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24、盗賊セルス団

「なぜ、俺を捕まえるんですか! アロンさん、捕まえるなら、その茶髪の男でしょう? そいつは、裏ギルドに出入りする暗殺者ですよ!」


 は? 何を言ってるんだ?


 魔道具で拘束されたタイトさんは、意味不明なことを叫んだ。だが、彼が僕を暗殺者だと言ったことで、冒険者達は僕からジワジワと離れていく。


「タイトさん、なぜ、エドさんが暗殺者なのですか」


「俺には、確かな情報筋があるんですよ。アロンさんは、騙されているんだ。アロンさんが、この階層でずっと盗賊に襲われなかったのは、彼が近くにいたからですよ! 飯を振る舞われたくらいで簡単に手懐けられた職員は、はっきり言ってバカですね。完全に騙されてますよ」


 僕がタイトさんの方に視線を向けると、ヒッと怯えた表情をする。彼は本気で、僕が暗殺者だと思っているらしい。北門で会った時とは、全然態度が違うよな。



「アンタは、今、自分で盗賊と繋がっていることを暴露したっすよ。わかってないんすか?」


 ジョーモさんは、冷ややかな視線を向けている。


「誤解ですよ! 軽装だったのは、夜遅いから仮眠を取るためで、どの人が盗賊かなんて知らないですからね。さっさと俺を解放しないと、アロンさんは職を失いますよ?」


 さっきジョーモさんは、タイトさんが伯爵家の子息だと、言っていたっけ。貴族の息子は、こうやって罪を逃れるのか。


 アロンさんが、険しい顔をしている。権力には屈するしかないのか。



「アロンさんは、間違えてないっすよ。アイツがエドさんを暗殺者だと言ったことが、何よりの証拠っす。俺達は、この仕事の前に、貧民街を散歩したんすよ。そしたら、火事跡で遭遇した盗賊が、彼を暗殺者と勘違いしたんす。エドさんのステイタスをサーチできなかったからだと思うっすけどね」


「貧民街に行っていたのですか。それは、なぜ……」


 アロンさんは、すぐに理由に気づいたようだが、口にはしない。でも、話を聞いている人達が納得する理由が必要だ。


 僕は、頭を高速回転させて考えたが、どう話せばいいかわからない。料理長の店の跡を見に行ったと話すと、料理長を狙っている盗賊に、彼の居場所がバレてしまう。


「エドさんが貧民街を知らなかったから、案内したんすよ。まぁ、社会見学っすね。俺は、貧民街の生まれっすからね」


 ジョーモさんが、まさかの爆弾発言だ。いや、いいのか。あまり驚いている人はいない。彼の素性は知られているみたいだな。



「貧民街の生まれなら、盗賊に知り合いは多いだろう。彼が盗賊かもしれないし、茶髪の男をかばっているだけかもしれない。そんないい加減な理由が通るわけないですよね? アロンさん」


 嫌な奴だな。強引に押し通そうとしているのか。北門で、初老の女性からも、今回で証拠を得たいと頼まれたけど、これでは足りないのか。



 あっ! 話している間に、転がっていた盗賊達が、4階層へと逃げていく。盗んだ荷物を4階層に隠してあるのだろうか。2階層への階段前は、テントだらけだし、足止めされている冒険者が階段を埋め尽くしているから、4階層にしか逃げられないか。


 盗賊達を取り逃がすと、盗られた荷物は戻らなくなってしまう。でも錬金協会の人達も、4階層にいる魔物の対策はしてないよな。


 アロンさんは、盗賊達が逃げたことに気づいているけど、冒険者に追ってくれとは言わない。



「錬金協会さん、盗賊を逃がしていいのか。使用済みの資源が無くなったんだろ? 俺達が追ってやろうか?」


 立派な装備の冒険者達が、アロンさんにそう申し出た。護衛の依頼を受けた冒険者ではなく、探索に来ていた冒険者かな。


「お気遣いありがとうございます。3階層のメンテナンスは、ほぼ完了しましたから、使用済みの資源は残念ですが、仕方ありません」


「休憩所の結界を維持する魔道具のエネルギー鉱物だよな? 使用済みなら、結晶が付着してるだろ。結晶は、宝石として高く売れるぜ?」


「私達としましては、結晶に使い道はありません。凝縮された金属塊は残念ですが、盗賊は5階層まで降りたでしょうから……おや?」



 荷物を背負った盗賊達が、なぜか戻ってきた。妙に慌てていて、2階層への階段の方へ走っていく。


「階段にいる奴、死にたくないなら、さっさと退け! 邪魔な肉塊め!」


「タイトさん! どかしてくださいよ!」


 盗賊に名前を呼ばれた彼は、真っ赤な顔をしている。だが盗賊達は、タイトさんの名前をうっかり言ってしまうほど、慌てているように見えた。



「俺達が捕まえ……えっ!?」


 冒険者達が動きかけたが、その場で固まってしまった。4階層から、緑色のキャップを被った人達が、何人も駆け上がって来たためか。



「盗賊セルス団だ! しかも緑色は、団長の部隊だぜ」


「やべぇ! マジ、かっけぇ〜」


 緑色のキャップを被った集団は、あっという間に盗賊達の動きを封じた。ボコボコにして、荷物を奪っている。


 盗賊セルス団は、盗賊を狙う盗賊だ。このノワール洞窟近くにあるセルス村の人達が、なぜ、下層から上がってきたんだ? あっ! もしかすると……。


 冒険者達が、キラキラとした目で見つめる中、緑色のキャップを被った人達は、僕達の方に近寄ってきた。



「錬金協会の責任者は?」


「あ、私です。錬金協会のアロンです」


「あぁ、アンタか。やっぱり狙われたな。俺達に依頼すりゃ、死人も出ないはずだぜ?」


 えっ? 誰か死んだのか?


「セルス村の村長さん、お申し出は大変ありがたいのですが、義賊とはいえ、さすがに依頼は難しいのですよ。ソロ冒険者への依頼なら、できるのですが。それに今回は、一人の死者も出ておりません」


「姉が、3階層で変な臭いがすると言っていたぜ。裏ギルドの奇妙な毒を使われたんじゃないのか?」


 ん? 姉? ケモ耳の女の子から話を聞いて来たのかと思ったが、違うようだ。アロンさんと話す彼は、30代後半くらいに見える。この若さで、セルス村の村長なんだな。


「私も眠らされていたようですが、今回のメンテナンスに同行してくれていた冒険者さんのおかげで、解毒できました」


「そうか、幸運だったな。じゃあ、ここからは交渉だ。盗賊に取られた荷物を、俺達が取り返した。どう分ける?」


「宝石は、すべて差し上げます。私達としましては……」


「よし! 交渉成立だ。俺達は、金属塊なんかいらないからな」


 緑色のキャップを被った人達は、荷物の中から、宝石だけを抜き取ると、4階層への階段を降りて行った。



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