30、ケモ耳の少女アスカと騎士団長ルシャナ
翌日、落ち着かない僕は、早めに冒険者ギルドに行った。夕方の試験を予約していたが、他の冒険者の試験の見学をして、参考にしたいと考えたためだ。
だが、試験が行われる別館では、タイミング悪く、Dランク昇格の筆記試験の結果発表が行われていた。大勢の人がいて、実技試験会場へ行けない。
僕は、また、幼馴染のことを思い出していた。だけど、ジョーモさんのおかげか、以前ほど苦しい気持ちにはならなかった。でもやはり、あの頃は楽しかったなと、強い寂しさを感じる。
「あっ! エドちゃんだ〜。見てみて〜! あたし、Dランクになったよ!」
大勢の人の中から、小さなケモ耳の女の子が飛び出してきた。そして、今、受け取ったばかりの冒険者ギルドカードを、満面の笑みで、僕に見せている。
「えっ? えーっと、あーちゃんだっけ?」
「うんっ! あーちゃんだよっ。あたし、すごいでしょ」
「あーちゃんは、いつ、冒険者登録したの?」
「ん? 6日くらい前かな?」
「それで、もうDランクだなんて、めちゃくちゃ凄いよ。おめでとう!」
「にゃははっ、あたし、えらい?」
「うん、すっごく偉いよ」
僕がそう言うと、照れたらしく、くねくねと恥ずかしそうにしている。ふふっ、かわいいな。
「アスカさん、預かっていたアクセサリーを返しますよ」
背後から、聞いたことのある女性の声が聞こえた。振り返ると、ノワール洞窟で会った王都の騎士団を率いていた女性だった。
「あっ、貴女は……」
「しーっ! エドちゃん、言っちゃダメなんだよ。こっそりだから」
こっそり?
「あぁ、アスカさんが言ったのは、極秘任務という意味だろう。私は、ルシャナという。ノワール洞窟で会ったな。今は別件の業務で滞在している」
「僕はエドです。じゃあ今は、ルシャナさんとお呼びすれば良いのでしょうか。失礼かな」
彼女にはステイタスを見られているけど、僕は名前を名乗った。騎士団長さんが一度会っただけの冒険者の名前なんか、覚えてないだろうからな。
「いや、ルシャナで良い。エドさんは、アスカさんと知り合いだったのだな」
ケモ耳の女の子は、アスカという名前らしい。
「あーちゃんは、エシャナさんと会った日、いや前日かな? ノワール洞窟で、僕の護衛をしてくれたんですよ」
「そうか。あぁ、それで3階層の魔物が、エドさんには近寄らなかったんだな。キミのスキルの影響かと考えていたが」
エシャナさんは記憶力がいいんだな。
「あーちゃんが去り際に、僕の服に匂いを付けてくれたからだと思いますよ」
そう返答すると、エシャナさんは柔らかな笑みを浮かべて、頷いてくれた。だが、彼女の表情が穏やかなのは、ケモ耳の女の子を見ているからだろう。受け取ったアクセサリーを髪に止めようとしているが、上手くいかないらしい。
「アスカさん、私が付けようか?」
「うんっ! エシャナちゃん、お願いっ。あっ、エドちゃん、この髪飾り、かわいいでしょ」
アクセサリーは髪飾りなのか。
「白い花かな? こないだは付けてなかったよね?」
「今朝、試験の前にね、加入したパーティの副団長さんがくれたの。チカラを発揮できる髪飾りなんだって」
髪飾りをもらった? ナープラストの副団長といえば、すっごい美人の魔導士だよな? 近寄りがたい雰囲気があるけど、子供には優しいのか。
「へぇ、副団長さんは、あーちゃんのことを気にかけてくれてるんだね。でも、お守りをエシャナさんに預けていて、よかったの?」
「うんっ! あ、エシャナちゃんが預かるって言ったよ。筆記試験の会場には、魔道具は持ち込んじゃダメなんだって。でも、それまでは付けていたよ」
「白い髪飾りが魔道具?」
そういえば、わずかな魔力を感じる。あれ? エシャナさんの表情が、さっきとは違うような気がした。彼女のことはよく知らないから、どう違うかはわからないけど、何かを気にしているのだろうか。
「エドさんは、仕事で来たのかな?」
「いえ、今日はこの後、Cランクに昇格するための実技試験を受けるんです」
「そうか。街道での件も聞いた。エドさんなら合格できるだろう。頑張りなさい」
騎士団長からそう言われると、自信になる。
「そうだよっ! エドちゃんなら合格できるよっ。あたしも合格したから、今日は合格の日だよ」
「ありがとうございます。頑張ってきますね」
僕は、二人と別れて、実技試験会場へと向かう。ケモ耳の女の子は、僕が見えなくなるまで、ピカピカな笑顔で手を振って見送ってくれた。とても温かい気持ちになる。
よし、頑張ろう!
◇◇◇
実技試験は、簡単だった。普通に知らない人としゃべることができれば、何の問題もない。泥ホッパーよりも弱い魔物を、5人で連携して討伐するだけだった。
僕は、魔法を担当した。土魔法を使って、足止めをする役割だった。杖はまだ入手していないけど、合図に合わせて土魔法を発動できたことで、一緒に受験した冒険者から、ナイスと声をかけてもらえた。
「はい、5人とも合格です。Cランクおめでとう!」
「ありがとうございます!」
「当ギルドでは、Cランクに上がった冒険者向けの研修があります。研修の参加は自由ですが、知らないと損をすることも教えているので、討伐ミッションを受ける前に、研修の受講をオススメしています」
合格者に新たな冒険者カードを発行しながら、職員さんが、にこやかな笑みを浮かべて研修の予約を取り始めた。だが、受講料が銀貨1枚って、高すぎないか?
そんなことを考えていると、僕の番が来た。
「古いカードを出してください」
「えっと、僕はカードは腕輪に入ってるんです」
「ん? 腕輪から出してください」
いやいや、この人、大丈夫かな?
「エドさん、受かったっすかー?」
あっ、ジョーモさんだ。心配して来てくれたのか。僕は、手でマルを作ってみせた。
ジョーモさんの姿を見た職員さんは、コホンと咳払いをした。
「エドさん、変な研修の勧誘は断るっすよー。試験会場で勧誘してるのは、高額な研修っす」
ジョーモさんがそう叫んだことで、予約をしようとしていた他の人も手を止めた。職員さんが、チッと舌打ちしたってことは、そういうことか。
「古いカードを……」
「腕輪の中に入ってるんですよ。僕は、支援局員なので」
僕は、ジョーモさんが近くにいてくれるおかげで、はっきりとした口調で説明することができた。職員さんは、あぁと小さな声で呟くと、魔道具の操作を始めた。
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