夏休みの不思議
ねぇ、こんなうわさ知ってる?
これは、私が小学生の時に体験した
不思議なお話しです。
小学校、中学校は夏休み期間で、いつもより暑い猛暑日の事だった。
うちの小学校には変な先生がいた。
休みだからと言って、どこも出かけずに
引きこもっているなんて身体に毒だぞ?
たくさん外に出て健康になりなさい。
学校の担任の先生に、夏休み前の修了式でそう言われた。
こんな暑い日に外なんか出たら、熱中症で倒れてしまうよ!それに、日焼けで真っ黒になってしまうじゃないか!
昔の教えという教育法に
熱心で頑固な先生であるためか、先生が行ってからクラスの男子や女子が話しているのを聞いた。
私だってそう思った。
こんな暑いのに、遊べるもんか。
特に女の子はお肌を焼きたくないものよ。
下校後はまっすぐ家に帰って、
しっかり手洗いうがいもして
かき氷を頬張る。
冷たい氷がひんやり頭にキーンとして、
いちごのシロップは甘くて、最後に溶けてジュースになるのをごくごくと飲み干す。
これが夏の醍醐味というものだ
私はかき氷を食べ終えると、少しだけ宿題をして、扇風機の風にあたりながら
寝転がっていた。
それを見た母は、夏休み前に入ったからってだらだらしすぎると身体がなまるわよ?
ちゃんと宿題も忘れずにするのよ?と
休み期間があるといつも言うんだ。
私はちゃんとはーい!と返事をして、
母が去ってくと、小さくあっかんべーとした。
ちゃんとやってるのに見てないんだから。
大人は自分のことばかりね。
この言葉は、夏休み前に友達のゆみちゃんという子に教えてもらった事だ。
うちは、親が共働きだからわたしのことは見てくれないの。おじいちゃんとおばあちゃんがご飯を作ってくれたり、お話の相手してくれたりするの。と教えてくれた。
そんな話をするゆみちゃんは、不服そうに話していた。だっておじいちゃんとおばあちゃんは、演歌とか?昔のお話とか、軍人さんとかよくわからない話をしてくるのだという。そんな時は宿題があるからまたねと部屋に逃げるんだって。
それを思い出した私は、ゆみちゃんに会いたくなった。今頃寂しがってるのかな?
私は、途中だった宿題を片付けると
帽子を被り水筒を持って、いってきまーすと出かけた。
ゆみちゃんの家へいくと、ゆみちゃんはいた。遊べることになったので、二人で駄菓子屋に行くことにした。
その途中でクラスメイトのななちゃんにあった。ななちゃんはいつも可愛くて、お家がおかねもち?なんだって。
3人で駄菓子屋に行くことになって、
一緒にお菓子を買いました。
楽しくおしゃべりして、夕方の鐘が鳴ってね、バイバイってして帰ることにしたんだ。
帰る途中に、「ねぇ、こんなうわさ知ってる?」って話しかけられたんだ。
見たことない女の子で、白いワンピースを着たお人形さんみたいに可愛い子だったの。髪は二つ結びの三つ編みで、
だーれ?って聞いたら、「学校のトイレの個室の一番奥に花子さんが居て、放課後一人でトイレにいくと、遊ぼうって話しかけられるんだって」
名前じゃなくて、うわさの話をされたの。
そのうわさは私も知ってるしみんな知ってるよ?って言ってもう一度、名前は?あなただーれ?って聞いたら。
「わたし?わたしはあなたと同じ学校に通ってる3年生のちよだよ」って教えてくれたの。その後またねばいばいって言われたから。夏休みが終わったら会えるかな?って思ったの。
ちよちゃんか、可愛い子だったな。
また会えるかな?
そんなことを考えながら、宿題も早めに終わってね、やることも無くなったから、
友達と遊んでたの。それでね、また帰りに
ちよちゃんと会ったんだ。
「ねぇ、こんなうわさ知ってる?」
私は、ちよちゃんまたあったね!今度はどんなうわさ話?って、いつしかちよちゃんからのうわさ話を聞くのが楽しくて、
会うのが楽しみになって行ったんだ。
「学校の理科室にある人体模型が、夜
学校の中を歩き回ってるんだって、
心臓ちょうだいって言って出会ったら食べられちゃうんだって」
怖いねー。
どれも知っている怪談のうわさ話で、
それでも、ちよちゃんと会いたくて
知っていてもちよちゃんに話を合わせていたんだ。
それから、何回か会うたびにうわさ話を聞いて、夏休みが終わる最後の日にちよちゃんに会ったのね。
「ねぇ、こんなうわさ知ってる?」
今度はどんなうわさ?
「・・・・。」
いつもうわさ話を話してくれるちよちゃんが黙り込んで。
どうしたの?って聞くと
「わたしね、誰かとこうして話したかったんだ」って
じゃあ、私といっぱいお話ししよう!
友達になろう!
あ、でも もう私たち友達だよね!って言ったの。何回も会っておしゃべりしてるし
ちよちゃんといて、おしゃべりしてたのしいんだ!って。そう伝えたら…
「そうだね^_^ありがとう。
わたしたち友達になれてうれしい^_^
うわさね…人は死んだら幽霊になって、
大好きだった人の寝ている枕元に現れて
立ってるんだって。何も言わずに、ずっと
こっちを見てるんだって」
会いにきたのかな?
私は、幽霊というワードを聞いて怖いって最初は思ったんだ。でもね、幽霊になっても大好きな人のところに来るのは会いたかったからだよね?って話したんだ。
ちよちゃんは、いつものようにばいばいって言って、振り返ってありがとうって笑ってたんだ。そこでわかれたんだけど…
なんだか寂しそうに見えたんだ。
夏休みが終わっちゃうからかな?って思ってたんだけど、夏休みが終わって
学校が始まって、友達にも久しぶりに会ったんだけど、どこを探してもちよちゃんが見つからないの。
だから、職員室に行って3年生の先生がいたからその先生に聞いたんだ。
同じ学校で、3年生にちよちゃんって子はいませんか?って。
そしたら、女の先生が
びっくりした顔してたの。
どうしてちよちゃんの事知ってるの?って聞かれて、夏休み中に会って一緒におしゃべりしたんだよって全部話したの。
先生は、私を相談室に連れて行って
二人きりで話したんだ。
落ち着いて聞いてねって、最初はよくわからなかったけど、
去年の春、3年生に転校してくる子がいて、名前はちよちゃん。
お化けやうわさ話が大好きな子で、
三つ編みで白いワンピースを着ていたんだって。ちよちゃんは、友達も多くて
優しくて、明るくて笑顔が素敵な子だってみんなの人気者だったって。
今年の夏みたいに暑い日で、
猛暑日だったって。
ちよちゃんは、道路にうずくまって弱っている子猫を見つけたんだって。
助けようとしてそのまま車に…。
近くにいた、近所のおばさんが見ていたって。居眠り運転だったらしくて、
ちよちゃんの家族は悲しくてずっと泣いて
たんだって。
その話を聞いて、私は不思議に思っていた。今年の夏休みにちよちゃんに会ってる。
お話だってした。
先生は不思議そうに、ちよちゃんに会ったんだよね?
ちよちゃんは、会いにきたのかな?
伝え忘れてたけど、私の名前は「はな」っていうんだ。先生から聞いたけど、ちよちゃんは私のいとこなんだって。
そういえば、私は一度もいとこに会ったことがない。家族の話だと会ったのは本当に小さい頃で、ちよちゃんは年上で私を妹のように可愛がってくれたって。
大人になった今、その話を聞いていた、いとこの家に遊びに行った。
仏壇には、夏休みに会った時の三つ編みと白いワンピース姿のちよちゃんだった。
お気に入りだったんだって。
私が大きくなったらあげるつもりでいた事を、おばさんに聞いて、涙がでました。
ちよちゃんは、最後に私に会いにきて
楽しませようとして話してくれたのかな?
ありがとう、ちよちゃん。
そっちで元気に私たちを見守っていてください。
仏壇にお線香と、手を合わせると
なんだか笑ってるようにみえた。
そのあとは、小さい頃のアルバムを見せてもらって、私とちよちゃんが手を繋いで遊んでる写真を一枚だけもらって、
また来るねと一言添えて、
夏になると必ず、手を合わせにいとこの家とお墓参りに足を運んだ。
※これらに登場する人物やストーリーはすべてフィクションです。