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32、初心な二人と見守るジョーモ

 僕のCランク昇格祝いの会は、料理人さん達も休憩時間に交代で参加してくれて、遅くまで続いていた。


 宿屋の娘のモモさんは、明日の朝の仕事があるからと、少し前に帰ったけど、ジョーモさんは、蒸留酒を飲みながら、ずっと居てくれている。僕は強いお酒が苦手だから、蒸留酒を飲むジョーモさんは、カッコいい大人に見える。


 僕は、モモさんがジョーモさんをどう思っているのかが、気になっていた。Cランクに昇格したことで、一つ悩みが減ったからだろうか。



「エドさん、あの子のことが気になるっすか?」


 お酒が入ったためか、ジョーモさんは少し酔っているように見える。僕が一人前の冒険者になったから、楽しい酒だと言ってくれてたし、ちょっと飲み過ぎているのかな。


「気になるというか、よくわからないですけど、何だか少しモヤモヤするというか……」


「あはは、やっぱり、そうっすか。俺のお誘いは、良いキッカケになればいいっすね」


 ジョーモさんは、意味深にニヤニヤしてるんだよな。


「もしかして、ジョーモさんは、モモさんが気になるんですか? 確かにモモさんは優しいし、かわいいし、あっ、僕より一つ年上の人にかわいいなんて言うと失礼かもしれないけど、えーっと、でも、とても良い人で……」


「エドさん、その心配はいらないっすよ? 俺から見れば、あの子は、子供っす。そういう対象にはならないっすよ」


「えっ? そういう対象って……」


「あぁ、まだ気づいてないっすか。二人とも初心うぶっすね。見ていると、とても可愛らしいから、ついついニヤけてしまうっす。あー、俺、ちょっと酔ってるっすね。今のは忘れてくださいっす。水をもらってくるっす」


 ジョーモさんは立ち上がると、厨房へと入って行った。そういう対象って、どういう対象なんだ?




「混ぜ飯の兄ちゃん、Cランク冒険者になったのか」


 また、このオジサンだ。他のお客さんから、彼は強い関心を持つもの以外はすぐに忘れるのだと聞いた。人族に見えるけど、知能があまり高くない別の種族とのハーフらしい。


「僕は、今日の夕方の試験に合格して、Cランクになりましたよ」


「ふぅん、夕方に冒険者ギルドに行ってたのか。それなら、さっきのゴタゴタを聞いたか?」


「ゴタゴタって何ですか?」


「セルス村の子供だよ。前に、兄ちゃんに話したことがあっただろ? 人族と何かのハーフの獣人の女の子だ。なーなんとかっていう有名パーティに加入したっていう噂の話だよ」


「ナープラストですか?」


 僕は、嫌な予感がした。夕方の試験前に会ったときには、あんなに楽しそうな笑顔をしていたのに、何かあったのだろうか。



「そう、そのなーなんちゃらだ。冒険者ギルドの1階で、ゴタゴタがあったんだよ。セルス村の住人は義賊だから、盗賊しか狙わない。それなのに、あの子が副団長の魔道具を盗んだらしいぜ」


「えっ? 盗んだ?」


「まぁ、子供だからかもしれないけどな。その盗んだ魔道具を使って、Dランクの筆記試験を受けて合格したらしい」


「ええっ? それはどこで……」


「冒険者ギルドの1階でゴタゴタしてたから、多くの冒険者が聞いている。あの有名パーティからは追放されたらしい。セルス村の子供は、魔道具はもらった物だと言ってたらしいけどな」


「ちょっと、その話、おかしいですよ。Dランクの筆記試験の発表の直後に、僕はその女の子に会いましたけど、副団長さんからもらったって、嬉しそうな顔をしていましたよ。チカラを発揮できる髪飾りだと言われたらしいけど」


「盗賊は、盗んでも、もらったって言うからな。チカラを発揮できる魔道具だとわかっていて、試験に使ったんだろ? その魔道具は、筆記試験会場のような結界内でも魔法が使えるものらしい。他人の答えを盗み見ることもできるんじゃないか?」


「いや、あの子は、試験会場に魔道具を持ち込んでないですよ。僕が会ったときには、それを女性から返してもらっていたし」


「その女性もグルかもしれないじゃないか。あの有名パーティの副団長が、嘘をつく理由なんてないだろ?」


 あんな純粋な子が、騙されたのか?



「その女の子の処遇はどうなったっすか?」


 いつの間にか、ジョーモさんが僕の後ろに立っていた。


「有名パーティから追放されて、冒険者ギルドカードを剥奪されたらしいよ。盗賊だと騒ぎになったから、宿屋からも追い出されるんじゃないかな」


「セルス村の住人が義賊だという噂にも、泥を塗ったから、大事件だぜ。でも、ちょっと可哀想だな」


「あんなに小さな子供に、そこまでの仕打ちをするのは、さすがにやり過ぎじゃないのか? 混ぜ飯の兄ちゃんの話が、あの子のことなら、綺麗な髪飾りだったらしいから、不正目的じゃなくて、ほんの出来心かもしれないし」


 他のお客さん達も会話に入ってきた。盗賊セルス団に助けられたことのある人は、寛容な反応だ。



「アイツら、やりやがったな」


 ジョーモさんは、怒りに震えているみたいだ。さっきまでの、陽気に酔っていた雰囲気は完全に消えている。


「ジョーモ、どういうことだ?」


 会話を聞いていた別のお客さんが、ジョーモさんに話しかけた。その男性の姿を見た冒険者の何人かは、ハッとした顔をしている。誰だろう?


「あぁ、昨日から気になってたんすよ。あの子が、モンツク狩りで無双したみたいっす。昨夜、冒険者ギルドの2階で、あの子が楽しそうに他の冒険者に話していたのを見かけたっす。ナープラストの他のメンバーは笑ってなかったんすよ」


「モンツク狩りの緊急ミッションは、掲示されて1日で外されたな。俺には報告が届いていない。俺が怪我で抜けたた後は、ナープラストは酷いパーティになったな」


 よく見ると、その男性の右足は、義足のようだった。


「プラストさんがAランクにまで育て上げたパーティなのに、今の団長になってからは、話題作りのためには何でもしている印象っすよ」


「やはりナープラストは、俺が抜けるときに潰すべきだったか。高位ランクメンバーが多いパーティだから、冒険者ギルドから維持してほしいと言われていたが……」


 この人が、ナープラストを立ち上げた人なのか? 一部の有名な治癒魔導士なら、手足が魔物に喰われても治せると聞いたことがある。義足で治癒の順番待ちをしているのかな。



 あれ? 今、外を光が通ったように見えた。あの光は……。


「すみません、僕、ちょっと出てきます」


 僕は慌てて食堂から出て、宿の外へと出て行った。


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