前編
「なんだここは〜ッ!」
巨大な地下都市に、僕の絶叫が響いた。
まさか、ホッキョクオオカミの研究ということでこんなところまでくるとは!?
ネットの掲示板・・・
そこにでかでかと、「「ホッキョクオオカミ」と遊びませんか?彼らと地球環境と生活向上の相談をしましょう!」と書き込みがあった。
北極の観測基地で、楽しそうに遊ぶ研究員とホッキョクオオカミ・・・
その画像が貼りつけられていた。
「楽しそうだな・・・」
ホッキョクオオカミは、どう見ても白いシベリアンハスキーにしか見えない。
僕、乾 茂久は、学生の身ながらイベントに参加することにした。
飛行機でアラスカの北極基地に直行し、そこで・・・
「ねえ!
おっちゃん!
そこの機械、何?」
「ああ。
基地周辺の雪かきをする機械さ。」
「それは?」
「観測機械だぜ。」
なんと・・・
オオカミの耳と尻尾の子供たちが、興味津々で基地の隊員に質問している。
イベント参加者は、口をあんぐりと開けている。
「よくきたな!
驚いただろう。
このガキどもは、いわゆる「人狼」ってやつだ。
しかも・・・
「ホッキョクオオカミ」のな。」
は?
「事前に聞いたことがあるヤツもいると思うが・・・
「ホッキョクオオカミ」ってのは、人懐っこくて、好奇心旺盛だ。
何世代か前の連中は、こんなふうにして機材を観察してたぜ。」
隊員は、タブレットを見せてきた。
ホッキョクオオカミが、野ざらしの機材を「分析」しているシーンだ。
賢い・・・
「さて・・・
あんたたちには、このガキどもの「街」へと言ってもらう。
いくら賢いと言っても「オオカミ」だからな。
人間から文明と文化を吸収したがっているが・・・
どーしたものか。
そこで、あんたらのレクチャーが必要になる。」
「え?」
なんだソレ・・・
「行ってみればわかる・・・」
しばらくすると・・・
かなり大型の窓付コンテナをつけたトラックが、走ってきた。
ききっとトラックが停まり・・・
がちゃっと扉が開く。
そこから、白髪の美少女が降りてきた。
「こんちゃーっす!
この度、政府から自治領扱いで、開拓を託されました人狼村の者です!」
コートを着た、狼の耳の少女。
ふさふさの尻尾が、ぶんぶんと振れている。
「え?
人狼?」
人狼ってのは、ワイルドなイメージがあるが・・・
ここにいる子供らといい、彼女といい・・・
なつっこいハスキーを思わせる。
「さてみなさん!
人狼村・ホーラウルにご案内します!
このトラックに乗ってください!」