無い、と。


 どう見ても無理ゲーです、本当にありがとうございました。


 期待が大きかっただけに、かなり凹んだ。

 しばらく、体育座りになって焦点の合わない目で宙を眺めていると――、

腹がグゥと鳴った。



「ぁ~、転生しても腹減るんだな。」



 腹が減るのも生きていればこそ。

 前世では、不本意ながら20歳の若さで死んでしまった。

 色々とやりたいこともあったのに。



「そう考えれば、命があって、人生?をやり直せるだけでもありがたいと思うべきか。」



 せっかく転生したのに、飢え死にするなんて勿体ない。


 ここでじっとしていても仕方が無いし、食べ物、いや最低限、水だけでも探さなければ。


 まずは、現在いる場所とその周辺がどうなっているのか確認しよう。

 そのためには、この谷底?から抜け出して、見晴らしのいい地点を目指そう。


 気持ちを切り替えた俺は、フラフラと立ち上がった。





注 1ガド=1トン(1000kg)です。


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