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18、冒険者ランクのこと

「おぉっ! ジョーモさん、本日は参加ありがとうございます。鎧を身につけると、ガラリと印象が変わりますねぇ」


 誰だろう? ジョーモさんと一緒に、錬金協会の仕事の集合場所である北門に行くと、30歳前後に見える男性が駆け寄ってきた。


「アンタのためじゃないっすよ」


 ジョーモさんが低い声でそう返したが、その男性はニコニコしている。錬金協会の人なんだろうけど、一緒にいる僕には無関心なんだな。まぁ、いいけど。


「ジョーモさんに参加してもらえると、本当に心強いのですよ。強い護衛が少ないと、ノワール洞窟での作業は難しいですから」


「そうっすか」


「今回は、総勢16人の冒険者に参加してもらうことになっています。あぁ、そのうち1人は、要件を満たさない新人冒険者なので、実質の護衛は15人ですね」


 僕がその要件を満たさない冒険者なんだよな。彼は気づいてないみたいだけど、少し嫌な気分になる。


 ジョーモさんは不機嫌そうに、フンと鼻を鳴らしていた。だけど、彼の勢いは変わらない。


「ジョーモさんのようなBランク冒険者は、他に2人参加してくれます。とはいえ、うち1人はBランクに上がったばかりなので、実戦力はCランクですね。ジョーモさんは、あと少しでAランクじゃないですか。護衛の中では、最強ですよ!」



 彼は必死に、ジョーモさんに話しかけている。一方で、ジョーモさんは、薄い反応は返しているけど、ずっと嫌そうにしている。彼は、相手の感情を読み取る能力がないのだろうか。露骨に嫌がられてるのに、気づかないのかな。


 でも、今の話から、ジョーモさんが錬金協会の人に頼りにされていることは、伝わってくる。あと少しでAランクだなんて、すごいよな。



 冒険者ランクは、Fランクから始まる。いくつかの決められたミッションをこなせば、すぐにEランクに上がるから、Fランクは、オリエンテーション期間という感じだ。


 Eランクになると、冒険者パーティに加入できるようになる。いわゆる新人冒険者と呼ばれるランクだ。冒険者としての規律を学び、活動範囲の地理や魔物の特性を学ぶのが、Eランクだ。Dランクになるには、これらに関する筆記試験に合格するだけでなく、ミッションを受け、一定の経験値を稼ぐ必要がある。


 Dランクになると、冒険者パーティを立ち上げることができる。幼馴染の中で一番最初にDランクに上がったのは、スージーだった。彼女はすぐに冒険者パーティを立ち上げて、僕達が加入したんだ。


 僕は、スージーの次にDランクに上がった。だけど、すぐに僕は皆に追い抜かれた。僕以外の4人がCランクに上がっても、僕はDランクのままだった。


 Cランクになるための経験値は、クリアできている。だけど僕は、Cランクになるための実技試験に合格できないんだ。Cランクからは討伐ミッションを受けられるから、冒険者同士の円滑な連携が試される。知らない人と話せない僕の口は、固く閉じた貝のようになってしまうんだ。


 あっ、今の僕なら、合格できるかもしれない。でも、それは不正になるのかな。魔道具のチカラを借りて試験を受けるなんて……。




「ジョーモさんにエドさん、お早い集合をありがとうございます! 私の方が遅いだなんて、申し訳ございません」


 大きなリュックを背負ったアロンさんの声が聞こえた。錬金協会の人なら、荷物は、魔法袋やアイテムボックスに入れるんじゃないのかな。


 アロンさんが僕達に近寄ってくると、ジョーモさんに必死に話しかけていた男性は、慌てたようだ。そーっと離れていく。だが、アロンさんは見逃さなかった。


「おや? タイトさんは、先に行ったはずでしたよね? あぁ、ジョーモさんに謝罪をしていたのかな」


 謝罪? そんな言葉は一言もなかった。もしかして彼は、ジョーモさんがシノア洞窟に閉じ込められたときの担当者か。


「いや〜、あはは、過去のことですし……前にも謝りましたし……」


「タイトさんは、改めて謝罪しないのですか? あまりにも誠意がありませんね! ジョーモさん、重ね重ね、申し訳ありません」


 なぜか、アロンさんが謝っている。タイトさんの上司に当たるのだろうか。



「別にいいっすよ。俺のことより、その人はエドさんのことをバカにしてたっす。そちらの方がムカつくっすよ」


「ええっ? 何ということを! エドさん、申し訳ありません。タイトさん!!」


「俺は何も言ってないですよ。ジョーモさんの勘違いじゃないですかー」


「今日参加する冒険者の一人は、要件を満たさない新人冒険者だと言ったっすよ。俺がエドさんの同行を参加条件にしたことを知っていて、そんな嫌味を言ったんすよ」


「いや、知らなかったですし……」


「は? 知らないわけないっすよね? それなら、なぜエドさんのことを無視してたんすか。アンタが、Cランク以上の冒険者にしか話しかけないことは、みんな知ってるっすよ!」


 ジョーモさんが、僕のために怒ってくれている。それだけで、僕の心は温かくなった。



「タイトさん! 謝罪してください! あー、本当に申し訳ありません。私達は、Dランク冒険者を新人冒険者だとは考えておりません。Eランク以下が新人冒険者だという認識です」


 アロンさんが僕に謝っている間に、タイトさんは逃げたようだ。北門から出て行った。


「アロンさん、僕なら大丈夫です。冒険者としては、まだまだ新人ですし」


「エドさんがそう言ってくださると、私はホッとします。ジョーモさんにも不快な思いをさせてしまいました。申し訳ありません」


 アロンさんは、ずっと謝ってばかりだな。



「錬金協会は、なぜ、あの職員をクビにしないんすか? 俺だけじゃなく、被害者はたくさん居るっすよね? 俺をシノア洞窟に閉じ込めたのも、わざとやったんっすよ。俺が貧民街の生まれだからっすよね」


「ジョーモさん、お気持ちはわかります。我々としましても、タイトさんの失敗から様々な事故が起こっていることは把握しておりますが……」


「証拠がないんすよね。いや、証拠があっても、それをアイツの親が揉み消すのか? 俺は、アイツが何かの手駒にされているとしか、思えないんすけどね」



 アロンさんの後方から、初老の女性が近寄ってきた。その姿を見て、ジョーモさんが目を見開いている。偉い人なのかな。


「今回の作業で、その証拠を得たいと考えています。お二人には、是非ご協力いただきたい」


 錬金協会のローブを身につけた初老の女性は、ジョーモさんと僕に、深々と頭を下げた。


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