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ヴェルシュトラ 〜スキル経済と魔導石の時代。努力が報われる社会で俺たちは絶望を知りそれでも、歩き出した〜  作者: けんぽう。
本編

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ミノムシの帰還、そして覚醒


捕縛糸を頼りに、なんとか足場へと戻ったクラフトたち。

全員が息を切らしながら岩場に転がり込み、しばらくの間、洞窟の天井を見上げていた。


「……おい」


ブラスが重い息を吐きながら、腕を組んで呟いた。


「俺たち、なんか、すげぇ無様な戻り方しなかったか?」


「……気づいてましたか」

キールが淡々とした口調で返す。


「無様っていうか、もう少しスマートな降り方があったはずなんだが……」

クラフトも苦笑しながら腕をさすった。


「そもそも、俺が一番手に渡るんだよ!? 進むたびに捕縛糸が揺れまくって、落ちるかと思ったぞ!?」


ブラスが大声で抗議すると、クラフトとキールは気まずそうに目をそらした。


「いや……お前が一番体重あるし、もし落ちるならまずお前かなって……」

クラフトがぼそっと言う。


「何でだよ!? 俺は生け贄かよ!!」


「まあまあ、それはそれとして」

キールが咳払いしながら話題を変えようとする。


「いや、というか、キール、お前が戻り方を考えてなかったからだぞ!」

クラフトが腕を組みながら鋭い目を向けると、キールは視線を泳がせながら小さく咳払いをした。


「….戦術には臨機応変さと高度な柔軟性が重要なんですよ」


「要するにノープランだろ!!!」

クラフトが思い切り声を張り上げた。


「うんうん! でも楽しかったね!」

リリーが満面の笑みを浮かべながら無邪気に言う。


「あの状況でどこに楽しさを見出してたんだ……?」

クラフトが肩を落としキールが小さくため息をつく。


だが、そんな軽い会話も束の間——


洞窟の奥から、異様な振動が響いてきた。


「……っ!」


全員が即座に立ち上がる。


洞窟の奥で、トロールとミノタウロスが暴れ回っていた。

咆哮とともに壁に拳を叩きつけるたび、岩肌にひびが走る。

天井から細かい砂や小さな石片がパラパラと降り注ぎ、洞窟内の空気はわずかに粉塵で濁っていた。


クラフトが険しい目で奥を見据える。


「……あいつら、狂ってやがる。何をしでかすかわからないぞ」


クラフトが隣を見る。


「……やるか?」


キールが静かに頷く。


「ええ、“同調発動”ですね」


トロールが地面を踏み鳴らし、足元の岩盤がかすかに震える。

このまま奴らが暴れ続ければ、いつか本当に天井が崩れるかもしれない。

——そうなる前に、決着をつける。


クラフトは短く息を吐き、剣を構えた。


オーガ戦以来、二人はこの技を磨いてきた。

刹那のタイミングでスキルを完全に同期させる技術。

一瞬でもズレれば、互いに致命傷を負いかねない危険な戦法。


クラフトは剣を握り直し、わずかに目を細めた。

——集中しろ。


全ての感覚を研ぎ澄ませ、気配を読む。


二人の鼓動が、同じリズムで刻まれる。


そして——


「……行くぞ」


クラフトが静かに息を吸い、剣を構える。


「ええ」


キールもまた、深く息を吐きながら、精神を研ぎ澄ませた。


二人の間に緊迫した空気が漂う。


天井の岩が崩れ落ちる音。

暴れる巨体が地を踏み鳴らす轟音。


そのすべてを遮るように、二人は静かに集中を高めていった。

トロールとオーガの暴れ回る軌道を完璧に計算し、攻撃のタイミングを測る。

二人の呼吸は完全に一致し、同調発動の準備は万全だった。


「……行くぞ」


静かな声とともに、クラフトとキールが同時に動き出す——


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