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私は大学一年生である。 part1

作者: 魔桜

この物語を読んで、読者にどんな悪影響がでようが、私は一切の責任を負いません。

 私は大学一年生である。

 私は、という第一人称を使ってはいるが別に女というわけではない。男である。私は、と言った方が畏まった言い方になり、言葉に説得力がでるのかと盲信したからである。言霊である。つまりはそういうことだったのだ。

 私には友達と呼べる人間がいなかった。

 別に友達が欲しいと思っているわけではない。寂しいという感情が発露し始めていて、脳が溶けそうなぐらいに、いい具合に発狂しそうになっているわけではない。所詮人間というものは他人を裏切る生き物である。他人を信じて何かいいことがあるのだろうか。

 だからこれでいいのである。

 そもそもどうやって友達とやらを作ればいいのか、皆目見当がつかなかった。大学という魔境を舐めていたことが、一つの要因であったことは明白なのであった。

 高校時代。

 なんて私の人生は色褪せているのだと思った。

 何故なら、生徒会が学校を統治しているわけでもないし、鬼の風紀委員が刀を帯刀しているわけでもないし、文化祭では屋台がでるわけでもないし、問題児が集まる学生寮があるわけでもなかったし、宇宙人も未来人も超能力者も異世界人も、ましてや創造主たる神はいなかったのである。

 神は死んだ。

 すまない。これが言いたかっただけなのであった。まあ、どうしてこの私が読者に謝らなければならないのかと、胸中では納得していなかったのだが、取り敢えず謝罪しておく。この世の女と大学教授は謝らなければ許してくれないのである。いくらこちらが正しかろうが、正論を武器にできようが、反論すれば逆ギレしてくるだけである。

 だから、黙るしかない。謝るしかない。

 ――話は遡る。

 高校時代と比較すると大学はフリーダムなのである。即席ラーメンのCMでも、戦いをやめてください! と宣いながら自ら戦闘をする搭乗者の保持するロボットの名称でもない。自由ということだ。だが、自由とは本当に幸せなのだろうか。

 束縛されるからこそ、人間は人間たらしめるのではないだろうか。

 私には友達と呼べる人間がいなかった。

 何故かと問うか。それは、高校時代と違って自由だったからである。大学というモラトリアム期間は、自ら行動しなければ人間関係が構築できないようなシステムになっている。高校時代と違って机と机をくっつけた場所ではないのだ。班行動とかないのだ。とにかく自分から喋りかけなければ、誰も喋りかけてはくれない場所。それが大学なのだった。

 とにかく、社交的というか、人として最低限のコミュニケーション能力がなければ、他人と関わらないで一生を過ごす場所なのであった。他人とかかわらないで生きることが幸せだというのなら、そいつは本当に幸せなやつだ。本当に孤独になったことのないやつのセリフだった。

 生憎と私の人生は幸福というやつがなかったように思える。

 そして、何を言っているんだ、こいつは。と、読んでいる人間が突っ込んでいるのかと思うのだろうが、別に私がひねくれた考えの持ち主で言い回しがくどいからなのではない、作者の文章力が低いからである。

 だが、私は決して完全なる孤独などでは決してなかった。いや、そうであったほうが今の何百倍も幸福であったに違いないという確信すらある。だが、運命の悪戯なのか、私の傍には一人の女が付き纏っていた。

 奴だった。

 奴は凡そ凡人とはかけ離れた存在であった。非凡である。奴のことを凄い、だとか最近のゆとり世代の人間は貧弱な語彙力で彼女を表現するのだが、そんなものは生ぬるいというか、奴のことを真に理解しているとは思えない。

 正直、私にだって奴のことをどう表現していいのか分からず、お手上げ状態なのである。だが、敢えて薄めて表現しようと思う。悪の悪の悪の権化みたいな奴だったが、瘴気の塊のような存在であった奴だったが、最大限に薄めて薄めて薄めて表現しようと思う。

 奴は化物だった。

 この物語は私の物語であるが、語る時には必ず奴が出現するのだろう。それだけ私の大学生活には奴が存在していた。介入してきた。邪魔者だった。ここで奴のことを紹介しておきたいと思うのだが、残念ながら完全に紹介することはできないだろう。

 何故なら早くも作者がこの物語に飽きてきたからだった、とか残念なオチはない。とにかく、奴の全貌を知りたければ、私の部屋に来て欲しい。その時は酒でも飲み交わしながら語り合おう。というか、奴のことについて愚痴り合おうではないか。

 奴は腐女子というやつだった。

 奴の部屋に入ったことがあるのだが、所狭しと並べられている腐臭を放つ書物を見て、卒倒しかけたことがある。痩せぽっちな男と男がキラキラした瞳をしながら、あんなことやこんなことをする本が大量にあった。恥ずかしげもなく、並べられていた。

 奴が私に近づいてきたのは、私のことをネタにするためであった。おかずのためではないと信じたい。とにかく奴は私のことを一目見て気に入っただとか訳のわからない嘘八百を並べ、自室にあるパソコンに粛々と文章を打っていたのである。

 私と、空想の男がアレする話を綴っているであった。私を見ているだけで、次々と妄想が浮かんでくるらしい。数百年に一度の逸材らしかった、私は。

 吐き気がした。

 とにかく奴の思い通りになることだけは何とか避けねばならなかった。ネタにされるわけにはいかない私はいいことを考えた。

 女を作ることである。

 そもそも友達を作れるだけの協調性のない人間が、女を作れるなんて突飛な考えが浮かんだ段階で、私は暴走しない方がよかったに違いない。だが、私が暴走したときはカ○ル君が止めてくれると私は信じていた。

 既に私の足元は腐っていた。

 とまあ、今はそんなことどうだっていい。とにかく、奴が私に近づいてこないように女を作るべきだと判断したのだった。腐女子というやつは、男と男が乳繰り合っている場面では興奮できるのだが、そこに女がいるというだけでヤジを飛ばす生き物だったのだ。それを利用しない手はない。

 決して私自身が、女が欲しいと思ったわけではない。高貴な私がそんな下賤な発送に至るわけがない。とにかく私は、大学で最も可愛いのではないかと思われる女性に目をつけていた。

 彼女は花。

 そう、道端に咲いている健気な花のようであった。

 美しい彼女は、余計な装飾など一切ない、純真無垢な女性であり、同じ大学一年生ということもあり、話しかけることもできたのだった。今日も天気がいいね、だとか、そのホクロって身体に何個あるの、とか多彩な言葉が脳裏にポンポン浮かんできた私は天才だったのだ。ガハハハハ。

 そして、人と人言う字は~と言ってくるような熱血教師が登場してきそうな丘。

 そこが私の戦場であった。

 大学への道へと続くその丘で待ち構えていれば、彼女に出会うことができる。ここならば、誰にも邪魔されずに彼女にアタックできることができる。あわあわわわ、と奇怪で素敵な言葉を漏らしていたが、完璧だった。完璧な作戦であった。私と彼女が不純異性交遊するのも時間の問題だったのである。彼女がくるのをwktkしながら待っていた。

 そして来た。

 彼女はあいからず薄幸の美女という形容詞がピッタリ。まさに発光していたのだと思う。そのぐらい彼女が光り輝いて見えるほどの幻覚が私には見えていた。だが、それだけでは事は終わらなかった。

 彼女の横には男がいた。

 お兄ちゃんか、なにかなのだろうか。漫画やドラマではありがちな展開だ。ふっ、と私は鼻で笑った。騙されない。貧困な発想しかできない物語の主人公とは違い、私は妄想の才能あふれる将来有望な男だったのである。

 生き別れだったお兄ちゃんと、大学で運命的な再会を果たした彼女は肩を並べながら歩いていた。手を握るどころか、肩と肩がぶつかりそうなぐらいに接近していて、あと少しで接吻するところであった。

 が、私はそこで目を逸した。

 ひでぶ、とか叫びながら、まずはその幻想を(ry とか絶叫しながら、あーあ、みんな死ねばいいのに、とか世界を呪いながら丘を転がっていた。それを見た彼女が、まるで私の部屋に湧いているウジ虫でも見るかのような目で私を睥睨してきたが、それも快感だった。嘘である。

 私の目からは、壊れた蛇口のように水が流れてきた。一応言っておくが、私は蛇口先輩のファンではない。ヤンデレ趣味は無い。聡明な読者だと思うが言っておく。一応だ、一応。

 あぎゃああああああああ、と髪を掻き乱しながら、あひょ、あひょと丘を伸び跳ねたりしたが、飽き性な私は二時間ぐらいその行為を続けることでようやく精神的に持ち直すことができた。

 今日 は……風が騒がしいな……でも少し……この風……泣いています、と一人文学少女ごっこをすることによって、なんとか寂しさも紛れすこともできた。嘘である。

 すると、ポン、と肩を叩かれた。

 救いの神ともよべるその叩き方には、この矮小な私ですら愛で全てを包み込んでくれるかのような優しさに包まれていた。どうしてそんなことが分かるのか。そんなこと分かるならとっくに超能力者としてテレビ出演しているとか、そんなことはどうでもよかった。とにかく愛を感じたかった私は、後ろを振り返った。

 奴だった。

 ハァハァと不幸な私を見て、比喩でもなんでもなく、本当に口の端から涎を垂らした奴がいた。趣味が悪いにも程がある。

 腐女子というだけでなく、他人の不幸は蜜の味。という最悪の嗜好をしている奴は、私を誘拐した。自分の部屋に連れ込んで、私に手作りである料理を無理やり食わせた。酒も強引に飲まされた。なんて自己中な奴なんだと思いながら、その日私は奴の部屋に泊まって寝た。

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