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第1話
転校生がイケメンだったので女子達がざわついた。梅雨が明けきらない7月初めの朝。
高校三年生の最後の中間試験の直前という、転校には珍しいタイミングである。
紹介された転校生は斉藤裕紀。 何よりも長身が印象的だった。顔つきもシャープでハーフのようにも見える。
挨拶する声は低く小さかった。割とあっさりとした紹介で斉藤裕紀は席に着かされた。
クラス委員の境 菜摘と長谷 隆の間に空席が作られた。クラス委員の二人に斉藤の面倒をみてやるようにという計らいだ。
残り半年あまりの高校生活だが、毎日交代で朝礼の挨拶をおこなう当番や体育の授業でつかう体育館の鍵の借り方まで学校にはそれぞれのルールが細かく取り決められている。知らないと不便で本当に困る。
長谷 隆は隣の席に座った斉藤裕紀に声を掛けた。”ヨロシクな”。すると自己紹介での壇上の態度とは変わって斉藤は笑った顔を向けた。
こういう明るそうな奴なら上手くやれそうだな、と長谷は思った。モテそうだな、とも。




