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20、魔物ホッパーを使った足止め

「結界じゃないっす。魔道具が反応しないんじゃなくて、アロンさんが状態異常を受けてるんすよ」


 ジョーモさんが冷静に分析した。僕には、違和感はないが、ジョーモさんは、左手の感覚がおかしいらしい。グーとパーを繰り返している。


「泥ホッパーには、状態異常の能力はないから、草ホッパーですね。夜行性の草ホッパーは、昼間に起こされると怒って鳴きます。その鳴き声は、僕達には聞こえない音域だけど、集中力を乱されます」


 僕がそう説明すると、ジョーモさんがニッと笑った。よくできました、なのかな? やはり先生みたいだ。



「なるほど。魔力を纏って再試行してみます。おぉ! エドさんのおっしゃる通りです。魔道具が動きました。魔物に関する知識が深いのですね」


「草ホッパーが出没する洞窟では、魔法の発動を邪魔されたことがあるので、知識というより実体験です」


「素晴らしいです。しかし困りましたね。今、魔道具を使って地形サーチをしましたが、私達の前後に、合わせて3つの陥没が新たに増えました。さらに草ホッパーも怒らせたとなると、動けませんね」


 アロンさんは、ジョーモさんに魔道具の地図を見せている。彼に街道の穴を塞いでもらいたいのだろうけど、ホッパー系は、互いに仲が悪い魔物だ。2種類のホッパーが街道に居るなら、どちらかが全滅するまで、争いが続く。



「面倒くさいっすね。これは、俺が狙われたんすね」


「いえ、ジョーモさんではなく、錬金協会長から調査命令を受けた私の足止めでしょう」


 錬金協会長? あっ、あの初老の女性?


「しかし、どうするっすかねぇ。ホッパー同士の争いが、もう起こってるっすよ。草ホッパーがワラワラと湧いてきてるっす。草ホッパーには、土魔法はあまり効かないんすよ」


 空が緑色に染まり始めた。草ホッパーの大群だ。街道では、土色の魔物が飛び跳ねている。


 僕達がいる場所には、生きている泥ホッパーは居ないから、空から襲ってくる気配はない。だけど、僕達を敵だと認識すると、草ホッパーの大群が襲い掛かってくるよな。


 草ホッパーは、泥ホッパーよりも小さいが、空を飛べるし、集団で連携攻撃をしてくるから、遭遇すると、仲間を呼ばれる前に倒すのが、冒険者の常識だ。


 既に大群が空を埋め尽くしている現状では、下手に動けない。草ホッパーの鳴き声が大きくなると、僕達には聞こえない音域だけど、魔導士でさえ魔法の発動が難しくなる。



「エドさん、火魔法で蹴散らせないっすか?」


 ジョーモさんは、少し焦り始めたようだ。こうしている間にも、僕達の前方でも後方でも、ホッパー同士の争いが激しくなっている。


「僕の火魔法で蹴散らせる量じゃないです。それに、空に広がっている草ホッパーに火魔法を使うと、燃えた草ホッパーが落ちてきて、二次被害が……」


 僕達が相談していると、前方で火柱が見えた。かなりの火力だけど、逆にマズイ。前方で足止めされている人達に火の玉が降り注ぐ。草ホッパーは油分が多くて繊維質だから、たいまつ代わりに使われることもある。屍は簡単には燃え尽きないんだ。


「クッ、火魔法はダメっすね。もっと火力の高い魔導士じゃないと」


 ジョーモさんは、草ホッパーの特徴をあまり理解してないらしい。いや、彼が所属するようなパーティなら、高位の魔導士が安全に焼き払うことができるのか。



「ジョーモさん、大きな鉢を作れませんか? 攻撃では倒せないから、泥ホッパーの死骸から餌を作ります」


「へ? ホッパーの餌っすか?」


「はい。ホッパー系は、共喰いもするので、穴に餌を投げ込めば、争いが収まるかもしれません」


 僕が話し終わる頃には、ジョーモさんが、泥ホッパーがまるまる入る大きさの鉢を作ってくれた。しかも、鉢の中には、既に泥ホッパーの死骸が入っている。


「死骸の下の土から、土偶を作ったっす。エドさん、これでスキルは使えるっすか?」


「はい、大丈夫です。死骸を入れる手間が省けます。あっ、ありがとうございます」


 ジョーモさんは、僕に長い棒も作ってくれた。僕は、混ぜ混ぜをして回っていく。彼が革の手袋のような魔法手袋をしていることに気づいた。使ってくれてる!


「エドさんのガチャ壺から出た手袋は、初めて使ったっすけど、魔力の節約効果がすごいっすね。魔道具は、使い始めは、なかなか馴染まないっすけど、これは、長く使っている物のような感じっす」


「壺が、ジョーモさんのスキルに合わせて作ったようですから、土魔法系には高い効果があるのだと思います」


 話しながらも混ぜ混ぜをしていると、アロンさんは魔道具に何かを書きとめているようだった。目をキラキラさせている。こんな状態でも、アロンさんはブレないな。



「できました! じゃあ、穴に持って行かないと……」


「その必要はないっすよ。俺が投げるっす」


 ジョーモさんが地面に手をついて魔力を放った。すると、鉢の状態だった入れ物がググッと伸びて、蓋ができた。いや、土人形に変わったようだ。


「アロンさん、もう一度、地図を見せて欲しいっす」


「は、はいはい! もちろんですよ」


 アロンさんは、ジョーモさんのスキルにも驚いたようだ。目をキラキラさせて、魔道具を操作している。



「エドさん、俺は、あまり細かな作業はできないっすけど、だいたいでいいっすよね?」


「はい、穴の近くに落ちても、大丈夫です。泥ホッパーは穴に引き込むだろうし、草ホッパーも奪おうとして穴に入ると思います」


「了解っす」


 ジョーモさんは、土人形を持つと、魔力を纏わせてポイポイと放り投げ始めた。すごい飛距離だな。僕が全力で投げても、絶対に届かないほど穴は遠いのに。街道から外れた場所にも、投げている。


 街道に落ちると、土人形はパリンと大きな音を立てて、割れる。ホッパー達は、一瞬ビビったようだが、すぐに土人形の中身に引き寄せられていく。空に浮かんでいた草ホッパーは、街道から離れた場所に落ちた土人形に集まっていった。


 しばらくすると、空にも街道にも、ホッパー達の姿は見えなくなった。



「エドさん、やったっすね。あとは、穴を塞ぐだけっす」


「はい! ジョーモさんのスキルは、すごいですよ。危険なく、餌を投げ込めるなんて」


「俺達が組むと、いい感じっすね」


 ニカッとジョーモさんが笑ってくれた。嬉しい!



「いやはや、お二人の力には驚きました。しかも非常に興味深いです! ありがとうございます」


 アロンさんは、また目をキラキラと輝かせていた。



皆様、いつも読んでくださってありがとうございます。

ブックマークもありがとうございます♪ ブクマが付くと、続きも読んでみようと思ってくださる方がおられるのだと、安心感と元気をもらえます。ありがとうございます!


今、すごく不規則に1日2話更新をしていますが、ノワール洞窟の件が片付き、次の話へ繋がる30話くらいまでは、2話更新を継続したいと思っています。

その後は、1日1話更新に変更させていただきたいと考えています。また、後書きでご案内します。

よろしくお願いします。

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