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光の理由

森の中を進みながら、

わたしは、ふと思った。


——どうして、わたしは恋をしなかったのだろう。


蛍は、光る。

それは、誰かを呼ぶためだと、みんなは言う。

惹き合って、出会って、短い時間を重ねるために。


でも、わたしの光は、

いつも少し違っていた。


強く瞬かない。

遠くまで届かない。

目立つほど、切なくならない。


ただ、夜に溶けるような光。


昔、仲間に言われたことがある。


「その光、やさしすぎるね」


そのときは、意味がわからなかった。

やさしい光が、なにを手放しているのかも。


森の枝のあいだを抜けながら、

わたしは、こどもを振り返る。


足取りはまだ不安定だけど、

ちゃんと前を向いている。


わたしは、悟った。


恋は、ひとりを選ぶ光。

導く光は、だれも選ばない。


どちらが正しいわけでもない。

ただ、役目が違う。


わたしは、夜に迷うもののそばにいたかった。

泣きそうな声の、すぐ隣に。


だから、光は弱くてよかった。

強すぎたら、見上げさせてしまう。

立ち止まらせてしまう。


足元を照らすには、

このくらいでいい。


恋をしなかったことを、

後悔したことは、ない。


選ばなかったんじゃない。

選び続けていたのだ。


道を。

帰り道を。


こどもが、つぶやく。


「ねえ、あったかいね」


光に、熱はない。

でも、そう感じたなら、それでいい。


わたしは、もう迷っていなかった。


この夜が終わったら、

わたしの光も、終わるかもしれない。


それでも。


今、ここで光る理由は、

ちゃんと胸にあった。


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