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忘れさせ屋  作者: kanoon
4/22

接触


水野の思いついた方法は、成功率の分からないものだった。

彼が情報の中で目に留まったもの。


『週に2度、図書館に行く』



数日後、水野は結城未来の利用する図書館に居た。

来たら、良い具合に接触を図れるか計算しておく。何度かのシュミレーションを終えたところに、ターゲットがやってきた。

「ミッション開始」

口角を上げて、彼女に近寄る。水野はタイミングを見計らった。

ベタだが少女漫画のような接触が一番だろう、文学少女を惹きつける展開にするつもりだった。

「あっ」

彼女が数㎝背伸びをする場所にあった本を、水野がひょいと取る。勿論その時に微かに指に触れるのは忘れず。

「えっ、あ、すみません。貴女もこれを?」

「はい……あ、でも大丈夫です」

変なテンパり方をした結城は、ぺこぺこと頭を下げながら去ろうとする。

「あー、ちょっと待って」

その彼女の腕を純が掴む。

「俺いつでもいいんで、先借りていいですよ」

「でも」

いーのいーの、とニコニコ振る舞うと、結城は挙動不審ながらも薄く笑った。それに水野は一層笑みを深める。

「ありがとうございます」

そう言ってカウンターに行く彼女を、本を探すふりをしながら待った。きっと一言声を掛けるだろうと思ったから。

案の定結城は遠慮がちに水野の近くに寄って、「ありがとうございました」と言ってきた。

「大丈夫です。あ、俺は水野純です。」

「わ、私は結城未来です」

挨拶はちゃんとしてくれるんだな、と思っていると、「失礼します」とすぐに帰られてしまった。

「よく分かんないやつ」

溜め息をついた水野は、報告のために事務所に戻ることにした。



「で?ちゃんと接触出来た?」

「出だしは上々だけど、あの子可笑しい。なんかやりにくそう」

それでもやるけどねー、と手を上げてピースをする。

「明日はお得意様。頼んだわよ」

バシン、と所長に肩を叩かれた水野は「痛いよー」と苦笑いで返事をした。


「たまには飲みなさいよ」

少しだけど、と鈴木加奈に半分くらい酒が注がれたコップを渡される。この同僚も翌日に仕事が控えてはいるのだが。

「うん、じゃあ頂くよ」

ザルなわけではない水野は、次の日が仕事なため少しだけ口にした。

「この仕事ってさ、別れさせ屋と違って感謝されることが多いじゃない」

「ああ」

「それが好きなのよね」

突然の語りに、水野は一瞬動きを止めてから柔らかく笑った。

「俺もこの仕事が好きだ」


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