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白い結婚だと言われたので、推し活に全振りしたら夫と愛人が崩壊した話【掲示板まとめとその後】

【掲示板の小話】

◆番外編1 実務は執事(結婚前〜結婚直後の屋敷の実態)

執事は紅茶を一口含み、淡々と答えた。


「実務ですか? すべて私が回しておりました。ルシアさんは……ええ、屋敷で過ごされていただけですな」


わずかに口角が上がる。


「奥方様に仕事を振られた時は、さぞ驚かれたでしょう。もっとも、即座に私へ押し返してこられましたが」


カップを置き、肩をすくめる。


「すると奥方様が仰いましてな。

『駄目よ。真の奥方はあなたなの。逃げちゃだめよ、逃げちゃだめよ』と」


小さく息を漏らすように笑い、再び紅茶を啜る。


「ご主人様には申し訳ありませんが……少しだけ、胸がすっとしました」


その微笑みは、最後にほんのわずか曇った。


「……結局、仕事はまた私のところへ戻ってきましたが」



◆番外編2 推し活?なんだそれは(奥方の行動が周囲に伝播し始める)

アリステルは眉をひそめた。


「……推し活? なんだそれは」


執事は一瞬だけ言葉を選び、静かに答える。


「はい……奥方様は、家具……いえ、正確には“職人”を推しておられました」


「推す……? 家具を……?」


アリステルは部屋に並ぶ椅子や机を見渡す。

どれも見事ではある。だが——


「……意味が分からん」


その背を見つめながら、執事は思った。

主人の背中に、またひとつ哀愁が積み上がった、と。



◆番外編3 恋?(推し活)とビール(工房通いが日常化)

「ライル? いい男よね〜。前世で推し活してた俳優と、ちょっと似てるのよ」


それは彼が作った椅子へ、ことりと腰を下ろした。


「恋?」


そう問われて、彼女は首をかしげる。

手にしたビールを一口あおり、ぷはっと気の抜けた息を吐いた。


「……うーん、どうかなぁ。

一応、既婚者だし〜。そこはね、メリハリ大事にしないと〜」


つまみ代わりの乾燥肉をかじりながら、肩をすくめる。


「でもさ」


もう一口、ビール。


「やっぱ、いい男だわー」


独り言みたいに呟いて、レイナはくすっと笑う。

椅子は軋みもせず、ただ静かに彼女の体重を受け止めていた。



◆番外編4 寡黙な職人、赤面して逃げる(推し本人側の動揺)

ライルは目を瞬いた。


「……奥方様? えっ……まさか……」


思わず視線を逸らし、耳まで赤くなる。


「そ、そんな風に考えたこと、ないですよ……」


そう言って、慌てたように立ち上がる。


「し、仕事がありますので……失礼します……」


逃げるように背を向けた、その足が、

無造作に置かれた木材に引っかかった。


「——っ!?」


がたん、と音を立ててよろめき、

何事もなかったかのように咳払いをひとつ。


決して振り返らないまま、

寡黙な職人は工房の奥へ消えていった。



◆番外編5 侍女、推しを理解する(推し活が“文化”になる瞬間)

「奥方様は、いつも“推し活、推し活”と仰るのですが……

正直、私にはよくわからなくて」


侍女はそう言って、苦笑する。


そのとき――

食材を運んでいた男と、ふと目が合った。


黙々と働く横顔。

真剣で、余計なことを言わず、ただ手を動かしている姿。


侍女は一瞬、言葉を失い――

小さく息を呑んだ。


「……あ。

でも、少しだけ……わかった気がします」



◆番外編5 神に感謝、独り晩酌(奥方は通常運転)

レイナ「ほんと最高〜♡

神に感謝よ。感謝しながらひとり晩酌とか格別すぎるんだけど(笑)

ビールうま〜(^^)」



◆番外編6 侍女(18)の本音(領地が潤い、屋敷の空気が変わる)

侍女(18)は、控えの回廊で手巾を畳みながら、少しだけ困ったように笑った。


「……正直に申しますと、今はとても働きやすいんです」


問いかける視線に、彼女は肩をすくめる。


「あの方――ルシア様は……ええ、少し、いえ、だいぶ我儘でいらして。

お気に召さないとすぐ声を荒げられますし、指示も二転三転しますから」


苦笑が漏れるのは、愚痴というより安堵に近かった。


「でも今は、奥方様が外に出ておられても、屋敷の空気が穏やかなんです。責められることもなくて……」


ふと、思い出したように視線を落とす。


「父も申しておりました。最近、領地が賑やかで、商いが増えたと。……あの工房のおかげだって。家計が楽になったって、嬉しそうでした」


胸に温かいものが広がるのを感じながら、彼女は小さく息を吐く。


「旦那様、ですか?」


一瞬だけ言葉を選び、それから正直に答えた。


「お元気ですよ。ただ……背中が、少し寂しげで。広い食卓にお一人で座っていらっしゃる姿を見ますと……」


くすり、と笑みが零れた。


「正直、今の方がいいと思います。屋敷も、領地も、人の顔も……ずっと、明るいですから」


そう言って、侍女は頭を下げ、また自分の務めへと戻っていった。



◆番外編7 侍女たちの噂話(旦那の哀愁が可視化される)

侍女たちの噂話は、今日もこっそり続いていた。


「旦那様、最近ほんと大人しいよね……」

「ルシア様と別れた後からじゃない?」

「いえ、奥方様に完全に振られてからですわ……」

「しっ、声が大きい……! でも確かに……」


廊下の陰でアリステルは頭を抱え動けないままだった。



◆番外編8 侍女マリーは見た(噂の現場)

侍女マリーは見た。

レイナ奥様が軽やかに出ていかれたあと、

廊下の真ん中でぽつんと取り残されて、

肩を落としたまま動けなくなっているご主人様を……。


(ご主人様……哀愁がすごい……)



◆番外編9 誰がここまで自由にしろと言った(旦那の内省)

アリステルは机に突っ伏したまま呟いた。


「……確かに“互いに自由に”とは言った……言ったが……

 誰がここまで自由にしろと言った……?」


蝋燭の火がゆれ、奥方の残像がまだ廊下に漂っている気がして、

彼はさらに頭を抱える。


「……いや本当に、どうしてこうなった……?」



◆番外編10 広い食堂の一人酒(落ち込みの決定打)

広い食堂で、アリステルはひとり酒をあおっていた。


長い卓の向こうには誰もいない。

かつては、ここにルシアがいて、

笑いながら杯を満たしていたというのに。


「……俺が、悪かったのか……?」


低く落とされた声は、天井に吸われて消えた。


彼は力なく肩を落とし、空になったグラスを見つめる。

注がれることのない酒は、ただ冷たい光を返すだけだった。


侍女は柱の陰から、その背をそっと見守っていた。


(……哀愁がすごい……)



◆番外編11 若き日の失恋(哀愁の根が深い)

執事は、柱の陰からアリステルの背をそっと見つめた。

——その姿に、ふと胸がざわつく。


(……あの落ち込み様……まったく、あの時と同じだ)


まだ十五だった若き日のアリステル。

初恋の令嬢に失恋し、庭園の噴水の前で肩を震わせていた少年。


その背中と、今の背中は驚くほどよく似ていた。


執事はそっと息を吐く。


(………これは、誰も触れてはならんやつだな)


彼は何も言わず、一礼して静かに歩き去った。

背後で主人がかすかに落ち込む気配だけが、いつまでも廊下に漂っていた。



◆番外編12 五十三歳の執事は語らない(締め)

執事は静かに答えた。

「……奥方様が来られてから、領地は賑やかになりました」


そう言って、彼はゆっくりと紅茶を口に運んだ。


「いえ、以前が悪かったわけではないのですよ」


紅茶の湯気が、彼の口元を一瞬だけ隠す。


賑やか。

すべてが、奥方様が“屋敷にいない”ことによって生まれた変化だった。


「……それは、誠に喜ばしいことなのですが」


言葉はそこで、わずかに途切れた。


「……いえ。口にするのは……やめておきましょう」


そう呟いて、執事は再び紅茶を口にした。


窓の外を眺めながら、

五十三歳の執事は、今日も何も語らぬまま、屋敷の変化を見守っていた。



◆番外編13 神の采配おまけのオチ

神「今回はナイス采配だと思ったんや。な?

神ってるやろ?神だけに(笑)」



【ある日の宴】

家具工房の成功を祝う宴は、領地の広場で開かれた。


簡素だが温かい料理と、樽ごと運び込まれたビール。

職人も商人も領民も入り交じり、いつになく賑やかな夜だった。


「本日は、皆さまのおかげでございます」


杯を掲げ、レイナはにこやかに頭を下げる。


「工房がここまで育ったのは、職人の技と、支えてくださった皆さまのお力あってこそ。

心より感謝申し上げます」


拍手と歓声。

だがその直後――


「さて」


レイナは即座に言った。


「堅い話はここまで! 今日は飲みましょう!」


そう言って、ためらいなくビールを煽る。


「奥方様、それ三杯目では……」

「え? まだ序盤よ?」


陽気な空気が広がり始まる。


「仕事上がりのビールって、ほんと最高!」


少し離れた場所で、

アリステルは気まずそうに立っていた。


「……ええと」


向かいにいるのは、職人のライル。

無言のまま、差し出された手に視線を落とす。


「……どうも」

「……どうも」


ぎこちなく握手。


「……奥方様には、お世話になっています」

「……はい。こちらこそ」


それ以上、続く言葉はなかった。


その様子を、レイナは遠くから見て――


「ちょっと! なに固まってるのよ!」


大声で笑い、また一杯。


「ほらほら、飲みなさい! 今日は無礼講よ!」


音楽が鳴り、笑い声が重なり、夜は更けていく。


家具は売れ、領地は潤った。

職人は誇りを持ち、領民は満たされている。


ただ一人、

状況に取り残された男を除いて。


「……」


アリステルは、騒がしい宴の中で、

自分の杯だけが空のままなことに気づき、

静かに息を吐いた。


そのとき。


執事が、いつの間にか傍らに立ち、

何も言わずに酒を注ぐ。


「……ああ」


短く礼を言うと、グラスはすぐに満たされた。


執事は一礼し、そっとその場を離れる。

アリステルは、注がれた酒を手に取ることもなく、ただ眺めていた。


その隣で、レイナは今日も楽しそうにビールを飲んでいた。


「おかわり!」


――今夜も領地は、何も問題はなく回っていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
 無闇に嫌悪や殺意を向けられるわけでもない、頑なかつ幼稚に無視を決め続けるわけでもない、ただ雑に扱われる。これはこれでキツいかもしれませんが、部下にあまり不満抱かれてないのが救いかもしれませんね、アリ…
これは良いザマァwwwww
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