第3話
人はやはり人に興味を持つのだろう。
隆が気になるのは休み時間の斉藤裕紀の足取りである。これが判らない。
普通、人が学校での休み時間に取る行動には3パターンあると隆は考えている。
まず1人行動するケース。トイレに行くか購買でパンを買うケースが殆どだ。
2つ目は2、3人またはそれ以上でグループ行動するケース。この場合は構成されたメンバーによってパターン化が難しいが、同じ部活の仲間で行動していれば間違いなく部活の準備だ。他には共通の友人のいるクラスへ連れ立って出掛けていたりする。
3つ目は教室の中から出ないケースだ。よく見ていると教室から一歩も出ずに毎時間必ず端っこの窓際で集まる特性を持ったグループがあったりする。
斉藤裕紀はどれにも当てはまらない。転校して来て3日目。まだ集団では行動するはずは無い。といっても休み時間に教室の中にはいない。気が付くといつのまにか姿が消えているのだった。
また、斉藤君がいないのね。
境 菜摘が隆に声を掛けた。斉藤裕紀がいなくなる事に気が付いていたのは同じだった。
彼の席は二人の間に位置するのだから気付かない訳は無い。
でも、いつも気付くとそこにいない。それでいて次の授業にはきちんと戻ってくるのだ。
ときどき、影のようにうっすら透き通って消えてしまいそうに感じる。
菜摘の斉藤に対する印象はそうだった。
3日目だからだろうけど、まだ斉藤裕紀の事が良くわからない。聞くと隆も同じように思っていた。
菜摘と隆が理解した斉藤裕紀について。
背が高くて足が速い。
割と勉強はできる。
無口だが、暗い奴じゃない。
群れる事は好きじゃない。
隆はそれに付け加えた。すぐにどこかに消える。
そうそう!と菜摘は笑った。
3時限目の始業ベルがなる頃に斉藤はふらっと戻って来た。




