31、エドのステイタス(Cランク)
「この後は、ステイタス測定があります。支援局員の冒険者は、測定不要です。お疲れ様でした」
あからさまに、嫌な言い方をする職員。だけど、一緒に受験した人達は、僕に友好的だった。移動する彼らに、僕は簡単な別れの挨拶もできた。
話せると、こんなに違うんだな。
強引に、追放ざまぁ支援局員にされてしまったけど、支援局員を辞めた後も普通に話せるなら、この仕事に出会えて良かった。
「エドさん、ステイタスの確認をしておく方がいいっすよ。ランクアップで能力値が上がっているのが、エドさんが伸ばすべき能力っす」
「そうなんですね。見てみます」
僕が腕輪に触れるて魔道具を起動すると、すぐにステイタスが出てきた。魔道具は、完全に僕の思考を理解しているのだろうか。
アロンさんに聞いてみたいけど、彼の返事は予想できた。失念しておりましたーって言われて説明をしてくれるか、もしくは、僕のスキルが特殊だからわからないと、目をキラキラさせて言われるかの、どちらかだろう。
ジョーモさんは、あまりアロンさんを信用しすぎない方がいいと言っていた。アロンさんの丁寧すぎる口調には、戸惑うこともあるけど、悪い人ではないと思う。彼は、ただ、自分の知りたい欲求に素直なだけだ。
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【名前】 エド(16歳)
【職業】 冒険者(Cランク)
【スキル】 混ぜ壺(レベル1)[MAX5]
【体力】 1180/1600 [可]
【魔力量】 220/520 [良]
【物理攻撃力】 2500 [可]
【物理防御力】 2300 [可]
【魔法攻撃力】 2000 [可]
【魔法防御力】 2300 [可]
【スピード】 C
【回避能力】 C
【習得魔法属性】火・水・土・風
【特記事項】追放ざまぁ支援局員(レベル2)
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魔力量が、[良]になってる! それぞれの数値も、地味に上がってる気がする。特記事項は、ノワール洞窟で見たときにレベル2になっていたから、その後の変化はない。
早く次の対象者を見つけないとな。でも、僕のガチャ壺が反応するのが、レアなガチャを引くべき人なのであれば、見つからない方がいいのかな。ジョーモさんのように、死を考えるほど辛い思いをした人にしか反応しないなら。
「何か、上がってたっすか?」
「はい、支援局員になったときよりは、数値化されているものは、地味に上がってます」
「そうっすか。まぁ、ホッパー狩りとかがあったっすからね。あれで上がったのかもしれないから、比較が難しいっすね」
「はい。少しずつでも、成長できているなら、良かったです」
ジョーモさんは、何度も頷いてくれる。やっぱり、先生みたいだよな。
「じゃあ、裏口から出て、宿に帰るっすよ。酒場時間になっても、料理長がエドさんの合格祝いをするって言ってたっす」
「えっ! 合格祝い? 嬉しいです。でも、裏口? あっ、会いたくない人がいるんですね。わかりました」
僕は、つい、嫌なことを言ってしまった。こんな指摘をするなんて、無神経だ。Cランクの実技試験に合格できたことで、僕は随分と浮かれてる。
ジョーモさんは、特に気にする様子もなく、帰る方向を示しながら、ニコニコしてくれている。
言葉には気をつけないとな。ジョーモさんは、僕がガチャ壺の影響を受けることがあると理解してくれている。でも、これを知っているのは、ごく一部の人だけだ。
裏口へと向かいながら、さっきジョーモさんが、料理長と言ったことにも気がついた。誰が聞いているかわからないから、これから戻る場所にアズさんが居るとは言えないためだ。
話をするということに関しても、ジョーモさんは、先生みたいだな。
◇◇◇
「エドさん、Cランクおめでとう!」
宿に戻ると、フロントには、モモさんがいた。ジョーモさんが、僕が合格したことを合図したみたいだ。
「モモさん、ありがとう。待ってくれてたんですか」
「ええ、私は、エドさんの応援団だからね。あーあ、追いつかれちゃったなぁ」
「追いつかれた? もしかして、モモさんも冒険者登録してたんですか? えっ、Cランク?」
僕は、一気に話してしまった。モモさんが驚いた顔をしているから、何か失言をしたかと不安になる。
「エドさんは、本当にスラスラと話せるようになったね。うん、私のスキルはアーチャーだから、冒険者もやってるよ」
「アーチャー? 弓使いですか」
「そそ、弓使いだよ」
僕は、ジョーモさんの視線に気づいた。なんだか、意味深にニヤニヤしてるんだよな。
「あっ、遅くなっちゃうね。料理長も待ってるよ。あー、夕食時間が終わっちゃうかな? 早く行こう」
モモさんは、僕を先導するように食堂へと入っていく。何かの合図をしたのが見えた。僕の合否を伝えたのかな。
◇◇◇
「エド、昇格おめでとう!」
「ありがとうございます!」
食堂の左奥は予約席になっていたようだ。テーブルには、たくさんの料理が並んでいる。不合格だったら残念会になったのだろうか。
でも、すごく嬉しい!
料理人さん達も、料理を運んでくるたびに、僕におめでとうと言ってくれる。
「混ぜ飯の兄ちゃんは、冒険者だったのかよ。知らなかったぜ」
あっ、毎日、昼の食べ放題に来ている常連さんだ。酒場時間になると、昼にも来ている人が、チラホラと飲みに来るようだ。
「僕は何度も冒険者だって……いえ、はい、Cランク冒険者になりました」
僕は、反論しようとしたけど途中でやめた。言葉は難しい。きっと言い返されると、嫌な気分になるよな。
「エドさん、今度、モモさんも一緒に、討伐ミッションを受けてみるっすか? それぞれ同じミッションをソロで手続きすれば良いっすから」
「わぁっ! 討伐ミッション、行きたいです! ジョーモさんは物理系だと料理長が言ってましたけど、私は後衛だから、相性良いですよ〜」
えっ……相性が良いって。
「じゃあ、どこに行くっすか?」
「そうだな〜。どこが良いかなー」
モモさんが笑顔でジョーモさんと話していると、僕は少しモヤモヤした。モモさんは、ジョーモさんのことが気になるのかな。カッコいいもんな。
「エドさん? 希望はある?」
「えっ? えーっと……あまり危険じゃない場所が嬉しいです」
「じゃあ、ソアラ高原とか、どうかな? いつも討伐ミッションが出てますよ。ね? ジョーモさん」
「そうっすね。ソアラ高原なら、アーチャーが活躍できるっすよ」
やっぱり、僕はモヤモヤする。これは何なんだろう?




